GORE

Text by デイビー日高
21th Jan.2003

 最近のFPSにはマルチプレイを重視したものが多いが,個人的にはシングルプレイのほうが好きだったりする。もちろんマルチプレイにはまた違う魅力があるし,どちらも楽しめるのがFPSの理想だろう(当り前のことだが)。
 本作「GORE」は,その理想型を目指してデザインされた1作である。シングルプレイ用のステージがしっかりと作り込まれている一方で,能力の異なる多彩なキャラクターが用意されていたり,スタミナなどの(比較的珍しい)要素が盛り込まれていたりと,マルチプレイにも力が入っているのだ。ここでは,そんな本作の魅力を掘り下げてみようと思う。


■舞台は人口が激減した21世紀後半の世界

近距離から遠距離まで使える,ライアットガンをぶっ放しているの図。なお,右に見えるのはUMCの兵士で,時折このように味方の援護を受けられる

 21世紀後半,犯罪組織MOBの活動により世界は壊滅的な打撃を受けていた――というなんとも暗澹たる状況説明から物語は始まる。MOBを叩くため,地球統一政府は警察権限も持つ軍隊UMCを結成するが,戦争ともいうべき両組織間の戦闘で,全人口の70%が死亡してしまうのだった。
 そんな状況を打開するため,UMCは戦局を一変させうる可能性を持った究極の戦闘トレーニングシミュレータ"MEET MACHINE"を開発。このゲームのシングルプレイでは,そのシミュレータに関連するデータベースを盗み出したMOBの"OPTIKNERV"というハッカーを追って,ミッションを進めていくことになる。
 多数のMOBのメンバーと戦いつつ,ほぼ単独行動で(ときおり味方のUMC兵士が援護してくれることがある)OPTIKNERVを追っていくのだ。

 用意されているステージは,全部で20。OPTIKNERVを倒すまでの前半部分はUMC本部から始まり,ブルックリンの薄汚れた裏通り,MOBの本拠地,倉庫,西部の小さな町,スペイン風の町などのステージを次々と移っていく。
 中盤でOPTIKNERVを倒すと,今度は彼が仕掛けたウイルスのためにシミュレータが異常をきたし,その脅威を取り除くため,シミュレータ内部で戦うことになる。後半のステージは,かなり前半とは趣向の異なる雰囲気なのが特徴だ。ホラー要素満載の廃墟や,ゴシックな雰囲気漂う教会SFテイスト溢れる宇宙ステーションなど,まるでつながりのないステージで戦っていくことになる。
 ここらへんの作りは飽きが来ないように考えられており,ある意味好感が持てる。また,ところどころ過去の名作FPSを彷彿とさせるデザインが施されているステージもあり,FPS通なら嬉しくなること請け合いである。

■描画エンジンは新開発のAMPエンジン

ハンドガンをガンガン撃ち込んでいる相手は,MOBのテロリストのひとりであるBRUTUS THE BARTENDER。人間離れした耐久力を持ち,とくに腹部を狙うとかなりの弾数を消費することになる。できるだけ頭部を狙おう

 続いては,描画エンジンについて紹介しよう。
 本作に搭載されているのは新開発の「AMPエンジン」で,30種類におよぶ武器のアニメーションや,敵のそれぞれ特徴ある攻撃アクションおよび撃たれたときのリアクションなどをリアルに描画できる。
 ちなみに動作状況に関してだが,筆者の環境(CPU:PentiumIII/1GHz,グラフィックスチップ:GeForce3 Ti200,HDD:ATA100対応,メモリ:PC133の512MB)で,1024×768ドット表示にし,モデルディテールやダイナミックライティングなどすべて最高にした状態でもスムースだ。
 なお,筆者の家族に使わせている古いマシン(PentiumII/450MHz+GeForce2MX)でも,描画レベルを最低にすればスムースであった(すべてのレベルを試したわけではないが,おそらくは描画レベルをもう少し上げても問題ないのではないかと思う)。最近のFPSはテクスチャデータが大きく,所有するPCの性能が低い人は敬遠しているかもしれないが,本作はそういった部分も考慮されているので,気にせずぜひ手に取っていただきたい。



■撃ちまくって気持ち良くなければFPSじゃない!

