Star Trek Armada 2

Text by TAITAI
1st Feb.2002

スタートレックの面白さを知ろう

用意されているキャンペーンモードは最初,惑星連邦のシナリオしか遊ぶことができない。登場する旗艦は,お約束の「エンタープライズ E型」。惑星連邦が誇る最新鋭の宇宙艦だ

 凝りに凝った世界設定や個性豊かなキャラクター達が魅力的な「スタートレック」は,世界中で高い人気を誇るSFシリーズ。特に欧米においては「スターウォーズ」と人気を二分するほどで,ドラマや映画を始めとして,小説,コミック,ゲームなど幅広い分野で広がりを見せている作品だ。残念ながら日本での知名度は今一つといったところだが,国内にも"トレッキー(トレッカー)"と呼ばれる熱狂的なファンが多く存在しており,根強い人気を保ち続けている。

 スタートレックの歴史は古く,1966年から,69年にかけて放送された初代「Star Trek」を皮切りに,「Star Trek:The Next Generation」「Star Trek:Deep Space Nine」「Star Trek:Voyager」など,多くの人気テレビシリーズが放送されてきた。科学に裏打ちされた緻密な世界設定やユニークな宇宙人の数々,ハイレベルな特殊効果で演出されるド迫力の戦闘シーンなど,その魅力を数え上げたらきりがないが,中でも忘れてはいけないのが個性豊かで人間味溢れるキャラクター達の存在だ。彼らが繰り広げる"スタートレック節"のドラマやユーモアは,ファンを掴んで放さない大きな要因の一つといえるだろう。
 とんがり耳が印象的なヴァルカン人「スポック」やアンドロイドの「データ」,そして禿頭が有名(コメディドラマでネタになるほど)な「ピカード艦長」などは,それほどスタートレックに詳しくない人でも知っているのではないだろうか。米国では2001年の秋から新シリーズ「Enterprise」の放送が開始されるなど,その人気は未だ衰えを知らない。

 これから紹介する「スタートレック:アルマダ2」(以下,アルマダ2)は,そんなスタートレックを題材にした3Dリアルタイムストラテジーゲームだ。プレイヤーは地球を中心とした惑星間同盟組織である"惑星連邦"を始め,"クリンゴン" "ロミュラン"などファンにはお馴染みの勢力のいずれかを指揮して,熾烈な戦いを繰り広げていくのである

あらゆる角度から鑑賞できる迫力の戦闘シーンは見物。その雰囲気たるや,まさしく"宇宙戦争"そのものといえる 登場する艦船はさまざま。惑星連邦でいえば,ギャラクシー級,デファイアント級,ソヴェリン級などが登場し,ほかの勢力……例えばクリンゴンでも,小型戦闘船バードオブプレイやケーヴォート級大型艦のような大小入り乱れた宇宙船の数々が勢揃いしている 我らがピカード艦長のCG版。実際のピカード艦長を演じるパトリック・スチュワート氏(ゲーム中では声優として出演)は元々は舞台俳優だったとか。その威厳ある声が格好いいのだ

丁寧な作りで,ファン以外でも楽しめる作品

クリンゴンの艦隊が敵を蹂躙している図。最初は惑星連邦と敵対関係にあったクリンゴン帝国も,シリーズを重ねるにつれて欠かせない盟友の一つとなっていった。クリンゴン人初の宇宙艦隊士官「ウォーフ」などは,人気キャラクターの一人

 アルマダ2は,RTSの遊びやすさと迫力ある3D描写をうまく両立させた秀作「スタートレック:アルマダ」の続編にあたる作品。基本となるゲームシステムはRTSの極めてオーソドックスなスタイルを貫いており,施設を建設したり惑星への移住を行ったりしながら資源を集め,艦隊を編成して敵対する勢力の撃滅を目指していく。王道であるがゆえに,「Age of Empires」や「Starcraft」などほかのRTSを遊んだ人にはお馴染みのシステムだ。この手のジャンルをあまり遊んだことのないプレイヤーにとっては,親しみやすい内容といえるだろう。
 また続編ということで,新しいユニットや施設などさまざまな要素が追加されている。たとえばプレイヤーが使える新たな勢力として,「Star Trek:Deep Space Nine」で惑星連邦と戦争を繰り広げた"カーデシア連合",「Star Trek:Voyager」で登場する"生命体8472"の二つが追加された。ただし,シングルプレイモードではこれらの勢力を選択することはできない。基本的にマルチプレイモード用の勢力という位置付けとなっているようだ。

