Freelancer

●Preview
The Sims Online
(邦題:シムズオンライン)
 #1

Text by 川村ハルト


 小さな"Sims"(シム人)に家や家具を与えて,その生活を見守ったり干渉したり……。エレクトロニック・アーツ・スクウェアのコミカルな人生シミュレーション「シムピープル」(原題は「The Sims」)。なにせ発売後,ずーっと欧米のセールスランキング上位に陣取り(1位に返り咲くこともしばしば),PCゲームの販売本数世界一宣言までしてしまったほど普及し続けている化け物タイトルである。
 世界中が期待する「シムピープル」のオンライン版,「The Sims Online」。全プレイヤーの土地(ロット)をオンラインでつなぐという,「シムピープル」ファンなら誰もが夢見たこの壮大なプロジェクト。果たして「シムピープル」の魅力をそのままに,世界の人々とコミュニケートすることに成功しているのか? もう一つの人生空間となりうるほどの可能性を秘めているだろうか? エレクトロニック・アーツ・スクウェアに押しかけて長時間お邪魔してプレイしてきた「The Sims Online」初期β版の体験レポート第一報をお伝えしよう。なお,ここに書かれている内容は製品版とは大きく仕様やバランスが異なっている場合もある。そこらへんはあらかじめご了承のほどを。なお画面撮影は一切禁止だったので,公式サイトで公開されている画面のみの掲載になってしまったことをお詫びしておく。




■ついに実際に触れてみた「The Sims Online」

 「The Sims Online」では,一つのアカウントで3人のシム人を作成できる。だが一つのサーバには1アカウント1キャラしか入れない仕様らしく,また執筆時点では"Alphaville"(city type 2. Lots of water)という一つのサーバしか存在していないため,キャラは1人しか作成できない状態だった。「シムピープル」のように非公式のSkinデータをガンガン追加していくのは難しそうだが,シム人用の顔パターンや衣装のバリエーションは最初からかなり豊富に用意されている。ロボットのボディに白熊の顔をつけてみたところ,結構興味を持たれた。いくらバリエーションが豊富とはいっても基本的に見慣れたシム人ばかり。外見はかなり重要かもしれない。
 今回のシム人は社交性や清潔度などの初期パラメータがなく,AIも持っていない。あらゆる行動は指示を受けなれれば行なわないのだ。トイレの水を流す,食器を片付けるといった行動はいちいちコマンドで指示していかなければならない。まぁ別にトイレの水を流すくらいはさほど苦痛じゃないのだが,テレビを見ながら友人と会話してSocial(社交)のパラメータを上げるという行為などが自動では行なえないのが多少手間だったり,細かな変更点はいろいろと生ずるようである。

 マップは水辺の多い地形で,道路が整備された一角に人が集中しているようだ。ほかにも小さな島などに家が点在している。最果ての地に家を建てたからといって交通に実質的な困難が生じるわけではなく,誰もがどこへでも制限なく訪れることができるようだ。現時点では600人前後の参加者数で広々としていたが,もしサービスが本格的にスタートしたら一つのマップ(サーバ)が埋まり切ってしまうのは時間の問題のように思える。
 運よく人気エリアの一角を購入できたため,ここに"forGamer's Room"と名づけてみた。1人のキャラは4000の資金を与えられる。ロットの価格は2000で,陸上の空き地のみ購入できる。購入したロットのうち,最初は12×12ブロックしか使えない。敷地をこれ以上拡大するには,さらに2000の資金が必要らしい。とりあえずは先の話だろう。
 与えられたロットには,電話ボックス,くずかご,郵便受けがもれなくついてくる。電話ボックスは,シム人が現在のロットを出てほかのロットを訪問するときに使用する。くずかごは前作と同じで,いっぱいになったごみ箱の中身を最終的に始末する場所だ。郵便受けは前作とは異なり,ほかのユーザーから送られてきたメールが届く場所となっている。
 実際のところ,土地代を引いた2000の資金では必要最低限の生活用品すら揃わない。筆者は床と壁を小さめに用意し,ドアと窓を取り付け,壁紙を貼って風呂とトイレを購入したところで資金が尽きてしまった。冷蔵庫もベッドも買えなかったのだ。
 初期資金のバランスはともかく,プレイに関しては前作「シムピープル」の操作方法,ゲームルール,セオリーといった多くの知識をそのまま引き継げるようである。自宅にいてビジターも現れない限り,プレイ感覚はまさに「シムピープル」だ。


