三國志 Battlefield

Texr by DKG
27th Sep. 2002

コーエーの三國志が対戦重視のRTSになった!

多くの武将と兵士が入り乱れての戦い。これぞ三國志だ!

 これまでコーエーがリリースしてきた"三國志シリーズ"といえば,ターン制でじっくり遊ぶタイプのシミュレーションというイメージがあるだろう。"内政"でじっくりと国を育て,あるときは"外交"で敵国と同盟を組み,またあるときは"策略"で敵国を陥れ,最終的に中国大陸の統一を目指す。広大な中国大陸を舞台にしているため,クリアまで途方もなく時間がかかってしまうのが欠点ではあるが,その長時間のプレイを苦にさせない中毒性が魅力でもあった。
 そんな三國志シリーズで脈々と受け継がれてきたシステムを大胆に捨て去り,リアルタイムストラテジー(以下,RTS)のシステムで登場したのが,この「三國志 Battlefield」(以下,BF)である。

 RTSといえば"ウォークラフトシリーズ"や"エイジ オブ エンパイアシリーズ"が世界的に有名で,ネット対戦が盛んなジャンルなのだが,意外と国産のタイトルは少ない。そこにコーエーが看板タイトルを引っさげて殴り込んだというわけだ。日本のRTSファン,三国志ファンの注目を集める作品といえるだろう。

時間のかかる作業を排除し,対戦を重視

 BFには従来の三國志シリーズのような内政システムはなく,その代わりに自国の土地に畑を作って兵糧を収穫,商家を建てて税金を徴収と,いたってシンプルなシステムが採用されている。同じように軍隊も,兵種ごとの訓練所を建てることで季節ごとに自動的に徴兵される
 一つの国は,一つの城と一定の大きさの土地で構成されていて,成長することはない。当然この土地に建てられる建築物は限られてしまうため,何をいくつ建てるのかなどを考えながらプレイする必要があるのだ。建物は取り壊しができるとはいえ,建設にはそれなりに時間がかかるので,効率の良い土地の使い方がポイントになる。

 太学システムは,このBFの最大の特徴といえるだろう。太学とは,武将の使う戦術,軍師の使う妖術,はたまた兵器などの研究/開発を行う施設で,これを建てないと,いくら武力や知力に優れる武将を集めていても勝つことはできないだろう。
 各種太学を建てると研究が始まり,一つの戦術が完成すると自動的に次の戦術の開発に移る。同じ種類の太学を複数建てることで,研究速度を上げることも可能だ。戦闘の勝敗に直接繋がる戦術や妖術太学を優先して建てるべきのは当たり前として,ユニットが通れる地形を増やす行軍/水軍太学,ユニットと施設の耐久力を増やす鉄壁太学,兵器の研究をする兵器太学なども必要に応じて作らねばらならない。
 プレイ序盤は自国が少なく使える土地も狭いので,どの太学から建てるのかは悩むところ。そのため太学を建てる順番にそのプレイヤーの個性が出て,見ているとなかなか面白い。行軍太学や水軍太学を建てて山や川の向こうから急襲したり,鉄壁太学を建てて持久戦を挑んだりとさまざまな戦略を練ることが可能なのだ。なお同盟国とは技術が共有されるため,太学の建設を分担して進めることができる。しかし,同盟国が滅ぼされてしまうとその国が持っていた技術は使えなくなってしまうため,技術を守るという意味でも同盟国を守る必要があるというところに,同盟戦の醍醐味があるだろう。
 RTSのスピード感を維持しつつ,本家三國志シリーズの奥深さを損なわない。これは,これまでのシリーズになかったシステムだ。

紫の勢力が送り込んだ軍師の妖術によって,オレンジ軍団が壊滅の危機に陥っている。画面には3人の軍師が映っているが,このように複数の軍師を出撃させるという戦法もなかなか強力だ ダイナスティーロビーの洛陽の風景。とくに夜が人も多く,対戦が盛ん。そのせいか,かなり重くてコネクションロストも多い。逆に朝や昼間は空いている 建てられる施設は初期状態で11種,兵器が開発できるようになれば工房が加わり,全部で12種になる。何を建てるかで戦局は大きく変わるので超重要だ

軍師の使い方で戦況を変える楽しさ

全体マップを開けば,戦闘がどこで起こっていて,ユニットがどこを移動しているのかを把握できる。非常に見づらいが,色の付いたドットがユニットだ。ゲーム中盤あたりからこまめにチェックしたほうがいい

