Space Colony

Space Colony

Text by 奥谷海人

 TakeTwo Interactive社から,新しい箱庭シミュレーションが登場する。「Space Colony」は,20人の乗組員達の不満を解消しながら宇宙基地を開発していくというゲームで,微妙なバランスの中にイギリス風のユーモアが見え隠れする期待作だ
 限られたスペースの宇宙基地を,より快適で働きやすい環境に整えていくのは簡単でなく,またミッション制で目的をもってプレイできるのが好印象だ。2003年10月中旬の発売を前に,Space Colonyの魅力を紹介しよう。

最大20人のキャラクターをなだめながらの宇宙開拓

 「ストロングホールド」(メディアクエストから発売中)で,コアな箱庭ゲームファンの心をガッチリと掴んだFirefly Studios社が開発中のSpace Colonyは,ちょっと変わった箱庭型シミュレーションゲームである。今はやりの"ジャンル複合型"になっていて,アイドス社から2年ほど前にリリースされた「スタートピア」に,エレクトロニック・アーツ社の「シムピープル」のようなキャラクター育成要素を持たせたものといえるだろう。
 シムピープルが,画面外に無限に広がる社会を描いているのに対し,Space Colonyでは,それぞれ異なるパーソナリティを持った乗組員達の,"宇宙の果ての星にある基地"という閉塞的な空間での生活を描いている。もちろん,中には気の合わない人もいたりして,通常の経営シミュレーションのようにはコトが進んでいかないのが面白い。

 本作の主人公は,ビーナス・ジョーンズ(Venus Jones)というプロの開拓屋。西暦2153年の地球は,資源が枯渇した死の星となり,その一方で肥大していく文明をサポートするために,巨大企業が次々と銀河中の惑星から資源を搾取しているという設定だ。
 ビーナスは,宇宙を股に掛ける巨大企業Blackwater Industories社に雇われて,問題の発生した殖民基地(コロニー)の処理をするのが任務。重労働なのだが,25歳での退職生活を目指しているという腕の立つ女のコなのだ。ビーナスには,最大で20人ほどの仲間がいるのだが,どれも嗜好や得意技能の異なる個性豊かな面々で,扱いが悪ければ思った通りの仕事をしてくれない。このあたりの焦燥感は,かなりシムピープルに通じるところがある。

 シムピープルと大きく異なるのは,Space Colonyはミッション制で,雇用者に与えられたノルマをこなさなければならないことだ。荒れ放題のまま放置されたコロニーを掃除するという地味な作業から,ほかの企業との競争に負けないように観光誘致するというものや,先住知的生命体から基地を守り抜くというものまで,10種類ほどの惑星で合計24種類のミッションが用意されている。
 このような労働環境で,キャラクター達がいつもニコニコしながらプレイヤーの指示通りに動いてくれると思ったら大間違い。彼らのニーズに応えてやることだって必要になってくる。このあたりが,スタートピアのような通常のシミュレーションゲームとは大きくことなるメカニズムなのだ。

 各ミッションの舞台となるコロニーは,作業場となるブリッジを中心に,生活の場であるバイオドーム,そして宇宙船の発着場であるシャトルポッドの三つで構成される。
 ブリッジには,酸素をコントロールするオキシジェン・ベイ,太陽電池で燃料を蓄えるエネルギー・ベイ,そしてメンバーの病気や怪我の治療を行うメディ・プレップ・ベイと,キャラクターが配当を得るためのバンキングマシーンが設置されている。オキシジェンやエネルギーには,常時人を座らせて作業をさせておきたいところだ。バイオドームには大中小の異なる大きさのものがあり,収容人数や用途によって使い分けていく。

