バトルフィールド1942

Texr by 川村ハルト
9th Sep. 2002

最大最強の第二次世界大戦FPS

戦車の銃座の兵士も撃ち殺すことができる。安全な場所などはない

 大人数のマルチプレイ大好き! というFPSファンにとっては,久々のスーパージャンボタイトルではないだろうか。「バトルフィールド1942」は,第二次世界大戦の主要な戦いをまるごと包括したような,史実をテーマにした大規模コンバットFPSだ。ストーリー仕立ての一本道FPSとはまったく異なり,一つの巨大な戦場内を自由に戦車が走り,戦闘機が宙を舞い,大勢の兵士たちが四方八方で撃ちまくるという何でもアリのFPSなのだ。2002年のE3で,見事Best of Action賞を受賞した作品である

 第二次世界大戦をテーマにしたFPSは少なくないが,この作品の特徴は最大64人同時対戦というダイナミックなマルチプレイに加えて,当時活躍した30種類以上の兵器(航空機,戦車,戦艦,潜水艦など)に誰でも気軽に搭乗して,戦闘に参加できる点だ。この要素を本格的に採り込んだ作品といえば「TRIBES」「オペレーションフラッシュポイント」「コマンド&コンカー レネゲード」など,あるにはあるものの数は少なく,貴重な存在だ。兵器についてはのちほど語ろう。
 ローカライズに関しては,いつも何か気迫すら感じるエレクトロニック・アーツ・スクウェア。今回も主要テキストの全日本語化および英語版は当然ながらサポート。さらにゲーム中で各国の兵士達が口にする,全5か国語の音声についても選択できる。一つは全部日本語音声にしてしまうモード,もう一つは5か国すべての人間が母国語を口にするモードだ。これはアメリカ人はアメリカ英語,イギリス人はイギリス英語を収録している徹底ぶりだ(それはエレクトロニック・アーツ・スクウェアのローカライズの話じゃないだろ,というツッコミもあるだろうが)。

対空砲は意外とよく命中する。爆撃を受ける前に撃ち落とそう 戦車は操縦も砲撃も一人で行なうが,自走砲は操縦と砲手が別々だ 奪取した拠点は復活時の出撃地点にもなる。より前線を確保したい

参戦5か国,16の戦場,35種類の搭乗可能兵器

ロケットランチャー発射の決定的瞬間。実は簡単に右へ左へ回避できる

 広大な戦場で,大勢の兵士が2組に分かれて戦うチームバトルは,マルチプレイでは今やすっかり当たり前のスタイル。このゲームでは,どのステージも必ず"枢軸軍vs.連合軍"のチームバトルとなる。

 登場するのはアメリカ,イギリス,ソ連,ドイツ,日本の5か国。舞台となるのはロンメル将軍が伝説的な采配を振るった北アフリカ,ドイツ敗北の一因となる極寒の東ヨーロッパ,ノルマンディからベルリン陥落を目指す西ヨーロッパ,そして日本とアメリカが死闘を繰り広げた太平洋だ。
 実際に収録されているフィールドは,ミッドウェイ,スターリングラード,ガダルカナル,オマハビーチ,ベルリン,硫黄島など,一つ一つがそれだけで映画化されているような16の激戦区。それも勝利条件や拠点の位置などを慎重に定め,できるだけ大勢のプレイヤーが自然と史実っぽく動けるよう作られている様子である

 車両,航空機,艦船といった兵器はマップ上に無人の状態で配備されている。プレイヤーはこれらのすべてに搭乗可能だ。敵の戦車や航空機も,無人であれば奪って操縦できる(艦船だけは敵から奪えない)。こういった搭乗兵器の威力は絶大なので,兵器の多いフィールドでは兵器同士の戦闘が中心となっていくのは間違いない。
 航空機は,あまりの操縦の難しさに最初は泣きたくなるが,意地でも習得すべき技術の一つだ。攻撃機による爆弾投下は,戦況を一変させる最大の切り札となる。CPUの戦闘機をドッグファイトで撃ち落とせる技術があれば,パイロットとして活躍できるだろう。
 艦船も強力無比かつ面白い要素だ。これはブリッジにて艦を直接操舵できるほか,砲手として敵艦あるいは地上を砲撃できる。艦砲射撃は偵察兵と連携を取れば,より精密に敵の地上部隊を叩けるだろう。
 ほかにも飛来する爆撃機や雷撃機を対空砲で迎撃したり,魚雷で武装した潜水艦に爆雷を投下するなど文字通り水面下の戦いも楽しめる。第二次世界大戦ならではの最大規模の海戦を,とりあえず一通り楽しめてしまうのだ。一兵卒がいきなり空母や潜水艦を直接操舵できるなんて現実的な話ではないが,面白いからいいじゃないか!

