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スピーディバイクハンドル
Text by 大原雄介
18th Jan.2001

クリックすると拡大します クリックすると拡大します  フライトシミュレータ関連製品を含むPCゲームデバイス全般を扱っていることでおなじみのトワイライトエクスプレスから,バイクシミュレーション用のステアリングコントローラである「スピーディバイクハンドル」が発売された。このスピーディバイクハンドル(以下SBH)を試用する機会に恵まれたので、早速その具合をお伝えしたい。ブツ自体が最終調整版だったので,もしかしたら製品と違う個所もあるやもしれないが,ご了承願いたい。

インストールはエラい簡単
 接続はUSBとなっているので,Windows 98系の場合はUSBポートに差すだけで自動認識してくれる。デバイス自体は「USB ヒューマンインターフェースデバイス」で分類されるので,Windows 98に標準で付いてくるドライバだけで,つつがなくインストールが完了する。 が,その後「コントロールパネル」→「ゲームコントローラ」でキャリブレーションを行ったところ,ちょっと問題が発覚。このSBHの場合,

ハンドル:中立でX軸ゼロ。右に倒せばX軸がマイナス,左に倒せばX軸がプラスに移動
アクセル:手を離すとY軸ゼロ。アクセルを開けるとY軸がプラスに移動
ブレーキ:手を離すとY軸ゼロ。レバーを握るとY軸がマイナスに移動

クリックすると拡大します クリックすると拡大します という仕様になっている。  つまり,アクセルとブレーキは,二つで一つのY軸方向のデバイスとして認識されているわけだ。
 この方法,ゲームで使う分には賢いのだが,バランス調整がうまくいかないと大変なことになる。実際,借用した試作品では大変なことになった。つまり,アクセルとブレーキを共に離した状態においても,Y軸が中立にならないのだ。
 このトラブルが試作品に特有のものなら問題はないと思うのだが,量産品でもこの癖が消えてないとすると,これだけでエラく苦労するハメになるだろう。ちなみに製品版登場以降,トワイライトエクスプレスのサポート窓口にそういった症状がないとのことなので,キチンと改善されたのだろう。たまたま調整版が悪かったのか,筆者の環境の何かとブツかっただけかもしれない。
 ところでインストールといえば,この手のものはどこに設置するかも問題である。基本的には机の端などに置いて使う形になるが,このときに固定する方法が吸盤のみなので,筆者の様に合板の天板を持つ机だと「そもそも固定できない」という大問題に直面する。最終的には机にガムテープで貼り付けるという乱暴な方法で使ったが、このあたりはオプションでいいからMicrosoftのSideWinder Force Feedback Steeringのようなクランプを用意してほしいものだ。

クリックすると拡大します ハンドルはダルめでアクセル&ブレーキはシビア
 さて,実際に使ってみよう。製品には,エレクトロニック・アーツ・スクウェア「スーパーバイク2001」の体験版が添付されているのだが,今回の動作確認には,Electronic ArtsのSuperbike Racing(2001じゃない)と,同じくElectronic ArtsのMotoRacer2をチョイスしてみた(テスト機がPentiumIII/600MHz+All-in-Wonder128 Proというやや非力なマシンなので,この程度の軽いゲームが好ましかったという事情もある)。両方のゲームで,とりあえず数ラップ廻っての感想はというと……。
・ハンドル  X軸方向,つまり左右の操作はかなりダルな印象がある。特に中立付近ではやや遊びがあることもあって,微妙な操作はまるっきり効かない。またコーナーでの倒しこみのときには,ハンドルをほとんど90度まで廻さないとフルバンクに入ってくれない。つまりは,微妙なスロットル操作は到底できないことになる。
 これはバイクに乗っている人にはお分かりいただけると思うが、まずコーナー直前から侵入にかけてはブレーキを握り,その後ブレーキを放してからクリッピングへのアプローチをパーシャルアクセスで実施,クリッピングを過ぎたら序々にアクセルを開けてゆく操作が必要になる。ところがSBHの場合は,この操作の大半を,ハンドルを90度近くまで傾けた状態でやらなければならない。言うまでもなく,これはとんでもなく大変な作業になる。
・アクセル&ブレーキ  中立にしても安定しないという話は置いておくとしても,とにかくアクセルとブレーキのレスポンスはハンドルと対照的に極めてシビアである。アクセルをちょっと開けただけで,回転数が一気にレッドゾーンに突入してしまう。この結果,アクセル開度をパーシャルに保つなどという芸当は,極めて困難である(少なくとも筆者は1回も出来なかった)。逆にブレーキは,ちょっと触れると即フルブレーキである。軽くブレーキを引きずりながらコーナーへアプローチ,なんて余地はまったくない。
 といったところである。結果として,どちらのゲームもあまり良い感触ではなかった。それでも,アーケード性の高いMoto Racer2はなんとかプレイできたが(こちらはこちらで,高速なマシンだと異様なフレームレートで動作するため,またもや操作が間に合わないという問題があるのだが),Superbike RacingでSimulation Modeでプレイすると,ゲームというよりは難行苦行に近い状態だった。

ただし……
 と,ここまではネガティブな面ばかり綴ってきてしまったが,もちろん良い面もある。
 筆者は普段バイクゲームにはMicrosoftのSideWinder Force Feedback Proを使っているが,ステアリングはともかくアクセル/ブレーキをY軸に割り当てるのはかなり抵抗があり,結果としてアクセル/ブレーキはボタンに割り当てて使っている。当然こんなもんでパーシャルアクセスなんぞ実現出来るはずもないのだが,かといって1本のジョイスティックで両方を行うのはかなり辛い。
 ところがSBHではごく自然に,ステアリングとアクセル/ブレーキを分けて操作できるので,この点は高く評価できる。多分,アクセル/ブレーキ/ステアリングについて,操作量と変位値を直線的変化ではなく,曲線的に変化させられ,かつそれを調整できる機能がソフトウェアで付加されれば,上述の問題の大半は解消するはずだ。
 つまりハンドルに関しては,中立付近での変動量を大きく,90度近いところでは少なくすればいいし,逆にアクセル/ブレーキに関しては,中立状態の変動量を小さく,そこから2次曲線的に変動量が大きくなるようなセッティングが行えればかなり満足できるはず。
 ソフトウェア側の対処で可能な範囲だと思うので、是非この点を改良していただきたい。そうすれば,バイク用デバイスとしてお勧めの逸品になりえるだろう。


■発売元:トワイライトエクスプレス
■価格:7800円
■問い合わせ先:トワイライトエクスプレス TEL 03-5979-7496
■動作環境:Windows 98/Me/2000,USBポート専用,EAスクウェアの「スーパーバイク2001」体験版付属