プール オブ レディアンス英語版
完全日本語マニュアル付

Text by 大路政志
21st Nov.2001

全米で大人気! しかし日本での盛り上がりは……?

ゲーム開始時には,4人までのパーティを組むことができる。 頻発するモンスターとの戦闘に生き残るためには,何よりも「考える」ことが大事。

 先日,米国で発売された「Pool of Radiance:Ruins of Myth Drannor」(以下,PoR)」は,多くの玄人ゲーマーに支持され,発売直後に全米ナンバーワンの売り上げを記録した。"全米ナンバーワン"という表現を用いると,B級ハリウッド映画の宣伝文句的な胡散臭さがほのかに漂ってくるが,米国におけるPoRの前評判はかなり高かったし,週間販売本数も,一時的にではあるにせよディアブロ2などを超えたようだ。
 しかし日本におけるPoRの注目度は,いまのところ決して高いとはいえない。日本での発売がもう少し先の話(原稿執筆時点での話。英語版は2001年12月6日発売で,日本語版は来春発売予定)であることや,一般層にはあまり知られていないテーブルトークRPG(TRPG)「Dungeons&Dragons」のシステムが搭載されていることなどが要因なのだろう。
 ここでは日本での発売に先駆け,PoRの概略などを交えつつレビューをお伝えしよう。日本語マニュアル版を即購入しようかと考えている熱心なファンと,本作の重厚な雰囲気にやや物怖じしているライトゲーマー諸君に,ぜひ読んでもらいたい。

意外(?)に取っ付きやすい キャラメイキングシステム

ターン制バトルとはいえ,コマンド決定までの制限時間が存在するので,なかなかにスリリング

 TRPGの王道として今なお多くのユーザーに愛されている「Advanced Dungeons&Dragons」の3rd Editionが,昨年リリースされた。本作は,その3rd Editionのシステムが搭載された初のコンピュータRPGとして,全世界で話題となったわけだ。とはいえ,コアなRPGファンならばそれだけで購入意欲をそそられてしまうものだが,ライトユーザーからはどうしても敬遠されてしまいがち。これは,緻密なシステムと膨大なデータ量を誇るD&DベースRPGの宿命ともいえる現象だが,こと本作に限っては,この問題はないも同然ではないかと筆者は考える。PoRは,比較的取っ付きやすいゲームに仕上がっているからだ。

 異様に難解なイメージを払拭するかのような"お手軽さ"は,ゲーム内の各所に見られる。例えば,キャラクターメイキングでは新規キャラのベース能力が「8」に設定されており,定められたボーナスポイントを割り振ることで能力を決定していく。従来のD&D作品よりもランダム性に欠けるといえばそのとおりだが,キャラを思い通りの方向性に作成できるので,戦略性はなかなか高いといえる。それと同時に,キャラ作成が簡単なので,初心者でも手軽に素早くゲームを始めることができるだろう。
 選択できる種族は,Human,Dwarf,Elf,Half-Elf,Half-Orc,Halflingの計6種。クラス(職業)は,Barbarian,Fighter,Monk,Paladin,Cleric,Ranger,Rogue,Sorcererの計8種。2nd Editionが搭載された"バルダーズゲート2"と比較すると,物足りなさを感じるユーザーもいるかもしれない。しかし本作ではマルチクラス(クラスの兼業)の制限がカットされているので,種族と職業の組み合わせにさほど頭をひねる必要がなく,やはりスピーディにキャラを作成することが可能なのだ(ただし各クラスのレベル差が2以上開いてしまうと,取得経験点に20%のペナルティが課せられてしまう)。確かに,硬派なRPGに付きものの「キャラ作成の魅力」は少々軽減されてしまっているが,キャラ育成の魅力はアップしているので,初心者から上級者まで,じっくりと遊ぶことができるだろう。


硬軟のさじ加減が絶妙。 TRPG感覚でじっくりと遊びたい秀作だ

戦闘中にはモンスターのパラメータを見られるので,初めて出会う敵はチェックしておこう 画面中央に見える馬車はショップ。アイテムの売買もRPGの楽しみの一つだ

 キャラクターメイキング以外にも,ゲームをサクサクと進められる工夫が随所に見受けられる。戦闘システムには日本人にも馴染み深いターン制バトルが採用されており,キャラへの指示も,メニューウィンドウから簡単に選択可能。ただし,ターン性バトルといっても入力に制限時間があるため,緊張感ある戦闘が楽しめるようになっている。パッと見はそれこそディアブロ系のアクションRPGのようだが,実際のプレイ感覚はコンシューマ版の一般的なRPGのそれに近いとさえいえる。また,ゲーム序盤からさまざまなマジックアイテムが入手できたり,通常の弓矢を装備していれば矢数の制限がないなど,ゲーム展開のテンポアップにつながる工夫が凝らされているのだ。
 もちろん,その(比較的)軽快なゲームプレイの裏には,実に複雑なシステムが稼働しており,膨大なデータ量が存在している。そういった"重み"や"厚み"はD&DベースRPG最大の魅力であるが,その重厚さがライトユーザーの新規参入を阻んでいるのも事実。そんな諸刃の剣ともいえる要素が,「遊びやすさ」という要素でうまくコーティングされているのが,このPoRというゲームなのである。"手応えのある硬派なRPGを遊びたいけど,バルダーズゲート2はちょっと……"と,D&DベースのRPGに二の足を踏んでいたユーザーには,ぜひ本作をプレイしてもらい,ハードゲーマーへの第一歩を踏み出してほしい。

D&Dファンにはお馴染みの大魔法使い・エルミンスターが登場 キャラグラフィックスは種族ごとに用意されており,男女それぞれ4パターンの中から選択可能 アイテムの売買画面は分かりやすく,直感的に操作することができる
探索範囲のみが表示されるマップ画面。拡大/縮小が自在 英語に対する特別な苦手意識がないのなら,思い切って遊んでみてほしい 冒険の舞台は,ダンジョンだけではなく屋外も用意されている

 

このページを印刷する

■発売元:メディアクエスト
■価格:7980円 2001年12月6日
■問い合わせ先:メディアクエスト TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 9x/Me,PentiumII/400MHz以上,メモリ64MB,DirectX 8.0a以上,空きHDD容量700MB以上
■ムービー(19.22MB):http://www.4gamer.net/files/movies/pool_e.mpeg
■体験版(88.9MB):http://www.4gamer.net/patch/demo/data/por.html

(C) 2001 Ubi Soft, Inc. All rights reserved. DUNGEONS & DRAGONS, D&D, FORGOTTEN REALMS, and the Wizards of the Coast logo are registered trademarks and POOL OF RADIANCE is a trademark of Wizards of the Coast, Inc. a subsidiary of Hasbro, Inc. Ubi Soft Entertainment, the Ubi Soft logo and the SSI logo are registered trademarks of Ubi Soft, Inc. All other trademarks are the property of their respective owners.