シングルプレイはさまざまな設定が可能。余裕あるならCPU兵士数を増やしたい キャンペーンモードにはブリーフィングがある。もちろん日本語 艦砲射撃。直接射撃はなかなか命中しないので,偵察兵と連携を
空母への爆撃。慣れるまで戦闘機の操縦は大変。感度設定を操作しよう 沈みゆく敵空母。別にロケットランチャーで沈めたわけではない 揚陸艇はハッチの開け方を知らないと外に出られなくてバカを見る

シングルにはキャンペーンもインスタントバトルもあるが
すべてはマルチプレイのために開発されたゲームだ

航空機の一人称視点。この邪魔なコックピットは消すことも可能

 ゲーム内容は,シングルプレイもマルチプレイもほぼ同じといっていいだろう。というのも元々マルチに焦点を定めた作品らしく,シングルは"CPUを相手にマルチプレイ感覚で楽しめる"といったタイプのもの。キャンペーンモードもほぼ同様だ。
 そのため「バトルフィールド1942」は,基本的にマルチプレイ用ゲームだと考えたほうがいいだろう。シングルとマルチの,今後どちらがよりオマケ的な存在となっていくかは,FPSファンとしては興味深くもあり不安なところでもある(両者の住み分けが確立されるのが最も望ましいのだが)。

 このゲームの勝敗を決する二大要因は,"チケット"と"拠点"だ。"チケット"とは,両軍の残り戦力を表わす数値。ゲームスタート時に両軍のチケット数が定められており,兵士が死亡したり拠点を相手に奪われたりすることで数値は減少していく。チケット数が残っているうちは死亡した兵士の復活(Respawn)も可能だが,どちらかのチケットが0になった時点でゲームは終了。つまり一人で勝手に突撃して死にまくるようなプレイヤーは,味方にとって実害を与えかねない。前線で孤立した兵士は後続部隊の到着を待つ,などの配慮を行なわなければならないだろう。

 兵士は5種類の中から好きに選べる。機関銃を持つ"突撃兵",狙撃銃を持ち砲撃隊への要請が可能な"偵察兵",サブマシンガンで武装し味方兵の体力を回復できる"衛生兵",ロケットランチャーを携帯して敵車両を攻撃できる"対戦車兵",ライフルで武装し,地雷や爆弾の敷設/撤去や車両の修理が可能な"工兵"がいる。
 機関銃,軽機関銃,小銃をこう大胆に振り分けたというのは思い切っているが,これまでのFPSがマルチプレイで抱えてきた問題のいくつかは,この作品も同様に抱えることになると思われる。どう考えたって,広大な屋外戦においては狙撃が有効極まりないのである。その結果,例えばオマハビーチでは海岸に向けて設置されたMG42に,迎え撃つ側のドイツ兵が(連合軍のスナイプのため)恐くて近づくことすらできないという,「ウルフェンシュタイン」や「メダル・オブ・オナー」などで見たような事態が起こってしまう。
 また前線に飛び出すタイプのプレイヤーは,敵戦車との対決は避けられない。戦車は手榴弾や地雷でも破壊できるが,対人と対車両を同時に対処するつもりならロケットしかない。自然と,一度戦車に殺されたプレイヤーは対戦車兵を選んでしまう。弾薬が少なくても,死体が落とした武器をまた奪えばいいのだから気にならないのである。
 ただしこういった問題は,「バトルフィールド1942」においては些事のような気がするのだ。時代の再現を楽しむリアリズム重視の作品とも,純粋シューティングを楽しむ作品とも異なる,チーム戦術を楽しむスポーツ的な作品のように感じられる。

 とにかく久々に待ち望まれた大型タイトルであり,それに応えるのに十分な実力を見せてくれる。ストーリーモード的なものはないが,そこはマルチプレイ用タイトルと割り切ってしまったほうがいい。戦車や戦闘機が入り乱れる大規模なマルチプレイにこそ,この作品の意義があるのだ。

バトルフィールド 1942 最新スクリーンショット

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■発売元:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
■価格:7980円
■問い合わせ先:エレクトロニック・アーツ・スクウェア TEL 03-5436-6400
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,Pentium III/800MHz以上,メモリ256MB以上,空きHDD容量1.2GB以上

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