エターナルオデッセイ

Text by Seal
18th Feb.2002

戦闘シーンは3Dグラフィックスで描かれる。すべてがアニメーションしていて,雰囲気もバッチリだ

 香港"GAMEONE SYSTEMS"が開発し,国内ではサンソフトから発売される「エターナルオデッセイ」は,3Dグラフィックスによる戦闘シーンが魅力のシングル専用RPG。街やフィールドの移動シーン,イベントシーンなどでは2D背景との組み合わせによって効果的な演出をしており,"完全な3D"となっていないのが特徴だ。
 本作では,現在のファンタジーの王道を貫いたような剣と魔法の世界を舞台としている。美しい自然と凶暴なモンスターが同居する世界で,二つの魂を持つという不思議な秘密を抱える主人公が,それを解明していくシリアスなストーリー構成。基本的には一本道でストーリーが進展していき,次になすべきことが分かりやすくなっていることと,イベントがふんだんに盛り込まれていることによって,心持ち映画を観ているような錯覚を覚えるのが魅力的な部分といえる。音声でのセリフは中国語だが,完全日本語の字幕が表示されているので問題なくプレイできる。あまり国内では見られない中国語音声というのも新鮮なイメージを与えてくれる。
 またゲーム全般を通して"分かりやすいシステム"というのを念頭において設計されているようで,ストーリーに詰まりにくく作られているのもうれしい。RPGに慣れ親しんだ人でなくとも,この世界観にすんなりと入り込めるのも評価できるポイントだ。

 ゲームは,主人公カールと幼なじみのネリーがカールの父親の死をきっかけに旅立つところから始まる。最初はこの2人で冒険を進めていくが,ストーリーの進展によって仲間が加わったり離脱したりして,最大5人のパーティが組めるようになっている。
 フィールドでの視点は,クォータービューの見下ろしタイプ。アクション性を低くするために,モンスターはフィールド上には表示されていなく,ランダムでエンカウントする方式を採用している。移動時にはリーダーのキャラクターしか表示されないのでややさびしい感じを受けるが,モンスターと出会って戦闘となると3Dグラフィックスを効果的に利用したアングル変更と魔法のエフェクトによって派手なシーンが展開される。本作の醍醐味は戦闘シーンにあるといわんばかりの対比となっているのが,特徴の一つといえよう。

移動シーンでは,1画面に収まる小さいフィールドを移動していく 体力が激減しているときには,大ダメージを与えるクリティカルヒットが出やすい。アニメーション的にも派手になる 全体マップで,自分のいる位置が分かりやすく表示される

戦闘シーンを盛り上げる数々の要素

魔法も派手なグラフィックスで表示される。あまり種類がないのが残念

 戦闘は,キャラクターの素早さによって行動順が決まり,画面下に表示されているバーが右端までくると魔法や戦闘,アイテム使用などの行動が取れるという仕組みだ。キャラクターの順番が回ってくると,その時点で時間はストップする。回復魔法を唱えようか,直接攻撃をしようかなど,ゆっくりと戦術を練って行動すればいいのだ。
 このバーが上昇するスピードに関係してくる素早さはキャラクター固定で,レベルアップなどによって変化しないのは残念な部分。またステータス全般にわたって簡素化されていて,体力(HP)や魔力(MP)のほかには,攻撃力(AP),防御力(DP),素早さ(TP)の3種類しか用意されていない。つまりキャラクターの成長を楽しむよりも,ストーリーを重視したシステムとして設計されているといえるだろう。
 また,すべてのキャラクターが魔法を扱えるのも"お手軽"な部分の一つといえる。魔法は火や水などの属性に大別されるが,特徴的なのは"罠魔法"というジャンルがあること。これは戦闘エリアに対して唱えると,特定の状況になった場合に発動する魔法だ。例えば,死亡したら体力を全回復して復活するという罠魔法を仕掛けておくと,敵味方関係なく,だれかが死亡した時点で効果が発動するのである。とくに,長期戦となるボスモンスターなどとの戦いでは,この罠魔法の使い方によって簡単に倒せることも強敵となってしまうこともあるのが戦略的で面白い部分といえよう。
 ほかにも,体力が激減しているときには大ダメージを与えるクリティカルヒットの確率が上昇するなど,"戦闘"を盛り上げるような要素がふんだんに盛り込まれているのだ。

幻想的なエリアを踏破していくというのがピッタリの,描き込まれた背景 もちろんボスモンスターも登場する。相手の動作を鈍くする魔法は必須だ まさにファンタジーといった感じの戦闘シーンは,プレイしていて飽きさせない

CD3枚のボリュームを満喫しよう

 魔法やアイテムの種類は少なく,キャラクター別の専用武器がそれぞれ数種類と,魔法が約20種類,それに防具となるアクセサリーが15種類程度しかない。これらのアイテムや魔法は,ストーリーの進展によって購入できるものが決まっており,また街と街を往復するには時間がかかってしまい気軽に行き来することができない。このために,新しい街に到着して装備品のパワーアップをしてから,次のエリアへと進むといったことを繰り返すことが多くなる。アイテム収集といった側面からみた場合では,コアなRPGファンにとって物足りなさを感じてしまうのは否めないだろう。
 しかしストーリーの進展とキャラクターのレベルアップ速度のバランスは秀逸で,ストーリーを進めていると自然にそのエリアに適合するようにレベルアップしていく。次のエリアのモンスターが強いために,経験値稼ぎをしなければならない場面というのはほとんど存在しないのだ

 全体的には,作りこみが甘い部分がいくつか見られたものの,シングルRPGとして合格点を上げられるクォリティに仕上がっている。グラフィックス面に力を入れているのを象徴するかのように,CD3枚というボリュームでゲームのクリアに結構な時間がかかってしまうが,最後までプレイしてしまうストーリーの面白さも持ち合わせている。
 戦闘シーンとストーリー展開が特徴の本作は,ちょっと雰囲気の違うRPGを楽しみたい,長編RPGをプレイしてみたいときにうってつけの1本といえる。わかりやすく親切なシステムとなっているので,RPG初心者にもお勧めだ。

武器やアイテムはあまり用意されていないのが残念な部分 街での聞き込みも重要。一人ひとりに話しかけていこう イベントシーンでは,キャラクターが大きく表示される。メッセージを早送りする機能もある 罠魔法は戦闘エリア全体に効果がある。敵の動きを見こして罠をしかけていこう

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■発売元:サンソフト
■価格:7800円
■問い合わせ先:サンソフト TEL 052-562-2265
■動作環境:Windows 98/Me,PentiumII/233MHz以上(PentiumII/350MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量1.3GB以上,DirectX 7.0以上

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