WORLD WAR III:BLACK GOLD英語版 完全日本語マニュアル付

Text by Gueed
15th Jan. 2002

本作に登場する兵器は,いずれも現代に実在するバリバリの"超"近代兵器だ モチーフとなっている石油は,"シャフト"と呼ばれる掘削機によって採掘する

 読者の人も,幼い頃から何度も耳にしてきたのではないだろうか? 「石油は,あと40〜50年ほどでなくなるらしい――」。しかし,現在に至っても石油はなくなっていない。石油採掘の技術の向上などで埋蔵量が生産量と同じように増え続けたためらしいのだが,いずれ発見されるであろう油田を計算に入れても,残りの石油埋蔵量はいままで人類が消費した量よりも少し多いくらいだそうだ。とはいえ,発展途上国の急速な成長などで加速する石油の消費で,正味の残り年数は40年もないかもしれない。

 ……と,いきなり暗い前置きになったが,この「枯渇する石油」をモチーフに,近い将来人類が直面するかもしれない"石油を求めて繰り広げられる戦争"を描いたのが本作「WORLD WAR III:BLACK GOLD」(以下,WW3)である(ちなみに,本作のサブタイトルである"BLACK GOLD"は,日本語で"石油"の意)。
 メディアクエストから2001年11月15日に発売された本作は,石油の枯渇が引き金となって勃発する架空の戦争,第三次世界大戦を舞台に,アメリカ,ロシア,イラクのいずれかの軍隊を操作して石油の覇権奪取をめざすウォーシミュレーション。プレイスタイルは,オーソドックスなRTSのソレを踏襲している。前述の三か国それぞれに,三つほどのキャンペーンが用意されていて,一つのキャンペーンにつき,平均して5個のミッションが楽しめるというものだ。


なにやら物騒なおハナシです

建造物や大型兵器は,併設すると爆発の際に誘発の恐れがある。ある程度分散させて配置しよう

 "架空"とはいえ,登場する兵器や軍隊,そして政治背景などはすべて現実に基づいたもの
 国連中央地質調査委員会の極秘会議で全世界の石油資源が危機的な状況にまで落ち込んでいることが判明。国連総会で,全世界の石油資源を国連の完全な管理下に置くことを提議した。それに反発したOPEC(石油輸出国機構)加盟国がジハード(聖戦)を唱えて軍備の増強に乗り出してゆく――と,ストーリーはザッとこんなカンジだ。
 管理の強制執行を決定した国連軍は対象を中東にしぼり,ついにNATO軍の先遣艦隊がペルシャ湾に上陸するという,決して他人事とは思えない,やけにリアルで物騒な設定が興味をソソる(とくに,ゲーム上でのアメリカを憎悪するイラクの立場・情勢などは,2002年1月9日現在,とても笑えなかったりもする)。NATOやOPECなど,現実に存在する団体名が出てくることで,ゲームの世界へ没入しやすく,また英語で展開される小難しい(と感じる)ブリーフィングも直感的に理解が可能だ。

 リアリズムを前面に押し出す本作で忘れていけないのが,アメリカ,ロシア,イラクに実在する兵器の数々。アメリカが所有している三大攻撃ヘリの「アパッチ」「コマンチ」「コブラ」を始めとする超メジャーな兵器から,ロケット発射台,塹壕,レーダーに至るまでがそれぞれのお国柄をキチンと反映したグラフィックスで完全表現されていて,"軍事モノ"の知識のある人であれば,それぞれのユニットの特性の知識を生かして実際の戦争のように効率のいい利用ができる。コアゲーマーであれば,そのありったけの知識をぶつけることができるような仕上がり具合になっているというわけだ。

 全体的にシリアスタッチで描かれていることもあって,ゲーム全体の雰囲気は,画面も含めてやや暗め。フォグで覆われた未開拓地を,カムフラージュや無人偵察機を駆使して慎重に進軍していくのも,現実の戦争のソレを彷彿とさせて戦場における緊張感も合格といったカンジだ。

戦略に影響を与える昼夜のサイクル。もちろん,天候も刻一刻と変化する(昼→夜)

RTSの華は戦闘だろう,しかし……

大型のタンクや自走砲は,このような大型の輸送兵器を使用する。非操作のユニットだが攻撃対象にはなるので注意 見よ,この雄大な景色を! 背景の描画にも手抜きは一切ナシだ

