マイト&マジック 9 完全日本語版

Text by 朝倉 哲也
11th Oct. 2002

ゲームの超序盤「灰の島」でのショット。レベル1では絶対に勝てない相手

 自由度の高さとバラエティ豊かなクエストで,第一作発売以来10年以上の長きに渡って世界中のRPGファンを魅了している,マイト&マジックシリーズの最新作,「マイト&マジック 9 完全日本語版」(以下,MM9)がイマジニアより発売された。

 マイト&マジックは,第一作「Might and Magic」が1986年に発売。3D風に表現されたとてつもなく広い世界と,そこにちらばるクエスト形式の膨大な数の謎解き,それに絡みあうストーリー,多様なモンスターと豊富なアイテムなど,コンピュータRPGに求められていたエッセンスをすべてつぎ込んだかのような完成度を誇り,一躍トップRPGの一つに君臨した。日本ではウィザードリィやウルティマと共にRPG御三家と呼ばれ,1988年には日本でも発売され人気を博した。
 とくにここ数年の「6」以降は,イマジニアからほぼ毎年のように日本語化されたシリーズの新作が発売され,海外RPGファンには定番的存在として評判が高い。

新展開を見せるストーリー

 MM9では,三部作となっている,第6作「マイト&マジック 6:ザ マンデート オブ ヘブン」から第8作「マイト&マジック 8:デイ オブ ザ デストロイヤー」までのストーリーから離れた新展開を見せている。
 遥かな昔にヴェルホッフィンという魔導師の放った呪文により惑星規模の大変動が発生し,大陸の形すら変わってしまったチェディアンと呼ばれる大陸が舞台となっている。チェディアンには六つの氏族が,友好あるいは敵対しながら割拠しており,かろうじて勢力のバランスが取れているような状態だ。そんなところへ,ベルドニア帝国と呼ばれる強大な異民族が侵略の手を伸ばしてくるのだが,プレイヤーは強大なベルドニアに立ち向かうべく,六つの氏族をまとめ上げなければならない。というのがMM9のメインストーリーだ。

RPGではお馴染みドラゴン。強さも半端ではなくパーティも全滅間近だ 霜の巨人を倒すクエストを受けた

バラエティ豊かなクエストの数々

 マイト&マジックシリーズの特色の一つに,「豊富なクエスト」が挙げられる。ゲーム中でのクエストとは「頼みごと」とか「お手伝い」,そして時には「命令」を意味する。MM9においてもクエストはたっぷりと用意されている。先に挙げたメインストーリーも当然ながらこのクエスト形式になっており,プレイヤーは各氏族の長の頼みを聞いてあげることで信頼を得て,彼らを一つにまとめ上げていくという形を取っている。クエストを達成することでプレイヤーは経験値とお金を得ることができるようになっているので,クエストの達成はストーリーを進めるだけでなく,キャラクター達の成長にとっても必要不可欠だ。
 とはいえ,ストーリーに直接関係しないクエストも相当数ある。なくした手紙を拾ってくる,職探しの手伝い,スパイを見つける,恋文の配達なんていうのまで用意されており,ただひたすらストーリーを追っていく,一本調子な展開になりがちなRPGを幅の広いものにしているといえるだろう。

 ところでこのクエスト。とくに順番が決まっていないものが多いため,ストーリーを追いかけるのに疲れたり,今のクエストには少しレベルが足りないなどというときは,さっさと別の街に移って違うクエストに取り掛かることができるのも特徴的だ。自分のペースで物語を進めることができるのも,本シリーズの人気の要因だろう

霜の大巨人"ヤンマー"。近寄ると踏みつけられて大ダメージ カマキリとトカゲのあいのこのようなモンスター"マグリーブ"

まるでアクションゲームのような戦闘が楽しい

光っているのは,敵が放った魔法

 さて,MM9ではグラフィックスエンジンを一新することで,完全3D化を果たしている。エンジンにはLithTechが使われており,これは前に発売された,「レジェンド オブ マイト&マジック」で使われたもの同じ種類だ。グラフィックスに関しては,「レジェンド〜」とまったく同じといっていいだろう。正直なところ,"明らかに時代遅れ気味のグラフィックス"であるといわざるを得ない。木の枝など板のようだし,夜空などどう見ても豆電球が瞬く学芸会の星空だ。NPCとして街中を歩いている人の顔は,いくつかのパターンの使い回しばかりという具合に,グラフィックスに関してはかなり低い点数をつけざるを得ない。
 ただし,FPSゲームでよく使用される"LithTechエンジン"を使ったこともあり,リアルタイムでの戦闘はまるでFPSゲームさながらに行えるようになった。敵が放つ魔法や弓矢を右に左にかわしながら接近して剣の一撃を叩き込んだり,通路に仕掛けられた落とし穴をジャンプで飛び越えたりと,アクションゲームのような動きができるようになっている。
 だがリアルタイム戦闘では,魔法があらかじめ登録しておいたもの一つしか使えないという欠点もある(つまり多彩な魔法を使用しての戦闘には,まったく向いていない)。マウス&キーボードさばきに自信があるなら,魔法系キャラを入れない接近戦闘に特化した力によるごり押しパーティでのプレイなどがいいのではないだろうか。RPGと呼べるのかどうかやや疑問ではあるが,なかなか楽しいのでお勧めだ。
 もちろん,いつでもどこでもワンンキーでターン制戦闘に切り替えができるので,アクションが苦手な人や,じっくり考えての戦闘が好みな人,多彩な魔法を使いたい人にも問題はない。

 確かにMM9は,グラフィックス面ではほかのゲームに数段劣るところは否めない。だが,アクションの要素がどれだけ入ろうとも,グラフィックス面で時代遅れになってしまおうとも,クエストを達成して経験値をもらったときの嬉しさや,お金が足りなくてレベルアップできないときの悔しさなど,いざプレイしてみると,やはり昔ながらの名作シングルRPG「マイト&マジック」なのだ
 前作までをプレイしてきたファンなら,ゲームの最初はちょっと戸惑うかもしれない。だが,そこで「こんなのマイトマじゃない」といって投げ出してしまわずに,まず一つ二つクエストをやってみて欲しい。そうすれば分かるはずだ「ああ,やっぱりこれはマイトマだ」と(今作はちょっとアイテム系のラインナップが弱い気もするが……)。
 正直なところ,画面を見てヤル気をそがれる人も多いことだろう。実は筆者もその一人だった。しかし中身は,完全に「シングルRPGの名作,M&M」なのだ。体験版がないのが残念ではあるが,RPGファンならぜひ挑戦してもらいたい。

洞窟でよく出てくる,もうお馴染みトログロダイトの一種 フォーメーションは良く考えて組もう 動きが素早い敵が相手だと,リアルタイム戦闘では苦戦する
ハーフオークの衛兵。一撃が結構イタイ とある修道院でのワンシーン。みんなそろって洗濯 インベントリーは前作から大きく変わって,相当数のアイテムをもてるようになった

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■発売元:イマジニア
■価格: 9800円
■問い合わせ先:イマジニア
  TEL 03-3343-8900
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/400MHz以上,メモリ64MB以上(64MB以上推奨),空きHDD容量1.0GB以上,DirectX8.0及びDirect3D(16MB以上)対応のグラフィックカード
Screenshots集(英語版)
■ムービー:高解像度(32MB)低解像度(17.5MB)

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