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提督の決断IV

Text by 真鍋慎一
2nd Mar.2001

 コーエーから,第二次世界大戦の"海戦"をメインテーマとしたシミュレーションゲーム「提督の決断IV」(以下,提督IV)がリリースされる(3月9日)。発売されたばかりの「信長の野望・嵐世記」と同様,提督IVでも戦闘がリアルタイム制になった点が大きなポイントだろう。プレイステーション2の"決戦"以来,コーエーはリアルタイム戦闘シーンを一つのテーマにし,ゲームの雰囲気を盛り上げることに重点を移しているのだろうか。

拠点制圧と資源確保
 提督IVは,ワールドワイドな舞台の戦略シミュレーションゲームである。ゲーム内では,この世界をいくつかの拠点に分けてあり,すべてを制圧していくのが目的だ。システムは1週間単位のターン制をとっており,開発,生産,移動,諜報などの命令を出して戦闘フェーズに突入するようになっている。
 このゲームでの重要なポイントは,今も昔も"資源確保"だ。各拠点を占領するとすべての行動に重要な金の収入があるほか,油,鉄,アルミといった資源の収入にもつながっていく。油は艦隊の移動に,鉄は艦船の生産/修理に,アルミは航空機の生産に,それぞれ必要である。
 史実が示すように,日本やドイツでプレイした場合はこれらの資源が不足がちで,資源生産量の多い拠点の制圧がゲームの進行を左右する。また,拠点を制圧していても,本国(母港拠点)と繋がっていなければ収入にならないので,輸送路の確保も重要だ。資源の運搬は,輸送船の配置という概念で整理されており,資源量に見合った輸送船を配置するだけでよく,あまり煩雑な作業はないのが嬉しいところだ。
 一方では"通商破壊"というコマンドもあり,制圧内地でも輸送船が潜水艦による攻撃にさらされる。輸送船の補充にも貴重な鉄を消費してしまうので,鉄鍋や郵便ポストを当てにせず,哨戒防衛用の航空部隊などを配置することになるだろう。

1か月ごとに戦略会議
 ゲーム進行の最小単位である1週間ごとのターンのほか,1か月ごとに戦略会議が開かれるようになる。そこでは,どの拠点を攻めるかに関して軍司令部からの三つの作戦提案が出され,それを選んでゲームを進めていくことになる。実際,軍司令部のとおりに進めなくともよいが,目標を達成したときの臨時予算がけっこうな収入になる。
 また,会議では提督の評価が行われ,戦績のあった提督には,感謝状の付与や昇級が行われる。
戦闘がリアルタイムに
 さて今作の最大のポイントは,ここ最近のコーエーのシステムである"リアルタイムの戦闘"だ。1艦隊は最大16艦船で構成されて,1地域に3艦隊まで参戦できるようになっている。そのため,敵艦隊と合わせて最大96艦船でリアルタイム戦闘を行うことになるわけだ。また拠点には飛行場があり,1飛行場あたり最大250機の航空機を配置できる。航空部隊は20機ほどでまとまって行動するが,空母なども参戦していれば,けっこうな数の航空部隊も参戦する。かなり激しい(そして忙しい)戦闘シーンになる場合も多いだろう。
 艦隊運用は,部隊ごとでも1艦船ごとでも操作でき,ちょうどマウスで操作でファイルアイコンを操作する感覚で自由に行える。分かっている人には分かるだろうが,まさに"Age of Empires"の感覚だ。例えば16艦船×3部隊を投入してから,3艦船を偵察用に,残りを9艦船×5部隊に分けて運用するなどといったことも可能だ。
 船の動きは惰性や方向転換の遅さなどもシミュレートされており,あまり強引な運用をすれば,艦船がこんがらがってダンゴ状隊になってしまうことも。AoEなどのようにサクサクと動けるわけではないのだ。舵を大幅に変更するときなどはグルリと回り込むように動いていくので,先を読んだ操作が肝要だ。操作ミスによる艦船の衝突まではシミュレートされていないが,そのあたりの慣れが,戦闘攻略のポイントになるだろう。

