イーサーロード2 日本語版

Text by Seal
10th Dec. 2003

 

 ロシアのNIVAL Interactive社が開発し,イマジニアが発売している「イーサーロード2 日本語版」は,トレーディングカードゲームを題材にしたPCゲーム。カードゲームといっても,トランプなどの既存のものではなく,数百から数千種類のさまざまな効果が書かれたオリジナルカードを使用して行う。それらの膨大なカードから,デッキと呼ばれる数十種類を厳選した束を構築し,それを使用してクリーチャーの召喚,ソーサリースペルの詠唱などを駆使して対戦するというものだ。
  このようなカードゲームは,Wizards of the Coast社のマジック:ザ・ギャザリングで爆発的なヒットを飛ばし,ポケモンカードやガンダムウォーなど,国内でも一大ジャンルとなるほどに成長している。イーサーロードは,そんなカードゲームをPC上で再現し,視覚的にも派手でファンタジックにしているのが特徴だ。
  2002年3月27日にリリースされたイーサーロードから,約一年半ぶりに登場した今作は,基本的な部分,つまりゲームルールやカード種などを継承しつつ,新しい要素をふんだんに盛り込んで大きく進化した。今作では,前作での300種類以上のカードに加え,15種類の新しいクリーチャー,30種類の新スペルが追加され,さらに面白さが増しているのが魅力だ。

ストーリーが分かりやすく,より単純化されたゲームシステム

デュエルは,各ヒーローが交互に行動を行うというもの。クリーチャーを召喚して相手のヒーローを攻撃だ!

 前作でのシングルプレイはストラテジー要素が強いシステムだったが,今作ではその部分に大幅な変更が加えられた。
  前作のようなゲームシステムではストーリー性を持たせることが難しく,ゲーム展開によってプレイヤーが受ける印象が異なったり,またプレイヤーがストラテジー部分に集中してしまってストーリーが伝わりにくかったりということがある。それをヒーローの成長にフォーカスを当てた形式に変更したことで,ストーリーを追っていきやすくなったのだ。それによって今作では,カードゲームのイメージをより強く受けられるように仕上がったといえるだろう。
  インタフェース周りやグラフィックスは,前作とほぼ同じ。マップの移動も前作と同じ操作で行え,マップ上にいる敵を排除しながら資源を採取して,戦力の増大(=カード数の増加)をしていくという流れも同じだ。
  今作で操作できるヒーローは1人のみで,前作のように敵によってヒーローを使い分けていくということができないのが大きく異なる部分だ。また資源も,前作での全7種から"マンドラゴラの根" "鮮血のルビー" "凍てついた炎"の全3種に減少され,カード購入のみで消費できる,いわば通貨のような役目となった。
  ヒーローは経験値を積むことでレベルアップし,前作と同じようにスキルを修得できる。スキルには,入手経験値の増加やヒーローのライフの増加,特殊能力の発動率アップなどがあり,前作ではこれの修得順によってヒーローに個性をつけていけた。しかし,今作ではスキル数が減らされているので,序盤でこそ少々違いが出るものの,ある程度のレベルからはほとんど同じになってしまうのが残念
  一方,特殊能力は各種族の特徴を現したもので,攻撃の無効化や倒されたときに復活するなど絶大な効果があるが,バトル時には一つのみ選択できるというもの。特殊能力がマップ上にある施設を訪れたりアイテムを入手したりすれば修得できるというのは,前作と同じだ。
  デッキは,前作の15枚から18枚に増加され,戦術の幅が大きく広がった。カードゲームでは,複数のカードの効果を使用したコンボ(連携)が重要なファクターで,カードスロットにどのカードを何枚組み込めばいいかなど,効率を突き詰めていくにつれ確率論的な思考でデッキを構築していかなければならない。3枚増えただけとはいえ,この3枚のカードスロットをどれで埋めるかを考えるのが,ファンにはたまらなく面白いといえるだろう。
  さらに,前作では複雑なルールとなっていたルーンは削除され,またマップ上の広いエリアに影響を与える広域スペルも削除された。このあたりはゲームシステムの変更で必要なくなったものだ。ただし,今作ではマップ上のあるエリアでの戦闘時に,自動的にプレイヤーと相手の双方に影響を与える効果が追加されている。前作での広域スペルが強制的になったものと思えば分かりやすいだろう。

シングルプレイではゲームシステムに大きな変更があり,ストーリーがより分かりやすくなった インタフェース周りは前作とほぼ同一だが,さらに遊びやすくなっているのが魅力 敵を倒しながら,目的に向かってマップを冒険していく。カードを増やしながら強敵を倒していこう

カードバトルの基本ルール

 と,ここまでは前作からの主な変更点を挙げてきたが,基本的なカードバトルのルールにも触れておこう。
  まず,カードは,それぞれ特徴のある4種族(色)が登場する。

  • 攻撃力に優れたカオット(赤)
  • 素早さやトリックプレイを多用するキネット(青)
  • 自然力を使い防御力とクリーチャーの数に優れるヴィタル(緑)
  • 無機質で全体に効果を及ぼすのを得意とするシンセット(黒)

の4タイプ(色)だ。複数の色を使うなど組み合わせることはできないが,どれも一長一短があるので,長所を伸ばすようなデッキや短所を補うデッキを作っていくのはプレイヤー次第だ。

