メダル・オブ・オナー アライド アサルト

Text by 川村ハルト
25th Feb.2002

今FPSに必要なモノは広大な戦場と仲間達!

 2001年末〜2002年春にかけては「Aliens vs. Predator2」「Return to Castle Wolfenstein」「Tom Clancy's Ghost Recon」「Serious Sam:The Second Encounter」「Operation Flashpoint」「No One Lives Forever(日本語版)」などの秀逸なFPSが数多く登場したせいもあり,FPSブームに火がついたといってもいいいだろう。これまでのFPSは"よりキレイに,より高速に"がキーワードだったが,現状ではそれは当たり前で,これに加えてチーム戦を重視した傾向が見られるようだ。そのためかどうかは不明だが,多数対多数の戦いを再現する格好のテーマとして戦争を扱ったFPSが多数登場している。そう,いまのFPS界では,巨大な軍隊と広大な戦場が求められているのだ。
 そして第二次世界大戦をモチーフにした,2002年最初の大本命FPS「メダル・オブ・オナー アライド アサルト」が登場。本作は2001年春のE3に急遽出展されるやいなや,大賞と話題をかっさらってしまった作品である。

リアルな雰囲気と派手な演出の融合

こ,これだ! このシーンだけのために購入してもいい。初めてたどり着いたときは感動するが,難しくて徐々にイラついてくる。障害物から障害物へと渡り歩き,少しづつ前進するのがコツ

 本作品は「Quake3 Arena」エンジン(Q3Aエンジン)をベースに,第二次世界大戦の雰囲気を非常に良く再現したFPSである。デフォルメや突飛な設定を極力排除しており,真面目なWWIIマニアが見ても興が削がれることはないだろう。町並み,銃火器,軍服,戦闘車両などは見た目も作動音も涙モノのデキ。しかも60年前の兵器ならではの優れた点や弱点さえも見事に伝わってくるのだ。
 こうした雰囲気の良さはゲームにもうまく盛り込まれており,登場する敵を取ってみても,どこまで進んでも普通の銃を持ったドイツ兵しか出てこないし(戦車などは登場するが),ステージの最後にボス戦が待ち受けていることもない。モニターの向こうには現実によく似た戦場が広がっているのだ。さらにこうした雰囲気満点の戦場では,地球が引っ繰り返るかと思うほどの砲弾の雨や,崩壊した街を戦車が踏み荒らすといった演出によって,第二次世界大戦の雰囲気がひしひしと感じられる。本作には,WWII"らしい"チュエーションや雰囲気がすべて詰まっているといっても過言ではないだろう
 ここまで読むとストイックなコンバット系のシミュレーション? と思われてしまいそうだが,戦場の雰囲気を丁寧に作ったうえで,ゲームらしさを盛り込んだ点も注目したい。
 銃撃戦は一,二発の銃弾で敵が死んでしまうようなことはなく,一人の兵士に何発もの弾丸を撃ち込まないと死なない(頭部は別)ようになっていたり,ほかにも体力回復アイテムが登場するなど,ゲーム的な味付けがなされている。そのため,戦場ではリアル系コンバットシムのように簡単に死ぬこともあまりなく,バリバリと撃ちまくる快感に酔いしれることができるというわけだ
 本作は,写実的だがあくまでも過激なアクションゲームとして仕上がっているのである。

 また雰囲気を尊重してか,音声と字幕に関しても気配りが感じられる。英語と日本語の切り替えは,音声・字幕・メッセージに関して,ゲーム中の出力文はもちろん,ブリーフィングやイントロムービーなど全9項目を設定できる。臨場感を保つために,ムービーだけ英語でゲーム中は日本語にすることも,何もかも日本語にしてしまうことも,逆に全部英語のまま楽しむことも自由自在だ。

この狭い海岸で4000人以上が死んだという。こんな地獄でも男たちは意外と冷静だ。ちなみに「プライベート・ライアン」のミラー大尉は第2レンジャー大隊所属。近くにいるかも ゲーム以外の演出的効果も上手に使用されている。ヒギンズ上陸船で海上を進む間も,前後左右を見渡すことはできる。隣を見てみると…… 敵兵が満載のトラックに追われるシーンも。敵兵を一人一人始末して,最後にはトラックも破壊してしまおう

