Star Wars:Knights of the Old Republic

Text by 奥谷海人

 Xboxで登場した「Star Wars:Knights of the Old Republic」は,同機でリリースされたRPGでは一番のヒットとなっただけではなく,PCゲームではRPGの開発元としての地位をすでに築き上げているBioWare社が,コンシューマ市場へ参入する足がかりともなった。
 この人気作品が,まもなくPCにもリリースされることになる。解像度の高さを武器に,スター・ウォーズ世界での冒険を堪能しよう!

LucasArts社とBioWare社の夢の合作RPG

 「RPGは死んだ」といわれていたのは,ほんの数年前のことだ。開発期間が長い割には3D化に伴うメリットが少なく,古参のシリーズが中途半端な形で発売されたり,オンラインゲームに移行したりして,一人で遊び"仮想世界でヒーローになる"というクラシックな遊び方は忘れられていた。今でもFPSやRTSと比べて大きな比率になっているとは言い難いが,その流れを変えたのが,BioWare社の「Baldur's Gate」を始めとする"Dungeons & Dragonsシリーズ"であるのは間違いない
 「Star Wars:Knights of the Old Republic」(以下,KotOR)のXbox版は2003年7月にリリースされて,最初の2週間で27万本のセールスを記録。Xbox用ゲームとしては最も速いスピードで売り上げを伸ばしており,今もヒットチャートの上位に立っている。これまで同機の北米市場には本格的なRPGがなかったというもの大きいが,欧米各メディアの平均評価は90%以上となっており,BioWare社の手堅いゲーム作りの真価が発揮されているといえるだろう。

 BioWare社は,カナディアンロッキーの麓にあるエドモントン市を本拠にする開発チームで,1995年に医大のゲーム仲間だったというレイ・ミュージカ(Ray Muzyka)博士とグレッグ・ゼスチャック(Greg Zeschuk)博士により創設された。
 処女作「Shatter Steel」以降は,Baldur's Gateシリーズで名を馳せる一方,「MDK 2」のような3Dアクションゲームも手がけている。そうしてビジネス規模を大きくしながら現在では160人ものメンバーを抱えており,今回のKotORの受注も,そうした戦略の一環となる。
 一方のLucasArts Entertainment社は,近年では大ヒットとなる作品に乏しいのが実情。確実なライセンス管理業に重点を置くために,数年前から同社のソフト開発はほぼ第三者の開発会社に委託するようになってきている。「Star Wars Jedi Knight:Jedi Academy」(Raven Sotware)や「Star Wars Galaxies:An Empire Devided」(Sony Online Entertainment)など,これらの作品の中にはヒット作も多い。
 KotORは,極上のライセンスを保有するLucasArts Entertainment社と,RPGのノウハウをたっぷりと持つBioWare社の,夢の競演というわけだ。

4000年前のスター・ウォーズ・ユニバースを駆けろ!

 KotORは,映画シリーズで描かれている時代設定から4000年もさかのぼった,マンダロリアンの戦いが終わったばかりの時代が舞台になっている。プレイヤーは,フォースの潜在能力を見出されてジェダイの修行を重ねる若者という設定だが,当時はまだ何千人ものジェダイが闊歩していた時代。ジェダイマスター"ダース・マラック"率いるシスと呼ばれる派閥が誕生し,共和国の結束を揺るがし始めたのだ。
 プレイヤーは,まず自分の好みのキャラクターを,ヒューマンやウーキーなどの種族や性別を選んで作成する。ゲームはシスの奇襲によって落ち延びた惑星タリスから開始。やがて珍しい治癒能力を持つ"バスティラ・シャン"というミステリアスな女性ジェダイを救助することになる。そしてファルコン号に似たエボン・ホーク号という宇宙船を操り,五つに分かれたスターマップを入手して,ダース・マラックの居場所を突き止めていくのである。
 プレイヤーは,"ジェダイとはどうあるべきか"や"ライトセーバーの色の意味"などを学びながら,タトゥイーンの居酒屋に出入りしたり,次期公開予定の「Star Wars:Return of the Jedi」にも登場する森の惑星カシークで探検したりして,ウーキー族の自由のために戦っていく。 KotORは,映画などでお馴染みのテーマや葛藤を描きながらも,これまでにない新鮮さを持っている。映画の内容に囚われない自由なストーリーラインが用意されているのが強みなのだろう
 こうして,光もしくは闇のフォースに荷担していくプレイヤーの行動と意思が,のちの世界(映画で描かれている時代など)の運命を決定していくというわけだ。善か悪かという2元的な選択ではなく,ミッションごとにグレイゾーンでプレイしてもよく,かなりオープンエンドに作られている。