今作でのデッキは全18枚。集めたカードの中から,最強のデッキを構築していこう

  カードバトルでは,交互に周ってくる自フェイズ中にクリーチャーの召喚や攻撃魔法,防御魔法などを駆使して,相手のヒーローのライフを0にすれば勝利。ヒーロー自体には攻撃能力はなく,相手のヒーローへダメージを与えるには,クリーチャーが攻撃を行うか,直接に魔法でダメージを与えるしかない。
  クリーチャーの攻撃は相手を指定できなく,"攻撃しろ"という命令しか与えられないのがカードバトルの面白いところ。もしも相手側にクリーチャーが召喚されている場合は,攻撃クリーチャーをどのようにブロック(防御)するかは相手次第で,さらに攻撃を行ったクリーチャーは,次の自分のフェイズまでは休息状態となり,一切の行動が不可能となる。
  クリーチャーに「蹂躙」という特殊能力がない場合は,ブロックされたクリーチャーは,相手クリーチャーを倒すか,もしくは逆に倒されるかで戦闘が終了するため,強力なクリーチャーでも弱いクリーチャーでブロックしただけで,ヒーローにはダメージを与えられない。戦術によっては,相手のクリーチャーの攻撃をあえてブロックしないという選択肢も出てくる。

 魔法には,クリーチャーの能力アップやヒーローに直接ダメージを与えるなどの一時的な効果がある"ソーサリースペル"と,毎フェイズに回復/ダメージを与える,攻撃力が低いクリーチャーを攻撃できなくするなどの永続的な効果がある"エンチャントスペル"の2種類がある。
  これらをクリーチャーと合わせて使っていくと,さまざまな2次効果を生み出せる。このあたりの柔軟な思考力を要する部分と先の読み合いが,カードゲームのハマル部分なのである。
  また,魔法の詠唱やクリーチャー召喚を行うには,エーテルと呼ばれる魔法力を消費する。エーテルは自フェイズ開始時に"エーテルチャネル"の量となるので,無限には使えない。どの魔法を使っていくか,クリーチャーを先に召喚しておくかなど選択肢はさまざまだ。
  この"エーテルチャネル"は,フェイズが経過するごとに増加していく。例えば,バトル開始時には1エーテルしか使えないが,10フェイズ後には6エーテル使えるようになるといった仕組みだ。バトルが長引けば,それだけ大掛かりな魔法が使えるということになるが,逆にそれまで相手の攻撃に耐えなくてはならなくなり,この部分もデッキ構築を悩ませる面白い要素となっている。

魔法には,クリーチャーを直接除去してしまうものも。デッキの特徴を瞬時に把握できれば一人前かも? ヒーローそれ自体に攻撃能力はない 今作では,相手の唱えた魔法がアイコンで表示され,詳細情報がすぐに分かるようになった

操作性の向上でより遊びやすくなった

カオット(赤)のクリーチャーや魔法は,攻撃主体で防御は一切おかまいなしだ

 今作では,シングルプレイのキャンペーンシナリオにカオット編とヴィタル編の2種類が用意され,どちらのシナリオも非常に長いストーリーとなっているのでクリアには時間を要する。難度は,簡単,普通,難しいの3段階が用意され,各チャプターの開始時に次のチャプターの難易度を自由に変更できるのは嬉しい機能だ。
  マップは結構広く,"テレポーター"や"船"を使っていかなければたどり着けない場所もあり,すべてを探索することは難しい。今作では前作に引き続き"経過日数"というものがあるが,ゲーム進展上とくに影響することはないので,すべてを探索して資源を回収してから次へと進んでいくのが基本となる。
  ほかにも,バトル時にAI任せで自動で戦闘を行う"オートバトル"が用意されていたり,敵の詠唱した魔法がアイコン表示に変更されて分かりやすくなったりと,操作感は良好。バトルに負けてしまっても即ゲームオーバーにはならず,日数が経過するだけなのも初心者には嬉しいシステムだ。また,各色の"スペル辞典"で魔法の全リストが表示されるのも,デッキ構築時には非常にありがたい。

 今作ではマルチプレイにも注力されていて,最大8人までのプレイヤーが参加できるようになった。これによって1デュエルごとではなく,トーナメント戦やリーグ戦などを対戦が終了するまで継続できる。また,マルチプレイ専用サーバーも用意され,レーティングシステムを使ったランキングが公開されるなど,カードゲームファンには腕を試す格好の舞台といえるだろう。
  なお現在(2003年12月8日)の最新バージョンは1.02で,マルチプレイ専用サーバーもこれに対応したものとなっている。日本語版のバージョンは1.01なので,サーバーにつなげられないが,日本語版1.02パッチは現時点ではまだリリースされていない。早くパッチがリリースされ,ランキングに参加できるようになることを望むところだ。
  前作からのファンはもちろん,初めてカードゲームに触れる人でもすんなりと入り込める本作をぜひプレイしてみてほしい。

スペル辞典は,ゲーム中いつでも参照可能。便利な機能だ マップ上にあるテレポーターに触れると,対応する地点へと瞬時に移動する 今作では,移動手段として船も登場。船上でのデュエルは雰囲気満点で白熱する
チャプターの開始時には,難易度が変更できる。敵が強くて進めない状態になったら,チャプター開始時まで戻って難度を下げよう カードゲームでは想像力が重要だが,それを美しいグラフィックスで視覚的にも満足できる 今作では資源が3種類に減少した。ショップでカードを購入するときに必要なので,取り忘れのないように

 

このページを印刷する

■メーカー:イマジニア
■価格:オープンプライス(実勢価格7600円)
■問い合わせ先:イマジニア TEL 03-3343-8900
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/600MHz以上(PentiumIII/1GHz以上推奨),メモリ128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 2GB以上,DirectX 8.1に対応する16MBメモリを搭載したビデオカード
■体験版 (シングルプレイ専用 / マルチプレイ専用
Screenshots集
forGamer情報一覧

Etherlords 2 (c) 2003 Nival Interactive. All rights reserved. Etherlords is a registered trademark of Nival Interactive. Published in Japan by Imagineer Co., Ltd.