「コサックス 〜戦争の大陸〜」

Text by TAITAI
25th Mar.2003


■MODを公式にサポートした,コサックスシリーズの最新作

 「コサックス 〜戦争の大陸〜」は,多くのルール的な改良が加えられた「コサックス 〜芸術の采配〜」に続く,シリーズ二つめのアドオンソフト。最大8000ユニットが一つの戦場(マップ)で戦うという,ゲーム史上空前のスケールで描かれる戦闘描写が話題を呼んだ,コサックスシリーズの最新作だ。
 新たにスイスとハンガリーの2か国が追加され,八つの新ユニットと40の新しい建物が用意されているほか,全世界のコサックスファンが支持する"MOD(モディフィケーションファイル)"を公式サポート。このMODをゲームに組み込むことによって,ユニットのグラフィックスやパラメータに変更が加わり,コサックスをより楽しめるようになっている。 またアドオンソフトながら,単体(スタンドアローン)で動作する点も本作の大きな特徴だ。本家である「攻城の世紀」や拡張版第一弾の「采配の芸術」を持っていないプレイヤーでも,戦争の大陸さえ買ってしまえば,即座にコサックスという作品を楽しむことができる。

 さて,これから批評(レビュー)を書くわけだが,戦争の大陸の基本的なゲームシステムは,前作にあたる攻城の世紀や采配の芸術となんら変わるところはない。レビューの結論もすで出てしまっていて,その答えは「買い」のひと言である。詳しくは,当サイトの「ここ」「ここ」に掲載されている,過去のレビュー記事を参照してほしい。って,これでもう今回のレビューは終わってしまうじゃないか……。
 いやもちろん,細々とした変更点は数え上げればいくらでも出てくる。しかし,そんな些細な部分は対戦をバリバリ遊ぶような人以外にはそれほど関係ない部分。なので,今回は別の角度から本作の魅力を紹介してみよう。具体的には,古代から近代初期まで行われてきた戦闘様式,つまり数万人が一同に会して戦う「壮大な戦闘」の魅力について論じてみよう。
 というのも,コサックスという作品の魅力は,その「壮大な戦闘」そのものだと言い換えることができるからだ。独自のゲームエンジンによって描き出される圧倒的なスケールの"戦いの表現"こそが,コサックスが世のプレイヤーに"遊ばれるべき"最大の理由なのである。



■人はなぜ"壮大さ"に魅力を感じるのか?

 コサックスの舞台となるのは,国家的,経済的,宗教的,植民意識的な問題から,国際紛争の絶えなかった16〜18世紀のヨーロッパ。組織化され,各国(あるいは連隊)ごとに統一された色鮮やかな制服の歩兵隊や,甲冑を煌めかせながら戦場を駆け回る雄々しい騎兵隊など,当時の戦闘様式は,火器の発達によって兵士を散開させた戦術が一般的となった今日(こんにち)とは違い,数万人の兵士達が整然と隊列を組み激突し合うという,壮大な,絢爛たるものであった。

 想像力を働かせてみてほしい。あなたは広大な戦場を一望できる,小高い丘の上にいる。眼下では,数万の兵力を擁する二つの軍団が対峙し,双方とも数え切れないほどの兵士が何重もの横隊を組み敷き,敵の攻勢に対して万全の構えを整えている。しばらくして,砲兵隊の轟く放火を合図に,陣の中央に位置する歩兵隊が鼓笛隊の太鼓の音と共に前進を開始し,両翼では,縦隊を組んだ騎兵隊が敵の側面に回り込まんと動き始める……。

 はぁはぁ……,なんとも歴史的ロマンをかき立てる構図ではないか!(というか,この文章でムラムラしてしまった人。今すぐにコサックスを買いにいきなさい)

 このような「壮大な戦闘」は,歴史小説や歴史映画などで繰り返し描かれてきたものであるわけだが,その魅力の第一は,大量の人と物(そしてお金)が生み出す圧倒的なスケール感に尽きるだろう。これは,歴史映画を見ると非常に分かりやすい。「制作費××億円!」などという売り文句は,要はシナリオの素晴らしさや歴史的題材とは関係なく,"スケールの大きさ"というものが,あらゆる人を惹き付ける魅力になり得るという,よい証拠といえるのではないだろうか。



■"壮大な戦闘"を描いた歴史スペクタクル映画を振り返る

 さてさて,元々コサックスシリーズのファンである人は,おそらくは"歴史スペクタクル映画"なるもので,若き日に少年心をときめかせたに違いない(乙女心がときめいちゃったという人がいても,もちろんそれはそれでよろしい)。
 制作費ウン億円,という使い古された売り文句を前に「なんだか凄そうだなぁ」と感じ,劇中の戦闘シーンを見ては「人が一杯でなんだか凄いなぁ」と感じる。なんとまぁ,素直で純真な気持ちではないか! 実際,壮麗な戦闘描写というものは,それだけで問答無用の凄さを感じさせてくれるものだ。

 これから,筆者が個人的に好きな映画をいくつか紹介してみよう。これらの映画を見れば,スペクタクル映画の戦闘描写を見事に表現しているコサックスシリーズを遊びたくなること請け合い。コサックスをすでに持っているファンも,まだ見ていないものがあれば,ぜひ一度鑑賞しておくことをお勧めする。
 なお,多少コサックスシリーズとは時代が違うものも含まれるが,その点は注意して頂きたい。ちなみにコサックス度(MAX:10)とは,コサックスの時代/地域とマッチするかどうかを表わしている。

