Colin McRae Rally 3 日本語マニュアル付英語版

Text by UHAUHA
7th Jul. 2003

PC版ラリーゲームといえばコレ,CMRシリーズ最新作が登場

リプレイで見られるドライバーとコドライバーの動きがリアル。マクレーの顔テクスチャは,実にそっくり(当然だが)。ゲームでもやっぱり無表情

 PCラリーゲームの一番人気といえば,この"Colin McRae Rallyシリーズ"(以下,CMR)。そのCMRシリーズ最新作が,「Colin McRae Rally 3」(以下,CMR3)だ。

 CMR3は,現役ラリードライバーのコリン・マクレーが2000〜2002年にフォードチームで戦ったシーズンを再現しており,今回もマクレーの長年のパートナーであったニッキー・グリストがコドライバー(ナビゲータ)を担当しペースノートを読み上げる。
 登場するマシンはフォード・フォーカスRS WRC 02は当然として,三菱ランサーエボリューション VII,シトロエン クサラ,スバル・インプレッサWRX(44S),フィアット プントなど8車種,そしてボーナスカーとしてフォード RS200,ランチア037,メトロ6R4など13車種,さらに怪しげなマシンが3車種登場する。
 WRCでは名の知れたマシン,往年の名車といえるマシンが登場するのは嬉しいところだ。そのマシンを駆って走れるコースはイギリス,スペイン,ギリシャ,アメリカ,日本,スウェーデン,オーストラリア,フィンランドの8か国,合計56コースとなる。ライバルとなる他チームのドライバーについてはWRC承認を取っていないようで,マクレーとグリスト以外は仮名となっている。

 今回,国内版を発売するのは新生ブランドMYSTIX STUDIOS。限定5千本ながらも,「日本語マニュアル付き英語版」が本国版と大きな時間差もなくリリースとなった。また8月には,「完全日本語版」の発売も決まっており,日本語マニュアル付きからのアップグレード(有償)も予定されているとのことだ

チャンピオンシップで使用するフォード・フォーカスRS WRC 02。マシンモデリング,カラーリングは完璧だ。細かいところでは,アンテナの動きにも要注目 攻めすぎるとコースアウトして崖下に転落というシーンも。こうなるとマシンへの大ダメージは避けられず,過酷なラリーにおいては致命的だ

マクレーになりきって過酷なラリーを征するべし

レーススタート時は,スタッフに案内されスタートラインに付き,カウントダウンからスタートといったところまで再現されている

 ゲームモードはチャンピオンシップ(CHAMPIONSHIP)とステージ(STAGES)の2種類のみとなり,前作にあった同じコースを数台で走るアーケードモードは削られている。
 またインターネットはおろか,LAN経由でのマルチプレイにも対応していないので,ネット経由でのマルチプレイを楽しみにしていたファンはガッカリだろう。

 チャンピオンシップモードは,フォード・ラリースポーツチームのコリン・マクレーとなり,3シーズン(3年契約という意味)のキャリアを味わえるモードだ。使用できるのはフォード・フォーカスRS WRC 02のみで,ほかのチーム,マシンを使ってチャンピオンシップを戦うことはできない。ほかのマシンでも走りたいと思うプレイヤーも多いと思うが,"このモードはマクレーになりきって走るもの"だと受け止めておこう
 チャンピオンシップでは,1シーズン6ラリー(6か国)を転戦することになる。各ラリーとも,自然の中を走り抜ける六つのスペシャルステージ(以下,SS),スタジアムに作られた特設コースを走るスーパースペシャルステージ(以下,SSS)で構成される。また各ラリーともシェイクダウン,レース1日め(SS1〜SS3),レース2日め(SS4〜SS6,SSS)の計3日間で行われ,シェイクダウンでは短いながらも練習走行ができるので,ここでセッティングを詰めておきたい。
 レース日の2日間は,1日が終わるとサービスエリアでマシンダメージ修復,セッティング変更などが可能となるが,レース途中はいっさいマシンに手を付けられないため,過酷なラリーで蓄積されていくマシンダメージを抱えたまま三つのSSを走り抜かなくてはならず,場合によっては途中でリタイヤせざるを得ないこともあるだろう。
 ラリーは3SS+3SS+SSSの計7コースでいかに速く走るかで順位が決まり,それによってポイントが配分される。そしてシーズン6ラリーの合計ポイントが一番多かったドライバーが,シリーズチャンピオンとなるのだ。