 本作は,RTSではすでにお約束の,生産→戦闘→生産……というサイクルに終始しないのも特徴。むしろ,戦闘よりもその下準備である物資の空中輸送路の確保や,各拠点における発電所建設などのエネルギー補給手段の確保,そして制圧した石油埋蔵地点における石油の掘削などが重要になってくる(ちなみに本作に登場する資源は石油のみで,石油埋蔵地点で原油を掘削したら,その時点でユニットや建造物の建築に必要となる財源になるという仕組みだ)。
 さらに,ジャマー(妨信装置)を利用して敵の通信妨害をしたり,対ミサイル防衛を施したりと,ここには書き切れないほどの"戦争を構成する要素"がてんこ盛り。もちろん選択した国によって得意な分野が存在しているのも見逃せない。例えばアメリカは偵察や通信に関する手段が豊富だったり,ロシアはケミカル兵器(化学兵器)を標準で配備。イラクは,発展途上な経済状況や技術進歩を反映しているのか,カムフラージュ・ネット(偽装網)の技術が発達していたりと,ほぼ現実の軍隊の雰囲気を再現できているといえるだろう。

 ほとんどオペレーションがマウスで行え,各軍事行動(生産・技術開発・建築)も,その操作性の良いコントロールパネル群とあいまって非常にスムーズに操作できる。進軍時の自動経路選択機能は若干弱いため,地形や攻撃目標に合わせて陣形を選択しないとうまく歩を進めることができない場面にも遭遇するが,それも戦争をリアルに演出する要素として考えれば,ストレスに感じることもないだろう。


完全3Dのオブジェクトを舐めまわせ!(目でだ!!)

石油関連の建造物の近くにはガスパイプがあるので,発砲には細心の注意をはらおう。注意を怠ると……

 上記で紹介したような戦略性の高さをみせる一方,本作の見どころはそのリアリティ溢れる3Dでのオブジェクト表現にもある。昨今リリースされるタイトルと比較して,特別"美麗"なワケではない本作のグラフィックス。各ユニットは緻密に描かれているとはいえど,その固体を識別するのに問題ない程度のテクスチャで構成されている。
 だがその見せ方に,ほかのタイトルと一線を画している感アリなのだ。マウスとキーボードによりほぼすべての角度からユニットや建造物を眺めることができ,もちろんズームイン/アウトも自由自在。それにより,戦闘中/非戦闘中を問わず,ユニットや建造物のリアルな動作・挙動を確認することができる。少々大袈裟かもしれないが,フィールド上に展開される小ムービーにシームレスにアクセスできるようなカンジとでもいおうか。各ユニットが自動的に敵を補足,攻撃または反撃するルーチンが賢いため,戦闘中にプレイヤーが頻繁に指示を出してやる必要もなく,要所要所で的確な指示を出してやればOK。ひたすら局地的な戦闘のグラフィックスを堪能することができるのだ。思うに,本作はRTSというカテゴリに属しながらも,より凝ったビジュアルを仮想的なジオラマのように"見て"ほしいんじゃないかな? と筆者は思うのである。


"軍事モノ"の扉を開けてみよう

夜間の戦闘中に激しく飛び交うロケット弾。やはりゲリラ戦では戦闘ヘリに分があるようだ

 "第三次世界大戦(要は軍事モノ)+RTSシステム"と,ありがち感が先行しそうな本作だが,ちょっと見方を変えてみよう。軍事モノを苦手,または毛嫌いしている読者の人がいるなら,まさにアナタにこそうってつけといっておきたい。
 このようなウォーシミュレーションをプレイする場合,リアルタイム制/ターン制に限らず,モチーフとなっている戦争のバックグラウンドや兵器の知識があるのとないのでは,楽しさに雲泥の差がでてくるということだ。
 嬉しいことに,本作に付属の日本語マニュアルはとてつもなく親切。しかも"完全"と銘うってあるだけあって,兵器の説明一つをとっても,ビジュアルや性能表にとどまらず,その兵器が開発された背景などの"うんちく"的なハナシも満載である。この手の知識にうといライトゲーマーには非常に重宝する作りになっているといえよう。さらにそれらの兵器の特性をそのままゲームに持ち込むように設計されているので,プレイヤーが上達する点においてこれほど都合のいい一本はないだろう。

 もちろんそこで得られた知識は,ほかのタイトルをプレイしたときにも生きてくる。包括的な知識が身につくことでプレイできるゲームのキャパがグッと拡がり,ひいてはゲーム人生が非常に充実したものになると筆者は考えるのだがいかがだろうか(言い過ぎだろうか? きっとそんなことはないと思う)。

激しい戦闘中にも思わず見とれてしまう美しいエフェクトも,本作の見どころだ 防信装置"ジャマー"は輸送ヘリでの移動が基本。その辺が凝ってマス 各キャンペーンごとに用意されたムービーも,テレビ放送などをまじえて,より現実に近いものに仕上がっている 小戦闘"Skirmish"では,キャンペーンをクリアしていなくても最新鋭の兵器が使用できる

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■発売元:メディアクエスト
■価格:8800円
■動作環境:Windows 9x/Me,PentiumII/300MHz以上,メモリ:64MB以上,HDD容量:200MB以上
■英語デモ版(130.82MB):http://www.4gamer.net/patch/demo/data/ww3.html
■販促用ムービー(9.21MB):http://www.4gamer.net/files/movies/ww3.mpg

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