スコード リーダー 完全日本語版

Text by デイビー日高
25th Sep.2001

　メディアクエストから発売されている「スコード リーダー 完全日本語版」（以下，SL）は，ターン制のウォーシミュレーション。第二次世界大戦の歴史的な大作戦を，小隊レベルで楽しめるのが本作の特徴だ。
　この時代のウォーシミュレーションに広範囲を扱うものは数あれど，戦術クラスの小規模の戦いをテーマとしているのは数少ない。プレイヤーはスコードリーダー，つまり分隊長となり，軍上層部から次々と出される任務を遂行していくのが目的だ。
　この手のウォーシミュレーションは，ユニットデータなどの膨大なインゲーム情報を把握していないとゲーム難易度が非常に上昇してしまうということがあるが，本作では適度にシステムを簡略化することによって，初心者でもすんなりと入り込める。ゲーム難易度は4段階用意され，またゲーム中に挿入される作戦の指示は語り部調で行われて軍部の堅いイメージというのが拭い去られているのがユニークだ。

どこから遊んでも楽しめる"キャンペーンモード"

　ゲームモードは，キャンペーンとシナリオの二つ。キャンペーンではアメリカ，イギリス，ドイツから一国を選択し，"ノルマンディー上陸作戦"や"マーケットガーデン作戦"などの激戦地を戦い抜いていく。
　どのキャンペーンも長めとなっていて，1マップをクリアするのに数時間を要するものもある。またキャンペーンは連続しているので，途中で失った兵士や兵器が復活することはない。スタート時の兵力と途中で補充される物資をうまく使いまわしながら戦っていかなければならないのだ。
　一方シナリオモードは，アメリカ，イギリス，ドイツのそれぞれに14マップの計42マップが用意されていて，手軽に局地戦が楽しめる。また同モードには，シナリオ作成機能も用意されていて，待ち伏せや追撃などの作戦ジャンルからゲームの難易度までを簡単に設定できる。マップはランダムで作成されるので，シナリオモードやキャンペーンモードをクリアした後によりハードな状況で楽しむこともできるのだ。

適材適所で配置して攻めろ！

　小隊長や曹長，通信兵，狙撃兵など7種類300人の兵士が登場する。射撃能力や士気，体力などのステータスによって，個々の特徴付けがなされている。このあたりはウォーシミュレーションの醍醐味というべき細かさとなっていて，適当に兵を配置していたのでは，スコードリーダーとしては失格だ。小隊の兵士たちの特徴をすべて把握していなければ，無駄に部下を失ってしまうのである。
　ゲームをスタートする前には，小隊の編成だけでなく武器の選択も必要だ。武器には重量というパラメータがあるので，おのずと携行できる武器量は決まってくる。作戦内容などによって最適な武器を選択していくようにしたい。
　バランスよく装備品を選択していくことは，当時の武器に精通している必要性があるのではないかという心配をする人も多いかもしれないが，SLではデフォルトの装備があらかじめ選択されているので，そのままでも困る状況に陥ることはあまりない。自分で武器を選択する場合は，武器の射程距離や命中精度に重点を置くと，比較的ラクに戦っていけるはずだ。

　また，衛生兵や通信兵などの戦闘には直接関わらないような補助兵も，ゲーム中で重要な位置を占めているのは大きな特徴。SLでは兵を失うことを痛感する。兵士は戦闘を重ねるごとに少しづつ成長していくことと，常に同じメンバーで戦闘をしていかなければならないことから，なにか一種の連帯感が生じてくるのだ。特に頼りにしている兵士が負傷したときなどは，真っ先に衛生兵を向かわせて治療したくなるほどだ。

行動ポイントによって深まるゲーム性

　SLのユニットは，行動ポイントによってターン中の行動が制限される。ターンが開始されると兵士には行動ポイントが与えられ，それを消費して数々の行動をしていくわけだ。走っての移動は2ポイント，通常射撃は6ポイントを消費し，姿勢の変化や手榴弾の投擲などもある。
　ここもウォーシミュレーションとしてのこだわりが感じられるところなのだが，特に姿勢は重要だ。無防備に立ち上がっている状態，ひざを折って屈んでいる状態，そして伏せている状態の3種があり，それぞれの状態によって射撃の命中精度や被弾確率などが変化するのだ。ブッシュの中など視界がひらけていない場所では，ターン終了時には必ずひざを折る状態にしておかないと，簡単に倒されてしまうかもしれない。

　SLは，「じっくりと腰を据えて作戦を練るのが好きだ」というターン制ストラテジーファンはぜひとも手にとってもらいたい作品だ。これまでのウォーシミュレーションで兵士や兵器がただのユニットとして扱われていて味気なく感じていた人も，本作なら実際の戦場での臨場感や連帯感を十分に味わえる。新兵訓練所というチュートリアルも用意されているので，初心者からウォーシミュレーションファンまで幅広い層が楽しめるだろう。