メダル オブ オナー アライド アサルト リロードText by Kawamura ■遊び尽くした「メダル オブ オナー」に追加ミッションをリロード!
「メダル オブ オナー アライド アサルト」(以下,MoHAA)というと,まさしく2002年は(少なくともFPS野郎にとっては)MoHAAの年であった。2002年2月に鳴り物入りで登場し,見事に期待以上の完成度を見せてくれたMoHAA。第二次世界大戦における連合軍兵士の戦闘を取り扱った,一人称視点シューティングの本作品。すさまじい銃撃にさらされるオマハビーチの上陸ステージ(まさにあの映画の再現)などが人々の心をつかみ,コアなファン以外のユーザーにFPSをアピールするうえでも大きな貢献を果たした。
■オーバーロード作戦を戦ったもう一人の兵士が主人公
MoHAAを語る上で欠かせない映画が「プライベート・ライアン」なら,「リロード」を語る上で欠かせないのが「バンド・オブ・ブラザーズ」(以下,BoB)だ。これはスティーブン・スピルバーグとトム・ハンクス共同指揮のもと2001年に作られたTVドラマシリーズで,第101空挺師団の視点からノルマンディ上陸作戦にアプローチした作品である。全10話,総制作費150億円というのは伊達ではなく,いくら有料放送とはいえテレビ番組がこんな第一級映画並みの演出でいいのだろうかと不安になった。
■さらなるアイデアが満載! 高密度の3ミッション
3ミッション9ステージからなる新たなキャンペーンは,短いとはいえ実に濃厚だ。前作では凝りに凝った見せ場といえるようなシーンがここぞというタイミングで待ち構えていたが,今回はそういった見せ場ばかりつなぎ合わせたような内容となっている。おかげで全体を通じてあまり緩急がなく,初心者お断りの息つく暇もない戦いが繰り広げられる。
1944年6月6日,D-DAY。「リロード」の目玉シーンは,ゲーム開始直後からいきなり始まる。第501パラシュート歩兵部隊の役目は,約1万メートルもの上空から敵地に侵入することだ。ゲームはまさしく上空約1万メートルからスタートし,プレイヤー扮するジャック・バーンズ軍曹はただちに空へと放り出されるのである。この時点からすでにマウスによる視点操作が利くのでキョロキョロ見回してみると,足下には大型輸送機がゆったりと進み,周囲には自分と同じ哀れな空挺兵達がなすすべもなく落下に身を任せている。はるか眼下に広がる大地からは激しい対空砲火が幾筋も上がり(もちろん上空の我々に向けて),さっきまで足下にいた輸送機が目の前で炎に包まれていく。わぁきれい。 パラシュート降下は海岸からの上陸よりも容易に奥地へ侵入できる半面,最初から集結も補給もままならないというやっかいな危険性を孕んでいる。BoBでは主人公の一行が集結地点に到達したとき9割が行方不明だと告げられるが,「リロード」のバーンズ軍曹は案の定,行方不明側の9割に入ってしまったようだ。たった一人のバーンズ軍曹が着任する最初の任務は,対空砲を探し出して破壊することである。つい先ほどまで稲妻のごとき砲火を吐き出していた元凶に,さっそく逆襲のチャンスが訪れる。なんというか実に無駄のない脚本である。その後プレイヤーはイギリス軍と合流し,川を越えて奥へ奥へと進んでいく。全体的に,爆薬でいろいろなものを爆破させられるミッションだ。リー・エンティールド銃やステンmkIIといったイギリスの兵器が登場する。 ■ミッション2 バストーニュ いきなり話は飛んで1944年12月24日のクリスマスイブ,いわゆるアルデンヌの森とよばれるベルギーの最激戦区。この壮絶な戦車戦が行なわれた地で,雪の中を駆け回ることになる。バーンズ軍曹は,前作MoHAAで有名になった6連装のロケット砲"ネーベルウェルファー"相手にトンプソンで突撃を強いられたり,トラックの護送と称して装甲車の貧弱な対戦車銃で何輌もの敵戦車を相手させられたりと,相変わらず恵まれない歩兵生活を送ることになる。たび重なる砲撃の豪雨の中,蛸壺(塹壕)から蛸壺へと飛び移りつつ衛生兵を探し回るステージが見どころだ。このあと暗闇の中から大量のドイツ兵が防衛ラインへと押し寄せてくるシーンに移り,対空砲で敵攻撃機を撃墜するラストまで大きなイベントの連続だ(セーブ/ロード機能を考えないなら,どう考えてもこのシーンが最も難しい)。「プライベート・ライアン」でも大活躍した,粘着爆弾で戦車に挑むシーンもある。 ■ミッション3 ベルリン やる気のないソ連兵と,最後のベルリン攻略に挑む。ここでは狙撃兵に脅えながら,たった一人で瓦解したベルリンを徘徊することになる。とにかく最初から最後まで戦車づくめのミッション。中でもステージ丸ごとT-34に乗っての強行脱出というラストステージが圧巻で,行く手を阻む敵戦闘車両の壁を突破していかなければならない。T-34といえば大型ドラムマガジンのDTMマシンガンが有名だが,ここでは戦車砲とDTMマシンガンを上手に切り替えて立ち回る必要がある。というのも,このステージはパンツァーファウストをカマしてくるドイツ兵が戦車と同じくらい強敵だからである。最後は大多数が押し寄せる大戦車戦が待ち受けている。それほど長いミッションではなく,前作の基地脱出より難度的にもはるかにラクだといえる。
■マルチプレイは新旧マップを新鮮な気持ちで
シングルプレイでは"全編新ミッション"という目に見えた新要素があるものの,マルチプレイは一見小さな追加要素に見える。だが実は,全体的なプレイ感覚の変化という形で顕著に現れている。その最たるものはスモーク弾の存在だ。有色の煙をモクモクと吐き出すこの手榴弾は,半径数メートルの視界を遮るだけのものである。にも関わらず,過去のものも含めてあらゆるステージの戦術地図は塗り替えられてしまったようである。
■今後もリロードし続けるのか!? それとも……
突然話は変わるが,これまで戦争映画における恐怖とは,"闇のちょっと向こうに死が待っているかもしれない"類のもので,ホラー映画とさほど違いがなかった。しかし「プライベート・ライアン」の出現で,戦争映画事情は劇的に変化してしまったのだ。弾幕の隙間にかろうじて"生"が残されているという,絶え間ない恐怖こそが新たな戦争映画のスタイルであり,ただちにこれをゲームで追体験したいと思うのはゲーマーの性(さが)なのである。よって赤や緑の光線が飛び交うハイテク戦闘を再現したSF FPSよりも,変わり映えのしないローテクな銃ばかり再現した泥臭い第二次世界大戦FPSのほうが支持されてしまうのは,仕方がないのだ。我々は追体験の手段として,FPSを利用しているのである。
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