Terminator 3:War of the Machines

Text by 奥谷海人

 アメリカでは,いよいよ7月2日公開に押し迫った「Terminator 3:Rise of the Machines」(邦題「ターミネーター3」,7月12日に東宝東和が配給,映画のサイトは「こちら」)のゲーム化が話題になったのは随分と前のことだが,PCゲーム版では対戦モードのあるFPS「Terminator 3:War of the Machines」としてリリースされることが発表された。発売を2003年冬に控え,まだまだベールに包まれたままのこの作品。現在判明している情報をお伝えしよう。

シュワルツェネッガーのキャラクターも登場する本格的なFPS

 ジェームス・キャメロン監督による,アーノルド・シュワルツェネッガー演じる未来からきた殺人ロボットが話題になった「ターミネーター」が公開されたのは,今から随分と前の1984年のこと。1991年には,これまた大ヒットを記録した「ターミネーター 2:ジャッジメント・デイ」がリリースされたが,ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで復活するまでは,多くの人には半分忘れられていた存在だったのではないだろうか。今では,カリフォルニア州の時期知事選への出馬もウワサされるアーノルド・シュワルツェネッガーだが,最近では大きなヒット作にめぐり合っていない。「パールハーバー」を超える1億6,000万ドルが投じられて製作された「Terminator 3:Rise of the Machines」は,そんな陰りを払拭するだけの前評判を持つ期待作なのだ。

 映画の内容は,未来社会を支配するSkyNetとの闘いに身を投じるジョン・コナー(ニック・スタール)と,人間の心を理解し,ジョンとの友情さえ深めるT-800(シュワルツェネッガー)の物語で,新しく女性型のサイボーグ,T-X(クリスタナ・ローケン)が刺客として送り込まれることになる。メディックの女性ケイト(クレア・デーンズ)などの若手俳優も含まれているが,ジョンの母親であり前作の実質的な主役だったサラ・コナーは,フラッシュバックでしか登場しないようだ。映画のタイトルや若返ったジョン・コナーのキャストからいって,SkyNetが反旗を翻したばかりの時代がテーマになっているとウワサされている。

 さて,ゲーム版の「Terminator 3:War of the Machine」は,ライセンス契約に関わるためか,E3 2003では表立って公開されておらず,販売元のアタリ社の裏ブースで密かにデモが行われていたのみだった。PC版の開発を手掛けているのは,ハンガリーをベースにするClever’s Game Development社で,おそらくは本作が処女作となる新興の開発チームのようだ。
 シングルプレイヤーモードのストーリーは,映画の脚本をベースに製作されているらしく,プレイヤーは,人類の最後の砦であるテクコム(Tech-Com)によって捕獲され,人間の見方として戦うようプログラム修正されたT-800としてプレイすることになる。 シュワルツェネッガー扮するT-800のキャラクターモデルや,彼の音声ファイルまでをフィーチャーした本格的な作品なのである。
 E3 2003で公開されていたデモの一部には,T-800が檻に閉じ込められたジョンを救出するというミッションがあった。その時代は,なんと2003年。前作よりも20年以上“前の”現代が舞台なのだ。

32人のチーム戦を擁したマルチプレイヤーモードを搭載

 非常に興味深いのが,本作は通常のライセンスゲームが,映画ファンを意識したキャラクターとストーリーがメインになるのに対し,32人までの対戦が可能なマルチプレイヤーモードに重点が置かれて開発が進められてきたということだ。プレイヤーは,スカイネットのターミネーターか,テクコムの特殊部隊員として遊ぶことが可能になる。主なマップには,映画の舞台でもあるロデオ・ドライブの周辺やハーバーのあるマリナ・デル・レイ,さらには寸断された高速道路などの,廃墟となったロサンジェルスがメインになるようだ。
 時代設定が現代とほぼ同じなためか,テクコム側のプレイヤーが扱える兵器にはデザート・イーグルやAR-15アサルトライフル,M4A1カービン銃,X-29サブマシンガンなど,現代に見られるものが20種類程度登場する。それに対するスカイネットのサイボーグたちは,プラズマライフルやキャノンなどの兵器を装着しており,ゲームバランスがどのようになっているのかは見物。もっとも,もともと人間とサイボーグとの力関係のバランスなど崩れているのだから,「Aliens vs. Predetor」以上にハチャメチャな不公平ぶりにしてもらいたいものである。

 ゲームには,複数の車両も登場する。プレイヤーが利用できるものには,テクコム用には改造トラックや一般車両,輸送トラックなどがあり,運転と武器の照準を別々のプレイヤーが担当できる。これらは,シングルプレイヤーモードにも登場する乗り物だ。一方のスカイネットには,未来的な陸上車両HK Tankに加えて,画面写真にも見られる飛行型兵器FK Hover Attack Craftも登場するが,これらにはサイボーグのキャラクターが乗り降りするのではなく,キャラクタークラスそのものとしてゲームでは扱われることになる。元々は,支配意識を持った人工知能という映画本編の設定なのだから,これで無理のないゲーム化がなされたわけだ。
 さらに,詳しくは説明されていないが,プレイヤーはマップの特定地点に,空爆要請を行うこともできるという。他にも,チューレットからの銃撃ができるなど,最近流行しているチームベースのマルチプレイヤーモードが意識されているのがわかるだろう。

 アメリカ公開日の7月2日を過ぎる頃になれば,さらに多くの情報がリリースされるものと思われるが,現在公開されている6枚の画面写真を見るだけでも充分楽しみな作品である。アタリ社は,「Enter The Matrix」が2ヶ月足らずで250万本も販売されるなど,映画ライセンスで味を占めている。 「Terminator 3:War of the Machines」も,全てのプラットフォームでリリースされる予定だが,対戦モードがあるのはパソコン版だけ。今年末には壮絶な凌ぎ合いも予想されるFPSジャンルだが,そこでどれだけの健闘を見せてくれるだろうか?


*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

Terminator(R) 3: War of the Machine (C) 2003 Atari, Inc. & IC Video LLC. All rights reserved. Developed by Clever's Games KFT. Terminator (R) used under license. TM (C) 2003 IMF Internationale Medien und Film GmbH & Co. 3 Produktions KG.