アンリアル II 覚醒

アンリアル II 覚醒

Text by Kawamura

 2000年10月のScreenshots初公開から早2年半。FPSファンが待っていたSF FPS大作「Unreal2」が,ついに発売された。本原稿を書いているのは2003年2月6日。当編集部でも無事に英語製品版を入手できたので,サラリとプレイしてみた限りではあるが,ここにプレビュー記事を書いておこう。追って細かく触れたレビュー記事も掲載する予定なので,お楽しみに。

直前までベールに包まれた「アンリアルII」の実力とは

 かつて最高のグラフィックスと最高のBGMを誇り,美の頂点に君臨したといっても過言ではないFPS「アンリアル」。「QUAKE」「Half-Life」と並ぶFPSの3巨頭の一つとして知られ,3Dエンジンの実力はもちろんのこと,内容的にもまるで負けていない(どういうわけか話題性とセールスだけは譲ってしまったのだが)。あれから4年以上が経過した2003年2月,ようやく最も美しいFPS「アンリアルII」が,世界にその姿を見せた。
 「アンリアルII」に関してメーカーが敷いたガチガチの情報規制は,少なくとも日本のユーザーにとってはつらく苦しいものとなった。おかげで日本国内ではただならぬ憶測が飛び交い,発売直前に至るまで混乱を極めてしまっている。原因の一つには,「アンリアルII」と同等の3Dエンジンを使用しているはずの先発タイトル「アンリアルトーナメント2003」が,必ずしも予想を超えるほど衝撃的ではなかった点も挙げられるだろう。また,FPS業界ではリアル系タイトルが圧倒的な支持を得てしまい,SF系のファンにとっては肩身の狭い時期に突入してしまったことも挙げられるだろう。アンリアルファンは,ずーっと胸中穏やかではなかったのだ。その不安に苛まれた日々から,今ようやく開放されようとしている。

 2002年末に先行リリースされた「アンリアルトーナメント2003」がマルチプレイに特化しているのに対して,本命の「アンリアルII」はシングルプレイに特化したストーリー重視の作品だ。初代「アンリアル」に続いて「アンリアルトーナメント」が登場した経緯とは逆だが,一応参考までに。ストーリー仕立てのシングル用FPSのほうが,膨大な開発時間を要するということだろう。実際,「アンリアルII」の発売は延期に延期を重ねた難産となった。

これは宇宙の西部劇なのか? 主人公は宇宙の保安官!?

 ストライダー戦争の終結から8年後。宇宙へと拡大していった人類は徐々に中央政府による統治から離れていく。入植先の辺境星域で開拓事業を行なう各企業は,独自の軍事力を背景にイリーガルな活動を展開。世は「力こそ正義」の様相を呈していった。
 テラン殖民機構(TCA)は,辺境宇宙をパトロールする警察機構。執行官であるジョン・ダルトンは,言うなればここの警察署長のような立場の人間だ。著しい人手不足が目立つテラン殖民機構は単独で政府の法執行を代理し,宇宙の平和と秩序を守らなければならない。

 プレイヤーはTCA執行官ジョン・ダルトンに扮して,あらゆる星に降り立って悪人どもを懲らしめ,法を遵守する精神を説いてまわらなければならない。もちろん不正企業の傭兵や暴れん坊の宇宙生物どもは,木っ端微塵の肉隗にでもしてやらないと,なかなか平和の大切さに気づいてくれない。要するに,警察署長自ら星に降り立って撃って撃って撃ちまくるのである。言うまでもないだろう。

 各ミッションは,主にTCAの母船アトランティスから始まる。次に降り立つ惑星の環境情報とミッションの内容について,アイダ女史から説明を受けられる。クルーは自分を含めても全部で4人しか見当たらず,現場に降り立つのは基本的に執行官のジョン一人。
 NPCについてもう少し言及しておくと,会話は選択式で相手に対していくつかの応答パターンが用意されており,返答によってNPCの反応も変化してくる。このへんが後のストーリーに大きく影響してくるのだろうか。

