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スターランサー 完全日本語版
Text by TAITAI
1st Mar.2001

WingCommanderシリーズの流れを汲むスペースフライト物の期待作

 「Wing Commander」といえば,あのウルティマで有名なOrigin Systemsの看板ゲームとして名を馳せた,スペースフライト物の傑作シリーズ。そのシリーズのプロデューサーだったクリス・ロバーツが独立して制作を手がけた作品の完全日本語版が,今回紹介する「スターランサー 完全日本語版」(以下スターランサー)である。
 WingCommanderシリーズとは,ドラマチックなストーリー展開と,登場時点での最高レベルのグラフィックスの二つでファンを沸かせてきた人気作。「Wing Commander」シリーズこそ,"面白くて,凄い"そんな言葉が当てはまる,SFファン/シューティングファンにはたまらないゲームだったのだ。
 スターランサーは,そんなWing Commanderシリーズの正当な後継者ともいえる作品。美しいグラフィックスと否応なく盛り上がるストーリー展開で,プレイヤーをぐいぐいとゲームの世界へと引き込んでくれる,期待して待っていた筆者の期待を全く裏切らない出来映えだった。非常に素晴らしい完成度だ。

 
今の世界をモチーフにしたスペースウォー

 ゲームの舞台は22世紀の太陽系。20世紀の紛争史に基づいた世界観が特徴で,一昔前の西側と東側の紛争をそのまま未来の世界――宇宙――を舞台に展開させている内容である。宇宙戦艦や空母の所属がアメリカ,イギリス,フランスなど,存在する国の名前になっているところなどは,ちょっとユニーク。当然ゲーム中には日本も登場し,ゲーム中盤からプレイヤーの母艦となる旗艦「ヤマト」や,そこに所属する精鋭飛行隊の「ローニン隊」など,優遇されているのかどうか微妙ながらも,ストーリーの展開にも密接に絡んでくる。些細な部分かもしれないのだが,日本人としてはなんだか嬉しい。

 
システムはWing Commander直系

 基本的なゲームシステム――特に戦闘部分のシステムなどは,ほとんどWing Commanderそのままである。人気シリーズのシステムを踏襲しているだけあって,操作性や認識性などでは全く問題が見受けられない。ただ,Wing Commanderでファンを多いに喜ばせたミッションとミッションの合間の"アドベンチャーゲームパート"は,このスターランサーには存在しない。ブリーフィングとミッションを交互にこなしてゲームが進んでいくのだ。アドベンチャーの部分を削ればサクサクとストーリー進められるのも事実だし,あったらあったで面白いのもまた事実。
 賛否両論があるだろうが,やはりアドベンチャー的な部分はあったほうがよかったのではないかというのが筆者の感想だ。ゲーム中(戦闘中)に発生する敵や味方との通信がこのゲームの魅力の一つだと思うのだが,アドベンチャー部が存在しないスターランサーでは,せっかく大勢いる魅力的なキャラクター達の性格や経歴をより深く知ることができないのだ。その結果,味方などとの通信シーンであまり感情移入ができず,非常にもったいない気がしてしまう。一応,ゲーム中に使用できるデータベースから各パイロットの情報を引き出せるのだが,それだけではやはりなかなか愛着が持てないのだ。
 キャラクターが"立つ"ほどの魅力がないのか? と問われれば,もちろん答えはNoである。それだけに,より深くキャラクターの個性を表現させる場がほしかったともいえる。ただ誤解のないように言っておくと,アドベンチャー部が全くないからといって,"ストーリーが盛り上がりに欠ける"ことはなく,展開はまさしく手に汗握るもの。戦闘中にガンガン入ってくる通信などが,本当にゲームの中に自分が存在しているかのような気分にさせてくれるのである。40曲以上入っているBGMもまた然り。緊迫した雰囲気作りに大きな貢献をしている。

 
スペースフライト物好きは絶対に買いだ

 このゲームは,どう考えても「買い」である。Wing Commander3,4をなぜか5本持っている人間の戯言かもしれないが,とにかく買いといったら買いなのだ。
 当たり前のことだが,全てのゲームプレイヤーに対して"買って損なし"とはいわない。スペースフライト物に抵抗がなく,かつジョイスティックを持っているプレイヤーには,ぜひともプレイしてほしいゲームである。また,「スターランサー」は比較的難易度が低く(キーは多いが),"飛びモノ"に抵抗のある初心者にも遊びやすいもの(なにせ失速しないし)となっているので,物怖じしている人もぜひトライしてみてほしい。

 最後に,かなり突っ込んだ意見を付け加えておくので参考にして貰えればありがたい。  それは,スターランサーはあくまでスペースフライト"シューティング"であって,スペースフライト"シミュレーター"ではないという点だ。設定上のプレイヤーは配属されたばかりの一兵士なのだが,スターランサー内でのプレイヤーは基本として"エース"であり,英雄的な活躍を求められる。まぁ,それでこそドラマチックな展開や派手な演出が似合って面白いのだが,第二次大戦フライトシムなどでよくある「一兵士の気分を味わえる」ものじゃなきゃイヤだというコダワリ派の人には,常にヒーローであることを宿命づけられているこの作品は向かないかもしれない。
 このゲームにおける敵とプレイヤーの関係はアンフェアであり,プレイヤーは敵機を次々と撃ち落としていける(そんなこと実際にはあるわけないのだ)。いわばプレイヤーは,"用意されたエースの座"に座るのである。"敵との関係が比較的フェアなゲーム"は難度が高くシビアではあるけれど,独特の味というか面白さがあるといえるだろう。そういった向きな好きな人には,ちょっとスターランサーでは物足りないかもしれない。
 とはいえ,筆者はスターランサーのシステムを否定するものではない。映画の主人公のようなヒーローになりきり,次々と登場する強敵達を打ち破っていく痛快さも,また非常に良いものである。そういう意味では,広くいろいろな人にお勧めできる作品だといえるだろう。日本語化もなかなかのものだ。まずはデモ版からでもどうだろうか。

■発売元:メディアクエスト
■価格:9800円
■問い合わせ先:メディアクエスト TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 95/98/Me/2000(Windows Meのアップグレード版とPC-9821シリーズは除く),Celeron/300MHz以上(PentiumII/300MHz以上推奨),メモリ32MB以上,空きHDD容量300MB以上(1.1GB以上推奨)
■日本語デモ版(84.26MB):http://www.4gamer.net/patch/demo/StarLancerDemo.lzh

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