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Devastation:
Resistance Breeds Revolution
Text by 奥谷海人
世界制覇した巨大企業から,人類を解放する自由戦士
「Devastation:Resistance
Breeds Revolution」(以後,Devastation)は,"UnrealTournament 2003グラフィックエンジン"を使用して開発されている,一人称視点シューティングゲームだ。巨大企業によって制圧された近未来の地球が舞台となっており,プレイヤーは残り少ないレジスタンスの一員として戦うことになる。
開発元は,フロリダを本拠にするDigitalo Studios社(おそらく日本語"デジ太郎"の英語表記らしく,実際に日本の岐阜県にも支社を構えている)で,1995年以来ゲーム業界の黒子として,表に出ない開発を手掛けてきたらしい。Divastationの開発は,Digitalo
Studios社が自己資金でゲームエンジンをライセンスしたもので,すでに3年以上の長期にわたり製作が進められている。Devastationは,そんな新顔でありながらも経験豊かなDigitalo
Studios社らしい作品で,最近ではシリーズものばかりが目立ちはじめたFPSジャンルに新風を巻き起こしてくれることになりそうだ。販売を手掛けているのは,2001年に発足したばかりのArush
Entertainment社で,北米地域では今春にはリリースされる予定だ。
Devastationのストーリーは,第三次世界大戦による核戦争が文明を崩壊させた後に,近代技術を唯一確保し続けた企業グラシウス・コーポレーション(Grathius
Corporation)社が大きな力を持ち始めるという設定だ。わずかに以前の繁栄を思わせる,廃墟となった都市には私設警官や特殊工作部隊が我が物顔で歩き回り,アメリカでさえ“再生アメリカ地区”という名で分断されてしまっている。法による統治が蹂躙され,住民の生活を圧迫しているのだ。
そこで,そんな行き詰まる世の中から人々を解放しようというという革命組織が立ち上がるわけだが,プレイヤーが操るのはフリント・ハスケルというギャング団の一員で,風貌はアメリカでラップ歌手として大人気のエメネムに似た悪ガキ風。ギャングとは言え,知識人や元傭兵も集まった反体制主義者たちによる解放パルチザンで,グラシウス社の目から逃れるために地下へと潜入してしたが,フリントはゲリラ活動の最中に,大きな陰謀の中へと巻き込まれていくことになるのである。
3000種のオブジェクトが用意され,チームベースのBOTマッチまでを搭載
Devastationには,現実世界の風景をデジタル化した,リアルな32ビットテクスチャーを多用した美しいマップがシングルプレイヤー用に21種類,マルチプレイヤー用も12種類程度用意されている。プレイヤーは,まずグラシウス社の研究施設でテロ行為を行うために単身で潜入するのだが,その過程でナノ技術を利用した戦闘ロボットを製造しているのを暴くいていくことになる。ゲーム開始当初のストーリーが,かなり直線的なものになっていているのは,このゲームの世界観に慣れてもらおうという配慮だろうか。ゲーム内に登場する地域はは,サンフランシスコからロサンジェルス,香港や日本になっており,あやしい日本語の看板も相変わらず登場する。
Devastationのゲーム世界に入れば,これまでにないくらい物にあふれているのに気付くだろう。通りには紙切れが吹き溜まり,いかにも廃墟になった街を連想させるゴミゴミとした雰囲気だ。顕微鏡をのぞいてみたり,パイプ椅子を蹴飛ばしてみたりという「Dues
Ex」ばりのインタラクションも可能だ。ゲームに用意されたオブジェクトは,合計で3000種類にも及ぶという膨大なデータを誇っており,これらのオブジェクトは,ゲーム中に戦略的に利用できる場合も多く,木箱の後ろに隠れながら砲撃して,その箱が敵の銃弾に破壊されるまで身を隠しておくというような使い方もできる。