 「アンリアルII」は,一つのステージが複数のミッションステータスによって成り立っている。"●●を調査しろ"とか"○○を作動させろ"とか,細かなオブジェクティブがそのつど与えられる仕組みだ。これらのオブジェクティブは,常に成否をチェックされる。達成したオブジェクティブステータスは"Completed",失敗したものは"Failed"と記され,ゲーム自体は終わらない。たとえば"生存者を救助せよ"というオブジェクティブで,これがまた実にあっさり死んでしまったりすることがある。しかし,そこでミッション自体が終了になるわけではない(中には即ゲームオーバーにつながる致命的なオブジェクティブもあるが)。これらの失敗がどう影響してくるのか,または本筋とは直接関係のないオブジェクティブを達成したときストーリーにどのような影響を与えるのか,そのあたりはまだ調査中だ。

 ステージ上の演出はいやらしいほどに凝っており,敵の出現は常に新鮮な恐怖を伴う。最初は意地悪なくらい敵襲撃までの間があり,恐る恐る進むと目の前の通路を敵がスッと横切るなんていう 焦らさせ方をする。視界のほとんどない暗黒の森林の中,激しく兆弾するショックランスの弾が四方八方から飛び交うステージなどは,あまりの出来事に笑うしかないといった状況だ。スカージは両手のサーベルでこちらの銃弾を防ぎ,巨体からは想像もできない身軽さで壁から壁へと飛び跳ねて襲い掛かってくる。
 あるシーンでは主人公がエレベーターで相当な高所まで登り詰め,今度は降りようといった段階でエレベーターが停止。はるか遠方にいるNPCにジェネレータを再起動させるため,主人公は身動きの取れない高所からスナイパーライフルのみでNPCを援護する。

 ステージ1は救難信号を発していた工場を調査。もちろん現場は「エイリアン2」さながらの様相を呈している。このステージに登場するアーティファクトが,どうやら「アンリアルII」のストーリーの鍵となるようだ。その後は母船アトランティスが撃墜され,雨の降り続ける原生惑星に不時着。武装したクルーと合流して未開の星からの脱出を図る。電磁ゲートや固定砲台などを設置して敵の侵攻を食い止めるシーンもある。その後は極寒の星にて連絡を絶った基地を調査,ダムを舞台に傭兵の攻撃からマリーンを救出するなど,ただのシューティングに留まらないさまざまな戦術が必要となる。

挑戦的なまでに美しいグラフィックスが今,甦る

 「アンリアルII」のエンジンは,アンリアルエンジンの発展系にあたる。これは"アンリアルIIエンジン"というわけではなく,あくまで初代アンリアルエンジンに改良を重ねたバージョンということになるようだ。時を重ねるごとに新たな技術に対応し,スペックも向上していく柔軟なエンジンということだろう。
 「アンリアルトーナメント2003」のグラフィックスが,確かに格段に綺麗になってはいるのになぜか心にジィ〜ンと響かなかった理由は,「アンリアルII」をプレイしてみればすぐ分かる。要は,この最新のアンリアルエンジンが持つ真のスペックを図り知るには,どこまでも広がる遠大な空間を描写する必要があったのだ。この美しさこそアンリアルに求められていたもの,我々が高価なビデオカードに惜しみなく投資してまでも目にしたかった映像だ。
 ただし前作と同様,「アンリアルII」でも現状のPCの最高スペックを要求される。1GHz未満のCPU+GeForce4 MX程度の環境では,最低の描画設定にしてもゲームにならないほど処理が落ちてしまった。逆に高いスペックであればあるほどグラフィックスの精度は向上していく。まるで壁紙用にあつらえたかのような美しいScreenshotsを見たことがあったら,それは通常のゲーム画面からキャプチャしたものだと思って間違いない。果たして,最高のグラフィックスに到達できるユーザーが何人いるか心配ですらある。
 音響もすばらしく,何種類もの"惑星の環境"が耳を通して伝わってくる。BGMの演出もゲームの域を超えており,どこでチェックしているのやら微妙な心境の変化を及ぼすシーンでも,さりげなく音楽が変化を見せる。SEも圧倒的に強化され,武器の射出音から敵の生理的な音まで捉えることができる。
 今では逆に珍しくなってしまった王道SF FPSだが,この「アンリアルII」を見る限り,やはり最新のPCスペックは異世界を描くために存在しているのだと極論したい。

*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

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