ストロングホールド 完全日本語版

Text by 朝倉 哲也
5th Aug. 2002

守るにしても,攻めるにしても派手な攻城戦が実に楽しい

 中世ヨーロッパ風の城を築き,領土経営をしつつ敵を撃退する。そんなmini-Scape(ミニ・スケープ:箱庭)系ゲームが,メディアクエストから2002年8月22日に発売される,「ストロングホールド 完全日本語版」(以下,ストロングホールド)だ。
 領土経営というシミュレーションと,敵との戦いというリアルタイム・ストラテジーの両方が絶妙にミックスされた,mini-Scapeファンにはお勧めの一品だ。

誰でも一国一城の主に

 ゲームの舞台は,中世ヨーロッパを模した架空の世界。大陸を治めていた国王が亡くなった後,外敵の進入による政情不安などから血で血を洗う内戦が勃発,プレイヤーの父親である,とある地方の領主が内戦により亡くなったことから,プレイヤーはその後を継いで若き領主となったという設定となっている。キャンペーンモードでは,父親の仇でもある4人の領主を討ち,乱れた国内を統一する戦いを行っていくこととなる。
 敵を倒すための強い軍隊を作るためには,まず領土の繁栄が必要不可欠だ。そのためには,安定した食料供給と資源の確保を第一とした領土経営を行っていく。中世ヨーロッパを模しているだけあり,食料には狩猟で得た動物の肉,りんご,チーズ,エールといったものが用意されている。そして建物を建てるに際して必要となる木材や石材などの物資の確保も重要だ。建物には狩猟小屋,市場,馬小屋などが用意されている。
 建物を作ると,広場の焚き火の周りにたむろしていた職のない住人が,おもむろに建物に赴いて働きだす。そして出来上がった食料や,木材などを貯蔵庫に運ぶようになる。街が大きくなっていくと,それこそ無数の住人が忙しそうに立ち働いている姿を見るようになるのだが,この住人達のしぐさが実に細かくできている。酒場で乾杯を繰り返す人々や,その傍らで飲みすぎて立てないほど酔っ払ったオヤジ。収穫されたホップを重そうに担いで小屋に運び,大きな樽をかき回して発酵させ,出来上がったエールを運び出す醸造所のおかみさん。怪しげなものを大なべに入れて煮込んでいる薬店の店主など,眺めているとだけでも実に楽しい。こんな時は「おお,我が領民達は勤勉に働いているのお,愛いヤツじゃ,よしよし」などと,いかにも領主になったかのようにつぶやいてみるのが正しい遊び方だろう(笑)。

 なお,ストロングホールドには,領民の領主に対する"人望"という数値があり,食糧がなくなって領民達への配給が滞ったり,重税をかけたりすると途端に下がりだす。これが半分以下になると住民が減りだしていくようになり,やがて無人の家だけが並ぶゴーストタウンとなってしまうので注意しなければならない。また,住民達へ恩恵を施すだけが領主ではない。断頭台や,拷問台,地下牢などを配して恐怖政治を行うこともできるところが,ほかのmini-Scapeゲームにはあまり見られない,ストロングホールドの特徴といえるだろう

キャンペーン序盤では,木の柵で囲った砦くらいしか作れなく,規模も小さい 敵城にとりつき城壁の破壊を行う兵士達 城壁の上から,火のついた油をかけられた瞬間。城の中央に見える大きな釜が油釜だ
敵城前に整列,攻略に取り掛かる直前 城の中心部,司令塔。塔上のマントを羽織ったひときわ立派な鎧姿の騎士が司令官だ 敵の城壁も大分崩れてきた。馬上の騎士達は,突入の時期をいまや遅しと待っている

