三國志IX

三國志IX

Text by 朝倉 哲也

 いよいよ3月14日に,コーエーから歴史シミュレーションゲーム「三國志IX」が発売される。今回マスター相当のCD-ROMが入手できたので,いち早くファンの皆さんに,プレビューという形で最新作についてお伝えしよう。
 「三國志IX」の公式サイトや,コーエーからもらった資料を読むと,本作の特徴として六つの点が強調されている。

  1. ミッション・エージェント・システムの採用
  2. シリーズ初の一枚マップ採用
  3. 戦場のカスタマイズ
  4. 兵法教練システム
  5. 壮大なBGM
  6. 最大8人までのマルチプレイ

 このプレビューにおいては,1〜4の4点について取り上げていこう。

ミッション・エージェント・システムの採用
 ミッション・エージェント・システムといってもほとんどの人は分からないだろうが,本作のシステムは軍事,内政,外交,計略など武将に命令を与える"戦略フェイズ"と,輸送,移動,戦争など与えた命令が実行されるのを見守る"進行フェイズ"とに大きく分かれている
 実際にプレイヤーが手を下せるのは戦略フェイズのみとなっており,進行フェイズではプレイヤーは戦略フェイズで出した命令の結果をじっと見つめるのみとなっている(出陣した武将達の目標変更は戦略フェイズで可能)。
 つまり出兵したが最後,10日間はプレイヤーは一切の命令を出すことができないようになっているのだ。出陣させる武将の選出や,兵数,どこが主戦場となるか,敵は迎撃に出てくるか,それとも篭城戦となるか,あるいは敵国に援軍がくるか,といったあらゆることをかんがみた上で命令を下さねばならない。自分の戦略がズバリと的中したときはモニターの前でニンマリとし,当てが外れたときは,それこそ切歯扼腕して見守ることとなる。

コマンドの横にはミニヘルプともいえるものが表示され,コマンドの成果にどの能力が必要か分かりやすくなっている

 この「戦争」については気になる人も多いと思うので,詳しく説明しておこう。まず,戦略フェイズで出陣する武将を選択する。武将は5人まで出陣させることが可能で,率いることができる兵数は大将の爵位によって変化する。一例を挙げると,爵位が"鎮東将軍"の趙雲は4万5000人の兵を率いることができる。
 次に部隊の陣形を選択する。陣形には魚鱗,鶴翼など12種類が用意されており,その種類は出陣する武将により上下する。例えば諸葛亮などは一人で11種類もの陣形を持っているが,趙雲は8種類しか持っていない(8種類の通常陣形は誰でも持っており,残り4種類の陣形には,それぞれ兵法が必要となる)。また陣形には攻撃力は弱いが防御力が高い,野戦には弱いものの攻城戦には強いといった一長一短が設定されているので,あらかじめどのような戦闘になるかを予測した上で選ぶ必要がある
 そして武将個人が持っている兵法を選択する。これは各武将がもつ戦闘特技のようなもので,騎馬で走りながら馬上から弓を射る"騎射"や,敵を混乱させる"混乱"など20種類以上が用意されており,あらかじめどの兵法を戦闘中に出させるかを決めておかなければならないのだが,兵法の発動はプレイヤーが戦闘中に指示することはできない。いつ,どこで,誰が兵法を発動させるかは,やってみなければ分からないのだ。
 そして総兵数を決定し,いざ出陣となるわけだ。
 先にも述べたとおり,いったん出陣を決定してしまえば,あとプレイヤーができることといえば,出陣した部隊の目標を変えることしかできないため,今まで以上に事前の下調べや,計略や外交戦術による敵の弱体化などが重要だ。

陣形を決め,出兵先を選択すれば,あとは武将の力量次第。呂布の言葉が頼もしい

シリーズ初の1枚マップ採用
 これは三國志シリーズとしてはかなり画期的な試みで,中国全土が1枚のマップになっているのだ。ちょうど「エイジ オブ エンパイア」のマップのようなものだと考えれば分かりやすいのではないだろうか? つまり自国の都市の画面をスクロールさせていくと,隣の国の都市が現れ,そのまた隣の都市がというようにすべての都市が,RTSゲームのように一枚の巨大なマップ上に乗っかっているということだ。
 進行フェイズでは基本的にプレイヤーは何も手を下せないので,その前の戦略フェイズで出兵を決定していれば,自軍の部隊が都市を出て,目標に向かっていく様を見ることとなる。このあたりはまるでRTSゲームのようで,三國志のシリーズをずっとプレイしてきたファンには目新しく映るだろう。
 出兵した部隊が交戦しているシーンも,まるでRTSゲームのユニットが戦っているようで,戦闘中には各部隊の武将が「雑魚は道を明けろ」とか「このままではだめかな」などと,マンガのフキダシのような表示でセリフを言うのも面白い。
 また,一枚マップになったことで,自分とは関係のない勢力同士の戦いがすぐ隣で行われているのが見えたりするのも楽しい

