オペレーション フラッシュポイント レジスタンス

Text by 虎武須(Kobs)
19th Aug.2002

※オリジナルの「オペレーション フラッシュポイント コールドウォークライシス」についてのレビューは「こちら」

これがOFPの画面だろうか? と思ってしまうNogovaの街並み

 のどかなNogova島,平凡な毎日の中で人々が慎ましくも楽しげに生活し,愛を語らい,自由を謳歌する。豊かな自然の中では小鳥たちが平和の歌をさえずる。そんな平和で慈愛に満ちたな島の生活を,けたたましい銃声と戦車の轟音が奪い去った。軍を持たず戦いを知らない善良なNogova市民が,無抵抗のままに殺害されてゆく。隣人が,家族が,愛する人たちが……。たとえどんなに立派な大儀があるにせよ,こんな暴挙が許されるのだろうか。圧倒的な武力を持つソ連反乱軍の前には,ただ膝まづき,命乞いをするよりほかないのだろうか……。





■人気FPSの3作めの拡張パック

新しく追加されたハンドガン。トカレフ,CZ75,Sa61 Scorpionが追加された

 そんな前触れで始まる「オペレーション フラッシュポイント レジスタンス」(以下レジスタンス)は,コールドウォークライシスレッドハマーに続く三つめの公式キャンペーンとなる。これまでのキャンペーンでNATO(アメリカ)軍,ソ連反乱軍をそれぞれを主体としたストーリーが語られてきたのだが,本作では戦争によって苦しむ市民側,つまり第3勢力であるレジスタンスが主体となる。自分たちの故郷を守り,自由と平和を取り戻すため,ゲリラとなって奮闘するわけだ。

 昨年夏に発売された「オペレーション フラッシュポイント コールドウォークライシス」(以下OFP)は,それまでにないリアルさと緊迫感を備えた戦場シミュレーション型FPSとして大ヒットを記録した。その後も絶え間なく続くパッチリリース,さらに追加キャンペーンとなるレッドハマーの発売など,常にファンの関心を遠ざけずにいた。
 そして今回,追加パックとなるレジスタンスの発売となったわけだ。レッドハマーがキャンペーン追加のみであったのに対し,レジスタンスは新しいマップ(島)の追加,3Dモデルのブラッシュアップ,高解像度テクスチャへの対応,マルチプレイにおけるネットコードの改善など,さまざまな改良がなされている。


今回も質の高いCGムービー満載だ。従来のOFPとの質感の違いにも注目してほしい

■3作めで大きく変わったOFP

少ない物資を生かしていかに戦い抜くか? それが本作での大きな問題だ

 さて筆者はOFP発売以来,ここforGamerのOFP記事をすべからく担当してきて,本人もかなり遊んでいたので,正直言ってOFPには少しばかり飽きていた。ユーザーとは贅沢なもので,いくら傑作でもいつかは飽きがきてしまうものだ。実はこのレジスタンスが送られてきたときも若干気が重かったのだが,ゲームを始めるやいなや,あっという間にレジスタンスの世界に引きずり込まれ,OFPの面白さを再認識することになった。このOFPが持つ独特の中毒性は一体何なのだろう?

 つらつらと考えてみるに,新しいユニットの追加は,「新鮮さ」をもたらした要素の一つだといえるだろう。ハンドガン,バイク,ビル,橋梁などこれまでOFPになかったものが追加されている。これらは当然ながら今後制作されるユーザー作成ミッションやMODにも反映されることだろう。しかしハンドガンは,発砲の際スライドが動かず反動も小さいため,まるでモデルガンのように感じたのは残念なところだ。
 また,ビルや橋梁などは高解像度テクスチャの採用と相まって,これまでのOFPとは異なった情景を提供してくれている。ただしよほど高性能なゲーム環境を持たない限り,高解像度テクスチャの使用はあまりお勧めできない。不必要に地表面がデコボコになるし,何よりも動作が非常に重くなる。それ以外にも,爆風で人間が吹っ飛んだり,死体に弾痕や血溜りができたりといった描画上の改良点(?)も見受けられる。