第二次世界大戦の陰陽を網羅した全21ステージ

 主人公はアメリカの第1レンジャー大隊に所属し,戦略情報局(OSS)に目をつけられてしまった男,マイク・パウエル中尉だ。彼(プレイヤー)は,アメリカがヨーロッパに参戦するための橋頭堡を確立するため単身でヨーロッパに乗り込み,各地で極秘任務を遂行していくことになる。
 ゲームには個性豊かな21のステージが用意されており,プレイヤーはときには単身,ときには仲間と共にさまざまな任務に立ち向かい,遂行具合によってメダルが授与される仕組みになっている。このメダル集めもなかなかに楽しく,与えられたメインのミッションを達成する以外にも,キング・タイガーを撃破したり,随行する味方兵(NPC)を戦死させず最後まで同行させるといった特定の条件を満たすことで新たなメダルが授与されるようになっている。タイトルにもなっている「名誉勲章」(Medal of Honor)などは非常に難しいが,すべてのメダルを集めるのも本作の遊び方の一つだろう。
 ゲームは全6ミッション21ステージ。ここで各ミッションを軽く紹介していこう。

●ミッション1
北アフリカ。いきなり戦車やら戦闘機やらの爆破をさせられる,戦闘&破壊ミッション。わりと正統派戦闘ステージといえるので,基礎を学ぼう

●ミッション2
ノルウェー,Uボート港。単身,変装してドイツ軍施設に潜入,敵の機密を奪取する諜報ミッション。Uボートの爆破までさせられたりして,軍にとっては安上がりもいいところだ。さあ,これで上陸作戦のお膳立ては整った

●ミッション3
オマハビーチ,オーバーロード作戦。いわゆるノルマンディー上陸作戦に,一兵士として参加する。頭上に降り注ぐ銃弾と砲弾の雨で,ビーチが阿鼻叫喚の地獄絵図に塗り替えられていく様は圧巻! 映画「プライベート・ライアン」の冒頭シーンに,現在もっとも近いものを体験できるゲームといえるだろう。ビーチでの上陸作戦は前半だけで,後半はガラリと任務が変わる。デモ版での六連砲破壊ミッションもあり

●ミッション4
ノルマンディー。フランスのレジスタンスと合流する。夜間の野外活動がメイン。列車を破壊したり,わりと戦闘的なミッション。ラストは敵戦闘指揮所となっている屋敷内での激しい銃撃戦が面白い

●ミッション5
フランス,ブリタニー。廃墟と化した町でのスナイパー合戦はスリリング。ラストには,奪ったキング・タイガー戦車で大暴れという豪快な展開が待っている

●ミッション6
ドイツ,シュマーツェン要塞。いきなり雪が深々と降り積もる森林に放り出される。極端に視界が悪い条件下での銃撃戦はまさに地獄。後半は民家から民家へ潜り抜けて街中を駆け巡るステージなどを経て,ラストは要塞内部に侵入。なんとしても生きて祖国に帰るのだ!

 ……史上最大の物量作戦も,いかにも"スパイ"といったサスペンスフルな諜報活動も,すべて第二次世界大戦で初めて本格的に行なわれるようになったもの。その両方がこのゲームで楽しめるのだ。

第二次世界大戦は,戦争の主役である突撃銃といえばライフルかサブマシンガンから,新兵器アサルトライフルへの転換期となった戦争でもある。時の移り変わりをStG44で体験しよう たび重なる爆撃で廃墟と化した町。目の前でさらに爆撃が続く。さらに行く手には熟練の狙撃兵が配置されている。こんな中を,味方の戦車兵を引き連れて進まねばならない ついでなので戦車砲の威力をちょこっと公開