内装を充実させつつ,エイリアンの侵攻を食い止める

 登場するキャラクター達は,アーノルド・シュワルツェネッガーを連想させるノルウェー人の巨漢スティッグ(Stig)や,カウボーイハットを被ったカントリー風のおばちゃんタミー(Tami),スケートボードに乗って基地内を移動する,だらしない風貌の若者スリム(Slim)など。さらには,日本人のはじけた二人組み,ホシ(Hoshi)とキタ(Kita)も登場する。名前が妙な感じだが,これでも10代の女のコである。
 ほかにもイタリア人の伊達男グレッグ(Greg)や中国人の老人ザン(Mr. Zhang),黒人系科学者のニール(Neal) など,まさに各国のステレオタイプのオンパレードといったところだが,20数人のキャラクターの中にはアンドロイドも混じっている
 これらのキャラクターには,いくつかのパラメータが用意されている。具体的には,金銭,エンターテイメント,社交,食欲,睡眠,ハイジーン(清潔),健康の七つだ。それぞれのキャラクターのパラメータを見ると,この中の一つに星マークが付いている。これは,そのキャラクターの一番の関心ごとを表す。つまり,一人でいるのが嫌いな寂しがり屋さんや,すぐに腹の減ってしまう人間,なんてことが分かるのだ。
 例えばお喋りが大好きなホシとキタは,二人組みで活動すると効率良いが,一人になると働かなくなる。人手が足りなくなったときのキャラクターの使い方などでも,プレイヤーは頭を悩ますことになるわけだ。
 またキャラクターごとに,各種パラメータの総合的な数値として"ハピネス"(幸福度)が表示される。キャラクターの欲求が満たされないでいると,労働意欲が減ってさまざまな弊害をもたらす。指示した仕事をすぐに打ち切ってしまったり,いうことを聞かなくなったりしてしまうのだ。しまいには喧嘩っ早くなり,あまり仲の良くないメンバーに鉄拳を浴びせてしばらくの間気絶(働けない状態)させてしまうことも。
 インタフェースの左部分に時計型のメーターがあるのだが,これはそのキャラクターがどれだけ働く意志を持っているか,今働く状態にあるかを示している。欲求のパラメータと共に,こまめにチェックしておく必要がありそうだ。

 プレイヤーには,一定時間ごとに自動的に資金が送られてくる仕組みになっていて,経済面の負担がないよう簡素化されている。どうやって資金を捻出するかではなく,どうやって手持ちの金をうまく使っていくかが重要なのである。
 こうして入手した資金を使って,バイオドームにさまざまなオブジェクトを配置していくことで,キャラクター達の欲求を満たしていく。家具,食料設備,レクリエーションなどのカテゴリーに分かれていて,ディスコフロア(エンターテイメント),ソファー(社交),メスホール(食欲),ベッド(睡眠),シャワー(ハイジーン)などの施設を用意するわけだ。ゲームが進むにつれて,バーカウンターやジャグジーのような,豪華で巨大なオブジェクトも追加されていく。
 食料は,メスホールを設置するだけではダメで,ニュートリエント・エクストラクタと呼ばれる工業機器を屋外に設置し,ハイドロモーフス(Hydromorphus)と呼ばれる植物からミネラルを抽出して作成する。キャラクターが操作する必要があるが,伐採から抽出,輸送までは自動的に行ってくれる。このような工業機器は,別の植物から武器となる発火物を抽出するウィーディング・ポストや,岩礁からシリコンを生産するためのシリコン・エクストラクタなどもある。
 エイリアンの対処用に,護衛犬やコマンダーなどのアンドロイドを設置することも可能。敵の来襲に備えるというのが,Strongholdを思わせるシステムである。しかし,すべてのエイリアンが悪者というわけではなく,中には地球人と会話がしたいだけの友好的なものもいる。キャラクター同士の会話が全部で900パターンも用意されており,彼らのスピーチを聞いているだけでも楽しいだろう。

 Space Colonyは,欧米ではTakeTwo Interactive社より2003年10月中旬に発売される予定。日本での発売は未定だ。
 シングルプレイヤー専用ゲームながら,その後の展開ではシムピープルのように新しい家具やミッションが用意される可能性もある。 Strongholdでもファンの要望に応えてきたFirefly Studios社の最新作だけに,今後も大きく展開されていくことは予想できる。肩肘はらずに気軽に楽しめるゲームなので,すでに公式サイト「こちら」でリリースされているプレイヤブルデモ(英語版)を楽しんでみるといいだろう。

*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

(C) 2001 FIREFLY STUDIOS