最大の特徴,それは「城攻め」

攻城ミッションの一つには,キャメロット城も用意されている

 ストロングホールドの戦いで最も特徴的なのが,自分の砦・城の防衛,または敵の砦・城の攻略だ。部隊同士の戦闘もあるのだが,それは城を守備する部隊が,少なくなった敵兵を叩くために城外に出撃する場合や,崩した敵城壁から城内になだれ込んだ場合などに発生するというように,あくまでも砦や城での攻防がメインとなっている。そのため,兵士の種類にも弓兵や騎士といった一般的なものから,城壁を登るためのはしごをかけるはしご兵,城壁や塔の下に穴を掘って崩す掘削兵など,他のRTSゲームなどではあまりお目にかからないような兵士が設定されている
 戦いでの操作自体は,選択した兵士を移動させたり,敵兵を攻撃させたりと一般的なRTSゲームと何ら変わりはない。だが,城での攻防がメインとなるため,やはり篭城している側が圧倒的に有利ではある。攻め込むほうは,堀を埋めて城壁を崩すか,はしごをかけて城内に突入しなければならないのだが,そのときは,城のやぐらや城壁上から矢,火のついた煮えたぎった油などが降り注ぐ。攻め込むときには大量の兵士を用意し,迅速で機敏な指示をしていかないと落城はおぼつかないが,城を落としたときの喜びはまた格別なものだ。逆に守備に回った場合,兵士の育成が間に合わずに,少数の兵で迎え撃つこともあるのだが,うまく敵を撃退したときの勝利の味わいもまた特別だ。
 この城攻め,城の防衛という戦闘があるからこそ,ストロングホールドが,ただのシミュレーションやストラテジーゲームに終わらない魅力あるものになっているといえる。

多彩なゲームモード

 たいていのmini-ScapeゲームやRTSゲームには,シングルプレイキャンペーンのほかには,シングルミッションとマルチプレイヤーゲームくらいしかないのだが,ストロングホールには,

  1. メインストーリーを追いかける戦闘に重点をおいた,ミリタリーキャンペーン
  2. 歴史上有名なヨーロッパの城を使った,攻防のみを楽しむ攻城ミッション
  3. 領土経営を行いながら軍隊を育て,敵城を攻略する侵略ミッション
  4. 領土経営に重点をおいた政治経済キャンペーン
  5. 領土経営を単独のミッションでプレイする政治経済ミッション
  6. 敵もいなければ,達成しなければならない目標もない,ただひたすら領土の経営と拡張を楽しむフリープレイ
  7. マルチプレイヤーゲーム

 以上,7種類ものゲームモードが入っていることは特筆できる(ゲームエディタを加えると8種類だ)。中でもとくに興味深いのが,2番めの攻城ミッションと,6番めのフリープレイだ。
 攻城ミッションでは,スコットランドのエジンバラ城,アーサー王伝説で名高いキャメロット城など17の城での攻防が楽しめる。領地の経営といった要素はなく,最初から与えられた兵士のみで城を守る,または攻撃するのだ。
 反対に,戦闘要素がほとんどないフリープレイでは,領民を襲う狼や盗賊がたまに現れるほかは一切の外敵が登場しないので,心ゆくまで領土の発展や城の建設に打ち込むことができる。「敵もいないのに面白いの?」と思われるかもしれないが,先に挙げたように,人々の動作が実に細かく作られているので,動いている様を眺めているだけでもかなり面白い。バロック音楽をBGMに,平和な小国の領主気分でまったりとプレイしてみるのが良さげだ。

 最後に,本作は完全日本語版ということで,ゲーム内の各種表示やメッセージはおろか,セリフまで日本語化されているので,英語にアレルギーがある人でも,まったく問題なくプレイすることができるだろう。
 「Sim City」や「Pharaoh」などといったmini-Scapeゲームや,「Age of Empires」や「Empire Earth」のようなRTSゲーム,「Civilization」のようなシミュレーションゲームが好きなら,まずは「ここ」のデモ版紹介コーナーから,デモ版をダウンロードして遊んでみてほしい。必ずやお気に召すはずである。

攻城シーン

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■発売元:メディアクエスト
■価格:8980円(2002年8月22日発売)
■問い合わせ先:メディアクエスト TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 98/Me/XP(旧OSからアップグレードしたものは動作保証しません),Pentium II/300MHz以上(Pentium II/600MHz以上推奨) ,メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量750MB以上

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