本作は,三人称視点でのプレイも可能。俗にいう背後霊視点で,プレイヤーキャラを追っていくことになる。一人称視点が苦手という人でも,楽しめるはずだ

 当たり前の話だが,FPSは撃ちまくったときに気持ち良さを感じてこそ,FPSである。もちろん本作は,その点バッチリである。
 シングルプレイでは,UMCの兵士JACK FIELDING(マルチプレイにおける平均的な能力の"MEDIUM INFANTRY"クラスの能力の兵士)を操る。彼の使用できる武器は10種類。ハンドグレネード(手榴弾),ハンドガン,ショットガン,ライオットガン(マシンガン),ロケットランチャー,四連装ショットガン,ミニガン(ガトリングガン),スナイパーライフル,火焔放射器,チェーンソーとなっている。
 どれも実に気持ちいいのだが,個人的にはハンドガンの連射性と四連装ショットガンの一斉射撃時の破壊力が気に入っている。とくにハンドガンは非常に気持ちいい。慣れると序盤のステージなどはハンドガンだけでも戦えるので,筆者は敢えてハンドガンだけで楽しんでいたりするくらいだ。
 使いやすさでは,中〜長距離戦が多くなる屋外ステージではライオットガン,屋内ステージではショットガンだ。敵が少ないときは四連装ショットガンで接近して一斉射撃で攻撃し,敵が多いときはライオットガンやミニガンで弾をばらまくのがいいだろう。固い敵にはロケットランチャーか火炎放射器で地獄に送ってやろう。

 一方マルチプレイ時に使用できる武器は,30種類。のちほど詳しく紹介するが,マルチプレイでは全10種のキャラクターから選択でき,それぞれ使用できる武器が異なる。ナイフ使いや警棒使い,爆破のプロ(?)などもおり,一風変わった戦い方も可能だ。ナイフ/警棒/チェーンソーのみの白兵戦マッチや,爆弾で相手を吹っ飛ばす爆破マッチなんてのもオツなのではないだろうか。
 また,サブファイアに少々変わったものが用意されている点も要チェック。例えば,ショットガンのサブファイアのプロテクトシールドは,カサを前方にかざすようにしてバリアを展開できる。シールドしながら撃てるので,乱戦時には有効である。
 またライオットガンにはガスグレネードがあり,これは隠れている敵に対して使いやすい。そのほか四連装ショットガンの一斉発射,ロケットランチャーのグレネード弾発射,ミニガンの超高速連射(秒間発射数がメインファイアの倍になる),火炎放射器の火炎爆弾発射などがある。四連装ショットガンの一斉発射のように,その破壊力がクセになるようなやつもあるので,いろいろと試してみてほしい。

 なお,敵が落とした武器を破壊することも可能なので,これを利用しない手はないだろう。その爆風はちょっとした爆弾並みの破壊力があり,敵をまとめて片づけられるのだ。ただ注意したいのが,火炎放射器やロケットランチャーの使用時だ。これら武器で敵を倒すと死体が燃えることがあり,さらにその炎で敵の落とした武器が爆発することがある。うっかり近づくと大ダメージを受けてしまうわけだ。

〜Column〜

 一部の武器をまとめて紹介しよう。左上は,筆者一番のお気に入りの四連装ショットガン。メインファイアは一発ずつだが,サブファイアは全弾発射するので,こちらばかり愛用している。右上はロケットランチャーで,一撃で二人が肉片と化して吹っ飛んでいるところだ。近距離で炸裂させると自分もダメージを受けるのでご注意を。左中は火炎放射器。屋内では自分に燃え移る可能性もあるので,これも注意。右中はショットガン。シールドを展開しつつ攻撃もできるので,敵が多いときは重宝する。左下は手榴弾。これも固い敵にはかなり有効。右下はマルチプレイ時に使用できるC4爆弾。メインファイアでセットして,サブファイアでリモート爆破だ。なかなか使い方が難しい武器だが,うまく使えたときは気持ちいいはず。


