ヒーローズ オブ マイト & マジック IV 日本語版

Text by 大路政志
25th Dec. 2002

人気RPGシリーズから生まれたファンタジックストラテジーの最新作が登場!

守備隊が配置されている城や砦に攻め込むと,攻城戦が始まる。攻撃側はまず城門を破壊して突破口を開かなければならないのだが,飛行能力が備わっている敵ユニットから先制攻撃を受けることも。ドラゴンゴーレムやブラックドラゴンなど,頑健なユニットを攻城兵器として運用し,魔法や射出攻撃でそれらを援護するのがセオリーだ

 「ヒーローズ オブ マイト & マジック IV 日本語版」(以下,HoMM4)は,"ウィザードリィシリーズ" "ウルティマシリーズ"と並んで3大RPGの一つに数えられる"マイト&マジックシリーズ"から派生した,ターン制ストラテジーゲームだ。本格的なファンタジーテイストと,RPG色の強いゲーム展開が魅力的な,人気シリーズ最新作の完全日本語版である。
 やや乱暴に言えば,「拠点育成要素のあるシミュレーションRPG」と表現できなくもないのだが,その奥深さやゲームバランスは,凡百のSRPGでは太刀打ちできないほどの高みに達していると思う。もちろん小さな欠点もいくつか存在するが,総合的に見てかなり高水準な作品であることは確かだ。本作に興味がある人は,ぜひこのレビュー記事を参考にして,購入を検討してみてほしい。

 と,その前に。本シリーズ及びマイト&マジックシリーズのファンのために,シリーズにおける本作の位置付けをかいつまんで説明しておこう。
 これらのシリーズは,作品によってストーリーや主人公は変化するが,各作品の間に時間軸のつながりがある。比較的最近の作品では,HoMM2→マイト&マジック6→→HoMM3→マイト&マジック7という歴史的つながりが存在するのだ。
 HoMM4では,シリーズファンにはお馴染みのエラシア王国と蛮族の王キルゴールの想像を絶する争いにより,世界は無惨にも崩壊してしまう。プレイヤーは,新たな世界に生まれ変わった勇者の一人として,新世界の覇権を巡って戦いを繰り広げることになる。システム的には,基本的に前作HoMM3とほぼ同様だが,アイテムやユニットなどのデータ面には,かなりの追加/変更が発生した。また勇者には11種類ものクラスが用意されており,さらにレベルアップによって37種類のクラスへのチェンジも可能になった。そして前作で好評だった"シナリオエディター"もより使いやすく,よりパワフルに進化したことも,シリーズの熱心なファンにとっては非常に嬉しいことだろう

高レベルの勇者に率いられた敵軍勢は,強大な力を備えるユニットで構成されていることが多い 一定レベルになると,勇者は上位職業にクラスチェンジできる

難解そうなゲームだが,ハードルはむしろ低い

 冒頭でも述べたように,本作はファンタジー世界を舞台にしたターン制のストラテジーゲーム。プレイヤーはシナリオやキャンペーンの勝利条件を満たすために,自分の属する陣営の国力/兵力を強化しながら,敵陣営と戦っていくことになる。
 シナリオは31種類,連続性のあるシナリオの集合体であるキャンペーンシナリオは6種類用意されており,そのほかにチュートリアルシナリオやマルチプレイヤーゲームも収録されている。シナリオによって動機や展開は異なるが,基本的には敵陣営の町をすべて占領するか,敵の勇者を倒せば勝利となり,敗北条件はその逆となっている。ゲームの流れをごく簡単にまとめてみると,

<ターン開始>
1:町に新たな施設を建てる
2:兵を雇って戦力を整える
3:財宝入手/領地拡大のためにユニットを動かす
4:敵と遭遇したら戦闘を行う
<ターン終了>