■ルームメイトとお金の稼ぎ方について

 ここで「The Sims Online」の特徴の一つ,"ルームメイト"が重要になる。1プレイヤー1シム人制の「The Sims Online」では,家族(ルームメイト)はほかのプレイヤーに依存するしかない。ルームメイト契約は,コミュニケーションのコマンドをオープンした状態から行なう。このためシム人同士が直接会って会話できる状態でなければ,ルームメイトにはなれない。自分で作成した3人のシム人をそれぞれお互いルームメイトに設定することもできないようだ。
 今回はエレクトロニック・アーツ・スクウェアの粋な計らいで二つのテストアカウントを用意してもらえたので,早速その場でシム人をもう1人作成。さっそくルームメイトとして登録してみた。ルームメイトは土地代が必要ないため,初期資金4000をすべて家具に注ぎ込むことができるのだ。ルームメイト同士は家や家具をほぼ自由に共有することができる。相手の購入したオブジェクトを勝手に売り払うことだけはできないが,家の増築や使用・移動などは相手の物でも勝手に行なえる。とにかく知人を誘うとか何とかして,ルームメイトを獲得するか,どこかのルームメイトになったほうがいいだろう。ただ,あまり得体の知れない人を気軽にルームメイトにしてしまうと,家をめちゃくちゃにされる恐れがあるかも。

 「The Sims Online」は「シムピープル」のJobシステムが存在せず,新聞などで気楽に仕事を探せない。収入は生産機能のある家具を使用(ピザを焼いたり絵を描いて売ったり)するか,ほかのシム人が自分のロットを訪れて利用することで得られるようだ。家の各ドアには入場料などを設定することができるのだ(無料開放も可能)。シム人を従業員として雇い入れてくれるホテルやレストランなどもあるという話だったが,今回は確認できなかった。
 とにかくβ版なのでまだなんとも言えないが,基本的には多くの人がお金の作り方に苦労している様子だった。長くオンラインしている人ほど収入は何かと有利らしく,さらには金持ちほど,よりお金を稼げるという資本主義的な流通システムのようである。

■他人の家を訪れて好き放題に利用してしまう

 それでは「The Sims Online」の目玉要素,他人のロットを訪れてみよう。電話ボックスを使ってシム人を外出可能状態にし,Neighborhoodビューでよその訪問可能ロットをクリックすれば移動できる。オーナー及びルームメイトがオフラインで留守中のロットは入れないようだ。
 現時点での話だが,お風呂やらソファーやら様々なオブジェクトを取り揃えた家が無料開放されているロットも結構多い。お金がなくて自宅に家具も何も揃えられない序盤は,迷惑にならない範囲で他人の家を活用させてもらえばSkillとお金をちびちび稼いでいけそうだ。なお,こういった人気スポットを簡単に検索する手段もある。
 ちなみに床も壁もなく,冷蔵庫とソファだけで生活している人もいた。そこのオーナーは筆者が訪れると,わざわざ冷蔵庫から食事を出してもてなしてくれたのだ。ちょっと感動してしまった。オンラインゲームらしく,プレイヤーの人柄というのはシム人を通して伝わってくるものだ。
 他人とのコミュニケーション手段は挨拶,遊び,ダンス,侮辱,ロマンスなど前作からお馴染みのコマンドも含めて大量に用意されている。これによって友好度が上下したり,"フレンド"登録によって特別な友達となることもできるようだ。人間関係の相関図をビジュアル的に確認することができる。しかし「The Sims Online」におけるコミュニケーションのもっとも核となる部分は,数値の上げ下げではなくプレイヤー同士の心情に拠るところが大きくなりそうである。MMORPGのような公共の場では1人黙々と経験稼ぎを続けることもできるかもしれないが,「The Sims Online」では大抵の活動の場が誰かの空間なのだ。心を閉ざして生きてはいけないし,言葉が通じなくても友好を示せるようさまざまなコミュニケーション手段が用意されている。ただし英語がまったくわからないと,やはり苦労しそうだ。

 最初のプレイですべてを見たとはとてもいえないが,これはプレイヤー間のコミュニケーションをかつてないほど円滑かつ膨大に広げる可能性を秘めているように思える。見知らぬ人と次から次へと怒涛のごとく出会い,交流することができるのである。手軽に使える検索・ブックマーク・メール機能は,一期一会になりがちなオンラインの出会いを長期に渡らせることも容易にしてくれるだろう。何よりシム人の容姿や挙動,家の内装などを見るだけでも,うっかり簡単に心を開きたくなってくる。まだまだ結論は出せないが,「シムピープル」のオンライン化はかなり理想的なレベルで実現されているようである。正直,社会現象的なチャットツールに化けてしまう恐怖にも近い可能性を感じたのだ。少なくとも欧米での大ブレイクを妨げる内容的な障害は見られなかった。日本でどこまで受け入れられるかが興味深いところである。
 今後もβ版レポートは実施したいので,どうぞお楽しみに。



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