Leisure Suit Larry:Magna Cum Laude

Text by 奥谷海人

 "レジャースーツ"の異名を取るラリーが帰ってくる。'80年代後半にアメリカの青少年を虜にした,同国では珍しい恋愛ゲームのヒット作「Leisure Suit Larry」シリーズは,当時精力的に活動していたSierra On-Line社(現Vivendi Universal Games)の主力作品だった。
 正直「3D化した」といわれても,ブランクが長すぎて"今更"と感じてしまうが,マンネリ化しつつあるゲーム業界に,一石を投じる作品になる可能性は十分にある。

愛の探求を続けるラリーのドタバタアドベンチャー

 ほかのキャラクターの半分ほどの小さな体に似合わない大きな頭をリーゼントで決め,胸元を開いたディスコ風の衣装に身を包んだ究極の色男……を目指すレジャースーツ・ラリーは,1987年に「Leisure Suit Larry 1:In the Land of the Lounge Lizards」がリリースされて以来,1996年の「Leisure Suit Larry 7:Love for Sail!」で幕を閉じるまで大好評を博したアドベンチャーゲームの主人公だ。イケメンだけが許されるであろう言動を恥じることなく見初めた女性に行い,そのたびにトラブってしまうラリーを操作していくうちに,プレイヤーはいつしか同情を超えた愛着を感じていく。「こんな奴にはなりたくないなあ」と思いながらも,どこか憎めないのがラリーなのである。決してセックスばかりが強調されたゲームではなかったが,今のアメリカの画一的なゲームの氾濫と比較しても,かなりぶっ飛んだゲームだったのは間違いない
 Leisure Suit Larry 1は,当時のSierra On-Line社の作品がすべてそうであったように,技術的にも意欲的な作品だった。まだコマンドをキーボードから打ち込むのが主流だった時代に,画面下部に用意されたインタフェースにあるアイコンをクリックすることで,"見る"や"話しかける"といった行動を取れるといった画期的な手法を使ったのだ。その後も同シリーズは,'90年代後半に3D化の波が押し寄せるまでの間,ポイント&クリック型アドベンチャーゲームの基礎を作り続けた。

 このゲームの開発に携わってたのが,Sierraの創設者でありプログラマーのケン・ウィリアム(Ken Williams)氏と,デザイナーのアル・ロウ(Al Rowe)氏の二人。
 ソフトなエッチ系に含まれる内容だったが,技術力の高さやユーモアのセンスは格別で,なんとシリーズの売り上げは1000万本を超えている。しかもゲームを終わらせることに執念を燃やしたプレイヤーは多かったようで,Web上での攻略サイトが一般的でなかったことも手伝って,「ソフトの販売数以上に攻略本が売れた」という伝説さえも持っている。

 その8作めとなる「Leisure Suit Larry:Magna Cum Laude」の開発を行うHigh Voltage Software社は,「NBA Inside Drive 2004」(XBox)や「Hunter:The Reckoning」(GC/PS2/Xbox)などを制作した,コンシューマ用ゲーム開発会社の中堅。Vivendi Universal Games社がLeisure Suit Larryシリーズをコンシューマ市場に持ち込むことを念頭に開発元を選択したのが分かるだろう。
 PC版は,キーボードやマウスによるコントロール以外の差は少ないと思われるが,解像度の高さを利用したテクスチャのきめ細かさで,ドット絵から飛躍的に向上した3Dモデルのキャラクターが満喫できるだろう。

15人の女の子をクドいて,大学一のモテモテ男に変身

 シリーズの生みの親であるアル・ロウ氏のユーモアなしでは,ラリーゲームの新作とは言い難いということはHigh Voltage Software社も理解しているようで,8年というブランクを経て再登場するLeisure Suit Larry:Magna Cum Laudeの主人公は,ラリー・ラファー(Larry Laffer)ではなく,その甥っ子であるラリー・ラベージ(Larry Lovage)になっている。
 髪の色が茶色く,衣装もディスコ風ではなくなったが,女性を"モノにする"ためには後先考えずに行動する姿は,先代のラリーそのままだ。また,ラリー・ラファー自身も最新作にチョイ役で登場する予定で,推定30代後半の熟練ラブハンターとして,甥っ子を手解きするのかもしれない。

 2代めラリーは,大学の学生寮に入居したばかりの学生という役どころで,女の子にモテモテの"華々しいカレッジライフ"へのデビューを狙っている。しばらくはパーティに呼ばれることもなく勉学に勤しんでいたが,テレビ局のデートゲーム番組がやって来るという話を聞きつけ,女性達から注目されたい一心で,そのチャンスに賭けることを思い立つのである。
 このゲームの最大の目的は,女性とベットインすること。しかし,テレビ番組への出演や学業を怠けることによる退学の危機などのサブストーリーも絡み,アドベンチャーとしても納得できるボリュームになるはずだ。ゲームプレイ自体は,「Grand Theft Auto:Vice City」を思わせる非常にノンリネアなものになっていて,直線的にゲームが進んでいくのではなく,プレイヤーの行動範囲が規定されていない

 Leisure Suit Larry:Magna Cum Laudeで恋愛対象となる女の子は15人で,彼女ら一人一人を,さまざまな手段を使ってクドき落としていかなければならない。自由度の高い世界を動き回りながら,それぞれに個性や趣味が異なり,サブストーリーを持った彼女らの心のツボをついて,キャンパス随一のモテモテ男へと生まれ変わるのである。ソフトな愛の表現しか用いられていないが,完成すれば17歳以上のプレイヤーに限定した販売となるようだ

 従来の選択式の会話システムではなくなり,会話が始まると画面の下に表示されるウィンドウのアイコンを移動させて,相手側のムードをコントロールしていくというシステムが採用されている。左から右へ流れる精子のような形状のオブジェクトを動かすというサイドスクロール型のゲームのような感覚で,障害となる赤色のアイコンを避け,緑のアイコンに当たると相手に好印象を与えるというわけだ。かなり簡略化されているように見えるが,ゲーム中でキャラクターとのインタラクションが継続されるために,ゲームプレイとしては遜色はないだろう。
 会話には9万フレーズが用意されており,カートゥーン風ながらもモーションキャプチャによる1000パターンの動作で,キャラクター達が動き回る
 入れない場所の扉を開けるために,NPCと会話して糸口を探していくというような,Sierraのアドベンチャーゲームの典型的なパズル要素もなくなった。その代わり,女性の関心や,収入を得るための「ダンスゲーム」や「一気飲み大会」というようなミニゲームが満載されていて,その積み重ねで新しい展開が生まれるというようなスタイルとなった。
 これまでとは大きく変わったゲームプレイだが,絵の雰囲気はシリーズ後期の画風を継承しており,前作を知る人でも違和感なく楽しめるだろう。

 「Leisure Suit Larry:Magna Cum Laude」の発売日は,2004年の後半が予定されており,まだしばらく待つ必要がありそうだ。
 '80年代から'90年代にかけて,盛況だったアドベンチャージャンルの一翼を担ったもう一つのパブリッシャ,LucasArts Entertainment社も,「Sam&Max」や「Full Throttle」などの続編制作を発表しており,ここしばらく元気のなかったアドベンチャーゲームが復活しそうな気配。
 ネットワークゲームの全盛期といわれるこの時代に,どこまで話題となるかが楽しみである。

*ゲーム画面はすべて開発中のものです。また,本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

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