ノーワン リブス フォーエバー (日本語版)

Text by hamaken
18th Jan.2002

ノリのいいFPSがやって来た!

スパイの定番アイテム? サイレンサー付きシェファードアームズP38

 まずは本ゲームの主人公,ケイト・アーチャーをご覧あれ! 彼女を見てなにかビビッと来るものがあった人は,一度本作品を体験してみることをお勧めします(体験版は「こちら」からどうぞ)。それから「007のボンドガール最高!」といってはばらない人たちにも,ぜひともプレイして頂きたい。別に007に限らず,スパイ映画大好きという方たちには,やはり一度遊んでいただきたい一品です。
 ここまで読めばもうお気づきのことと思いますが,「ノーワン リブス フォーエバー」(以下,NOLF)は,"スパイ"を題材にしたFPSです。しかも主人公は,美しく危険な女スパイ。このボンドガールそっくりな風貌のケイトに代表されるように,本作品ではスパイ映画から跳び出してような,味のあるキャラクターやシーンが多数登場します。
 ゲームは,ケイトが所属する国際秘密組織UNITYと,UNITYのスパイの約半分を暗殺した悪名高いドミトリ・ヴォルコフ,そして,そのドミトリと繋がりを持つH.A.R.M.と呼ばれる謎の組織との戦いを中心に展開されていきます。用意された15のミッションは,要人を暗殺者の手から守るといったものから,密林のジャングルでの探検までとバリエーション豊か。そのどれもが,映画顔負けの奇想天外な展開で驚かせてくれます。

パロディとしても超一級

 NOLFはFPSとして一級品ですが,スパイ映画のパロディとしてもかなり完成度が高いといえるでしょう。

 物語は,ソ連がまだ強大な力を誇り,本物のスパイが大活躍していた(らしい)1970年代初頭が舞台になっています。当然,スパイ映画全盛の頃でもありますね。だからゲームに登場する街並み,キャラクターの衣装,そして音楽(なんとオリジナル音楽CD付き)がどれもスパイ映画そっくりなんです! ケイトの師匠であるブルーノ・ラウリーにいたっては,髪の薄くなった頭と白い顎鬚,そしてなによりもその渋すぎる声が,俳優ショーン・コネリーそのものといっていいでしょう。
 でも"似てる"だけじゃ,パロディではなくパクリですよね。しかしNOLFはそれをうまくゲームに昇華させているうえ,ところどころに散りばめられたジョークのセンスも最高です。出てくるセリフはどれもニヤリとさせられるものばかりですし,UNITYの訓練施設やサンタ工房では毎度のように笑わせてくれます。たとえば新しいスパイ道具ができたというのでサンタ工房に行ってみると「一見どこにでもある普通のライターだが……普通のライターだ」。……。
 同じスパイ映画のパロディーに「オースティン・パワーズ」という映画がありましたが,007シリーズよりも,むしろこっちに近いかもしれません(ああいう,ちょっと下品なノリはありませんが)。

スパイ映画の定番! 空中戦もあります 暗殺者を蹴散らせ! ケイトの師,ブルーノ・ラウリー

コソコソ行動してこその,スパイFPS

 さて,このNOLFを銃でバンバン撃ちまくる普通のFPSと捉えるか,スパイ映画のりのアクションで味付けされたアドベンチャーゲームとして捉えるかはプレイヤーの趣味の問題といえますが,そのスキルによっても大きく変わってくると思います。
 もちろん実戦の前に,スパイとしての必要なスキルの訓練やスパイ道具の使い方のレクチャーなどひと通りの操作を勉強できますが,いざ実戦となるとなかなか難しく,つい敵に発見されてしまって銃の乱射戦になってしまうことが多々あります。こうなるとスパイどころではありません。シルベスタ・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーのアクション映画よろしく,肉体派ゲームになってしまうわけです。ゲームスタート時に選べる難度をイージーに設定することで「強引に」ゲームを進めることも可能になりますが,ここは一つスパイ気分を盛り上げるために,ある程度操作に慣れてきたら,思い切って難度を少し上げて挑戦してみましょう。難度が高いと,コソコソ行動しないと,とてもエンディングまで到達できませんよ。

NOLFの魅力は?

