Star Trek:Elite Force II

Text by 奥谷海人

 2000年秋に登場した「Star Trek Voyager:Elite Force」は,アメリカで根強いトレッキー(スタートレックのファンの総称)達には,「スタートレックを題材にしたゲームでは最高傑作」と絶賛されたFPS。事実,それまではチープなアクションゲームか地味なシミュレーション系のゲームばかりで,どれも大きな人気を獲得することはなかった。Elite Forceには,これまでにはなかった格好良さと,「QuakeIII Arena」ゲームエンジンに裏打ちされた技術が融合した本格的な作品だったのだ。
 このElite Forceを制作したのは,id Software社から絶大的な信頼を寄せられるRaven Software社だが,現在は「Jedi Knight:Jedi Academy」「QuakeIV」の開発で,これ以上のプロジェクトは手に負えない状態。そこで,Elite Forceの続編の開発チームとして抜擢されたのが,これまたQuakeエンジンを使ったゲーム制作では定評のあるRitual Entertainment社だ。同社は,QuakeII世代の「SiN」,QuakeIII Arenaの「Heavy Metal - F.A.K.K. 2」などでお馴染みで,とくにアニメーション部分でのエンジンのカスタマイジングを得意としている。それが,今回紹介するスタートレックFPSの新作「Star Trek:Elite ForceII」(以下,EF2)にも,思う存分活かされているようだ。

 EF2の主人公は,前作で活躍した若き将校アレクサンダー・ムンロだ。デルタ・クワドラントから無事にUSSボイジャーを寄港させたムンロだったが,任務遂行後にはスターフリート・アカデミーの教官という閑職に転任させられる。しかし,それを影から見ていたのがピカード船長。前回のミッションで彼の才能を信じたピカードは,再びムンロを特殊部隊ハザードチーム(エリートフォース)のリーダーとして迎え,新たな航海へと旅立つのだ。
 このハザードチームとは,戦闘要員ばかりでなく,エンジニアやメディックも参加した一個師団で,ステルスや潜入などの訓練も受けている。人種や性別も多彩な8人の隊員から構成されており,基本的には前作と同じメンバーのようだ。これは,すでに前作から意図されていたことのようで,ゲーム専用のキャラクターを作ることで,続編に幅を持たせることができると考えられていた模様。ただ,ピカードやトゥヴォックの場合は,実際にシリーズの登場人物であるパトリック・スチュアートとティム・ロスが声優も担当しており,ピカードは主人公ムンロの師として,トゥヴォックはミッションのナビゲーターとしてゲーム中で活躍する。

 EF2のシングルプレイヤーモードは,ストーリーに沿って順に進行していくことになる。
 ストーリーはActivision社とRitual Entertainment社の共同制作で,シリーズの小説版の著者として有名なダニエル・グリーンバーグ(Daniel Greenburg)氏が監修しているとのこと。前作のストーリーは,プレイ時間にして12時間ほどと短く設定されていたため,本作ではその2倍にはなるように構想されているという。
 日本でも「Star Trek:Nemesis」という映画が今年(2003年)の4月に劇場公開されたが,ゲームの設定としては,スタートレック・ユニバースでは同時進行している「スタートレック/ボイジャー」から「スタートレック/ジェネレーションズ」へと転換していくという構成だ
 今回の旅の目的は,突如としてモンスターが来襲し,銀河に散らばる船団や植民地,スペースステーションを襲い始めたのを鎮圧し,その原因を探るというものだ。このモンスター達は,動物や昆虫をミュータント化させたようなエクソモーフ(Exomorphs)と名付けられた生物で,グループになってプレイヤーに向かってくる様子は,映画「スターシップトゥルーパーズ」を連想させる。トレッキーばかりでなく,通常のFPSファンも満足できるほどのアクションの連続である。ほかにも, EF2にはボーグ(Borg)やロミュラン(Romulan)など,お馴染みの敵役も登場する。
 EF2では二つの種族が新しく登場し,両者とも惑星連邦とロミュランの勢力外にある中立地帯で生活している。アトリシャン(Attrexians)は,爬虫類のような風貌を持つ種族で,工業と宇宙航海術を発達させている。イドリル(Idrylls)は,国家を持たない神秘種族で,アトリシャン以上の知性を備えているものの,現在ではアトリシャン勢力下に取り込まれて実質的な労働力となっている。これらの新種族は,果たしてゲームにどのように絡んでくるのだろうか!?

 前作同様,QuakeIII Arenaエンジンをベースにはしているが,Ritual Entertainment社の独自の開発ツール「UBER Toolset」によって,さまざまな点でアップデートされている。キャラクターモデルは細かく複雑なものになっているし,テクスチャも非常に鮮明な32ビットカラーのものが使用されていて美しい。大きなスケールのマップでも細かく分ける工夫で,ゲームが快適になるよう配慮されているが,地形のジェネレータは「QuakeIII:Team Arena」と同等のものが使用されているため,かなり大きな屋外マップにも対応できる能力を秘めているはずだ。
 前作で,トレッキー達に好評だった理由の一つが,シリーズに登場する兵器をプレイヤーが自在に扱えたということで,フェイザーやコンプレッション・ライフル,I-Modライフル(Infinite Modulator/ボーグを殺傷できる唯一の兵器)などは今作にも継承されている。さらに, EF2には種族ごとに独自の兵器が用意されていて,とくにクリンゴン(Klingon)人の白兵戦用兵器バトレス(Bat’leth)は楽しみなところだ。
 それに加えて,本作でようやく採り入れられたのが,テレビのオリジナルシリーズ以来,数十年に渡って描き続けられてきたトリコーダーである。この携帯式のPDAのようなアイテムは,電磁波や空間変動までを探知できるというさまざまなセンサーを備えているのに加え,怪我をした場合の診断や生化学の分析までを行うという優れモノ。 EF2では,ミッションごとのトリコーダーの使用頻度が増えそうで,視界のきかない危険地帯で前方や建造物をチェックしたり,ゲーム中に散りばめられたパズルなどを解き明かすカギにもなり得るようだ。

 マルチプレイヤーモードは,昨今のチームベース戦人気に当て込んだ,"Warp Core Breach"という新しいゲームタイプが考案されている。これは,スタートレック版の「Counter-Strike」や「Team Fortress」といった形式のもので,プレイヤーがハザードチームのさまざまなクラスを選んで,協力しながら敵チームと戦うというものだ。もちろん,ホロマッチ(デスマッチ)やCTF(キャプチャー・ザ・フラッグ)などもゲームタイプは残るが,前作の拡張パックリリース時に登場したAssimilateモードという,ハザードチーム対ボーグチームという対戦モードはなくなる予定になっている。

 通常のキャラクターよりもサイズの大きなボスキャラなども配置された,12の環境からなるEF2は,トレッキー以外のFPSファンにもお勧めの一作となりそうだ。現在のところ発売元はActivisionで,6月中のリリースとなっており,アメリカでは夏休みに遊べる一作として期待されている。

*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

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