Back

乗馬倶楽部ライディングスター

Text by UHAUHA
3rd Sep.2001

クリックすると拡大します  一風変わったゲームを扱うアクアシステムから,またもや異質なゲームがリリースされた。「馬」がテーマのシミュレーションゲーム「乗馬倶楽部ライディングスター」(以下,ライディングスター)だ。
 馬と聞くと「競馬」を思い浮かべる人が多いだろう。しかしライディングスターは「乗馬(馬術)」がテーマ。愛馬スターを育て,馬術競技大会で総合チャンピオンを目指すという育成&馬術シミュレーションゲームである。
 このライディングスターは,オランダMiDASが発売している「MARY KING'S RIDING STAR」の国内版で,マニュアルを除くローカライズはなされていない。しかしゲーム中は直感的な操作が多く英語の長文を読むことはないので,すぐに慣れるだろう。
 さて,乗馬(馬術)とは何か。我々がよく目にするのは,牧場で体験できる観光乗馬や中世の貴族が身に付けたという古典乗馬(燕尾服を着るのはここが由来か),オリンピックを始めとするさまざまな公式競技のある競技馬術などだ。競馬を含めて,人間と馬が一緒に何かをやることは,すべて乗馬であり馬術である。これは人間と馬という全く違う生き物が一体となり,お互いがコミュニケーションを取りつつさまざまなこと(競技)を行うということ。高貴で地味な印象も受けてしまうが,実は非常に奥が深く難しい「スポーツ」なのである。

馬の世話はタイヘン

クリックすると拡大します  メインのゲームモードの「チャンピオンシップ」では,プレイヤーは"サラ"という女の子になり,愛馬「スター」を駆って競技大会に出場する。サラはスターの体調管理から馬小屋の清掃,グルーミング(スターの身なりを整える)など,大会でより良い成績を出すためにさまざまな仕事をこなさなければならない
 スターの体調管理は,健康状態,お腹の減り具合,喉の渇き,身だしなみなどを画面上にある4本のバーで確認できる。どれもが大会の成績に大きな影響を与える要素となるので,こまめにチェックしなければならない。つまり十分な世話をすることが必要で,ライディングスターではこのひとつ一つ手順を踏んでいく部分が実にリアルに再現されているのだ。
 例えば,馬小屋のドアを開けてから中に入り,タックルーム(用具や馬具が置いてある)に行き,掃除道具を持つ。そして馬小屋まで戻り,シャベルで古い干し草を取り除き,デッキブラシで掃除し,熊手を使って新しい干し草を敷き詰める……という実際と同様の作業が必要になる。もしエサ入れ(飼葉桶)に何も入っていなければ,タックルームから飼葉(馬の餌)を取ってこなければならないし,馬も生き物なのだから,汚い馬小屋ではゆっくり体を休めることができないだろう。このあたりが実にリアルに再現されているのが特徴のひとつといえるだろう。
 スターがベストの状態になったら,いよいよチャンピオンシップの大会に出場だが,その前にやることが一つ。タックルームにある引き出しの中から,ボディブラシなどの身だしなみセット(これもひとつ一つ出し入れする)を持ってきて,スターをキレイに整えてあげよう。ボディブラシで汚れを落とし,たてがみと尻尾をブラッシングする。そして蹄に油(蹄油)を塗り,万全の体制で大会に挑戦したい。地味な作業だが大会では馬の身なりも重要なポイントになり,汚れた体ではマイナス評価となってしまうのだ。

