Fighter Ace

Text by いらいじゃ
8th May. 2003

 「Fighter Ace」(以下,FA)は6年以上の長い歴史を持ち,世界各国に多くのファンを擁するコンバットフライトシミュレーションである。第二次世界大戦をテーマに,5か国(日本,アメリカ,ドイツ,ソ連,イギリス)96種類の戦闘機が登場。数十人から数千人という大人数のプレイヤーが戦場を共有し,激しいドッグファイトが繰り広げられる。
 このFAの日本語版が,このたびパッケージ販売されることとなった。今回のレビューではプレイ雑感に加え,スタッフにお話をお伺いする機会があったので,そのコメントも含めてお伝えしていきたい。

初心者から上級者まで間口が広い「集団空戦ゲーム」

5か国の機体が入り乱れるテリトリアルコンクエスト。この機体はイギリスのスピットファイアだ

 FAの特徴の一つに"フライトモデルの手軽さ"が挙げられる。最初の離陸から難しい手順を必要とせず,着陸脚を引っ込めてフラップを上げれば,あとはジョイスティックだけで楽々と操縦できる。これはアーケード感覚というか,コンシューマ機の"飛行機アクション"に近い感覚だ。フライトシムには,ただ飛ぶことさえも難しいという作品が多いが,このゲームは急旋回や宙返り,さらには着陸なども実に手軽にできる
 オフラインでの訓練メニューも充実しており,初心者でもすぐに飛び,戦えるようになるだろう。訓練メニューはキーのカスタマイズを試す場所でもある。本作は自由にキーカスタマイズが行えるので,自分なりの使いやすい設定にしてから戦いに挑もう。

 オンライン上での集団戦闘が,本作の最大の楽しさだ。サーバーには多くのアリーナが設置されており,さまざまな戦場とルールでの戦いを楽しめる。飛行機アクションに近い感覚と述べたが,機首を無理な角度に上げればたちまち失速というような,リアルなフライトモデルで飛ぶルールを採用したアリーナもきちんと用意されている。
 中でも人気が高いのが「フリー・フォー・オール」と「テリトリアルコンクエスト」の初心者向けアリーナ。時間帯によってばらつきがあるが,常時かなりの人数が戦いを楽しんでいる。
 「フリー・フォー・オール」は,自分以外の全員が敵というルール。50機以上の飛行機がバラバラと弾を撃ち合っている姿は,まさに圧巻。敵を追っているときが最大の隙となり,撃墜する可能性も高いが落とされる可能性も高い。集団での無秩序な戦いという,ある意味最もFAらしさを感じ取れるアリーナである。
 「テリトリアルコンクエスト」は各国に分かれてチームバトルを行うルール。日本ではこちらのほうが人気が高く,夜になれば平日でも数十人のプレイヤーが各国のチームに分かれて戦っている。仲間がいるというのは心強く,仲間の動きを予想して同時に戦いを仕掛けるという「呼吸」には,独特の楽しさがある。単機で敵の飛行場に突撃したり,爆撃機を使用して工場を攻めるという楽しさもある。マウスで機銃を操り敵を狙う銃座での戦いは,戦闘機とはまた違った感触だ。
 スタッフによれば,爆撃機のフライトモデルはとくに手軽になっているとのことで,現実の爆弾搭載量や機体重量から考えると,とてもできないような機動も可能になっている。また爆撃機をうまく使うことで,より有利に戦える場面も多い。「爆撃機と護衛機のコンビネーション」という戦い方も,チーム戦ならではだろう

オフラインではさまざまな操作を習得・練習できる。女性の声でいろいろ教えてくれるのは耳に心地いい たくさんの人が狭い空間で戦うフリー・フォー・オール。最初はなかなか勝てないかもしれない

