Back
Kohan:Immortal Sovereigns
Text by TAITAI
29th May.2001

傑作という修飾詞が似合うゲーム

クリックすると拡大します  近年のリアルタイムストラテジー(以下,RTS)というジャンルでは,いわゆる"Ageシリーズ"(以下,AoE)やスタークラフトに類似したものが一般的だ。類似しているだけに,革新的といえる機能はあまり搭載されていなく,タイトルが異なるだけで同じようなゲームをプレイしているという錯覚に陥りやすい。
 そんなマンネリ化が進んでいたRTSに,独自のシステム設計により新しい形を提示し,なおかつ圧倒的な遊び易さを兼ね備えている「Kohan:Immortal Sovereigns」(以下,Kohan)が登場した。Kohanは"名作となりえる要素"を持ち合わせている,近年稀に見るストラテジーゲームである。
 残念ながら日本語マニュアル付きや完全日本語版などのリリース予定は現在のところ決定しておらず,輸入版が出回るのみである。しかし英語版のデメリットを覆い隠すほど,Kohanの持つ面白さやポテンシャルは大きいのだ。
 Kohanの画面構成を見る限りでは,「AoEっぽいゲームかな?」と想像してしまう。資金を集めて軍隊を編成し,敵対する国家の殲滅を目指すという,基本的なゲーム展開やリアルタイムであるというゲームシステム面では,KohanはAoEシリーズ(というよりもRTSというジャンル)に確かに似ている。しかしながらその流れを生み出す部分は,現在のスタンダードなRTSの概念を根底から覆すものなのである。

資源を"集める"なんてもう古い!?

クリックすると拡大します クリックすると拡大します  Kohanの内政システムは,マップ上にある"都市"をベースとしており,この部分は一般的なRTSのゲームシステムと異なり,かなり簡略化されている。各都市には"内政スロット"が用意されていて,そのスロットの空きの数だけ伐採所や鉄工所といった建物を建設できる。都市に建設したそれらの建物から資源が得られるという仕組みだ。"リアルタイム"という部分に捕われていない独特の内政システムは,生産ユニットごとに逐次命令を与えて,資源を収集するという煩雑さを取り除いている。
 このような簡略化された内政システムによって,プレイヤーは純粋に戦略や戦術に没頭することが可能となっている。戦術センスとその状況での機転が勝負を分ける"戦闘系"のストラテジーだといえよう。これまでのRTSは,そのあまりの操作量の多さと忙しさから「こんなのアクションゲームだよ!」とヤジられたりしたものだが,Kohanはそんな問題を上手く解決しているといえるだろう。

戦術の面白さだけを抽出したゲームシステム

クリックすると拡大します  Kohanのもう一つの特徴は,部隊単位でユニットが生産および管理されること。部隊は隊長ユニット,前衛4ユニット,サポート2ユニットの合計7ユニットで編成され,隊長には個性溢れるヒーローユニットを任命することも可能である。ヒーローやサポートユニットは,部隊全体へ魔法耐性や攻撃力アップなどの特殊効果を及ぼす能力を持っているので,ユニットの組み合わせが戦局の流れを決める重要なポイントになる。
 戦闘ルールもユニークだ。一度戦闘状態になった部隊は,プレイヤーが個々のユニットに対して細かい指示を与えることはできなくなる。退却のタイミングとその場所を指定できるだけなのである。一度戦闘が始まってしまえば命令が自由にできないこのシステムによって,戦術性の深みと面白みが存分に表現されているのだ。
 また部隊を単位としていることで,ユニット単位の勝負がほぼ決まっている戦いとはならない部分も面白い。部隊の向いている方向というものも重要で,戦闘にランダム的な要素を含ませている。たとえば部隊が戦闘状態になると近接戦闘系のユニットは前へ進み,弓兵や魔法使いなどのサポートユニットは後方で待機する。部隊同士が正面で対峙すれば,前衛の近接ユニットは魔法使いなどのサポートを十分に受けながら戦えるが,後方から攻撃を受けてしまうと,先に体力の低いサポートユニットから倒されてしまいかねない。このように部隊の向いている"方向"というものが戦略上重要な要素の一つとして捉えられているのである。
 このシステムをうまく使って,捨て駒となる部隊を敵本隊にぶつけて戦闘状態とし,そのあとに騎兵隊などで側面や後背に回り込んで突撃するなど,実戦さながらの戦法が実用的に機能している数少ないストラテジーゲームなのである。

ポストAoEのダークホースになれるか

クリックすると拡大します  ゲームモードは,キャンペーンとカスタムシナリオ,そしてマルチプレイの三つのモードが用意されている。キャンペーンモードには全部で16種類のミッションがあり,主人公が仲間たちとともに世界を破滅から救う戦いが描かれている。恐ろしいドラゴンや魔物が登場するところなどは,いかにもファンタジーといった風情。シングルモードの完成度は高くなかなかに面白いが,Kohanの真髄はマルチプレイにあるといっても過言ではない。
 マルチプレイでは,部隊の方向をうまく利用して弱点をつくようにしたり,持続力のある部隊で戦線を維持している間にほかのプレイヤーが本拠地を叩いたりと,"連携"がポイントとなる。また戦況把握に時間がかかりがちになるので,簡略化された内政システムによって戦闘に没頭できる。つまりKohanのゲームシステムは,マルチプレイでこそ発揮されるものが多いのである。
 さらに,8人までのマルチプレイが可能だが,"軽く動作する"という点もうれしいポイント。ISDN64Kの回線を使って何回か対戦をしてみたが,通信待機状態でゲームがストップしてしまうこともなく,かなり快適にプレイできた。
 ランダムマップジェネレータやプレイしたゲームを記録できるリプレイ機能を搭載しているところも見逃せない。マップジェネレータによって毎回新鮮な気持ちでゲームに臨む,リプレイで自分の戦いをチェックしてみるなど,ゲームをより深く楽しめるような機能は一通り揃っている。マップジェネレータでは,運が悪いと本拠地がドラゴンに襲われたりするなどのハプニングも起こってしまうが,マルチプレイをプレイするうえでのスパイスと考えれば楽しめるだろう。

 Kohanは,名作ボードゲームが持つシステム的な簡便さと,RTSの持つ高いゲーム性の両方を融合させ,絶妙なバランスで仕上げている。英雄,士気,隊形,部隊の編成,内政など,およそマニアックといえるボードゲームの要素を網羅していながら,遊びやすさを損なっていないのは秀逸の一言に尽きる。国内での知名度こそ高くはないが,間違いなく"名作"に含まれるだろう。RTSファンを自負するならば絶対にプレイすべきタイトルだと,自信を持ってお勧めする。

クリックすると拡大します クリックすると拡大します クリックすると拡大します クリックすると拡大します クリックすると拡大します
SCREENSHOTS:クリックすると拡大します

■発売元:Strategy First
■価格: 実勢価格7000円
■問い合わせ先:Strategy First
■動作環境:Windows 9x/Me/2000,PentiumII/233MHz以上(PentiumII/400MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量392MB以上(600MB以上推奨), DirectX 7.0以上

(c) 2000-2001 TimeGate Studios, Inc.