さすがに民間人の服装に対戦車砲は似合わない 死体には,これまで描写が見られなかった血溜りが見られる

■その場限りの"使い切り"ではない,
  綿密な作戦を強いられる

軍備に乏しいレジスタンスだが,戦車を奪い取るなどして次第に戦力を増していく

 さて,レジスタンスで何より特徴的なのは,装備や配下の兵士がキャンペーンを通して受け継がれることだ。それらは,これまでのOFPではミッションごとの使い切り−−言い方を変えれば「使い捨て」−−だったわけだが,一つのミッションで弾薬を大量に消費したり,負傷や死亡など大きな損害を出せば,それ以降のミッションが遂行困難になる。結果としてレジスタンスではこれまで以上に慎重な行動,緻密な戦略,細かな指示,弾薬の回収といった作業が必要となり,配下の兵士に対する愛情もわいてくるというわけだ。おのずと,無損害でのミッションクリアを目標とするようになるわけで,ひいては新しい面白さを提供することに成功している。
 また装備を捨てる動作(Drop)が加わったのは大きな改善点だ。例えば対戦車ロケット砲の砲弾を部下に持たせておき,必要なときに(いったん地面に置くのだが)受け取ることもできるし,場面ごとに自分が使いたい銃器を部下と交換することもできる。


 こういったさまざまな新フィーチャーが加わり,ゲリラ戦という特異な状況を表現したシナリオ本来の面白さを引き立て,OFP本作以上の傑作となっているのは間違いない。抵抗を強めればより市民への圧力が高まるというジレンマ,絶対的な装備不足の解消,圧倒的な脅威の前に萎縮して対立する仲間たち……さまざまな問題を抱えながらシナリオは進行していく。OFPリリース当初からレジスタンス勢力を設定に加えていたことからも,開発元ボヘミア・インタラクティブ社の平和への思いがひしひしと伝わってくるかのようだ。
 OFPはいわゆる「戦争ゲーム」ではあるが,1939年のドイツ軍侵攻や1968年のソビエト軍侵攻を経験したチェコ(スロバキア)の会社ならではの,軍拡や戦争に対する警鐘なのだろう。こうして考えると,OFPがヨーロッパで大ヒットした理由が見えてくる。アメリカにとって「戦争は敵地でおこなうもの」であり,日本は庇護の下ですっかり平和ボケ。だがヨーロッパ,とくに火薬庫とも呼ばれるバルカン半島を抱える東ヨーロッパは,対岸の火事では済まされない。つまり異様なまでの現実感が漂っているのだろう。
 単純に"ドンパチできるFPS"ではくくれない,OFPのスタンスの違いが見えてくるではないのだろうか。

 もしOFPを持っていて面白さを感じたのなら,仮に今はOFPに飽きていたとしても,このレジスタンスをプレイすることを強くお勧めする。レジスタンス発売と同時にOFP本体も値下げされるので(しかもシナリオ翻訳ガイド付き),これまでOFPに手を出していなかった人にもこれを機会にぜひ試してほしい。
 OFPは確実に進化しているし,まだまだこれからも熱いのである。


橋梁の追加により,目新しいミッションが実現することになる ただひたすら自由のために……憂国の戦士達に休息はない

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■発売元:イマジニア
■価格:4980円
■問合せ先:イマジニア TEL 03-3343-8900
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz以上(PentiumII/700MHz以上推奨),メモリ128MB(256MB以上推奨),空きHDD容量550MB以上,DirectX 8.1対応のサウンドカード/ビデオカード
■オリジナル作品の英語版デモ:http://www.4gamer.net/patch/demo/data/ofp.html
 (シングルプレイ用:60.3MB,マルチプレイ用:48.5MB)

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