居眠りする間抜けな奴も……

 本作の最大の魅力は,やはり主人公ケイト自身の魅力でしょう。見てくれがキュート(好みによりますが……)なだけでなく,その行動や言動が破天荒でプレイを飽きさせません。ゲーム中にときどき選択肢直前でセーブして,彼女のセリフを選べることがあるのですが,どのセリフも"それっぽく"て,イカしてます。きっと選択肢のあとロードして,別のセリフを選んでみるのは筆者だけではないでしょう。
 もちろん,ほかの登場人物たちも負けていません。先ほども書きましたが,ゲームの途中で頻繁に入るデモシーンやセリフがとても楽しいのがNOLFの魅力の一つになっています。それは登場人物たちの性格付けが,魅力的で個性あふれるものになっているからでしょう。スパイ同士がベルリンの街角で合言葉をささやくシーンや,敵の兵士たちの会話などでも映画さながらのセリフ回しやジョークを聞くことができます。たとえば通路の角にさしかかったときに絶妙なタイミングで会話(有力な情報であったり,まったくの雑談だったりします)が聞こえてくることがあるのですが,これがなかなか面白いことを話しているため,ついつい立ち止まって最後まで聞いてしまうくらいです。

 FPSで欠くことのできない"武器"に関してはオーソドックスなものが多く,特に魅力を伝えられるものではありません。ただ,状況次第で使うべき武器が結構変わるのがポイントといえるでしょう。主人公がスパイという設定上,状況によっては射撃音がうるさいAK-47よりも,サイレンサー付きのP38を使うほうが安全だったりするわけです。
また武器ではないものの,倒した敵の死体を警備員や監視カメラから隠すため,体組織をあっという間に蒸発させてしまう「パウダー」など,スパイの雰囲気を感じさせてくれるアイテムもいくつかあります。口紅の形をした小型爆弾やカメラが仕掛けられたサングラス(しかもズーム機能付き!),さらにはロボットプードル(警備犬をおとなしくさせる)なんてものもあって,これぞスパイ道具という感じですね

スパイだらけのマルチプレイ

普通のFPSっぽく,強引に突入してみる

 スパイという"おいしい"設定は,16人まで参加可能なマルチプレイでも活かされています。というのも,マルチプレイには"デスマッチ""H.A.R.M. vs UNITY"2種類があり,前者はFPSではおなじみのものですが,後者がちょっと変わったものになっているのです。
 簡単にいえば"H.A.R.M. vs UNITY"は,チーム戦です。ただ目的がおもしろくて,敵を倒すことはもちろんのこと,敵の基地に潜入して情報アイテムを発見し,先述のサングラスで写真を撮ることでもポイントを稼げるのです。だから,敵をまったく殺すことができなくても,写真を撮りまくることで最終的にチームの総合ポイントが相手チームを上回れば勝ててしまいます。また,サングラスのズーム機能を使えば情報アイテムを遠くから撮影することもできますが,その間は敵の攻撃に対して無防備になるなど,ほかのFPSにはない戦略性が出ているといえるでしょう。
 また,販売元のサイバーフロントが日本語版ユーザー専用のマルチプレイサーバーを用意してあるのも注目です。チーム内でのチャットを使ったやりとりが重要なこの手のゲームの場合,必ず言葉が通じる相手と遊べるというのは,やはりうれしいものですね。

ケイトは第二のララ・クロフトになれるのか?

 もちろん,その可能性は十分あると思います。ただFPSというシステム上ケイトの姿が画面に現れることが少なく,じっくりとその姿をおがめるのは挿入デモのときだけというのは,正直物足りなさを感じます。このデモが最高にデキがいいのでNOFLは十分満足できる作品となっていますが,ぜひNOLFをシリーズ化して,ケイトの魅力やこの独特のノリを発揮させ,末永く続けていってほしいものです。
究極兵器? 死体を消すパウダー ケイト・アーチャーの勇姿をとくとご覧あれ! 吹っ飛ぶ車にご注意!
時にはスピーディに突破しなければいけない 作戦中は市民の命も守らなければいけない スパイ同士の合言葉

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■発売元:サイバーフロント
■価格:8800円
■問い合わせ先:サイバーフロント TEL 052-779-6549
■動作環境:Windows 9x/Me/2000,PentiumII/300MHz以上,メモリ64MB以上,空きHDD容量650MB以上,メモリ8MB以上のビデオカード
■オフィシャルサイト:http://www.cyberfront.co.jp/title/pc/nolf/
■forGamer内の関連記事:http://www.4gamer.net/archive/feature/nolf/nolf_feature.html
■体験版:http://www.4gamer.net/patch/demo/data/nolf_j.html

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