初めから使用できる8車種

FORD FOCUS RS WRC 02
MITSUBISHI LANCER EVO VII
CITROEN XSARA KIT CAR
SUBARU IMPREZA WRX (44S)
FORD PUMA RALLY CAR
FIAT PUNTO RALLY CAR
CITROEN SAXO KIT CAR
MG ZR RALLY CAR

 3シーズンすべてのシリーズチャンピオンを狙っていきたいところだが,これがなかなか厳しい。1シーズンめは比較的簡単にシリーズチャンピオンになれると思うが,2シーズンめはライバルもパワーアップするので,1シーズンを戦って得たパーツなどを使い,コースに見合ったセッティングを施さなければライバルに後れをとることになる。
 セッティングパーツなど最初は選択できないものが多いが,各ラリーが終了すると新しいパーツが開発されて使用可能になる。さらに各ラリーで優勝すれば,"ステージモード"で使用できるマシンが手に入る。アーケード的でありがちな要素ではあるが,手に入れられないと悔しく,プレイヤーを熱くさせる引き金になっている。

 ステージモードは好みのコース/マシンを選択して走るモードで,最初からプレイできるのは各国のSS1のみだが,チャンピオンシップで走破しているコースであれば,途中のSSからのプレイも可能だ
 マシンはフォード・フォーカスRS WRC 02以外に,用意されているシトロエン・クサラ,ランサーエボリューションVII,インプレッサWRX(44S)など8車種,そしてチャンピオンシップで入手したボーナスマシンを使用できるが,悲しいかな,どのマシンもセッティング変更すらできない。
 チャンピオンシップを見据えてコースを覚えることはできるが,最適なセッティングを見つけ出すというプレイスタイルはとれず,せめてマシンセッティングくらいさせてほしかったところだ。
 なおこのモードは,4人までの対戦モードを備えている。とはいえ,1画面の交互プレイか画面分割プレイかを選択してプレイするというコンシューマ的なプレイ方法のみで,なんとも残念だ。

サービスエリアのみマシンのメンテナンス,セッティング変更が可能だ。すべてのダメージが修復されるわけではないので,出来る限り壊さずにレースを運びたい スウェーデンは雪道がメインとなるが,アイスバーンになっているところもあり,路面の変化に注意。滑りやすいうえにコース幅も狭いのでコースアウトにも注意を

リズミカルにマシンを操りコースを駆け抜けろ

MG ZR RALLY CARの特徴的なボディ形状もご覧の通り。埃によるマシンの汚れ,立ち上る砂埃にも注目してほしい

 ドライブゲームの命といえるマシン挙動は,セッティングによる挙動の違い,路面の違い,荷重移動による挙動変化など基本的な部分のシミュレートはしてあるものの,マシンの接地感などが薄く,ひと言でいってしまえば「アーケード的」だ
 しかし決してつまらない挙動ではなく,慣れてくれば思い通りに"手軽に"マシンを振り回すことができ,ラリーの楽しみでもあるドリフト走行を十分に味わえる。コーナーの進入で早めにリアを流し,アクセルでリアの流れをコントロールしながらコーナーを立ち上がる。タックイン気味にヘアピンに入り,イン側をなめながら立ち上がる。複合コーナーでもブレーキ,アクセルを使いリアを左右に流しながらリズミカルに駆け抜けるといった,ラリードライバー顔負けの走りが"手軽"にできるというところを高く評価したい

 チャンピオンシップのマシン・セッティングでは,大きく分けてブレーキ,ギアボックス,タイヤ,エンジン,シャシー,サスペンション,ステアリングの調整が可能で,ブレーキバランスはFRONT,MIDDLE,REAR,スプリングはSOFT,MEDIUM,HARDなど3種類のパーツを組み替えて行う方式だ。
 実際にテスト走行してテレメトリデータを見ながら,3回分のデータを比較してベストなセッティングを見つけることも可能。走行タイム以外でもグラフィカルに走行データの比較ができるのは非常に分かりやすくていいが,テレメトリを生かすには,もうちょっと細かいセッティング項目があったほうが良かったかも。