■マルチプレイ時のキャラクターはそれぞれ能力が異なる

 先ほど少しだけ触れたように,マルチプレイでは複数用意された中からキャラクターを選べる。UMCの兵士5名,MOBのテロリスト5名の計10名から選択可能だ。
 特徴的なのが,兵士には移動速度や防御力などの能力別に5種類のタイプがあること。タイプによって使用できる武器が異なるし,移動速度,防御力などがそれぞれ異なるので,自分に合ったプレイスタイルを選べるというわけ。火力を重視した重メカ歩兵タイプ,狙撃や爆弾トラップなどを仕掛けられる偵察/狙撃兵(暗殺者)タイプ,機動力の軽歩兵タイプなどなど。機動力と防御力,火力のバランスが自分の好みと一致するタイプを見つけてみよう。
 また,防御用アイテムとしてアーマーが用意されている。アーマーは頭,胴,脚の3か所に分かれているうえ,その部分のグラフィックスも変化するのがポイントだ。装着していない部分はひと目で分かるので,その弱点部分を狙って攻撃しよう。

左ストレートを炸裂させている相手が,UMCの重要データを盗み出したMOBのハッカーOPTIKNERV。彼は反撃してこないので,ハチの巣にしようが,人間バーベキューにしようが,ミンチにしようが自由自在 画面は,2面の中程のところ。屋上に出たあと画面のような綱渡りを二度行い,MOBが関わるビルへと潜入していく


■スタミナの要素を忘れずに

まるで違う内容のように見えるが,もちろん同じシングルプレイのステージ。後半はこのガイコツが敵の主力として出現する 棚にかけられている武器を狙撃して爆破したところ。かなりの威力があるので,うまく活用しよう

 本作には,機動力に大きな影響を及ぼす"スタミナ"という要素がある。連続して走っているとだんだんとその数値が減り,移動速度が落ちていくのだ。スタミナの減り方は,使用中の武器の重量によっても変わってくるので,長距離をできるだけ速く移動したいときは,素手か,軽いハンドガンや手榴弾のみ持つのがいいだろう。
 夢中で走りまくってしまうと,気がついたら動けなくなっていた,なんてことになりかねない。遮蔽物があるときは,そうしたところで足を止めつつ戦うようにしよう。この連続して走り続けられないという仕様は,敵を追うにしろ,ベストポジションを求めて移動するにしろ,また敵から逃れるときにしろ,従来のFPSとは少々感覚的に異なる。戦術的に新鮮なプレイ感を味わえるといっていいだろう。緩急をつけたプレイを求められるのだ。

 本作は,シングルプレイもマルチプレイも楽しめるFPSを渇望している人にとっては,間違いなくお勧めの1本である。とにかく説明不要の血沸き肉踊る熱いバトルを,一人でも多くの人に堪能してもらいたい。

〜Column〜

 こちらは,MOBのメンバー。左上は暗殺担当のBRICK TOP。UMCのPATRICKの能力と同等である。右上は,BROWNと同等のBRUTUS THE BARTENDER。やたらと撃たれ強く,超強力パンチが特徴だ。左中は警棒やイングラムを両手持ちできるのが特徴のCHAN LEE。能力的にはFIELDINGに等しい。右中は,MOB版RAWHEADのKROGEN。とにかくぶっ放しまくって戦うキャラクターだ。左下が紅一点のCRIMSON CHASTITY。WILSONと同じで,防御力が犠牲になってる分,機動力がある。




 マルチプレイ時のUMC側キャラクター。左上が偵察/狙撃兵向きのSHAUN PATRICK。移動速度は5段階で真ん中,防御力は5段階で下から2番めだ。スナイパーライフルや神経ガス爆弾などを使用できるので,敵とは距離を置いた戦法を取ろう。右上が,シングルプレイ時のキャラクターのJACK FIELDING。速度も防御も真ん中のバランス型キャラクターだ。左中は紅一点のJANE DOA WILSON。最速だが防御力は最低なので,とにかく動き回る必要がある。味方の体力を回復できる特殊な手榴弾を使用可能だ。右中は,速度は2番めに遅いが防御力は2番目に高い,攻撃重視のLEE BROWN。装備できる武器は強力で,白兵戦時のパンチも強力というキャラクターだ。そして右下のシュ○ルツェ○ッガー風の顔をしたメカ歩兵は,RAWHEAD。最も遅いが,最も装甲が厚い。ロケットランチャーとミニガンを装備した,まさに移動できるトーチカという感じだ。


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■発売元:カプコン
■価格:5800円
■問合せ先:カプコン TEL052-760-0335
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,CPU:PentiumII/350MHz以上(Pentium III/600MHz以上推奨),メモリ:64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量700MB以上,メモリ16MB以上のビデオカード

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