 軍師という存在は,これまでの三國志でも助言してくれたり,多彩な計略を使えたりとかなり重宝していたはず。もちろんBFでも重要な役割を占めるが,ちょっと使い方が変わってくる。
 BFでの軍師は基本的にユニットの一つであり,任命さえすれば誰でも(例え知力が低くても)軍師になれる。だが,知力は高ければ高いほうがいい。なぜなら軍師は斥候(偵察部隊)も兼ねていて,相手の国の武将達より知力が勝っていれば見つからずに敵国の様子を探って帰ってくることができるのだ
 ちなみに通常のユニットは将軍と兵士がセットになっているが,軍師はたった一人で1ユニット。したがって敵国内で発見されてしまうと袋叩きにあってしまうので注意が必要だ。とはいえ,隣国をちょこっと偵察する程度なら知力が低い武将でもかまわないだろう。

 そして軍師の真骨頂といえるのが,妖術である。これは妖術太学で研究することで開発できるもので,使うと軍師一人で敵軍隊に壊滅的なダメージを与えられる。そのため,妖術はうまく使えば戦局を覆す切り札となるのだが,敵味方に関係なくダメージを与えるため,自国の軍隊の数が多い場所で使うと味方が敗走してしまう危険がある。また,妖術を使うと自動的に敵に発見されるため,使用後のケアも必要だ。軍師をその場に放置しておくと即攻撃されてしまうので気を付けよう。

 使い方さえ間違わなければ,軍師次第で劣勢を優勢に持っていくことが出来るが,さすがに軍師だけで敵国を奪うことはまず不可能だ。軍師は敵ユニットに攻撃されるとあっという間に体力がなくなって戦線離脱するので,単独行動は極力控えて,軍隊との連係プレイさせること。軍師はあくまで補助というわけだ。

 軍師にはそのほかにも仕事がある。その一つが"外交"だ。停戦や同盟などはすべて軍師が使者として対象国に向かわなければいけない。軍師はフィールド上を徒歩で移動するため結構時間がかかるので,外交は早め早めの決断が必要になってくる。
 在野武将の発掘も軍師の重要な仕事だ。斥候や外交などでフィールドを歩いていると,たまに武将の草廬(草庵,つまり小さな家)を発見することがある。この草廬に住んでいるのは能力の高い有名武将ばかりなのだが,待っていても仕官してこないため,彼らを雇うには軍師が直接出向なければいけない。だから,有能な武将が欲しいならば,常に軍師をフィールドで歩かせる必要がある。
 このように軍師はとにかくやるべきことが多いので,頭の中で誰にどんな仕事をやらせているのかを覚えておかないと,いざというときに強力な軍師がいない,なんて事態もあり得る。ここは大きなポイントだ。

 シングルプレイシナリオの序盤ならば軍隊の数だけの力押しでも勝てるが,ネット対戦では軍師を使わなければまず勝てない。ネット対戦する前に,シングルで軍師の使い方をじっくり練習しておくことをオススメする。
 ただし,そのあまりにも強すぎる妖術を嫌って,"妖術なし"で対戦したがる人も多いようなので,マルチプレイ時には気を付けて。

サクっと中国大陸統一! 短時間で遊べるネット対戦

三國志名物の"一騎討ち"も健在。武将が勝手に始めてしまうので,勝てばいいが負けると大変である。この写真では,中央のオレンジ色のゲージ二つが一騎打ちをしている武将だ。なお,設定で一騎打ちを"なし"にもできる

 BFはネット対戦を前提に作られており,このゲームの魅力はネット対戦に詰まっているといっても過言ではない。ここまでに紹介した要素も,対戦時にこそ真の面白さを発揮するのだ。

 三國志で対戦プレイというと,膨大な時間がかかりそうだと敬遠する人もいると思うが,BFに限ってはそんな心配はない。対戦時のルールを細かく指定できるので,プレイする期限を決めたり参加人数を制限することで短時間でも十分楽しむことができる。ちなみにBFのマルチプレイは最高で20人まで参加できるのだが,20人で対戦してもだいたい1時間もあれば決着が付く。あまり時間がないという人でも気軽に遊べるわけだ。
 また,ルール設定で時間の流れを速くすることでもプレイ時間の短縮が可能だ。だが,最初は"普通"のスピードで精一杯だろう。誰からも攻められないうちは普通の速度でもかったるく感じるが,いざ戦闘が始まるとやることがいっぱいになり,「もっと考える時間を!」となってしまうだろう。

