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USAF2000日本語版
Text by 桜薗冬弥
/Vmag.2000年6/15号

クリックすると拡大します  Jane'sのフライトシムは基本的に二つのシリーズがある。エンタテイメント性が強い「U.S.ネイビーファイターズ」「Advanced Tactical Fighters」のシリーズと,「Longbow Anthology」「F-15」,そして最新の「F/A18」へとつながるマニアックなシリーズだ。今回,完全日本語化が施されて登場した「USAF2000日本語版」は,前者の流れを汲むタイトル。内容はそのタイトルどおり米国空軍を扱ったもので,搭乗できる機体も新旧織り交ぜた8機種となっている。またクイックミッションではさらにMig-29にも搭乗が可能だ。
 Jane'sといえば軍事情報の分析と提供を行う,世界的にも権威ある企業。そのJane'sが持つ緻密な情報を元に製作される各種のシミュレータは完成度も非常に高く,今やこのジャンルでは大御所中の大御所だ。結論から先に述べてしまえばUSAF2000(以下USAF)は,エンタテイメント性が強いとはいえ,Jane'sが作るフライトシムであるだけに,妥協のない見事な内容になっている。オマケに完全日本語版である。これはかなり期待。

手堅い内容と最高水準のグラフィック
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  まずオープニングのムービーが,戦闘機好きは嬉しさで笑みがこぼれてしまうほど派手。実写映像を編集しただけのものだが,はためく星条旗を背景に勝利の微笑を浮かべるパイロットの映像など,まさに「強いアメリカ」という言葉が頭に浮かぶ。そしてその後に表示されるメニュー画面のバックで流れるハードロック。もうこの時点で参りましたという感じだ。
 メインメニューに用意された項目も多い。基本的なメニュー内容は,もうフライトシムではお約束のラインアップだ。それに加えてJane'sお得意の兵器データベースである「リファレンス」や,記録したミッションの進行を再生できる「ミッションレコーダー」など,ユーザーを飽きさせない仕掛けが盛り込んである。とにかくすぐにでも飛びたいという人は,メニュー画面中央の「FLY NOW」を押せば,ランダムに選ばれた搭乗機体とシチュエーションで,すぐにでもドッグファイトが楽しめる。そしてここで驚くのがそのグラフィックスだ。
 地形データは比較的平坦なものが多いが,航空写真から作成されたマッピングデータは,思わず高高度での遊覧飛行をしたくなるほど。機体のモデリングやマッピング,そして光源処理も非常に美しい。しかもそれが処理速度を犠牲にすることもない。恐らく,グラフィックスに関しては,最高水準にあるゲームだろう。最新のコンシューマ専用機とほぼ同等といっても過言ではない。そしてそれを見たさにプレイ意欲も高まるのだ。

とことん飽きさせない雰囲気作り
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  U.S.ネイビーファイターズからの流れとして,Jane'sのこのシリーズはとにかくよくしゃべる。味方の部隊で飛び交う通信や自分自身が報告する声など,ひとたび戦闘が始まればもうしゃべりっ放しなのだ。通信のやり取りは英語なのだが,むしろそれが雰囲気を盛り上げてくれるし,通信内容は日本語のテロップが画面に現われるので,内容の把握も問題ない。「ビュ〜ティフル! 見ろよあの燃えっぷり!」なんていうかなり熱い通信内容に,否応なく血はたぎるのである。
 また,Jane'sのお家芸である"史実に基づく緻密なキャンペーンモード"も,相変わらず見事だ。ヴェトナム戦を題材としたキャンペーンではファントムを主に駆り,墜落した爆撃機のパイロットの救出に参加したりといった,かなり熱いシナリオが多数用意されている。また現代戦マニアのためには,あの"デザートストーム"作戦を,開戦から停戦直前までを体験できるようになっている。
 これらのキャンペーンで重要なのは,複数の作戦部隊を操る必要があるということだ。例えばF-16で目標を索敵し,発見に成功したら空爆部隊のF-15に乗り替える,といった必要があるのだ。自分以外の部隊をCPUに任せることも可能だが,シナリオのクリアを目指すなら,積極的に乗り替えを行う必要があるだろう。
 そして何より嬉しいのは,こういったキャンペーンも全て翻訳されていること。プレイにも安心して臨めるということだ。

マニアにも納得のゲームシステム
クリックすると拡大します  雰囲気とか熱いとか連呼してきたが,このUSAFはそれだけのゲームじゃない。フライトシムとして重要なフライトモデルの再現性,各種兵装の取り扱いやそれが与える効果など,こういったベースの情報があってこそ,各種の味付けが生きているのである。搭乗できる機体の種類も多く,操作を統一するために計器操作などは多少簡略化されてはいるが,それを差し引いても納得の仕上がりである。言い換えれば,自分の機動に集中することができるというわけだ。
 ただし,少々気になるのがジョイスティックに対する応答性。一部の機体ではスティック操作に対して過剰な応答があり,まっすぐ飛ぶことすらままならいことがある。これはどうやら一部のジョイスティックとの相性が関係しているようだ。スティック操作に対する応答性を細かく調整できるようになっていればよかったのだが。
 昨今のゲームではお約束ともいえる通信プレイだが,これは非常に快適だ。単純な対戦から共同プレイによるミッション遂行など,遊び方もさまざまなものが用意されている。
 また,さらにUSAFを極めたいという人には,ミッションエディタも用意されている。ゲーム本編のキャンペーンモードのシナリオもこれで作成しているとのことで,それだけに非常に高機能。これでオリジナルのミッションを組んでオンラインで遊べば,さらに楽しみも増えるというものだ。このミッションエディタは英語版でなおかつそれなりの軍事知識も必要なため,気軽に触れるというわけにはいかないが,長く楽しむのには最適だろう。

 USAFは,確固たる技術と情報を元に初心者から中級者までをターゲットにした内容だといえる。単に「初心者に易しく」というわけでなく,上級者でも楽しめるような配慮が随所に見られ,どっから見ても隙のない完成度だ。フライトシムとしては珍しく,手放しで誰にでも勧められるタイトルになっているのだ。
■発売元:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
■価格: 9800円
■問い合わせ先:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
  TEL 03-5436-6499
■動作環境:Windows 95/98,Pentium/200MHz以上(PentiumU/350MHz以上推奨),メモリ32MB以上(64MB以上推奨),空きHDD容量550MB以上(1.2GB以上推奨),Force Feedback対応
■英語版デモ(49.4MB):http://www.3dfiles.com/games/usaf.shtml
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