イース I・II 完全版

Text by Seal
27th Dec.2001

 1987年に登場した「イース」は,アクションRPGの代名詞としてゲーム史に名をとどろかせたタイトルだ。シンプルな操作性,イベントを豊富に盛り込んだストーリー展開など,この世界に入り込みやすく作られていて,誰もがクリアするまで没頭したものだった。その翌年には続編の「イースII」がリリースされたが,さらに洗練されたゲーム性によって前作を上回るほどの人気を博した。筆者もかつて2作ともにプレイし,特にイースIIのオープニングは非常に好んで毎日のように繰り返し観ていたのを記憶している。
 「イース I・II 完全版」は,この傑作アクションRPGを現代風に一からリメイクしたものである。ゲーム性を失わずに遊びやすくしているだけでなく,ファンを虜にする追加要素によって,文字通り「完全版」として完成度を上げてリリースされたのだ。
 ちなみにこれは,1998年にリメイクされた「イース・エターナル」と2000年の「イースIIエターナル」を融合したもの。しかし,オープニングムービーのアレンジや細部のバランス調整,2作の間がシームレスに無理なく移行できるなど,数々の変更点がある

ダンジョンに囚われていた少女フィーナ。彼女は記憶を失っているが,実はストーリーに大きく関わってくる

 「イース」パートでは,エステリアの地に漂着した主人公アドルが,"古代王国イース"にまつわる冒険をしていくことになる
 この王国イースは,元々二人の女神と徳の深い六人の神官によって治められていたが,700年前に災いの嵐が吹き荒れた。そこで女神と神官たちは神殿とその周辺の土地を大空へと舞い上がらせて,災いの狂気から逃れたのだ。アドルは,冒険の途中で美しい少女「フィーナ」と「レア」に出会うことから,エステリア(=かつての"イース"の天空に上らなかった地域)に突如発生したモンスターや,その背後の人物などを知る。そしてアドルは,エステリアと天空の"イース"を邪悪なる者から守るために,神官たちの思いが記された6冊の"イースの書"を集める旅へと出立する……

 このような奥深いストーリーをバックにゲームは展開していくが,ゲーム性は非常にシンプルだ。操作は基本的にキーボードかマウス,あるいはゲームパッドのいずれかを使って"移動"するのみ。つまりモンスターを攻撃するためのなにかしらのキー操作や,技を出すための複雑な入力などは一切必要ないのだ。
 攻撃は,モンスターに体当たりするだけ。ただし,単に真正面から向かっていったのでは反撃を受けてしまう。当時の攻略法として有名な「半キャラずらし」(モンスターと半キャラクター分ずらして体当たりするテクニック)は本作でももちろん健在なので,これを利用すればダメージを受けずに倒していける。ほかにも,よりスムースに移動できるようになったり,"ダッシュ"が使えるようになったりと,操作性面の向上によって本作では斜めからの体当たりも効果的になっている。
 またアクションRPGならではのボスモンスターも当然用意されている。ボスモンスターは要所要所に配置されており,倒すためにはある程度のレベルが必要だ。各ボスモンスターの攻撃のバリエーションは豊富で,攻略も一筋縄ではいかないのも本作の醍醐味の一つといえよう。

イース I
力強く壁を破壊して登場するドギ。"ワク"からはみ出るグラフィックスが非常に印象的なシーンだ 3つの絵を別々にスクロールさせて奥行きを出しているのはアイデアの勝利。この手法は「イースIII」で採用され当時も話題になっていた 銀のハーモニカをなくしてしまったという詩人レア。彼女のハーモニカを見つければ冒険の役に立つかもしれない 苦労の末にボスを倒すと派手なグラフィックスが表示される。しかし,アドルの戦いはまだまだ続く……

 

ボスモンスター戦はテクニックを駆使して戦おう。微妙な"避け"も必要だ

 続編の「イースII」パートは,イースの書をすべて集めたアドルが,その力で天空高くに浮いている"イースの神殿"へと運ばれるところから始まる。イースの民の子孫たちが暮らしているそこでは,地上での異変と同じくしてモンスターが出現し始めていた。一連の元凶である存在を倒すためにアドルは冒険を続けていく……という,連続したストーリーとなる。
 イースIIでのアドルは,イースの神官たちの力を得て魔法を使えるようになっている。時間を一時的に止めたり,ファイアの魔法でモンスターを倒したりなど,戦い方にバリエーションが加えられているが,それでもシンプルな操作性は失われていないのはさすがといえる。またレベルアップの上限が高くなり,フィールドやボスモンスターを大幅に増やすことによって,総プレイ時間も増加している。
 「イースII」パートならではの機能としては,ゲーム進行状況を日記という形式でいつでも参照できることや,モンスターやキャラクターの図鑑などがある。前作に登場したキャラクターのマスコットを"メイン画面の縁にぶら下げられる"というのも,面白いアイデアだ。

 本作は,アクションRPGの"分かりやすさ"を推していることから,武器や防具などのアイテム数は少なめだ。経験値を稼いで成長していく過程を楽しむオーソドックスなRPGといえるだろう。ただしイベントシーンでは,画面から溢れるほどの大きさでキャラクターが表示されて,強烈なインパクトを与えてくれる。また通常のシーンでも,3枚の絵をずらしてスクロールさせることによって遠近感を出す手法など,かなりのこだわりとなっている。
 ほかにも「EASY」「NORMAL」「HARD」「NIGHTMARE」と4種類の難度が用意されており,たとえばEASYではサクサクとゲームが進展するからストーリーのみを楽しみたいときにうってつけだ。一方最高難度のNIGHTMAREでは,モンスターを1匹倒すのにも熾烈なテクニックを要求するほどとなる。イースシリーズを初めてプレイするのであれば,まずEASYでストーリーを楽しむことをおすすめしたい。
 さらに本作では,ゲームを一度クリアすることでプレイできるようになる「タイムアタック」モードが追加された。これは,ボスモンスターが連続で出現し,その全てを倒すまでの時間を競うものだ。クリアしたあとの"お遊び"的な意味合いだけでなく,自己の限界に挑戦できるのが面白い。
 完成度の面からでもゲーム性の面からでも,本作は文句なしにアクションRPGの代表作といえる。どこでもセーブ可能で,気軽にプレイできるのも評価できるポイントだ。アクションRPGファンには満足できるクオリティを提供し,ゲーム初心者でも手軽にプレイできる環境を提供している本作は,ぜひプレイしてもらいたい一本だ。

イース II
病に侵されている少女リリア。薬を調合できれば助けられるのだが,その材料はダンジョンの奥深くにしかないという…… RPGの醍醐味の一つの,アイテム入手時にはファンファーレと共に溢れる光のグラフィックスが表示される 戦闘は体当たりだけの簡単システムだが,多くのモンスターを打ち破るにはテクニックが必要だ イースの神官の加護を受けて魔法が使えるようになったアドル。魔法と剣の組み合わせでボスを倒していこう

このページを印刷する

■発売元:日本ファルコム
■価格:オープンプライス(日本ファルコムのサイトでの通販価格は7980円)
■問い合わせ先:
日本ファルコム TEL 042-527-6501
■動作環境:Windows 9x/Me/2000,Pentium/200MHz以上(PentiumII/233MHz以上推奨),メモリ32MB(64MB以上推奨),空きHDD容量460MB以上(1GB以上推奨)

(C) 2001 Nihon Falcom Corporation