という感じになる。
 ここだけを見ると「よくあるSRPGと一緒じゃん」などと思われる人もいるだろうが,ある意味,その意見は正しい。そう,HoMM4は洋ゲーらしい硬派な雰囲気を漂わせつつも,実は非常にハードルが低く,遊びやすいゲームなのだ
 だからといって難度が低いというわけでも,奥が浅いというわけでもない。本作はかなり手強い部類のゲームだし,ユニット,アイテム,施設等のデータ量も簡単に把握できるレベルではないのだが,ある種コンシューマ的ともいえるプレイアビリティと,ストレスを感じることのないユーザーフレンドリなシステムを兼ね備えているのだ。もし,あまりPCゲームをプレイしたことのない人がこのレビューを読んでいるのなら,本作は初心者でも楽しく遊ぶことができるゲームであることを,まずは知っておいてもらいたい。

敵の能力は戦闘中なら随時確認できるので,特徴や弱点をしっかりと調査しておきたい。モンスター系のユニットは強大な戦闘力と多彩な特性を兼ね備えているものが多いが,それだけに,味方に付ければ非常に心強い

深すぎず,浅すぎない拠点育成システムが,ゲームのテンポと戦略性を高めている

 本作の拠点(町)育成システムは,ゲーム展開の鍵を握る重要なパートだ
 町に建設できる施設には,ユニットを雇用するための施設はもちろん,アイテムの購入や勇者(単独で一部隊となる指揮官的存在)の勧誘,魔法の習得が可能になる施設などが多く用意されている。これら施設を建てるには"黄金"(お金)と"資源"(木材/硫黄等)が必要で,また1ターンにつき1施設しか建設できない。
 例えばドラゴンゴーレムを雇用できる"ドラゴン工場"を建てるには,錬金術師の店,大学,願いの祭壇(または黄金のパビリオン)が建設済みの必要がある。またドラゴン工場を建てると"雲の城"(タイタンが雇用できる施設)が建てられなくなる。と,このように必要条件/制約が設定されている施設も存在するので,考えなしに施設を乱立させることはできない。もちろん,建設可能な施設はシナリオや町によって異なっているので,別のシナリオを選ぶたびに新たなセオリーを見い出す必要があるのだ。
 本作の比較的シンプルにまとめられた"戦闘(戦術)のための拠点育成(戦略)システム"は,とかく平坦なゲーム展開になりがちなターン制ストラテジーにおいては,実に効果的に機能しているといえるだろう。

 なお,本シリーズの拠点育成システムを指して「シムシティ的」と表現している紹介記事やレビューを目にしたことがあるのだが,その意見には同意できない。本作の拠点育成システムはあくまで戦術パートのための戦略パートであって,町の発展を純粋に楽しめるようなシステムにはなっていない。町の発展に伴いグラフィックスも更新されるが,それを眺めて悦に入るユーザーはまれだろう。
 当サイトを日頃から閲覧しているユーザーなら「シムシティ的」なる一文に踊らされることもないだろうが,一応,老婆心ながら申し添えておこう。

マップ上には実に多くの財宝や特殊施設が点在している。それらを発見し,入手または利用するときは,なぜだか非常に嬉しい。苦労の末に発見できるレアアイテムももちろん嬉しいが,さほど苦労せずにいろんなアイテムが入手できるという状況も,それはそれで気持ちのいいものだ。つらい思いをするためではなく,楽しい思いをするためにゲームを遊んでいるんだなぁ,とつくづく実感させられる

戦闘システムはやや大味。だからこその爽快感と緊張感が楽しめる!

