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| 街の人も軽やかな身のこなしでかわしてくれるので心配ご無用。走れるところはどんどん突進すべし |
オープンなイエローキャブを操り,お客を目的地に届けるドライビングアクションゲーム「クレイジータクシー」(以下,クレタク)。最初アーケード版で登場したクレタクは,今ではさまざまなコンシューママシンに移植され,すでに3作めまでリリースされている人気ゲームだ。
その人気の秘密は何なのか……。実はタイトルが語っているとおり,普通のドライビングゲームではない。ゲーム全体が"クレイジー"の一言で,イカしている(イカれている)という表現がピッタリなのだ。お客を乗せたら目的地まで出来る限り早く到着することだけを考える,交通ルールなんてありゃしない。逆走しようが,ほかの車にぶつけようが,歩道を歩く人を蹴散らそうが,建物の中を走ろうが,どんな走りをしようがまったくおとがめなし。とにかく,街並みをぶっ飛ばして目的地を目指すのみだ。
そんなタクシーに乗りたがる客もまたクレイジー。派手な運転をすればするほど身を乗り出し,大喜びでチップを大放出!! 一歩間違えば"バカゲー"になってしまうが,ただのバカゲーで終わらせない絶妙なゲームバランスで,プレイする者を一気に虜(とりこ)にしてしまう,そんな魅力がクレタクにはあるのだ。
PC版ではBGMがオリジナルに一新されている。しかしゲームにマッチしたパンクロックは健在! そして1280×960ドットまでの高解像度表示が可能(ただし1024×768ドット以上はサポート外),PCの能力に合わせた描写距離の設定など,PCならではの設定が可能となっている。
クレタクの操作はいたってシンプル。使用するのはハンドル,アクセル,ブレーキ,リバースギア(以下,Rギア),ドライブギア(以下,Dギア)のみ。クレタクが面白いのは,これらの操作の組み合わせで"コマンド技"が使えるところ。ハッキリいってコマンド技が使えなければ,クレタクで高額のトータル料金(スコア)を手に入れることは不可能だ。
基本的なコマンド技として,急加速させる"クレイジーダッシュ",ドリフトさせる"クレイジードリフト",急発進でバックする"クレイジーバックダッシュ",ドリフトして180度回転したところからバック走行をする"クレイジーバックドリフト"がある。クレイジーダッシュは,アクセルとブレーキを離した状態でRギアからDギアに入れた直後にアクセルを踏むと発動し,急加速で発進できる。このように,R/Dギアの入れ方によってさまざまなコマンド技が発動するようになっているのだ。とくにクレイジーダッシュ,クレイジードリフトは完璧にマスターしておくべきだろう。
さらに,コマンド技を組み合わせた高等テクニックも存在する。クレイジーダッシュ中に再びクレイジーダッシュを発動すると"連続クレイジーダッシュ"となり,車速がさらにアップする。当然,コントロールは難しくなるし,止まるのも大変。そんなときに使えるのが,走行中にクレイジーバックダッシュを入力してブレーキを踏むと急停車できる"クレイジーストップ"。ほかにもコマンド技を組み合わせてクールな走りを可能にするテクニックが多数用意されているが,基本的な4種類のコマンド技以外がマニュアルに書かれていないのが残念なところか。このあたりのテクニックはクレイジーボックスをやりこんで習得しよう。
ドライバーは,クレイジーな雰囲気プンプンの4人。誰を選んでもオープンのイエローキャブに乗り込むという点は同じだが,特性に違いがある。平均的な走りを望むならばAxel(アクセル),スピードを求めるならB.D.Joe(B.D.ジョー),軽い車体で加速のよいGena(ジーナ),重い車体で当たり負けしないGus(ガス)。自分にあったドライバーを選ぶのは基より,使用するコマンド技なども考慮したうえで,タクシーを走らせるべし。
![]() AXEL |
![]() B.D.Joe |
![]() Gena |
![]() Gus |
アーケードモードやオリジナルモードをプレイする前に,ミニゲーム形式でクレタクに必要なテクニックが覚えられる"クレイジーボックス"をプレイしておくといいだろう。とくに初めてクレタクをプレイする人は,このモードで腕を磨いておけば楽しさは倍増するはずだ。なお,ミニゲームだからといってナメてかかることなかれ。突拍子もないゲームが用意されていて,各ゲームとも特定のテクニックを身に付けなければクリアできない難易度設定となっている。
ミニゲームは最初は9種類から選べ,クリアしていくことで追加されていって最終的には16種類になる。「どうすればクリアできるの?」という人のために,簡単ではあるがヒントも表示されるので,何度かプレイすれば必ずクリアできるだろう。ちょっと遊ぶにもちょうど良く,一度クリアしていてもさらに上を目指して何度も何度もプレイしてしまうという中毒性もある。
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| 制限時間内にボーリングのピンをすべて倒すミニゲーム"クレイジーボーリング"。すべてストライクを取らなければクリアできない | スピーディに目的地に到着することができれば,賃走中料金がトータル料金に加算される。お客さんも喜んでいるみたいだ | 街のいたるところに客が待っている。近くを通ると「タクシ〜」という声が聞こえる。目的地までの距離は色で判断できる |