 KotORでは,先述のバスティラのほかにも,さまざまなキャラクターを仲間にしたり行動を共にしたりするようになる。
 プレイヤーやバスティラと同じくヒューマン族の"カース・オナシ"は,映画でいうところのハン・ソロのような役柄で,腕の良いパイロットでありながら二丁拳銃の使い手。同じようなタイプのヒューマンでは,マンダロリアンの生まれで今は傭兵として生きている"キャンデロス・オード"もいる。
 ウーキーの"ザールバー"は,奴隷の身分を嫌ってタリスに逃亡していたが,やがて相棒となるトウィ=レック人の少女"ミッション・ヴァオ"と出会って行動を共にしている。さらに,平和を愛するあまりに退役してカシークに隠遁している"ジョリー・ビンドゥ"や,本能のままに行動してしまう種族の特性に葛藤するケイサー人の"ジュハーニ"などのジェダイも登場する。
 もちろん,ドロイドのペアも登場する。暗殺ロボットとして生産された自分の素性に悩むコミカルなHK-47と,攻撃能力も保有するユーティリティロボットのT3-M3がパーティに参加するのだ。

 キャラクターの特性に合わせた武器(ブラスターライフルなど)やアーマーを入手でき,アイテム収集の魅力もカバーしている
 同時にすべてのキャラクターを使用できるわけではないが,一人で行動するものが多かったこれまでのスター・ウォーズ系アクションゲームに比べれば,より映画らしい仲間意識も演出されている。会話やサブクエストを通して個々のキャラクターの性格や過去が表現されているあたりは,「映画以上の表現力」というのも,言い過ぎではないだろう

細部にまでこだわれるテーブルトークRPG風のゲームシステム

 KotORでプレイヤーの拠点となるのがエボン・ホーク号で,ここからすべての行動が行えるようになっている。ここの指令部には複数のモニターがあり,スターマップを一つ集めるごとに新しいモニターに惑星の様子が写し出され,その星の様子や遂行可能なミッションの状況が確認できる。プレイヤーの好みでミッション内容や遂行時期を決定でき,直線的なストーリーラインではないのが今風な作りだ。
 上に挙げた9人のパーティメンバーが集うラウンジエリアもあって,そこで一人一人と会話してみると,プレイヤーにミッションを提示してきたりもする。一つのミッションに参加できるのはプレイヤーキャラクターも含めて3人で,ほかの二人のキャラクターを選べば,プレイヤーのあとをついて回るようになる。
 Dungeons & DragonsというテーブルトークRPGの大御所をコンピュータ上に再現することに成功したBioWare社だけに,フィートシステム(feat system)による成長の多様化などのゲームバランスが絶妙に仕上がっているのが頼もしい。例えば会話の選択肢で,平和的なセリフを選んで自体を丸く収めようが,暴力的に解決する結果になろうが,経験値の上昇率は変わらないように調整されている。ただし,その結果で光か闇に傾倒するようになっており,プレイヤーの未来から容姿にまで影響していくのである。

 基本的には"ジェダイの騎士"になるのがKotORの目的であることもあり,選択できるクラスはファイターやスカウトなどの定番となる。ジェダイなのでファイター以外には意味がないように思えるかもしれないが,スカウトなら戦闘中に敵のドロイドを修理して自分の味方につけたり,コンピュータにハッキングするなどの技も利用できるのがユニーク。
 成長するに従ってジェダイの流派も数種類に増えていくが,デュアルクラスにして幅広いスキルを身に付けることもできるのだ。もしレベルアップに伴うスキルポイントの振り分けが面倒臭いなら,クラスの基本型に合わせて自動的に振り分けてくれるモードも選択できる。

 戦闘システムは,リアルタイム制とターンベース制をミックスさせたようなものになっている。基本的にはリアルタイムで進行していくが,敵と遭遇すると画面をポーズしてコマンドウインドウへと切り替えることが可能で,キャラクターの武器や装備を変更したり,各キャラクターに複数のコマンドをあらかじめ与えたりできるのである。
 さらに,カメラの角度を変えて戦場の様子や敵の種類と数を確認したり,最初に攻撃するターゲットを決めたりしてからポースを解除できるようになっている。敵がザコキャラだったり少数である場合は自動的に攻撃させておいてもいいが,戦略的に戦いたい場合には重宝する仕様だ。
 ライトセーバーやブラスターガンなどのアイテムについても詳しく説明しておくと,これらがエボン・ホーク号で細かくチューニングできるようになっているのがKotORの魅力の一つ。ミッションやサブクエストで入手したクリスタルを使って,ライトセーバーの色彩を自由に変更できるのだ。それぞれのクリスタルがブラスターを効率良く反射するなどの効果を持っているので,クリスタルを探し回るのもKotORの楽しみになるだろう。
 映画の4000年前という時代設定である割には武器やドロイドの性能にはほとんど差がないものの,アイテムには古風な剣のほか,ウーキーのボウキャスターや手榴弾,火炎弾など30種類の武器や,さまざまなアイテムがバラエティ豊かに用意されている。

