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エンペラー:バトル・フォー・デューン
Text by TAITAI
22nd Aug.2001

長編SFシリーズ「デューン」の世界をゲームで再現!

クリックすると拡大します  シリーズを通して約5000年もの歳月が流れる壮大なSF小説「デューン」は,重厚な雰囲気を醸し出す独特の世界感と,交錯する複雑な人間関係が醍醐味の傑作長編SFシリーズだ。SF界では最高の栄誉となるネビュラ賞,ヒューゴー賞の両大賞を獲得しており,その緻密な世界設定で多くの熱狂的なファンを生み出していることでも有名。日本では文庫17冊が早川書房から発売されているが,原作者であるフランク・ハーバートの死により,この壮大な大河小説はついに完結を見るには至らなかった。
 これから紹介する「エンペラー:バトル・フォー・デューン」(以下,デューン)は,そんな傑作小説を最新の3Dグラフィックス技術を駆使して再現したリアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)なのだ。

 戦いの舞台となるのは,砂漠の惑星ARRAKISまたの名を「デューン」。宇宙で唯一"メランジ"が採掘可能なこの星を巡り,知力の限りを尽くして戦わなければならない。メランジとは寿命を延ばす霊薬であり,なおかつ星間航行に欠かせない絶対的な物質。この物質を支配したものが,すなわち宇宙の支配者となれるのである。

ちょっと脱線:映画のおはなし

クリックすると拡大します  総製作費が6000万ドルにものぼったといわれている映画版「デューン・砂の惑星」は,奇才ディヴィット・リンチ監督が手掛けた注目のSF大作だった。当初,上映時間が5時間超と威風堂々たるSF大作だったのだが,「それでは映画館で見るには不適切」という製作側の要請により,強引に2時間18分に短縮されてしまった。半分近くも内容を縮められてしまっては,当然ながらストーリーは分かりづらく面白味の欠けるものとなってしまい,多くのファンを失望させる結果となった。
 その後3時間10分に編集しなおされたTV版が放映されるも,あまりにずさんなその内容にリンチ氏は自分の名前がクレジットされるのを拒否。急遽アラン・スミシー監督の名がクレジットされることになった。しかもこのアラン・スミシーなる人物,実はハリウッドでは有名な「架空の存在」。映画の製作中に揉めごとが起きて監督が降板してしまったときなど,クレジットの"空欄"を埋めるためによく使用される名前なのだ。

 そんな問題の多かった映画版だが,この"ゲーム版"デューンのできはかなりのもの。それもそのはず,あの"Command&Conquerシリーズ"で知られるWestwood Studiosが製作を手掛けているのだ。"コマコン"から踏襲したお馴染みのゲームシステムを搭載し,なおかつ映画さながらのムービーシーンも楽しめる良作である。

オーソドックスなシステムで万人が楽しめる内容

クリックすると拡大します クリックすると拡大します  基本的なゲーム内容は,Command&Conquerシリーズのものをそのまま想像してもらってかまわない。つまり,ゲームの展開が,
 資源回収 → ユニット生産 → 戦闘
という王道の流れを持つスタイル。もはや定番ともいうべき形だが,それだけに完成度の高いゲームシステムともいえるし,RTSに慣れ親しんでいるプレイヤーはもちろん,初めてこのジャンルに挑戦する初心者も安心して楽しめるだろう。

 ユニットや建物,マップの構成に至るまですべてのオブジェクトが完全に3Dで表現されている本作品では,ハードウェアT&Lに対応した美しいグラフィックスも大きな特徴だ。爆発や攻撃などのエフェクトもかなり派手に作られており,リアルタイムストラテジーゲーム特有の"ちまちま感"の中にも,アクションゲームのような豪快さを感じることができる。
 また,気象変化の激しい砂漠の惑星ARRAKISを舞台にしているだけあって,ゲーム中で荒れ狂う竜巻が発生したり,原作や映画でもお馴染みの巨大なサンドワームが出現したりするなど,心憎い演出が随所に見て取れるところも嬉しい点だ。

ただ戦うだけではない。趣向を凝らしたキャンペーンモード

クリックすると拡大します  ゲームモードは,大きく分けてシングルプレイとマルチプレイの二つ。シングルでは,基本的な操作方法を学べる「TUTORIAL」に加えて,戦略的な要素もふんだんに取り入れられた「CAMPAIGN」と,ネットワーク対戦の練習にも最適な「SKIRMISH BATTLE」の計三つのモードが用意されている。

 このうちCAMPAIGNモードでは,狂気の支配する惑星GIEDI PRIMEの「HARKONNEN家」,水の惑星CALADANの「ATREIDES家」,氷の惑星DRAKONIS IVの「ORDOS家」の三つの大公家から一つを選択し,デューン制覇のための熾烈な争いを戦い抜く。
 このモード,自軍の大まかな方針を決める戦略パートと,実際に戦場で敵と戦う戦術パートの二つが存在するのだが,この二つのパートを交互に繰り返すことによってストーリーが進行していき,最終的には惑星の完全掌握を目指すことになる。戦略パートでは,地域ごとに区切られた惑星地図を見渡しながら,それらの地域に対して攻撃や防御などの自軍の大局的な行動を決定し,その結果に従って戦術パートの状況が設定されるのだ。
 CAMPAIGNでは,隣接する支配下の地域から増援が送られるというルールがあるので,どこの土地から攻めこむべきかなどの戦略的な思考が非常に大事。リアルタイム制の"忙しい楽しさ"に,"じっくり頭を捻ることの妙味"を付加させているところは面白い点だろう。

 全体的に高い完成度を誇り,流石はWestwood Studios! と随所で思わせるデューン。だが,不満点がまったくないわけではない。  その最大のものがマルチプレイに関して,だ。
 本作ではLAN接続とTCP/IPを使用したインターネット接続の2種類がサポートされている。しかし,Westwood Studiosの悪い癖なのか,8人まで対戦が可能なのはLAN接続のみ。同社がほかにリリースしているタイトルと同様,インターネットを使ったマルチプレイでは4人しか参加できないのである。強豪居並ぶこのRTSジャンルにおいてこの仕様はやはりいただけないと思うし,せっかく高いレベルでまとめあげられたゲームルールがもったいないとも感じてしまう。
 しかし,素晴らしい演出と美しいグラフィックス,そして遊びやすいゲームシステムを兼ね備えているDUNEは,間違いなく良作として数えられるタイトルだろう。原作のファンのみならず,多くのプレイヤーに興味を持ってもらいたい作品だ。

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■発売元:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
■価格: 7980円(英語版日本語マニュアル付き)
■問い合わせ先:エレクトロニック・アーツ・スクウェア TEL 03-5436-6499
■動作環境:Windows 9x/Me,PentiumII/400MHz以上(PentiumIII/600MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量650MB以上
■ムービー:ftp://ftp.westwood.com/pub/emperor/previews/video/EMPPREV1.MPG

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