インダストリージャイアントII
  〜未来産業革命〜

Text by 大路政志
8th Dec. 2003

経営SLG「インダストリージャイアントII日本語版」の拡張パックが登場

 2003年11月14日に発売された「インダストリージャイアントII日本語版 〜未来産業革命〜」(以下,「未来産業革命」)は,2002年末にリリースされた「インダストリージャイアントII日本語版」(以下,「IGII日本語版」)の拡張パックに当たる作品。「IGII日本語版」と併せてインストールすることで,キャンペーンシナリオやマップ,新商品とそれに関わる施設,輸送手段及び輸送機体などなど,さまざまな要素がパワーアップするので,すでに「IGII日本語版」を所有している人なら絶対に押さえておきたいところ。
  「IGII日本語版」と「未来産業革命」がセットになった「インダストリージャイアントII限定パック」も発売中なので,この記事を読んで興味が湧いた人は,そちらを探してみるのもいいだろう。

「未来産業革命」を導入すれば,時代設定やデータ面での充実が図れる

海外の港で輸出入される品は定期的に変わるが,うまく利用すれば少ない投資で複雑な商品を生産可能。輸出メインで利益を伸ばしていくプレイも,スリルがあってなかなか楽しい

 「未来産業革命」の魅力を語る前に,まずは「IGII日本語版」について軽く解説しておこう。
  「IGII日本語版」は,そのタイトルが示しているように,産業界での成功を目標とする経営SLG。プレイヤーは弱小企業の主導者となり,原材料の確保/加工,商品の流通/販売,在庫管理といった作業を行いつつ,企業を発展させていく
  ゲームモードとしては,基本操作と運営方法を学ぶ「チュートリアルモード」,さまざまな状況やクリア条件の達成を目指す「キャンペーンモード」,任意の設定でゲームを楽しめる「エンドレスモード」,インターネットやLANを通じて対戦プレイが楽しめる「マルチプレイヤーモード」などが用意されている。

 「未来産業革命」は,「IGII日本語版」にさらなる魅力を付与する拡張パックだ。1900〜1979年のアメリカを舞台としていた「IGII日本語版」だが,「未来産業革命」を導入することで,新たに1980年〜2020年までの年代がサポートされる
  それに伴い,金/銀などの原材料や鉱山,工場,店舗が追加され,貴金属産業への参入が可能になった。各種工場で生産可能な商品も,年代に則したものが多数追加されており,バイオ燃料や未来のゲーム機など,近い将来に商品化されるであろう魅力的なアイテムを取り扱うことができる。輸送手段となる車両や列車,航空機,船舶にも,より高性能な新機種が用意されているので,産業ネットワークの構築もグッと面白くなった。
  そのほかにも,キャンペーンシナリオが3種(約20ミッション),エンドレスマップが約30種,新製品が50種以上追加されており,機動力のある輸送手段であるヘリコプターや,原材料の輸入/商品の輸出が可能な海外の港といった要素も導入され,ゲーム性は大幅に豊かになったといえる。

新たに追加された三つのキャンペーンのうちの一つ「Zファイル」では,ロズウェル(笑)付近に不時着したエイリアンのために,さまざまな商品(とおみやげ)を大量生産することになる

「稼ぐ」よりも「節約する」ことに注力したい,ストイックなプレイスタイルがオススメ!

 「未来産業革命」のゲーム展開は,前述した「IGII日本語版」とほぼ同様。原材料を確保/加工して商品を作り,それを街に建てた店舗で販売することで利益を上げていくことになる。
  利益を上げるまでの手順としては,「原材料の確保」→「加工」→「輸送」→「販売」という流れが基本パターンとなり,この流れの中でいかに無駄のないパターンを構築していけるかが,より多くの利益を出すためのポイントとなるのだ

 「原材料の確保」には,原材料の種類に応じた採集施設の建設が必要となる。例えば街に家具店を設置したいなら,

  1. 樹木を得るための伐採場を建設
  2. 樹木を一時保管するための倉庫を建設
  3. 樹木を木材に加工するための製材所を建設
  4. 木材を家具に加工するための家具工場を建設
  5. 必要ならば,家具を家具店の倉庫に輸送するための輸送ルートを構築
  6. 家具店で家具を販売

と,これだけの手間が必要となる。かかる費用も莫大で,元を取るにはゲーム時間で数年はかかってしまうはずだ。

その商品を販売させるまでの手間や経費,立地条件や利益の期待値を考慮しつつ,状況に適した産業を発展させていく

  だが,海外の港を利用して原材料を輸入したり,逆に商品を輸出するなどすれば,(1)に必要な採集施設の建設費用を節約でき,さらに店舗販売以外の手段で利益を得ることができる。また,店舗の倉庫の近くに加工工場や商品工場を建設すれば,倉庫/輸送システムの設置と維持に必要な経費を節約することも可能だ。
  卵を生産する養鶏場,肉/牛乳を生産する牛牧場,魚を収穫する漁港など,稼働させるだけで商品を生む施設を建て,手間と経費を大きく抑えることも,利益を出すためには非常に有効である。

