Text by 虎武須（Kobs）
6th Sep.2001
例えば，"軍隊に所属し，戦争の最前線に配備された状況"を想像してみてほしい。飛び交う銃弾，炸裂する砲弾，次々に倒れていく戦友たち……。この状況下で，果たして正気でいられるだろうか？ 死の恐怖に戦慄し，手足がすくみ，錯乱し，敵も味方も見分けが付かなくなるかもしれない。あるいは興奮のあまり自分がまるで無敵のヒーローのように錯覚して無謀な行動に出てしまうかもしれない。そんな心理的な要素までもシミュレートしているのが，「クロース コンバット V 〜ノルマンディー上陸作戦〜 完全日本語版」（以下CC5）だ。前作と同じく，国内での発売元はメディアクエストとなっている。なお発売は2001年10月18日の予定だ。
史上最大の作戦を史実どおりに再現！
クロースコンバット（以下，CC）シリーズは，第二次世界大戦を題材とした戦術級ウォーゲームだ。CCの第1作めは1996年にマイクロソフトから発売され，以後ほぼ1年ごとに新作がリリースされている。もともとCCシリーズは，名作ボードゲーム"スコードリーダー"と同等の高品質なウォーゲームを，PC上で展開する目的で開発されたものだ。今年になって本家スコードリーダーもようやくPCソフトとしてリリースされ（国内ではメディアクエストから発売），ゲームファンに両者がどのような評価を受けるのか，筆者としても実に興味深いところだ。
さて今回CCが選んだテーマは，第二次世界大戦における最も有名な激戦の一つ，"ノルマンディー上陸作戦"だ。もはや”ノルマンディーもの”といってもいいほど，ゲームのみならず映画や小説などさまざまなメディアで語られてきたものなので，詳細な説明は割愛させていただきたい。
シングルプレイでは，史実に基づいたマップや戦況などに沿って，ドイツ軍かアメリカ軍かを選択する。両軍の戦力バランスは戦地によってまちまちで，ほとんどの場合均衡ではない。では戦力が小規模なほうが常に負けてしまうかといえば，そう一筋縄でいかないのがウォーゲームの醍醐味だ。ユニットの特性，地形，侵攻ルートなど，さまざまな側面から戦略を立て，相手の戦略の裏をかき，敵部隊の精神に揺さぶりをかけ，各部隊を最大限有効に使えば，ゲーム開始時に圧倒的に戦力が劣っていても勝利を掴むことは不可能ではないのだ。
兵士の士気までもシミュレート
CCシリーズは歩兵と装甲部隊にスポットが当てられているが，「え！？ そんなところまでシミュレートしてるの？」と思わせるほどの凝りかたがウリの一つ。CCシリーズがほかののRTSと明確に異なる特徴が，前述した兵士達の「士気」をシミュレートしている部分だ。戦場にいる兵士達は，尋常ではないストレスにさらされて精神的に不安定なはずだ。実戦では至極当たり前のことが，実はゲームの世界ではゲーム性を高めるために省かれてしまうことが多い。単なる「駒」に過ぎないゲーム内の兵士達は，指揮官であるプレイヤーの命令には絶対服従で背くことがない。つまりユニットには意志がないのだ。その点CCシリーズでは，戦場のリアルさを表現する一つの手段として，兵士達の心理シミュレーションをも要素に加えているというわけだ。
CC5はこれまでのCCシリーズと同様に，上空から垂直に見下ろした視点を採用している。これはCCシリーズのビジュアル的な特徴の一つといえなくもないが，慣れるまでは高低差が分かりづらい。高低差は視界や攻撃の優劣に関わってくる重要な要素なので，これだけはなんとか改善してほしいところ。
一方新たに追加された点としては，予備部隊の配属がある。これまでのCCシリーズではあらかじめ決まった部隊編成で戦闘を行っていたのだが，CC5では出動部隊を自由に編成できるようになった。またノルマンディーならではの支援攻撃として，強力な艦砲射撃もできるようになっている。これまでのCCシリーズとは一味違った戦いが楽しめるのが魅力といえるだろう。
また，待ち伏せや目標を引き付けてからの集中放火など，敵AIもいくぶん改善されて賢くなったように感じた。さらに対戦車障害物や有刺鉄線，トーチカなど，これまで登場しなかった障害物も追加されている。
CC5は見た目の派手さこそ乏しいが，純粋に戦略を練ってじっくりと楽しむというボードゲームならではの醍醐味がある。このゲームではマウスを操る手さばきの早さが勝負ではないのだ。
不利な情勢にありながら策略を練り，逆転勝利を手にしたときには得もいわれぬ喜びがある。またやりこめばやり込むほど新しい発見をしてスルメのように繰り返しプレイしてしまう。決して万人向けとはいえないが，本当のストラテジーシミュレーションとは何か，を考えさせる一本ではある。AoEやStarcraftなどのRTSでならした強者も，CC5をプレイしてみれば，必ずなにか得る物があるはずだ。
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■発売元：メディアクエスト ■価格： 8800円 （2001年10月18日発売予定） ■問い合わせ先：メディアクエスト TEL 03-5805-3629 ■動作環境：Windows 9x/Me/2000，PentiumII/233MHz以上（PentiumII/400MHz以上推奨），メモリ64MB（128MB以上推奨），空きHDD容量150MB以上（350MB以上推奨），DirectX 7以上 (C) Ubi Soft Entertainment. (C) 1993-2000 Atomic Games, Inc. All Rights Reserved. Close Combat, Atomic Games and the Atomic Games logo are trademarks and/or registered trademarks of Atomic Games, Inc. SSI is a registered trademark of Ubi soft Entertainment. Mplayer is a registered trademark and the Mplayer logo is a trademark of Mpath interactive, Inc. The MSN Gaming Zone logo is used under license from Microsoft Corporation. all other trademarks are the property of their reapective owners. Created by Atomic Games, Inc. Photographs Courtesy of the Imperial War Museum and The ranklin D.Roosevclt Library. |