細かくなったテクスチャで異世界を何度も堪能できる

 パーティメンバーとの会話も合わせて,KotORには1万4000種ものダイアログが用意されているというから,相当なボリュームだ。そのため先々で出会うNPCとの会話も,プレイヤーとの相性や相手の職業によってユニークなものになっている。
 例えばタトゥイーンで"ミッション・ヴァオ"の出来の悪い兄貴を救出するミッションでは,サンドピープルとの会話での選択を誤れば,いきなり戦闘に突入してしまったりするのだ。どの会話を選択すればプレイヤーの思惑通りに事が運ぶか分かりにくいが,その分現実味のある展開になっている。
 音響効果はスター・ウォーズ系のゲームでは聞き慣れた感じのものだが,BGMは映画シリーズで有名なジョン・ウィリアムス氏の楽譜をそのまま再利用しているのではなく,BioWare社が独自にオーケストラ楽団と協力して制作した新譜であるのも新鮮だ。Xboxからの移植なので,Dolbyの5.1chサラウンドシステムに対応しているのも特筆しておくべきだろう。

 KotORのグラフィックスは,「NeverWinter Nights」(ネヴァーウィンター・ナイツ)のAuroraエンジンとは異なる最新のものを使用し,ライトセーバーでの戦闘を始めとするアニメーションは見応えがある。
 個々のキャラクターモデルはさらに細かく,両生類系のエイリアンの肌のぬめりなどもシェーダでうまく表現されている。難点は,クローズアップが多用されているのに,最近のリップシンク技術の向上が生かされていない部分。とくに会話は本作の重要な部分なので,もう少し洗練させてほしいところだ。
 とはいえ,全体的にはゲームに慣れるに従ってNeverWinter Nightsの良い所がうまく生かされているのが分かるはずだ。

 PC版ではテクスチャも繊細になっており,最大で1600×1200ドットの解像度をサポートしている。テレビ画面に出力する必要もないため,会話の文字やインタフェースも細かく美しく表示されている。とくにインタフェースは何枚ものウインドウやメニューを引き出す必要がなくなったのはありがたい。
 ゲームプレイやシステムはXbox版を忠実に再現しているが,惑星ヤヴィンの軌道上を周る宇宙ステーションが追加されており,それに伴うサブクエストが数種類増えた。このほか,エクソスケルトンなどの新アイテムが加わったほか,ムービーの追加やオリジナル版にあったスウォープレース(ポッドレース)やブラックジャック風のカードゲームなどのミニゲームの改良なども行われている。
 Xbox版が最低ラインだけあり,必須スペックはPentiumIII/1GHzと32MB以上搭載したビデオカード,そしてHDDの空き容量が4GB必要だ。CD4枚組みとなる予定だが,ライセンスの関係で,MODツールなどは公開される予定はない。ただし,Xbox版ではXbox Live!に対応させて新しいコンテンツをリリースする企画になっており,PCでもBioWare社側からサブクエストや新アイテムが追加されているのは間違いないだろう。
 ゲームプレイ時間は20〜25時間程度となっており,かなり煮詰められた内容を考慮すれば,十分ボリューム感はある。シングルプレイヤー専用RPGとはいえ,プレイヤーの行動によってエンディングが変わってくること,会話が豊富ですべてを聞く(読む)ことが不可能であること,そして各ミッションには二人までの仲間しか伴えないことなどから, KotORは何度も楽しめるゲームといえる。まったく新しいスター・ウォーズの世界を,十分に堪能できるはずだ。


 Star Wars:Knights of the Republicは,映画を意識することなく自由な発想で描かれたストーリーで,プレイヤーを光と闇が激突するジェダイの運命に巻き込んでいく。アメリカでは2003年11月18日のリリースが予定されており,スター・ウォーズファンばかりでなく,RPGの好きなゲーマーにも大いに注目されている。

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