居酒屋では7日に1回,黄金を消費することで勇者(指揮官)を勧誘できる。ロード(君主)を仲間に迎えれば,町の領主に任命して,1日当たりの収入をアップできるぞ

 ゲーム展開の要(かなめ)となる戦闘に関しても,本作のバランス感覚の良さは十二分に発揮されている。
 本作の戦闘システムは,いわゆるタクティカルバトル形式。フィールド上で敵と遭遇して戦闘が発生したら,敵味方のユニットが素早い順に行動し,近接攻撃,飛び道具,魔法などを駆使しながら決着が付くまで死力を尽くすことになる。
 1回の戦闘には最大7部隊まで参加でき,勇者(指揮官)以外のユニットならば,複数の同種ユニットをスタック可能だ。この「同種ユニットをスタックできる」点が,HoMM4の戦闘システムの最も面白いところで,スケルトンやインプといった安い(1日あたりの誕生率が高い)ユニットならば,すぐに数十から数百もの大部隊を結成できるのだ。しかも同種ユニットをいくらスタックしても,移動力の低下などといったペナルティは発生しない! 戦闘画面では便宜上一つの駒として表現されるため迫力不足は否めないが,200体のスケルトンで1匹のドラゴンを攻撃するサマを脳内で映像化してみると,かなり気持ちがいい(?)。ここだけを見るとやや大味なシステムといえなくもないが,戦術の基本である「火力の集中」がゲーム的にうまく再現されている点は,大いに評価できるのではないだろうか
 とはいえ,数百人からなる大部隊を結成すればごり押しできるというわけでもない。大部隊は総合的な耐久力が高いので直接攻撃には強いが,敵に補助系魔法(能力ダウン,一定時間行動不能等)をかけられたら,パワーバランスは一気に不利な方向へ傾いてしまうのだ。
 また,ユニットの中には強力な耐性を備えているものも存在するので,味方大部隊から見て相性の悪い敵が多数出現すると,兵力的には勝っていてもかなりの苦戦を強いられることに。もちろん,複数の部隊をそれぞれ100体以上のキャラで構成できればそういった欠点は補えるが,兵力増強にはそれなりの時間がかかるし,ましてや強力なユニット(タイタン,ブラックドラゴンなど)となると,10体スタックするために数十ターンもの時間が必要になる。そういった現実を踏まえて,部隊内のユニット構成を考えたり,接近戦・飛び道具・魔法のバランスを調整したり,複数の軍団の運用方法を考えたりと,さまざまな知的作業をこなしていく楽しみも,本作の大きな魅力の一つなのである。

ちょっとユニークなものから硬質なファンタジーまで,シナリオの種類は30以上も用意されている キャンペーンシナリオでは主要キャラクターのデータを次のシナリオに持ち越せる 街にさまざまな施設を建設し,国力の発展に努める。シナリオによって町の雰囲気やグラフィックスは異なる

まったり系ストラテジーファンにもオススメできる,充実したキャラ育成要素が満載!

勇者は経験を積むことでレベルが上がり,また各部位にさまざまな武具/アイテムを装備可能。順調に育ってくれれば,数十人からなる敵部隊と互角以上に渡り合うことも可能だ

 本作はターン制ストラテジーゲームだが,RPG的な要素も多いことは冒頭でお伝えしたとおり。これはつまり,アイテム集めや勇者(指揮官)のレベルアップなど,キャラクターの育成に重きが置かれているという意味である。
 まずはアイテムについて説明しよう。アイテムは,マップ上に点在する各種オブジェクトへ軍団を移動させることで入手できる。"黄金"や"木材"といった国力アップにつながる資材が手に入ったり,勇者が装備/使用できる武具やポーションなども入手可能だ。
 各種資材の生産量は,マップ上の特殊施設(製材所や金鉱)を占領することで向上可能だが,マップ上の資材を直接入手することでも蓄えることができるのだ。各種資材は拠点育成(施設建設)だけではなく,ユニットの雇用やアイテムの売買などにも必要になるので,フィールドを探索して積極的に収集する必要がある。
 武具やポーション類の入手は,有能だが非力な勇者(スペックは高いが単体のため耐久力が低い)を強化するのに必要不可欠な行為だ。勇者のクラスによっては高い戦闘力を持っていたり,数々の魔法を使いこなせたりするが,残念ながら"数の暴力"に対してはかなり弱い。しかし,強力なアイテム類で装備を固めれば,敵の大部隊とも渡り合える力を身に付けられるのだ。
 またアイテムの中にはアーティファクトと呼ばれる極めて有用なものも多種存在する。これは収集マニアにとっては大きな楽しみとなるはずだ