戦う楽しさを知り,初心者の前に立ちふさがる「壁」を超えよう

 初心者向けルールを採用することで,間口が広くなっているFA。しかし,その気軽さを吹き飛ばしてしまうような"壁"を感じる部分を持っているのも確かである。
 最初のうちは,とにかく勝てないのだ。飛行は簡略化,搭載弾薬もかなり多め,第二次大戦機でありながらレーダー画面にマップ画面まであるのに,敵を捕らえることがいかに至難の業か思い知ることになる。自分に現実を超えたアクロバットができるということは,ベテランパイロットにも同じことが可能ということなのだ。
 楽しむためには,撃墜されるのを覚悟で開き直ることが一番。スタッフの話によれば,上達の一番の近道はこれと決めた機体を,操縦特性から機体にあった戦い方までいろいろ試して「慣れる」ことだ。自分の愛機を見つけて根気よく戦っていれば,いずれ戦い方が見えてくるだろう。プレイの様子はいつでもリプレイデータとして録画することができるので,敵の飛行法を分析してテクニックを磨くといった修行も大切だ。
 空戦の上手・下手だけがこのゲームの楽しさでないことは強調しておきたい。後述するが,集団戦においては個人のテクニックとはまったく違う戦闘方法があるのである。またルールによって戦い方は大きく異なる。初心者向けルールの強者が,ハードコアルールでの強者でない場合もあるし,その逆もあるということだ。

朝のアリーナ選択画面。アメリカの夜の時間には平日でも非常に多くのプレイヤーが集まる。日本でも対戦相手には事欠かないが,この独特の雰囲気も体験してほしい いくら撃っても,悲しいほどに当たらないということは多い。勝てるようになるには修行が必要なのだ ものすごく小さな旋回半径で動くことができる日本軍機。そこそこのエンジンと装甲を持つ紫電改は,初心者おすすめの機体

 

コラム:Fighter Aceでの戦い方
 筆者が自分なりに編み出したのは,激しいドッグファイトでプレイヤー同士が団子状態になっているところに外から突っ込み,狙いを付けた標的に弾を撃ち込むという戦法。スタッフのお勧めは,日本軍の機体を使って旋回戦を仕掛けるというもの。史実でもそうなのだが,FAの日本軍機も軽快な運動性がウリで,他国の機体に比べると特殊なパラメータになっている。クルクル回ることで,他国の機体には真似のできない旋回半径で背後を取って仕留めることが可能なのだ。なお,初心者にお勧めの機体は紫電改とのこと。この二つの戦術は空戦の基礎ともいえるもので,ここからさらにひねり込みや急降下を利用した加速など,さまざまなテクニックが加わる(それさえも基礎中の基礎だが……)。

同好の志を募る「作戦」への道

テリトリアルコンクエストのマップ画面。ここで戦況を分析し,効果的に戦う。作戦の打ち合わせにも重要な画面だ

 集団で戦っているエリアへ飛び込み,戦闘を行う。マルチプレイFPSの楽しさの一つであり,FAでも大きなウエイトを占めるポイントである。
 元々FAは,単に集団戦を楽しむゲームとして生まれた。サーバーにつなげば誰かしら戦っており,対戦相手に事欠かない。挨拶は最初の「hi all」だけでよく,あとは引き金で言葉を交わせばいい。
 しかしそこからファン同士の交流と意見が生まれ,制作側がそれに応えることで新しい楽しさが生まれてきた。プレイヤー達は「スコードロン」(飛行隊)を結成するようになり,チャットで作戦を練り,爆撃隊を結成したり,集団で戦うことで制空権を確保するといった連帯が可能になったのだ
 そこから発展したのが,いくつものスコードロンが参加するヒストリカルイベントだ。数百人ものプレイヤーが史実を基にした設定で戦うもので,各スコードロンは「拠点を爆撃」「飛行場を死守」などの任務を担う。このイベントは実に2時間以上にも及ぶという。まさに大規模戦闘であり,一パイロットという側面を超えたバーチャル空軍ともいえる"集団への参加"が楽しめるイベントである

 今回の日本語版発売の最大の意図は,海外や日本のプレイヤーの一部で行われている,こういった「集団戦への道」のハードルを下げるためであるという。チャットを日本語化することで気軽に日本人プレイヤーを募り,より同好の志を見つけやすくするのが目的とのことだ
 「Kombanwa-!」より「こんばんわ」のほうが読みやすいというプレイヤーは少なくないだろうし,日本語で返してくれるプレイヤーは初心者にとっても安心できる相手だろう。
 個人戦闘でなかなか勝てないからといって,このゲームを投げ出すのは早い。たくさんの人と飛行場から飛び立って敵に襲いかかるのには,高度な戦闘テクニックや反射神経はそれほど要求されないのだ。結果落とされたとしても,作戦がうまくいけば爽快だろうし,そのあと仲間内でチャットに花を咲かせてもいい。もしかしたらマニアな知識が聞けるかもしれない。まずは,スコードロンのドアを叩いてみることから始めてみよう。