マルチプレイでも主流タイトルに新たに名を連ねることは間違いない

敵のキング・タイガーに乗って大暴れするステージもある。逃げまとう敵兵をぷちぷち踏み潰して進むのは爽快だが,行く手には何台も敵戦車が待ち構えているので結構気を使う

 マルチプレイには,自分以外はすべて敵というデスマッチ,連合軍と枢機軍に分かれて戦うチームマッチ,同じくチームに分かれるがRespawn(死後復活)がないラウンドマッチ,チームに分かれてマップごとの破壊目標を目指すオブジェクトマッチの4種類がある。
 やはり花形はオブジェクトマッチ。オマハビーチの砲台破壊や,V2ロケット破壊などシチュエーション的にも燃えるものが多く,かなり楽しませてもらっている。このオブジェクトマッチのマップは絶妙なゲームバランスがなせる業か,マップに建物が多いせいで,連携プレイが非常に生かされる作りになっている
 毎回律儀に数名のグループを組織して,一室ずつクリアしつつ標的に向かう人々を見たことがあるが,彼らの連携は実に見事であった。ただ,収録されているマップが少ないので,今後増えることを期待したいと思う。

 ……とこのようにベタ褒めしているが,不満がないわけではない。例えばマルチプレイでのオマハビーチには少々期待を裏切られた感がある。これは「Return to Castle Wolfenstein」でも同様に抱いた不満だ。防御側の枢機軍が最も頼りにするべき,海岸側に向けられた崖上の要塞のMG42が,ちっとも使えやしないのである! それは,海岸から機銃手がいとも簡単に狙撃できてしまうためだ。そのため枢機軍は誰もMG42を使うこともなく,マルチプレイでは互いの軍が地味な狙撃合戦をペチペチと続けているといった状態である。
 しかし,それでいいのだろうか? 連合国側にしてもあの機銃掃射の雨を潜り抜けないと面白くないではないか? ちなみに対戦サーバーによっては,ロケット砲と狙撃銃の禁止を訴えているところも見かけた。考えることはみな同じである。
 最後になるが,シングルプレイのエンディングロールには,ちょっと驚きの名前がクレジットされている。本作品がオーバーロード作戦をここまであの映画ソックリに再現できたのも,なるほどうなずけるというわけだ。

M1ガーランドの,空マガジンを排出するときに発する独特の「ピキーン!」という音が感動的。撃ち尽くすまでリロードできないので,現実でも無駄弾を撃つ兵士は多かったらしい 敵兵のモーションが実に豊富で,AIもFPSの中では群を抜いて賢い。壁に身を隠したまま,銃だけ出して撃ってくる敵もいる。称賛モノだが,この態勢でも百発百中で狙ってくるのは少々困りモノ 雪山での戦闘は胃が痛くなるほどツライ。トンプソンM1A1は,45口径(11.43cm)の弾薬をフルオートで連射するコンセプトのサブマシンガン。ギャング御用達だったトミーガンは,この前のバージョンだ ミッション5は「スターリングラード」さながらのスナイパー合戦。どこからともなくプチプチ撃たれまくるのは腹が立つが,世の中には狙撃好きが多い。屋根の上にも目を凝らすこと
手榴弾の使い勝手が素晴らしい。シングルでもマルチでも,手榴弾を制する者がゲームを制するだろう。とくにシングルでは,敵兵が戦意喪失して逃げ出すのでガンガン使おう フランスのレジスタンス,マノン。マルチプレイの連合軍にいる女性モデルはこの人。全体的に映画を強く意識して作られた本作品であるからして,マノンとのラブシーンも当然,あるわけない 空港で戦闘機に攻撃される場面もある。機銃で叩き落せ! 設置機関銃のMG42と.30calは,弾数無制限なので出血大解放の軍艦マーチで朝から晩まで撃ちまくろう 主人公のマイク・パウエル中尉は,抜群の射撃テクニックを持ち語学にも堪能。ドイツ兵になりすますこともできる。なんでもできる男だが,走り幅跳びの選手とは同姓同名の別人

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■発売元:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
■価格:7980円
■問い合わせ先:エレクトロニック・アーツ・スクウェア TEL 03-5436-6499
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP PentiumII/450MHz以上(PentiumII/700MHz以上推奨),メモリ128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量1.3GB以上

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