 シングルプレイモードには,ピカード艦長率いるエンタープライズ号が活躍する惑星連邦のキャンペーンを始め,クリンゴン,ボーグと計3種類のキャンペーンが用意されており,敵の殲滅や拠点の防衛など,歯ごたえのあるミッションの数々を楽しむことができる。シナリオは「Star Trek:The Next Generation」の外伝的な扱いとなっているのか,宇宙歴54522.2前後の時代(ちなみに,映画「ファーストコンタクト」は宇宙歴50893.5の話である)が背景のようだ。惑星連邦,クリンゴン,そしてボーグの"それぞれの立場から見るα宇宙域"をテーマに物語は展開していく(若干例外はあるが)。
 また,マルチプレイモードは最大で8人までサポートしており,特徴ある6種類の勢力の中から一つを選んで対戦を楽しむことができる。拠点であるスターベースに攻撃能力を持たせることで,ちょっとした"Rush"(安価な攻撃ユニットで早期に攻める戦法)への対策にしているなど,細かいルールの数々はことのほかよく錬り込まれており,この手のゲームで対戦することを親しむ筆者としてはなかなか好感が持てる。

他の地点へとワープできる"ワームホール"が存在するマップもある。そういうマップでは,ワームホール付近で起こる戦闘が勝負の分かれめとなるだろう マップとなる宇宙空間には,ダメージを受ける電磁場を出すガス星雲や進入不可能な小惑星帯など,さまざまな地形が存在している

ゲーム的な目新しさは欠けるものの,スタートレックの魅力が詰まった一本

 ただ,客観的な"ゲームの評価"としてアルマダ2のシステム面を見ると,前作と同様に"二番煎じ"である印象は拭いきれない。というよりも,既存のゲームシステムにスタートレックの世界観をマウントさせているといった表現のほうが適切だろう。しかしながら,"スタートレック"であることを意識した素晴らしい演出の数々と,その魅力ある世界観を壊さない丁寧な作りは,ファンを魅了するには十分といえるのではないだろうか。美しい宇宙船のグラフィックスはもちろん,テレビシリーズそのままの音楽や効果音,スタートレックテイスト溢れるセリフ回しなど,徹底的に雰囲気に拘った作りこそが,アルマダ2の最大のウリだと思うからだ。まぁ,一人のファンとして一言いわせてもらえば,ムービー部分やゲーム中に演出として挿入される小ウィンドウの映像は「Wing CommanderやCommand and Conquerのような実写のほうが雰囲気が出ていいのに!」と思ってしまったりもする。しかし有名な俳優を起用するために必要なコストを考えると,ここは仕方のない部分なのかもしれない。

 ツボを押さえた丁寧な作りが印象的な本作は,ファンはもちろんRTS初心者にもお勧めできるタイトルだ。スタートレックを知らない人でも十分に楽しめるだろう。
 願わくば,この作品をキッカケに"スタートレックというエンターテインメント"の面白さもぜひ知ってほしいと思う筆者であった。

新たに追加された勢力である「生命体8472」は,違う次元からの来訪者だ。テレビシリーズでは,キャスリン・ジェインウェイ艦長が指揮する宇宙艦「ヴォイジャー」とボーグを相手に熾烈な戦いを繰り広げた 宇宙艦が搭載している武器は,主にフェイザーと光子魚雷の二つ。最新鋭艦にはさらに威力の高い量子魚雷が装備されている 惑星連邦のギャラクシー級宇宙艦。ピカード艦長が指揮した「エンタープライズD型」と同型だ。前作よりもテクスチャーの描き込みが細かくなって,とても格好よく見える

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■発売元:サイバーフロント
■価格: 8800円
■問い合わせ先:サイバーフロント TEL 052−779−6549
■動作環境:Windows 95/98/Me/2000/XP,PentiumII/300MHz以上,メモリ64MB以上,8MB以上の3Dビデオカード,空きHDD容量1.3GB以上
■英語版デモ(86.9MB):http://www.4gamer.net/patch/demo/data/armada2.html

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