結構よくしゃべる武将達。乱戦になると,あっちでもこっちでもしゃべり出す


戦場のカスタマイズ

 これもかなりRTSゲームを意識しているようなシステムで,マップ上に砦や柵や土塁といったものを建設することができるようになっている。種類は最大8種類で,あらかじめ敵が進軍してくると思われる地点に砦を作って兵をこめておいたり,土塁を築いて敵の進軍を遅らせるといったことができる。
 また一枚マップになったことで,出兵した部隊の進軍速度によっては,目標地点に行くまでにかなり時間がかかることもある。そんな時に,途中に砦を作っておけば,そこを拠点とすることで進軍時間の短縮を図ることもできる。
 具体的には,戦略フェイズ中に建設を行わせる武将を選出,何を建てるかを決定して実行してやれば,次の進行フェイズのときに,建設部隊が出て行って,建設場所に建設する。選んだ武将の率いる兵士数や能力値によって,建設が終了するまでの時間が変化する。最前線の重要な拠点を,能力の低い武将に建設させていると,1回や2回の進行フェイズでは建設が終わらないこともあり,危険この上ない。

砦の強力版,城塞なんていうのも建設できる


兵法教練システム
 武将には個人の特技である兵法が設定されていることは前にも書いたとおり。この兵法は最初から持っているものに加え,修練することで新たに覚えることができる。といってもプレイヤーが「これを覚えろ」と指示するのではなく,特定の条件を満たすことで,武将が自発的に申し出てくる,"イベント"という形で覚えることができるようになっている。兵法には30種類以上があり,ほとんどが戦闘時に発動するもので,あるとないとでは大きな差となってくる。
 また,兵法の発動を見ていた部隊内にいた武将が,同じ兵法を会得したり,敵から受けた兵法を学んだりすることも多いようだ。

Update:2003/3/3
 この兵法教練システムについては,より詳しい内容を聞くことができた。兵法の会得には戦闘時に自分や同じ部隊にいたほかの武将が兵法を発動することで,"熟練"がたまっていく。この熟練が一定値までたまると,その武将が新たな兵法を覚える確立が発生。その後,部隊内の誰か,または敵の兵法が発動すると,それを覚えるようになっているということで,この方法のほうが兵法を覚える機会が多いということだ。

 また,その他の条件としては"ある都市を所有していると,毎季節ごとに兵法を覚えるイベントが発生する"というのと,"探索中に兵法を覚えるイベントが発生する場合もある"ということだ。
 兵法を覚えるイベントが発生する(しかも毎季節!)"ある都市"というのは教えていただけなかったので,武将に兵法を覚えさせようというときは,率先して戦いに参加させるのが,一番手っ取り早い方法となりそうだ。

左が諸葛亮の兵法,右が劉備の子,劉禅の兵法


 以上,コーエーの挙げるゲームの特徴に沿って見てきたわけだが,全般的に見てRTSゲームの影響を色濃く受けているようである。ただしRTSのように,ゲーム中は片時も目が話せず,マウスとキーボードを駆使してスピード命といった展開にはなっていない。戦略フェイズでは,じっくりと考えて決定を下すことが可能だが,いったん進行フェイズが始まると,あとは手に汗をにぎり成り行きを見守るという,シミュレーションゲームとRTSゲームのいいところがうまく混ざっているという印象を受けた。

 しかしながら,そろそろインターネット/LANによるマルチプレイを搭載してくれても良いのではないだろうか。ゲームの性格上1プレイが長くなることは予想に難くないが,最近ではADSLによる"インターネットつなぎっ放し"環境の人も増えているようだし,1台のPCで代わりばんこにゲームをプレイというのも,ちょっと……。

*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

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