月影のデスティニー

Text by 朝倉 哲也
24th Mar. 2003

　日本ファルコムの"海外プロデュースシリーズ"の第二弾となる「月影のデスティニー」（以下，月影）は，中国を舞台にしたアクションRPGだ。中世ヨーロッパの世界観をもつ，一般的なRPGとはかなり毛色の変わった独特の雰囲気を楽しめるゲームとなっている。

中華テイスト満載のゲーム

移動中の景色は山水画のようで美しい

　月影を起動してまず感じるのが，全面に漂う"チャイニーズ"な雰囲気だ。たいていのRPGは，中世ヨーロッパの世界観をベースにしているので，このチャイニーズな雰囲気は筆者の目にかなり新鮮にうつった。
　ゲームのメニュー画面からして，よくある「SAVE」や「LOAD」といった文字は見当たらず，なにやら見慣れない漢字で表記されている。またゲームに登場するキャラクターの名前も当然ながら中国風で，主人公の名前が「楊影楓：ヤンインフウ」，主人公と義兄弟の契りを交わす「卓非凡：ジョフィファン」，主人公がひそかに憧れる少女「紫軒：ズシェン」といった具合で，またアイテムの名称にも，当然英語風の名前は登場しない。
　ただ，やはり読みにくさは感じてしまう。初めてゲームをセーブしようと思ったときに，「存儲」がセーブの意味だというのは分からなかった。もちろんこのあたりはマニュアルにはしっかりと記載されているので，本作に関しては，普段ゲームのマニュアルを読まない人も，インストール中にでも一読しておいたほうがいいだろう。
　グラフィックスに関しては，技術的には平均的で特別美しい画面とはいえないものの，川が流れ，滝がとどろき，奇岩の立ち並ぶ渓谷など，まるで中国の山水画の世界をそのままゲームにしたような自然味あふれる景色は，欧米産のRPGとは明らかに一線を画しており，大変雰囲気が出ている。家の中の造作も，屏風が立っていたり壷が置いてあったりと，中華テイスト満載だ。

　ところで，月影ではマップ上のいたるところに薬草のたぐいが落ちており，その種類も多様だ。移動しているときにこまめに見つけて拾っておけば，序盤から中盤は体力回復のアイテムを買わないでも済んでしまうのはありがたい。

床の模様がいかにも中国風な試合場	室内の様子も屏風があったり，壷がおいてあったりと中華風だ	主人公の恋人"紫軒"。周りは桜の花が綺麗だ

クリックだけの簡単操作だが……

"紫軒"の家を襲ってきた悪党の"奪命一点金"。なんて読むんだろうか？

　ゲームの操作は，移動したいところをマウスで左クリック，攻撃したい敵をマウスで左クリックと，ひと言でいえば「ディアブロ風」だ。
　Shiftキーを押しながらクリックすれば走れるし，Altキーを押しながらクリックするとジャンプする。このジャンプでは川の向こう岸に行ったり，敵を飛び越えたりできるが，若干動きが変に感じる。例えば前転しながらジャンプできるのはいいのだが，そのあと持っている剣で地面を突いて戻ってくるような動きを見せるにも関わらず，なぜかちゃんと前方に飛んでいる。このジャンプの動作アニメーションにはどうも不自然さを感じてしまうのだが，筆者だけだろうか。
　なお，敵を攻撃するときに，1クリックで剣をひと振りしかしてくれないので，敵が多いときや"カタイ"敵と戦うときはマウスボタン連打となり，少々つらい。また，逃げていく敵を追いかけながら攻撃するとき，敵をクリックしても，キャラクターはクリックした場所に移動して剣を振ってしまうため，移動中の敵はすでにそこにはいないということになる。これはかなり面倒で，敵をマップの隅などに追い詰めて倒さねばならないことが多く，ストレスが溜まったのは事実だ。
　ほかにもアイテム画面をスクロールさせるときに，スクロールバーの移動量に対する画面の移動量が多いため，細かく動かすのが難しいなど，全般的に操作系に関しては今一つという印象がぬぐえなかった。せっかくゲームがいい雰囲気を持っているのに，その楽しさを台無しにしてしまっているのが残念だ。このあたりはもう少し煮詰めてほしかった。
　残念といえば，キャラクターのセリフなどは当然すべて日本語化されているのだが，変な位置で改行されたり，文節の途中で次の画面に移ったりと，多少の読みにくさが感じられた。ローカライズしているのだからしょうがないとはいえ，もう少し細かい配慮があってもよかったのではないだろうか。

　操作系に関する不満は多少残るものの，肩の凝らないお手軽なアクションRPGとして楽しめるゲームだと思う。日本ファルコムならではの予約特典もいろいろ付いていることだし（特典は日本ファルコムからの直販分に関しては終了してしまったようなので，店頭予約しかないようだ），ありきたりのRPGには飽きたという人にお勧めする。

序盤に登場する"いかにも悪役"といった山賊	殺し屋に命を狙われる主人公，まあRPGではお約束の展開だが	恋人の"紫軒"を守って戦う主人公。俺の女を泣かすやつは許さない！	最愛の人は，致命的な毒に犯されてしまう	海に落ちた主人公を救った，謎の美少女