縁石などにヒットし続ければ,タイヤもバーストしてしまう。こうなってしまうとスローダウンしてゴールを目指すしかない

 ラリーで避けて通ることのできないマシンダメージについては,見た目上の表現はもちろんとして,挙動の変化もリアルタイムに"Finite Element Modelling Damage Engine"で処理されている。同社の「Pro Race Driver」で採用された物理エンジンだが,単純に凹凸を付けているだけではない,計算されたマシンダメージは必見。ダメージの度合いによる破損状態,挙動変化などが現実さながらに再現されているのだ。
 サスペンションの破損,タイヤのバーストなどからくる大きな挙動変化や,クラッシュ時に対象となる障害物が何なのか,即座に計算され反映される。例えば太い木に当たれば大きなダメージとなるが,細い木の場合には車速が落ちる程度で済む。看板やストローブロック(藁を固めた物)などに当たれば,当たった部位により挙動が乱れるといったようなことが,実に自然に再現されている。
 見た目もベッコリと凹んでしまうような場合もあるし,小さなダメージでも当たりどころによってはドアやバックパネルが開いてしまう。ときにはダメージが積み重なりジャンプ時にボンネットが跳ね上がって視界を完全に塞いでしまうなど,かなり細かいダメージによる影響が再現されているのは驚かされる。

 コースについては,コースレイアウトを含めラリーゲーム最高の出来映えといっても過言ではない。各SSとも2分半〜3分半で走りきれる長さは,常にマシンを操ることが必要なコースレイアウトでは長すぎず短すぎずでちょうどいい。
 コースレイアウトは非常に良くできており,前述したマシン挙動と相まって,マシンを操る楽しさを倍増させている。平坦で真っ直ぐな路面はほとんどなく,細かい路面のうねりや勾配などが常にマシン挙動に変動をきたし,連続するブラインドコーナー,連続するうねりの付いたコーナーなどペースノートを頼りに先を予測しながら走り抜ける楽しみを味わえる。コドライバーのグリストが読み上げるペースノートと走りがバッチリ決まれば,まさにマクレーになった気分になれるだろう。
 また雨や雪の降り方の強弱が見事に再現され,ドライバーズビューで見ると,あたかも本当にフロントウインドウに雨や雪が当たっているようだ。さらに,それを拭うワイパー動作のエフェクトも必見である。濡れた路面,凍った路面の表現や,砂漠のあるところでは砂塵が舞っていたり,テレビ中継のヘリコプターが迫ってきたり,下を走る高速道路に車が走っているなど動的エフェクトも随所にみられ,臨場感を醸し出している。ステージモードでタイムなどを気にせずに風景を楽しみながら観光気分で"流す"のも,イイかもしれない。

 CMR3は,できればステアリングデバイスを使用してプレイするべきだ

キーボードやゲームパッドでもひと通りプレイしてみたが,やはりマシンを思い切り振り回して楽しむには,ステアリングが必須だろう。
 操舵以外にも,ペダルを使えばアクセルコントロールなどが容易になるので,ステアリングをまだ持っていない人はこの機会にいかがだろうか。
 ただステアリング使用時のForce Feedbackについては,お世辞にも褒められたものではない。轍(わだち)にタイヤを落としてもキックバックなどはなく,グラベルなどでも単純に一定周期でガタガタさせているだけという印象なので,路面状況をフィードバックできているという感じではない。このへんについては海外でも話題に出ており,Codemastersとしても修正する動きはあるようなので,今後のパッチの登場に期待しておこう。

