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Text by 奥谷海人
1998年にリリースされた「Railroad
Tycoon 2」は,ほかのバジェット系のタイクーンゲームには見られない完成度の高さを誇る経済シミュレーションゲームだった。そしてこの秋,新しいインタフェースや経済システムを引っさげて,「Railroad
Tycoon 3」(以下,RT3)がリリースされる。完全3Dとなった美しいグラフィックスで,ファンのハートもがっちりと掴みそうな気配だ。その内容を,分かる限り書き出してみよう。
1990年にリリースされた「Railroad
Tycoon」は,「Civilization」シリーズでもお馴染みのシド・マイヤー(Sid Meier)氏と,「Age of Empire」シリーズのブルース・シェリー(Bruce
Shelly)氏が共同で手掛けた作品で,古参ゲーマーの記憶に残る名作の一つだろう。RTSがなかった時代に,リアルタイムでライバル鉄道会社と会社経営を競い合うのが斬新だった。その続編を1998年に開発したのがPopTop
Software社で,前作を引き継ぎながらも,独自のゲームエンジンによって,細かいアニメーションや豊富なキャンペーンを実装してしていた。プレイヤーが比較的簡単にマップやシナリオ作りを楽しめるとあって,欧米のみならず日本でも評価の高かった作品である。
新作となるRT3の基本的なゲームプレイは,前作の良い部分を踏襲している。1830年代に幾ばくかの資金を元手に鉄道会社を興し,地域的なキャンペーンをこなしながらアメリカやヨーロッパの各地に自社路線を敷設していくというものだ。駅を設置しながら物資や人口の豊富な土地へ路線を伸ばし,時代の進化と共に供給される40種類にも及ぶ列車を購入しては,円滑で効率の良い鉄道網を築いていく。物資を供給する駅付近の環境整備も柔軟に出来るようになり,小さな田舎町でもプレイヤーの投資によって巨大なメトロポリスへと変身することだってあるのだ。
RT3は,PopTop Software社が開発した新しいゲームエンジンによって制作されている。視点の移動も自由な,完全3Dグラフィックスで,線路の先に続く隣りの駅や町の様子も確認できる。樹木は,1画面に付き2万本ほどもレンダリングされているとのことだ。嬉しいことに,本作では前作になかったトンネルや陸橋なども設置できるようになり,より複雑な路線作りを楽しめるようになった。
そもそも,地形はサテライトマップを基に制作されているのだが,マウスホイールを使えば,はるか雲の上にまでカメラを滑らかにズームアウトさせることもできるのが圧巻である。反対に,線路の近くにまでカメラを下ろせば,彼方から列車が近づくにしたがって,振動音も大きくなってくるという凝りようだ。
さらには,時計の針に合わせて昼夜の移り変わりも表現されている。空に浮かぶ雲は悠々と流れていき,やがて夕焼けと共に影が長くなり,建物の窓から灯りが漏れ出し,周囲が群青の夕闇に包まれていくのである。雲は,雨雲へと成長し,雷雨へと発展することもあり,こういった事象や天候の変化がゲームプレイにどう関わってくるのか楽しみだ。
洗練されたメイン画面とインタフェース
RT3では,インタフェースは前作の錆びかかったようなノスタルジックな色合いは継承しているものの,さまざまな点で見直されている。列車や駅のリストや物資の売買,会社の経営管理といったウインドウは取り払われ,すべてメイン画面で行えるようになったのが1つ。これらは,すべて画面下部インタフェースの機能として取りこまれた形だ。つまり,セットアップ以外は画面が切り替わることなく,プレイできるようになっている。細かい部分では,プレイヤーから要望の強かったUndo(やり直し)ボタンが存在するのもうれしい。
駅のエンハンスメントは,これまで特別のウインドウ内でのみで行われることだったのが,新作では給水所や修理工場,ホテルなどの施設を,プレイヤーが駅の周囲に建設することが可能になったようだ。これは,ウインドウ内だけでなく,実際のメイン画面にも反映されることになる。プレイヤーが好きな場所に建設できるので,駅のある町を自由にカスタマイズできるのである。さらには,近辺にランダムで登場する資源に合わせた工業施設も,プレイヤーが実際に購入して,好みの場所に建設することが可能となった。このあたりは,かなり経済タイクーンゲームらしくなったのではないだろうか。
中でも一番工夫が見られるのが列車に関するインタフェースだ。一つの路線を作り上げ,列車を走らせておけば,その駅付近で生産される物資の中から,最も高額で取り引きできるものが自動的に運搬対象となる。もちろん,赤字を覚悟で特定の物資を運ばせたい時は,プレイヤーが独自に設定することも可能だ。例えば,木材運搬が最高の利益を上げる路線があったとしても,近々建設予定の製鉄所への供給を見込んで,鉄や石炭を運び込んでおく,ということも当然ながら可能になっている。
しかし,開発チームではほとんどのプレイヤーが,効率の良い物資を選択する傾向にあると考え,その手間を省くような仕様に変更したのだと思われる。これは,とくに数十本の路線を運営しなければならないゲーム中盤以降で,プレイヤーからかなりのストレスを取り払ってくれるだろう。
経済システムの再考で,よりリアルなシミュレーションを実現
「Railroad
Tycoon 2」では,路線の距離が長いほど収益が高くなるという,いたって単純な経済システムが採用されており,近くに資源があっても,わざわざ遠方から取り寄せるといった,非常にゲーム的な手段を使って簡単に利益を得ることができた。RT3では,ゲーム世界の物資の供給と需要は,列車以外にも手段があるという想定をもとに,まったく新しい概念が与えられている。
まず,ゲームのプログラム内部では,マップ生成時に,地形に従って資源や町からの物資の流れが自動設定されるようになった。この流れは,列車以外の交通手段や人力によって指定される経済範囲のようなもので,水上運搬が可能な海や川の存在によって増幅されたり,山脈によって途絶してしまったりする。
例をあげると,ロッキー山脈で伐採した木材は,遠くニューオリンズまで運ばなくても,ミシシッピー川の近くにある駅に下ろせば,自動的に川を使って運搬され,収益を得ることが可能なのである。他にも,フロリダ辺りから人口の多いニューヨークへとオレンジを運びたいが,ライバル鉄道に阻まれてニューヨーク内に路線を拡張できない場合などは,ニューヨークの経済範囲内にある近辺の駅に物資を下ろすだけでも目的は達成できる。当然ながら,ニューヨークの経済範囲から遠ざかるほど,プレイヤーの利益率も下がってしまうのではあるが,わざわざ膨大な資金を投入して新しい駅を作るよりも,近くの弱小都市でも十分に儲けることだって可能なはずだ。そのマージンをどこまで許せるかという,プレイヤーの経営戦略的な判断に委ねられるのである。
RT3では,マルチプレイヤーモードにも重点が置かれて,4人程度の対戦プレイが可能になるようだ。インタフェースが簡略化されたことから,かなりプレイしやすいものと予想できる。ゲームに収録されるマップは,北アメリカやヨーロッパを中心にしたものになるものの,マップエディターやシナリオエディターも付属されるだろうから,さらなるオンラインコミュニティーの育成にもつながるに違いない。
発売は,Take-Two Interactive社のブランドGathering of Developersから2003年秋の予定となっている。
*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。
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