 勇者のレベル上げという作業も,好きな人にはたまらない楽しみとなるだろう。敵との戦闘を繰り返して勇者を鍛えることで,各種パラメータはどんどんアップしていき,さまざまなスキルを習得できる。
 スキルには白兵戦や飛び道具の使用,魔法などに特化されたものから,敵ユニットを寝返らせたり,戦闘時に死亡した味方ユニットを一定数蘇生したり,町の収入を向上させたりするものまで用意されており,非常にバリエーション豊富だ。単純なパラメータの強化としてではなく,勇者に個性を付与するという意味においても,レベル上げ作業の重要性は高い。
 なお,「ストラテジーにレベル上げ作業は不要!」という考えを持っている人は,無理にレベル上げをする必要はない。普通に戦闘に参加していれば,勇者のレベルは自然と上がっていくし,複数の勇者を高レベルに育てなくても,強力な部隊さえ編成できれば,ゲーム進行にはなんの問題もないからだ。ストラテジーに育成要素の必要性を感じないユーザーでも,「ダルい」展開にはならないので,その点は安心してもらいたい。

PCゲームとしては珍しい「あまり苦痛でない」大作ストラテジー
家庭用ゲーム機ユーザーにも,コアなストラテジーファンにもオススメ!

戦闘システム自体はオーソドックスなものだが,同種ユニットをスタックできる点はやはりストラテジー的。基本的に兵数の多い部隊が強いが,敵味方のパワーバランスの見極めには多少の慣れが必要かも

 ここまで,HoMM4の魅力についていろいろと書き連ねてみたわけだが,最後に一つだけ声を大にして言いたいことは,「このゲーム,純粋に面白いんですけど」ということだったりする。
 筆者はコンシューマ機の仕事をメインとしているのだが,これまで本作ほど手軽に,そして長い時間遊べるターン制ストラテジーRPGにはこれまで出会ったことがない。
 といっても,もちろん筆者は「PCゲーム至上主義者」ではない。PCゲームにもコンシューマゲームにも,それぞれの長所と短所(いわば体質の差)があることを理解しているつもりだし,そのうえで,両プラットフォームのゲームを楽しんでいる。ただ,常々感じているのは,「基本的にPCゲームはダルい」ということ。どちらかというとPCゲームのほうが好きではあるのだが,楽しみを得るためにより多くのストレスや苦痛を感じるのは,個人的には明らかにPCゲームのほうなのだ。
 その理由はハードの性能であったり,イマイチこなれていないインタフェースであったり,単に作品のシステムデザインやデータの見せ方だったりするわけだが,往々にしてPCゲームのほうが「ダルい」(家庭用は往々にして奥が浅い。だからすぐに飽きてしまう)。
 だが,本作は適度にハードルが低いし,それでいて奥が深い。やや大味な部分もいくつか見られるが,それがプレイアビリティの高さに直結しているため,とにかくプレイしていて苦痛ではないのだ。本作の拠点育成システムや戦闘システム周辺が,「PCゲームらしく」マニアックな方向に進化していたら,筆者はここまで本作をプッシュすることはなかっただろう。
 本シリーズを「コンシューマ的」だと評し,敬遠しているPCゲームファンももしかしたらいるかもしれないが,この手のジャンルが嫌いではないのなら,プレイしてみる価値は十分あるはずだ。

 一方この手のジャンルが好きな人には,もちろん本作はとてもオススメの1本である。従来のシミュレーション&ストラテジーにもRPG的要素が強い作品は多いが,本作ほどワクワクしながらマップ上を移動できるゲームはそうない。そのワクワクは,マップ上に点在する数々のアイテムやクエスト,戦闘などとの出会いからきている。つまり,冒険という行為に欠かせない危険と発見が,本作の世界には満ちているのだ。そういう意味においては,ターン制ストラテジーの「ダルさ」や「単調さ」を嫌う人にも,ぜひプレイしてもらいたい。
 やや中途半端な印象のある作品かもしれないが,それは用意されている楽しみの豊富さの裏返し。用意されている楽しみの中からどれをメインとして選び取り,実際にどれだけ楽しめるかは,プレイヤー次第なのだから。

多種多様な施設を目的に合わせて建設していけば,ゲームを有利に進められる 勇者のスキルはレベルアップ時だけでなく,特定の施設を訪問することでも習得できる

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■発売元:メディアクエスト
■価格:9800円
■問い合わせ先:ユーザーサポート TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/300MHz以上(PentiumII/450MHz以上推奨),メモリ128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量750MB以上,DirectX8.0以降に対応したビデオカード

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