●Preview#37:No One Lives Forever 2

Text by Okutani

ケイト・アーチャーの冒険の舞台は,
日本からシベリアまで

 1970年代を舞台にした,スパイ映画「オースティン・パワーズ」顔負けのブラックユーモアと痛快なアクションが好評だった第一人称視点型のシューティングゲーム「No One Lives Forever」(日本ではサイバーフロントから発売中)の続編が登場する。「No One Lives Forever 2」(以下,NOLF2)は,開発元のMonolith Productions社の姉妹会社であるLithTech社の,第3世代ゲームエンジンとなるLithTech Jupiter System(以下,Jupiter)で開発されている。そのため,前作に比べグラフィックスが大幅に向上しているのが特徴だ。

 主人公は,前作でも活躍したイギリス政府の諜報機関UNITYに属する女性スパイで,サイケデリックな衣装に身を包んだケイト・アーチャ−だ。残念ながら,肝心のストーリーは一切明かされておらず,彼女が再び世界を股にかけてのアドベンチャーに出る経緯も分かっていない。ただ,日本で女忍者と戦ったり,シベリアでロシア兵との銃撃戦を行うことは確実だ。前作においては,"FPSとしては「Half-Life」以来の快挙"ともてはやされていた部分でもあるだけに,今作でもストーリーに大きな仕掛けが組み込まれることになるのは間違いないだろう。LithTech社幹部の話によると,Jupiterはいくつもの細かいツールで構成されており,中でも映画的なストーリーの進行で使用されるスクリプティング機能だけを専門とするコマンドエディタによって,インゲームムービーを駆使した,より深みのある物語を達成できるとのことだ。
 現在分かっているのは,主人公の前に立ちはだかる敵は,前作と同じ秘密組織H.A.R.Mであること。そして,前作以上にステルス(隠密行動)に特化したゲームとなることだ。これに従ってゲームシステムも若干変更されていて,例えばプレイヤーが隠れるべきところにはHマークが表示されるようになっている。

アートワークや水の効果に見るNOLF2の作り込み

 NOLF2の凄さは,前作以上にディテールの細かさで見てとれることができる。小さなオブジェクトを実際に操作することが可能になっており,民家の門灯の電球をゆるめて周囲を暗くして物陰に潜むとか,オフィスの引き出しを一つ一つ開けることなどはお手のもの。日本のマップに出てくるアートワークには,「旅宿・鶴一」とか「クリーニング店 襟シャツ・ズボン」というような,非常に"日本らしい"文字が並んでいる。
 ちなみにこの手の日本風看板を扱ったゲームは多いが,誤字や反転,浮世絵の使用という,異文化を安易に扱ってしまったために地雷を踏んでしまったケースを,我々は何度も目撃している。NOLF2は,その数少ない例外になりそうなのだ。日本の田舎には多い,木製住宅にブロック塀というアンバランスな光景にも対応したテクスチャもキチンと用意されていて,日本で現地調査したであろう開発者の苦労がにじみ出ている
 NOLF2で使用されている三次元環境マッピング(Cubic Environmental Mapping)の効果による,水面の反射は見事である。いままでのように,チラチラとパターン化されたような環境バンプマッピングの効果とは見違えるほどのもので,透明感がありながらも周辺の風景が映り込んでいて,なめらかな水の流れが表現されているのである。それも,これまでのような技術的な見世物として活用されているだけではなく,パイプを破壊して水を出すシーンや,激しい潮流が主人公を襲うといったシーンも登場する予定だ。現在公開されている画面写真からも分かるように,滝の水しぶきさえピクセル単位で描かれており,"水"という,ゲームにとっては非常に小さな要素にさえ焦点を当てて,これだけ作り込まれているのには驚くばかりである

9万ポリゴンで表現された世界

 Monolith社はNOLF2の特徴として,地形に関するレンダリング性能を強調している。現在公開されているα版段階のレベルでは1シーンにつき約3万ポリゴンで制作されており,その半分が樹木や岩石などのオブジェクトに使われている。それほど多くない数字と思われるかもしれないが,Jupiterの能力では最大で9万ポリゴンが地形だけに使用でき,もちろんこの数字には建物やキャラクターのモデリングに使用するポリゴンは含まれていない。つまり,樹木や岩のほかは,土や砂のような地面部分だけにこれだけのポリゴンを使用できるようになるのである。NOLF2のプレイに必要な環境は,PentiumII/500MHz,メモリ96MB程度になる見込みなので,このゲームの3万ポリゴンというのは,おそらくFPSとしてのスピードを重視した結果だろう。ちなみに,前作で地形に使用されていたポリゴン数は1000程度らしいので,約30倍もの地形レンダリング能力を持っていることになる。
 キャラクターモデルに使用しているポリゴン数は確認できていないものの,もちろん前作以上に丸みを帯びた,細かいモデリングになっているのは想像できる。とくに注目すべきはキャラクターの影で,光の濃度の薄い身体の下部はより暗くなっていて,キャラクター自身が自分の体に影を落としている。このあたりは,DirectX 8.1でフィーチャーされているプログラマブルシェイダーの機能を存分に使っているようだ。元々LithTechエンジンは,「DirectEngine」という名称でMicrosoftと共同で開発していたものだし,前作は唯一DirectMusicを生かした作品でもあったので(現時点でもそうだ),開発チームにDirectX APIに精通するメンバーがいるのだろう。

 NPCの思考ルーチンに関しても,かなり面白いアプローチが見られる。敵のキャラクターの一人一人に長いスクリプト(行動パターンのコード)を書き込んでいくという既存のテクニックを使った前作に限界を感じたという開発チームは,新しい発想でNPCに特定の行動や思考パターンのセットを与え,ゲーム内ではそれに従って自由に行動させるようにしている。
 これらのNPCには,その状況に従って「シムピープル」のように周囲のオブジェクトにピンポイントを付けることで,それぞれにユニークな動きをつけることが可能になったのである。このオブジェクトは"スマートオブジェクト"と命名されており,例えばオフィスなら窓,机,引出し,ラジオなどがこれに該当する。その状況に設置されたNPCは,プレイヤーが忍び足で近づいてみると,ヒマそうに机に足を投げ出したり,窓の外を見てみたり,ラジオをチューニングしてみたりと,人間的な行動を取るようになったのだ。もちろん,これは戦闘場面でも机を倒してカバーするなどという行動へと直結する。

 NOLFシリーズだけにプレイヤーを笑わせるブラックジョークも満載されているはずだし,前作の,プレイヤーを強引に引っ張っていくストーリー進行に違和感を覚えなかった人なら,必ず満足できるゲームになりそうだ。まだまだ不明な点も多いが,アメリカでの発売は2002年秋となっている。