 肝心の艦隊攻撃には,砲撃と魚雷がある。それぞれ,敵が射程範囲に入れば自動的に攻撃が行われるが,目標艦船を定めて集中攻撃することも可能だ。砲撃には弾数の概念がないので長期戦に向き,威力がある魚雷は弾数に限りがあるので短期戦や一撃離脱に向いているといった雰囲気だ。
 航空機の操作は,飛行場や空母ごとに偵察目的地,攻撃目標を指定するだけの簡単な操作になる。攻撃目標を定めると発進準備が行われ,ある程度時間が経過すると航空部隊が出動するようになっている。ちょっと拍子抜けするぐらいに簡単な操作だが,威力は強力。いままでの"提督"は,大艦巨砲主義的なバランスの印象があったが,今作は,航空機の威力,鉄とアルミ資源のバランスも含めて航空機を運用する機会が多い。また,各拠点には必ず飛行場があり,敵艦隊を全滅させたうえで飛行場を破壊しなければ,拠点制圧にならない。

よりリアルな戦闘に
 艦船をまとめて扱った場合は自動的に陣形が組まれる。空母がいれば紡錘陣形,戦艦だけなら縦列陣形だ。いろいろと艦隊陣形が選べないのはちょっと残念。実際もそうであったようだが敵艦船に対して側面を向けて攻撃する"T字戦法"を取ると命中率が上がるので,縦列陣形の場合は,運用によって敵後部に半包囲陣形を形成し,各個撃破していくのが効果的だろう。とくに射程の長い大和級艦船で艦隊を構成していれば,まさにアウトレンジ攻撃によって,味方艦隊に被害がないままに敵艦隊を撃破していくことができる。鉄の少ない日本では非常に重要。このほかにも,ターン制では不可能だったいくつかの戦法が考えられるところは,リアルタイムならではだ。
 また索敵範囲という概念があり,偵察するか視野に入らないと敵艦隊は見えない。敵艦隊のほうが検索範囲が広ければ,突然航空部隊に襲われることもある。決してインチキではないのでご注意あれ。

 このあたり,時間と索敵範囲の関係は緊張感をもたらし,さらに音声サウンドとBGMが臨場感を出す。さまざまな音声やセンスのよいBGMが用意され(デモ版ではBGMがなかったのが残念だ),偵察部隊が敵艦隊を発見すると「敵艦隊発見!」という警告的な音声が流れ,BGMが俄然緊迫感を増す曲になる。実際,今回の記事を書くにあたってプレイしているときは,音声の報告を頼りにして操作を進めたものである。近年のマシンパワーの向上がもたらした"リアルタイム戦闘"によって,より面白く遊べるようになったのは嬉しいことだ。
 前作から5年。「IV」とナンバリングされてはいるが,さまざまな部分がリファインされており,基本的には「全く新しい作品」と思ったほうがいいかもしれない。かつてのファンも,最近ゲームを始めた人も,まずは体験版から味わってみてほしい。もしその戦闘シーンが嫌いでなく,"戦艦"にロマン(?)を感じるのなら,速攻で買いだと思う。
 ちなみに"提督IV"単体では定価1万1800円。提督IVに加えて"提督III+パワーアップキット"が付いたかなりお得なセットも1万6800円で発売されるので,前作にも興味がある人/前作をもう一度プレイしたい人などにはお勧め。5000円の上乗せだし。


■発売元:コーエー
■価格:1万1800円(製品単体),1万6800円(IV+III+IIIパワーアップキット)
■問い合わせ先:コーエー TEL 045-561-6861
■動作環境:Windows 9x/Me/2000,PentiumII/266MHz以上(PentiumII/333MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量450MB以上,1024×768ドット以上の解像度
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