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| 跳ね橋を使った大ジャンプ。クレイジージャンプでのチップが期待できる。屋根の上に着地して,そのまま走り続けることだって可能だ |
クレタクのメインとなるゲームモードが,アーケードモードとオリジナルモードだ。どちらもコース(街並)が違うだけでルールは一緒で,アーケード版クレタクと同一の"PLAY
BY ARCADE RULES",時間制限内(3分,5分,10分)に料金を稼ぐ"WORK FOR X MINUTES"(Xは3,5,10)の二つだ。
街中に立っている"$"マークのついた人(お客)を見付けたら,停止エリア内にタクシーを止める。お客を乗せたら,あとは目的地を目指してぶっ飛ばすだけ。とにかくゲームの制限時間内で,「お客を乗せる→爆走する→目的地で降ろす」を繰り返してトータル料金を稼ぐのだ。走行中の料金は"賃走中料金"と呼ばれ,目的地に着いた時点でトータル料金に加算される。つまり目的地に着けなければ賃走中料金は全部無駄になるということを頭に入れておくこと。お客を乗せたら何としても目的地に届ける,これが鉄則だ。
賃走中料金には,お客を乗せたときの距離に応じた"初乗り料金",お客を喜ばせてもらえる"チップ",到着時点での残った制限時間に応じて支払われる"到着時間料金"がある。それぞれの詳細は,以下の通り。
| 初乗り料金 | 目的地までの距離が長いほど高額になる。目的地までの距離は停止エリアの色で知ることができ,赤(短い)〜緑(長い)となっている |
| チップ | クレイジージャンプやクレイジードリフト,一般車に接近してすり抜けるクレイジースルーといったテクニックを使うとお客が喜び(ホントに喜んでる)チップを出してくれる。しかも一般車に当たらずに技を繰り返すことができれば"コンボ"となってチップレートがどんどん増えていく |
| 到着時間料金 | 制限時間内に目的地に到着できれば残った時間に対して料金が得られ,さらに+5秒,+2秒がゲームの制限時間に加算される |
トータル料金を稼ぐには,時間をうまく使えるかが勝負の決め手となる。客を乗せるとき,勢いよく客の近くにタクシーを止めると恐怖のあまり逃げてしまい乗り込むまでに時間がかかる。この間もゲームの制限時間は動いているので,乗り込むまでに時間をロスしてしまう。たった数秒だと思うかもしれないが,これを何回か繰り返せば大幅な時間のロスになる。ショートカットして時間短縮する,交通量が多く接触が多くなりそうな道路ではクレイジーダッシュを控えめに,道が空いたところで連続クレイジーダッシュとクレイジースルーで稼ぐというのもありだ。クレイジードリフトでもチップは稼げるが,必要のないところで使うと,ほかの車と接触したりとタイムロスに繋がることも多いので,考えて使うようにしよう。
目的地までの道順を考え,あらゆるテクニックを使いチップを稼ぎつつ,可能な限りスピーディに客を運ぶ。これが単なる"爆走タクシーゲーム"ではないクレタクの面白さだろう。最終的に制限時間内に稼いだトータル料金によって評価され,S/A/B/C/D/Eライセンスを得ることができる。さらにその上に"CRAZY"ライセンスも用意されているので,ぜひ"CRAZY"を目指して頑張ってほしい。
一歩間違えばハチャメチャなだけで終わりそうなゲーム内容ではあるが,ドライブゲームとしての面白さ,シンプルな操作性を確保しつつ数多くのテクニックを使うことができ,クレイジーな部分を絶妙なゲームバランスでまとめている。手軽にプレイでき,独特の面白さ,爽快感を十分に味わえるクレタク。このあたりの完成度は,"さすがアーケードゲーム老舗のセガ"といったところだ。
ちょっと不満を言わせてもらえば,時間制限なしのドライブモードのようなものがあれば良かったと思う。時間を気にせず,お客を乗せてノンビリと広大なマップを走り回る。非常に良く出来たマップが用意されているだけに,そのくらいの付加価値は欲しかった。もし,クレタク2,3のPC版移植の予定があるならば,ぜひお願いしたいところだ。
プレイヤーがうまい/ヘタで面白さが変わってしまうゲームもあるが,クレタクなら腕の問題なんぞまったく関係なし! 誰がプレイしても十分に楽しめるだろう。ちょっと心配なのが,クレタク独特の"ノリ"だ。このノリに付いてこられるか,付いてこられないかで面白さは大きく違ってくると思う。まずはクレイジーボックス中の3種類のゲームが楽しめる「こちら」のデモ版をプレイして,実際にクレタクの雰囲気を味わってみてほしい。少しでも面白いと感じられたら,クレタク乗りの素質十分だ!!。
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■発売元:セガ (C)SEGA CORPORATION, 1999, 2000 |
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