経営データをこまめにチェックすれば,自分の経営スタイルの傾向と対策が確認できる。各種運営コストをいかに削減していけるかが,利益を伸ばす最大のポイントだ

 これまでの同タイプゲームのように「単価の高い商品を作って儲ける」「安く仕入れて高く売る」といった,単純な考えでプレイしていては,本作でいうところの「産業王」になることはまずできない。地形や海外の港の有無,人口の多い街の周囲に存在する資源などを見極め,いかに無駄のない(金のかからない)産業網を構築し,安定した利益を生み出せるかが,本作最大の難所であり,また醍醐味でもある
  そういってしまうとなんだかセコいゲームのように思われるかもしれないが,実際に本作のキャンペーンモードをいくつか遊んでみると,経費削減の重要性がいやというほど実感できる。輸送ルート一本,輸送トラック数台分の経費でクリア条件を逃してしまったときには,経営SLG好きな筆者も思わず呻いたくらいだ(経営自体はえらく調子が良かったのだが……)。

 従来の経営SLGに比べて明らかにシビアだが,その分,経営が軌道に乗ってからも気持ちがダレることがないので,常に適度な緊張感をもってゲームをプレイできる。その点は大いに評価できるだろう
  ただし,「ゲームの中でくらいは楽してお金を稼ぎたい」というプレイヤーにとっては,ストレスの種になりうるゲームかもしれない(笑)。

エンドレスモードでは,プレイする年代や対戦相手,マップなどを任意に選択できる。それぞれ思考パターンの異なる対戦相手との経営バトルは,プレイヤーの腕の見せどころだ

経営SLGとしては◎。今後の課題は娯楽としての純粋な「楽しさ」の追求だろう

本社ビルや自宅を建てられるのは面白いが,さほど重要な要素ではなく,ゲームとの関わりも薄いので,やや愛着が湧きにくい

 「ズータイクーン」や「シムシティ」シリーズ,「エンペラー」など,ミニスケープ/経営要素の強いゲームが好きな筆者としては,「未来産業革命」は十二分に楽しめる作品であった。ただ,ゲームをプレイしていて,演出面の弱さや操作性の悪さが多少気になったことを最後に記しておきたい。キャンペーンモードのシビアさは,確かに安定した緊張感をプレイヤーに与え,展開の中だるみを防いではくれる。しかしイベント類の少なさやグラフィックス面での演出力の低さから,本作のゲームとしての「楽しさ」は,今一つのように感じられた
  もちろん「つまらない」ゲームだといっているのではないが,サクッと娯楽目的でプレイしたい人にとっては,かなりハードルの高いゲームだと感じられるのだ(友人をLAN対戦に誘ったのだが,「面倒臭そう」と断られてしまったのが,「未来産業革命」ファンとしてちょっとショックだった)。
  ゲーム中,「本社ビル」や「自宅」を建てることができ,それらを業績次第でアップグレードできるというアイデアは,個人的にはとても興味深かった。公共施設の類を建てることで街の生活環境を改善し,町の発展効率を上昇させることができるのも,ゲームの魅力を向上させている。
  だが,それらのアイデアが,単なるオマケ的な要素に止まっているのが,どうも残念に思えた。先ほどもチラッと述べたが,一般的な経営ゲームでは,経営が安定する中盤以降は黙っていてもお金が貯まっていく。そのお金の使い道としてさまざまな二次要素を追加することで,ゲームはいくらでも面白くなっていくと思うのだが。本社ビルや自宅に自分がシェアを握っている産業の主力商品を展示できたり,資金を投入して新製品を研究/開発できるなどすれば,「未来産業革命」のハードルはもう少し下がったのではないだろうかと,老婆心ながら考えてしまった。

 ともあれ,とくにPCゲーム市場においては,万人に受け入れられるゲームというのは生まれにくい。「未来産業革命」は,手応えのある経営SLGが好きな人にとっては,非常にチャレンジしがいのあるゲームに仕上がっているといえる。そういう意味においては優れた作品だ。
  今後の課題としては,経営SLGとしての質を損なうことなく,より娯楽性のある商品に仕上げること。この課題が次回作でクリアされれば,「IG」シリーズはゲーム産業界でそれなりのポジションを築くことができるに違いない。

時代設定が2020年まで可能になったので,携帯ゲーム機やPCの製造/販売も可能になった。商品を製造するまでの過程が複雑でコストもそれなりにかかってしまうが,単価が高いので元は十分取れるはず
輸送車両や飛行機も,時代が進めばより高性能な機体が利用可能になる。小回りのきくヘリコプターを活用すれば,複雑な地形での空輸もスムースに展開できる

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■発売元:メディアクエスト
■価格:4800円(本体とセットの「限定パック」は,9800円)
■問い合わせ先:メディアクエストユーザーサポート TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/350MHz以上(PentiumIII/500MHz以上推奨),メモリ 256MB以上(Windows 98/Meは64MB以上,Windows 2000は128MB以上),空きHDD容量 本体とは別に430MB以上,メモリ16MB以上搭載したビデオカード(32MB以上推奨),DirectX 8.0a以降
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