「クロムウェル」(1970)
配給:コロンビア 監督:ケン・ヒューズ
戦闘シーンの迫力:6
コサックス度:10
 イギリス近代史上に残る大事件「市民革命」を,綿密なる時代考証で描いた大作。演劇調のセリフ回しで,信念を貫き通そうとするオリバー・クロムウェルの生き様が描かれる。資金的な問題のためか,戦闘描写が少々物寂しいものの,指揮官の服装や兵装など,見るべき点は多い。

「バリー・リンドン」(1975)
配給:ワーナー  監督:スタンリー・キューブリック
戦闘シーンの迫力:8
コサックス度:10
 今は亡きスタンリー・キューブリック監督が手掛けた作品で,まるで絵画のような映像で繰り広げられる歴史大河ドラマ。オーストリア=フランス=ロシア vs. プロイセン=イングランドという,ヨーロッパの主要国間で勃発した七年戦争(1756〜63年)のあたりを時代背景としている。横隊を組んだ真っ赤なイギリス歩兵隊や,コバルトブルーのプロセイン軍など,画面に映し出される映像はまさしくコサックス。もちろん,コサックスのほうがあとなんだけど。

「戦争と平和」(1956)
販売:アイ・ヴィー・シー 監督:セルゲイ・ボンダルチュク
戦闘シーンの迫力:9
コサックス度:8
 トルストイの同名の小説の映画化で,130億円という巨費を投じて制作された,空前のスケールの超大作。7時間(完全版)という途方もないスケールに加え,圧倒的な物量,動員数によって表現された「ボロディノの戦い」の描写が素晴らしい。時代的にはナポレオン時代の後期にあたり,コサックスとは若干異なる。

「ワーテルロー」(1970)
配給:コロンビア 監督:セルゲイ・ボンダルチュク
戦闘シーンの迫力:10
コサックス度:8
 上記の「戦争と平和」と同じセルゲイ・ボンダルチュク監督の作品。ナポレオンの最後の戦いとなった「ワーテルローの戦い」を完全映像化。エキストラに実際に横隊や方陣を組ませ,その周りを駆け抜ける騎兵隊の様子をヘリで撮影するなど,そのスケールたるや,とにかく凄いのひと言。まるで大波のように押し寄せるフランス騎兵隊の突撃シーンの迫力は,筆舌に尽しがたい。ナポレオニックな作品ではあるが,ぜひ一度見るべし。

「パトリオット」(2000)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント  監督:ローランド・エメリヒ
戦闘シーンの迫力:9
コサックス度:7
 アメリカ独立戦争をテーマにした,メル・ギブソン主演の作品。最近の映画ということもあって,戦闘シーンの表現にCGが多用されている点が大きな特徴だ。ひと昔前では不可能だったアングルでの映像表現は見事。横一列に並んだ歩兵隊が対峙し,一斉射撃によってバタバタと倒れていくシーンなどはなかなか見応えがある。

 どうだろう? 上記の中にまだ見てない作品があるのならば,今からビデオ屋にダッシュだ。で,映画を見たあと,無性に劇中の戦闘を"体験"したくなった人。すぐにコサックスを買いにいきなさい。




■遊んだうえに知識も増える。ここに一石二鳥論を提案する!

 繰り返しになるが,壮大なスケール感というものには,これといった理由なく人を惹き付ける大いなる魅力がある。巨大な建物に対する畏怖感,ライブやスポーツ競技場といった,多くの人間が集まったときに感じる高揚感などは,それに類似するものといえるのではないだろうか。「物的/量的に凄いものは,単純に凄い」と感じる人間の心理が,そこには見え隠れするように思える。

 つまり何が言いたいのかというと,圧倒的なスケール感こそが売りのコサックスシリーズは,別にヨーロッパの歴史的背景を知らないと駄目だとか,そういうものではないんじゃないのか? ということ。 歴史的な知識に乏しくとも,コサックスの大迫力の戦闘シーンを目の当たりにすれば,「とにかく凄い!」と純粋に感じると思うのである。歴史が苦手だからって理由だけで本作を敬遠してしまうのは,どうにもナンセンスな気がしてならない。コサックスシリーズには,歴史的な戦争やそのときの武装,戦術などを解説してある簡易百科事典も付属されており,歴史ゲームに免疫がないユーザーへの配慮も欠かしていない。むしろコサックスを遊びながら,ヨーロッパの歴史を楽しく学んでしまうのも一興なのではないだろうか?(ちなみに筆者は,コーエーの「大航海時代」を遊んで世界の地理を覚えた)

 何事にも興味を持つキッカケというものがあり,最近,人間の趣味なんてものは,そのキッカケに出会うかどうかだけなんじゃないかと考えることがある。そういう意味では,コサックスは,ヨーロッパの歴史に興味を持つよいキッカケになるのではないかと思うのだ。

このページを印刷する

■発売元:ズー
■価格:6800円(2003年3月28日発売)
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumII/233MHz以上(PentiumIII/500MHz以上推奨),メモリ32MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量500MB以上

(c)2003 CDV Software Entertainment AG,and GSC Game World. All Rights Reserved.