操作は簡単だがコンディションを考えた乗馬が求められる

クリックすると拡大します
クリックすると拡大します
クリックすると拡大します
 大会は,馬術競技の一つでもある「総合馬術競技」で行われる。総合馬術競技とはドレッサージュ (馬場馬術),クロスカントリー (野外騎乗),ショー・ジャンピング (障害飛越競技)の3種目からなっていて,それぞれの成績の合計によって順位が決められる。ライディングスターの最終目標でもある総合チャンピオンになるためには,10回開催される大会で上位に入賞する必要があり,そのためには騎手(プレイヤー)の腕もさることながら,馬の体調管理など,さまざまな要素が絡んでくることになる。
●ドレッサージュ
 ドレッサージュは,20mX60mの長方形の馬場で決められたコースを決められた歩き方で歩き,馬と騎手の技量を競う競技だ。いかに馬を華麗に操れるかを競い合う競技だといえる。ゲーム中でのコースは紫色と青色のドットで表示され,紫色のドットを正確にトレースできたかどうかが採点基準となる。コース上にあるアイコンを通過すると自動的に馬の速度が調整されるので,プレイヤーがやるべきことは馬に左右,停止の指示を出すことと,審判への挨拶をすることになる。
 単純な競技に見えるが,ドレッサージュで重要なのは,決められたコースをきちんとトレースすること,決められたスピードを守ることができるか,そして馬の身だしなみ,健康状態はどうかということだ。
●クロスカントリー
 クロスカントリーは,自然の地形を利用した野外乗馬コースで障害物を飛び越えながら,いかに速く走りきるかを競う競技だ。障害物をジャンプするときに注意することは,左右にある赤旗と白旗の間を飛び越えること。
 ジャンプのタイミングが悪いと拒止(馬が障害物の前で止まってしまう)してしまったり,落馬してしまったりして大きなペナルティになってしまう。コースには狭いところもあり,スピードを出し過ぎてコースを外れてしまうことにも注意が必要だ。競技中は画面左側にある馬の体力ゲージで,馬の体力がどの程度あるのかを常に把握しておく必要がある。ドレッサージュのときとは違い,馬の速度は騎手が全てコントロールすることになるので,ペース配分を考えて馬を走らせないと,ゴール近くになってスタミナ切れになってしまうこともある。
●ショー・ジャンピング
 ショー・ジャンピングは,ドレッサージュ,クロスカントリーをこなした人馬にどの程度の力が残っているかを審査することから「余力審査」とも呼ばれる。馬場の中に設置された障害物を決められたコースで,規定時間内に全て飛び越えるという競技だ。
 コースはドットで表示され,できる限りそのコースから外れないように,かつ速く走りきる必要がある。障害物もジャンプの高さや距離が必要なものなど,クロスカントリーに比べて難易度が上がっている。馬の残体力によっては障害物を飛び越えられず,障害物に足をぶつけたり,最悪は落馬に繋がる場合があるので,体力には常に目を光らせておきたいところだ。
 ひとつ一つの大会でこれらの3種目をおこなうが,1日で終わる大会もあれば3日間続く大会もあり,馬の体調管理が意外と難しい。クロスカントリーやショー・ジャンピングなど障害物にぶつかったりすると,馬の体力にも大きな影響を及ぼすので,体調管理には騎手の腕も必要だといえる。馬術というのは騎手,馬が一心同体となり競技を行っていくスポーツなのである。

優雅なスポーツの裏側に隠された苦労「も」味わえる

 チャンピオンシップのほかにも,4人までのプレイヤーで各競技を競い合うマルチプレイヤーモード馬の操作を覚えるためのトレーニングモードが用意されている。マルチプレイヤーモードは,残念ながらLANやインターネットを介した通信対戦に対応していない(1台のPCで順番に競技をおこなう)。トレーニングモードは基本的操作を覚えるためのようなモードで,どちらのモードもチャンピオンシップへのおまけのような扱いになってしまっているのが残念だ。

 乗馬というテーマを扱ったゲームタイトルはあまりなく,そういう意味では先入観を持たずに純粋にプレイできた。また筆者は乗馬や馬術についてまったくの無知なためプレイする前にいろいろ調べ,乗馬の奥の深さや競技の種類,難しさなどを知り,それをイメージしながらプレイしてみた。馬を育成し,乗馬の競技大会に出場するいう今までにないテーマを持ってきたことは評価できるところだ。
 ゲームとして捉えた場合では,少々残念だと思えてしまう点もいくつかある。確かに実際の行動と同様の要素をシミュレートしているのは,面白い試みだと思うが,同じ作業の繰り返しでは,どうしても飽きがきてしまう。
 各競技も同様で,コースがほぼ同じなので少しアレンジを加えたものがほしかった気がする。しかし逆をいえば,これが乗馬競技そのものなのだ。馬というと颯爽と走るイメージや競馬のイメージが強く,乗馬の優雅なイメージが薄いというのも,物足りなく感じる要因の一つかも知れない。
 しかし実際に乗馬を嗜んでいる人には,また違った印象で受け取られることだろう。各競技で,できる限り高得点を取ろうと何度も真剣に挑戦してしまったのは紛れもない事実。乗馬を知らない人,興味のある人はライディングスターで乗馬の世界を覗いてみて,これを機に本物の乗馬に興味を持ってみるのも悪くないだろう。

クリックすると拡大します クリックすると拡大します クリックすると拡大します クリックすると拡大します

■発売元:アクアシステム
■価格: 5800円(日本語マニュアル付)
■問い合わせ先:アクアシステム TEL 096-379-5418
■動作環境:Windows 9x/Me/2000,Pentium/166MHz以上,メモリ16MB(32MB以上推奨),DirectX 6以上

(C)2001 Midas Interactive Entertainment BV. Unauthorised copying and resale by any means strictly prohibited. All other trademarks acknowledged. All rights reserved.Team sponsors and all other products and brands are trademarks or registered trademarks of their respective owners. Published by Midas Interactive Entertainment BV.
Sub-Licensed by e-script CO.,LTD.

Back