Larry Bond's Harpoon4

Text by 奥谷海人

 "Harpoonシリーズ"といえば,'80年代に一世を風靡した海戦ストラテジーゲームの金字塔だ。「Lock On:Modern Air Combat」と同じく,Broderbund Software社時代から長らく開発が続けられてきたこの「Larry Bond's Harpoon 4」も,ようやく2004年早々にもUBI Software社からリリースされる見込みとなった。コアなミリタリーシムファンにも嬉しい限りだ。


海戦ストラテジーの大御所が帰ってきた!

 SSI(Strategic Simulations, Inc)社は,1979年に設立してApple II用ソフト「Computer Bismark」を発表して以来,「Panzer Generals」や「Silent Hunter」など多くのストラテジーゲームを手がけてきた。とくにボードゲームのコンピュータゲーム化が得意で,"ゴールデンエイジ シリーズ"とも呼ばれた「Dungeons & Dragons」などのRPGも手がけている
 しかし'90年代以降,3Dグラフィックスの進化と共にハードなシミュレーション/ストラテジーゲームが売れなくなり始める。アメリカの強豪販売会社として知られたBroderband Software社の迷走に始まり,2001年にSSI社のアセットを含めた全権がUBI Software社に譲渡されるに至って,SSIの名前も歴史の1ページと成り果てたのだった。
 今回紹介する「Larry Bond's Harpoon 4」(以下,Harpoon 4)は,SSIの閉幕と同時に開発中止という憂き目に合っていたのだが,2003年4月にUBI Software社から突如復活が表明された。縮小はしたものの根強いファンの多いストラテジージャンルを盾に,アメリカに本格的に根を下そうというUBI Software社の意思の現れだろうか。
 ともかく,こうしてHarpoon 4は,UBI Software社と「Chess Master」シリーズで提携したルーマニアのUltimation社によって再開発されており,2004年1月をメドにリリースされることになったのだ

 ラリー・ボンド(Larry Bond)氏は,アメリカで有名なミリタリー小説家で,同じくゲーム業界に進出しているトム・クランシー(Tom Clancy)氏と「Red Storm Rising」で共同執筆して以来,「Red Phoenix」や「Vortex」などの作品を書き下ろしている。Harpoonは,元々彼が開発した現代戦ストラテジーもののボードゲームで,第4版も1997年にH.G.Wells賞を受賞するほど定評あるゲームである
 そのボードゲームをコンピュータゲーム化したHarpoon 4は,1984年から2000年までの北大西洋地域の広大な大海原を3Dグラフィックスで表現している。時代設定から考えて,ソビエト連邦崩壊前夜,冷戦時代終盤の模様を描いているのであろう。
 Harpoon 4には1000種類の"プラットフォーム"と呼ばれるユニットタイプが用意されており,北欧と北米を中心に14か国の海軍の装備はもとより,陸上用のものまで登場する。例えば,1988年期だけでも688種のプラットフォームが登場するのだ。


複雑なインタフェースを使いこなす,通好みの本格派ストラテジー

 3Dグラフィックスになったとはいえ,途中で放り出されていた優良ゲームを"完成させる"ことが第一の目標なのか,Harpoon4からは最新のゲームとは言い難い古びた印象を受ける。しかし,本質は机上の紙とペンでのストラテジーの再現なのだから,それほど気になるものでもないだろう。重要なメインマップはサテライト画像をもとに作成されていたりと,要所は押さえられている

 ゲームの感覚としては,元々SSIで開発が始まりUBI Software社からリリースされた「Fleet Command」や,Digital Image Designs社の「Total Air War」シリーズを洗練させたような雰囲気だ。
 画面構成は掲載したScreenshotsを見ての通りで,ピンポイントで敵艦を狙ったりユニットを移動させるときは,3Dマップをワイヤーフレーム化させることもできる。とにかくさまざまなことが画面上に展開されており,相当なファンでないと圧倒されてしまうほどだ。ただ,ほとんどの操作が同一画面上で行えるので,一旦ゲームに慣れると機能の多さがありがたく感じられるに違いない

 Harpoon 4で再現された14か国は,アメリカ,ソ連,イギリス,カナダ,フランス,ドイツ,ポーランド,オランダ,デンマーク,ノルウェー,スウェーデン,フィンランド,ベルギー,そしてスペイン。前作で不満の多かった水中ユニットへのコマンドの少なさは改善され,海上ばかりでなく水面下での戦闘も楽しくなった。ただし陸上ユニット&航空機ユニットは,一旦出撃すれば,あらかじめ設定された作戦に従って自動的に活動するようだ。
 ボードゲームの複雑なルールは多少簡略化されていて,例えばソナーや赤外線センサー,レーダーなどの探知機の信号は,すべてdB(デシベル)レベルに統一されている。それが音であろうが熱であろうが,すべては機体が発生させるdBという仮想値にまとめられているのだ。もちろんプログラム上では複雑な計算が行われており,このdb値は機体の持つ基本値はもちろん,距離や周囲の環境への反射なども考慮されてSNR(Signal-to-Noise Ratio)へと換算され,そこに発見される確率などの方程式も当てはめられているのだ。

 ラリー・ボンド氏も同作の開発に深く関わっており,「High Tide」と名付けられたキャンペーンのシナリオを担当している。ゲームがリリースされれば,公式サイトを通じてファンとの討論会やチャットも行う予定だという。
 単独シナリオは40種類も用意されているが,シナリオエディタも搭載されているので,プレイヤー好みのシナリオを追加することもできる。また,ユニットや武器に関するデータベースもエディット可能。第二次世界大戦のUボートとの対決なども再現できるはずだ。
 Harpoon 4はマルチプレイヤーモードもサポートしている。二人までの対戦だが,オンライン上で現代海戦を楽しめる。なお推奨されているシステム環境は,PentiumIII/600MHz以上,メモリ 128MB以上,そして32MB以上のメモリを搭載したビデオカードとなっている。

 停滞しているジャンルだけに大きな成功は難しいかもしれないが,この手のゲームが好きな人には,開発再開は嬉しい限りだろう。現在アメリカでは,2004年2月のリリースが予定されている

*ゲーム画面はすべて開発中のものです。また,本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

(C)2002 Ubi Soft, Inc. All rights reserved. Ubi Soft Entertainment, the Ubi Soft logo and the SSI logo are registered trademarks and Larry Bond's Harpoon 4 are trademarks of Ubi Soft, Inc. All other trademarks are the property of their respective owners.