マシンセッティングは項目ごとに調節可能だが,細かい調節は不可能だ。最初はすべてのパーツは使えず,チャンピオンシップを進めていくと開発される 巨大なライトボッドを装着して走る場合もあるが,それでも視界はいいとはいえないため,慎重なドライブが必要になってくるだろう スーパースペシャルステージでは,ライバルを相手にクローズドコースを2周して競う。ナイトレースであるうえヘアピンも多いので,まずはコースを覚えたいところ
コース全体をみると,平坦なところは少なく,常に路面に微妙な起伏が付けられている。そのためにマシンを常にコントロールする必要がある ステージモードで画面分割を使い2プレイヤー対戦。画面分割,プレイヤー交代制の対戦よりも,やはりネット経由でのマルチプレイがほしかったところだ Finite Element Modelling Damage Engineの処理するマシンダメージが素晴らしく,大小さまざまなダメージは,外観はもちろん挙動にも表れる
セッティング→テスト走行をすることでテレメトリにて効果を3走行まで比較できるが,セッティング幅が狭いせいで,テレメトリを生かし切れない感も…… 初代CMRを彷彿させるような場面も……。すべてのコースにおいて攻め甲斐のあるコースレイアウトになっているのは,ラリーゲームとして高く評価できる レーススタート時にマシンダメージが表示され,どこにダメージが蓄積されているのかが把握できる。ただし,レースとなると気にせず攻めてしまうことが多い

手軽にドリフトを楽しめる"ラリーゲーム",これがCMR3だ

スバル・インプレッサ22B STIで日本を攻める。見たことのあるような風景,見慣れた看板,身近に感じられる建物などもありプレイしていて非常に楽しい

 じっくりプレイしていて思ったのは,"本作はシミュレータ要素は最低限にし,ドリフトを含めたマシンコントロール,コースを攻める楽しさに重点を置いている"ということ。
 確かに不満な部分もあるが,ゲームモードやマシンセッティング方法などを必要最低限にまで簡略化し,手軽に楽しくラリーカーを操れる万人向けの仕様になっているともいえる。このへんは,コンシューマからの移植という形で登場した時点で,ある程度仕方のない部分かもしれない。しかしPC版をメインにプレイしている人(筆者がそうだ)には,物足りなく感じてしまう部分だろう。
 Codemastersとしてもファンの期待度の高さは十分に分かっていたはずで,もうちょっとPC版に特化した機能,挙動などを付け加えてくれたらと思った次第だ。
 とはいえ,そのへんを割り切ってプレイすれば,十分に楽しめるだろう。「手軽にドリフトを楽しみたい」「テンポ良くコーナーを抜けていくのが好き」というプレイヤーには,「やっとけ」と声を大にして言っておく

 ともあれ,まずは「こちら」の体験版をプレイして,どんな感じなのか試してみるのが一番だろう。人によってはアーケードよりの味付けにとまどうかもしれないが,何度か繰り返しプレイしているうちに「面白いかも」と思えてくるはず。
 筆者の知人も,最初は「馴染めない」と言っていたが,体験版,製品版を何度もプレイしているうちに「面白い」と印象が変わったことを付け加えておく。やはり手軽にプロラリードライバー顔負けの走りが楽しめるというところに面白さを感じたようだ。「これはダメだ」と言わずに,何度か走り込んでみてほしい。
 また動作環境をみると,ビデオカードとサウンドカードはDirectX 9対応(!)のものを要求している。非対応カードではプレイできない場合もあるらしいので,自分のマシンでは動くのか,また,どの程度快適に動作させることができるのかなどのチェックも兼ねて,やはり体験版で動作確認を取ることをお勧めしておく。

雨や雪で視界が遮られることもあるが,埃によるフロントウインドウへの影響なども再現されている 注目のドライバーズビューでの雨,雪のエフェクト。降り方の違い,ワイパーの動作(音を含め)など実物そっくりだ。これだけでも見る価値は大いにあり

 

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■発売元:MYSTIX STUDIOS
■問い合わせ先:MYSTIX STUDIOS ユーザーサポート support@mystixstudios.com
■価格:6980円(完全日本語版 2003年8月発売予定 8800円)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/750MHz以上(Pentium4/1.4GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 3.5GB以上,DirectX 9以降に対応したビデオカード,DirectX 9以降に対応したサウンドカード
Screenshots集
体験版

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