 対戦モードは,大きく分けて"同盟戦""乱戦"の二つがある。同盟戦は文字通り同盟国同士に分かれて戦うモード。このモードでは同盟国と太学の技術を共有できるのが特徴であり利点なのだが,先述したように同盟国がやられてしまうとその国が研究していた技術が使えなくなってしまうので,常に同盟国の状況にも目を向けていよう。
 一方乱戦は,基本的に自国以外がすべて敵というモード。とはいっても,外交交渉で同盟や停戦ができるので,こっそり同盟を組んだり,突然裏切って宣戦布告したりという駆け引きが楽しめる。もちろん同盟,停戦共に申し込みを拒否することだってできる。そういう意味では,このモードが一番ネット対戦の醍醐味を味わえるかもしれない。
 チャットには,全員にメッセージが届くオープンなものから,同盟国限定や君主を指定して送るものなどさまざまな種類があるので,ほかのプレイヤーと直接外交ができる。だから,表向きは曹操と仲良くしておいて,実は劉備と反曹操同盟を組む,なんてこともできるわけである。当然,逆にそういったことをやられることもあるわけで,おかげで非常に緊張感のあるプレイが楽しめる。呂布のように裏切り続けてもいいし,劉備のように義理人情に生きるのもいい。RTSながら,三国時代の武将達をロールプレイすることも可能なのだ。

 対戦時に選べるシナリオの中で,個人的に一番面白いと思ったのは"英雄乱舞"だ。中国の歴史に登場する英雄達が三国時代に勢揃いするという仮想シナリオで,劉邦と劉備,チンギスハーンと曹操,秦の始皇帝と董卓など夢の対決が味わえるのだ。もちろん史実に沿ったシナリオもあるので,ほかの時代の武将が登場することに違和感を持つ人はそちらをプレイするといいだろう。
 大勢の人数で対戦する場合は,担当君主をランダムで選ぶこともできる。ゲーム開始までどの君主になるか分からなくなっているため,三国時代の序盤で消えていった君主達の担当になってしまうと,それだけで厳しいハンデを負うことになる。ただ,配下武将も君主と別にランダムにすることができるので,配下次第ではどんな君主でも十分勝算があるはずだ。結局最後に勝敗を決めるのは,プレイヤーの腕なのである。

三國志 Battlefieldの課題点

 BFでは一度に出撃できるユニットの数に制限があり,自国が増えるごとに出撃可能なユニット数も増えていく。そのため,支配国が多ければ多いほど有利になるのだ。はっきりいって,あまりにも勢力差が開きすぎてしまうと,どう頑張っても逆転はできない。同盟を組めば多少はなんとかなるが,大陸の半分近くを支配されればもう絶望的で,一方的な展開になる。このあたりはリアルといえるだろうが,初心者のためにも,もう少し抵抗できる要素を入れてほしいものである。
 また,購入時のままでは極端にシナリオの数が少ないのも気になる。とくにシングルプレイの場合,チュートリアル以外には史実シナリオと仮想シナリオの2本しか収録されていないのだ。その後ある条件を満たせばもう少し増えるが,いくら対戦重視のゲームとはいえ,ちょっと少なすぎる感はある。また,対戦する場合は,一度「ダイナスティーロビー」というサーバーに接続して,そこで対戦相手を募集してプレイという流れなのだが,LAN対戦やIPを指定しての対戦もできるとより面白かったのではないだろうか。
 サービスが始まったばかりというのもあるが,プレイ中は極端にレスポンスが悪い(重い)し,一度ゲームから落ちてしまうと2度と復帰できなくなるのも正直ツライ。RTSでレスポンスが悪くなるのは命取りだ。実際,20人でプレイしているときに半分近い人が落ちてしまったこともあったし,勝利目前で自分が落ちてしまうこともあった。せめて復帰はさせてほしいと切に願う。

 しかし,さすがはコーエーと思う面も多い。ルールはシンプルだが奥深く,ゲームバランスはかなり良い。三国志が題材のRTSは,これまで「フェイト オブ ドラゴン 赤壁の戦い」があったが,ネットワーク対戦をメインに据えた作品は,これが初めてだろう。これまでターン制シミュレーションの三國志しか知らなかった人,ファンタジーやSFばかりのRTSに飽き飽きしていた人,RTSって何? という初心者にも楽しめる,コーエーブランドに恥じないタイトルだと断言させていただこう。

ダイナスティーロビーの洛陽の風景。とくに夜が人も多く,対戦が盛ん。そのせいか,かなり重くてコネクションロストも多い。逆に朝や昼間は空いている 自国の勢力外はすべて霧に包まれていて,状況が把握できない。軍隊を送り込む前に軍師を派遣して偵察させよう まずは募集中のセッションを探して参加することから始めよう。挨拶も忘れずに。慣れてきたら,自分でセッションを作って対戦相手を募集だ

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■メーカー:コーエー
■価格:9800円
■問い合わせ先:コーエー TEL 045-561-6861
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz以上(PentiumIII/700MHz以上推奨),メモリ128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量600MB以上

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