チャット画面。戦闘中は難しいが,簡単な打ち合わせを行える。戦況次第では指示に徹することも 爆撃視点。マップに工場などが表示されているので,目的地への爆撃は容易だ。しかし,単独行動よりも作戦に従って実行したほうが楽しいだろう

 

コラム:マルチプレイならではの"連携プレイ"
 連携の楽しさを感じたエピソードを一つ。「テリトリアルコンクエスト」で飛行場の上空を占拠され,飛び立とうとしては落とされていた筆者は歯がみしていたのだが,突然数機の爆撃機が滑走路に出現,そのまま飛び立たず対空機銃を上空へ撃ち始めたのである。敵機が離れた隙をついて戦闘機が何機か出現,あっという間に飛び立ち,空域を奪還した。
 蚊帳の外の筆者は,口を開けて眺めていただけである。これをやった人達は多分アメリカンなボイスチャットで快哉を叫んでいるんだろうなあと思った。こういう連携を提案し,実行できたらとても楽しいだろうと思う。

熱い制作スタッフ達と将来の展望

機体のパネルは簡略化されていながらも,実に凝っている。96機種それぞれの特徴をうまく捉えているのだ

 このレビューを書くにあたってスタッフにお話を聞かせていただいたのだが,その熱意に圧倒された。「日本語チャット対応は悲願であり,出発点です」と語るその言葉には,このゲームが内包する"飛行機好きの交流の場を作る"という可能性に対する情熱が感じられた。

 彼らが主催を予定している,さまざまなイベントも見逃せない。日本語版がパッケージ販売される前から各種イベントを日本や米国で開催しているFAだが,今後プレイヤーが増えてくれれば,さらに大規模かつ定期的なイベント実施が可能になるという。
 イベントは前述した大きな戦場を舞台としたヒストリカルイベントのほか,2on2での対戦大会や,エアレースといった各プレイヤーの腕を競うものもある。これからもプレイヤーとスタッフ間の交流から,さまざまなイベントが提案・実施されていくことだろう。

 フライトスクールも開かれる予定だ。このスクール,名前から想像されるような,飛行機の操縦の基礎を学ぶだけのものではない。いずれは戦闘理論を模索するようなスクールにするというのがスタッフの意図なのだ。初心者のみならず,上級者も参加して多くの意見を交換し,テクニックを磨く場所になるだろう。ここで仲間を募るのも良いし,新たなスコードロン結成のきっかけになるかもしれない。

 FAを快適にプレイするには,やはりジョイスティックが必須となる。正直,ソフトとスティックの両方を買うのは少なくない出費だ。しかし「ゲームとしては高いかもしれないが,"趣味"という視点でも判断してもらいたい」というスタッフの言葉を,あえて強調したいと思う。フライトがそれほどうまくない人,ゲームをあまり遊ばない人でも楽しめるゲームである。第二次大戦の空戦をテーマに,大人数が参加して気軽に深く楽しめる。しかも日本語でサポートを受けられるというソフトは,決して多くはないはずである。
 もちろん,高い次元での遊びは誰でもすぐに味わえるモノではない。仲間を募り,みんなで実現させていくものだ。ちょっと困難かもしれないが,このゲームにはその可能性がある。"戦闘機パイロット"というロールプレイを楽しめるゲームであることは間違いない。

 体験版の仕様から,ただ戦場に飛び込んで撃ちまくるゲームという印象を持たれがちなFAだが,気軽さと同時にディープな楽しみを可能にしたフライトシムなのである。

ゲームには空母も登場する。機体やルール,戦場などは今後増えていくようだ。魚雷を積んでの雷撃戦なども楽しめるかもしれない 輸送機でプレイできるのは「FA」だけじゃないですか? とスタッフも語る,零式輸送機。これで空挺部隊を送り込める

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■発売元:メディアカイト
■価格:6800円 ・ 1000円/月
■問い合わせ:TEL 03-5487-6021(代表)
■動作環境:Windows 98SE/Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz以上(PentiumIII/800MHz以上推奨),メモリ256MB以上,空きHDD容量450MB以上,56k bps以上のインターネット接続環境

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