特にテクスチャーは量,質ともに満載されており,"テレホ5割引き"とか,登録商標を心配してしまうような有名百貨店の看板が街を彩り,洗濯物や網戸など細かい部分で1つ1つが異なるアパートのベランダ風景など視覚的に楽しめる部分が多いのも特徴だろう。薄暗く陰気な場所が多いためか,むしろ均一的に見えてしまう場所が多いのは難点だが,水面や煙,炎のパーティクル効果が活きている場面も多く,派手めに演出された爆発がアクションを盛り立てている。
物理効果を最大限にシミュレートするため,開発者たちの間でも評価の高いMathEngine社の"Karma Physics System"をライセンスし,階段上から転げ落ちるキャラクターの動作はもちろん,放物線を描きながら落ちていく手榴弾や空き缶などの動きが見事だ。それぞれのオブジェクトは,属性に合わせた効果音を持っているので,敵パトロールが行き来する通路の,影になっているところに拾ってきたガラス瓶を並べておき,敵がうっかりと蹴ってしまったのを合図に爆弾を作動させる,というような行動も取れるのだ。
ゲームも中盤に入ってくると,プレイヤーに協力してくれる仲間とチームを組んで侵攻していくような局面が増えてくる。それぞれのNPCは独自の武器やスキルを持っており,スナイパーやコンピューターハッカー,セクシーな女性闘士などキャラクター分けがされている。これらのチームメンバーには,インタフェースの左側でコマンドメニューを引き出して,突撃や援護,待機などの指示を出すことができる。
プレイヤー次第だが,メンバーを1つの場所に待機させておいて,自分だけでそのレベルを終わらせてしまうことも不可能ではない。しかしシングルプレイヤーレベルでも後半になればリスポーンマシーンという装置が登場して,BOTマッチさながらのゲームになってくるのだ。ストーリーの種明かしをしてしまうと,グラシウス社の陰謀というのが,クローン技術を数段階進めたリスポーン技術であり,一旦死んでも記憶までを整えたクローン人間を瞬時に作成してしまうスポーナーという秘密機器が登場することになる。この筋書きによって,今では少し古めかしくなったBOTマッチを再利用しているわけなのだ。ここまでのシングルプレイヤーモードの流れを見直すと,1人での突入プレイやステルスモード,小隊形式のチーム戦,そしてBOTマッチという,現在のFPSで考えられることの全てが,Devastationにフィーチャーされているということになる。
スポーナーは,敵の技術でもあるので,倒しても倒しても最新兵器に身を包んだ兵士たちが再生してくる。これを防ぐには,敵のスポーナーを自分たちだけしか使えないようにしていく必要がある。そうやって,マップ上の勢力地図を拡大していくのだ。
マルチプレイヤーモードの熱い対戦を彩る武器各種
Devastationには45種類程度の武器が用意されている。種類が多いため,インタフェースとして画面の右側に被せるように配置されたアイコンをクリックして選択するように工夫している。武器には,ピストルやアサルトライフル,マシンガンなどが登場するが,ゲーム初期ではほとんど入手することができず,敵地で確保していくというスタイルになる。
佳境に入るにつれて,プレイヤーが使える武器も多様化してくるのだが,中でもユニークなのが"ネズミ爆弾"だ。これは,ナノ技術によってネズミをマインドコントロールできるもので,プレイヤーはネズミを操り,好みの場所で爆破装置を作動させる。このときカメラ視点が,ネズミのものとなるので,角を曲がったところにある部屋の内部などへも侵入できるのが面白い。またプレイヤーのところに戻ってくるダートや,レーザーライフルのような近未来兵器も登場する。武器のない非常時には,ガラス瓶を壁に叩きつけて,即席の武器を作り出すことも可能だ。
AI(思考ルーチン)も秀逸で,先ほど紹介したコマンドは,各キャラクターへ指示することが可能で,プレイヤーともう1人が突撃する中を,もう1人が援護射撃してくれるというような局面もあるだろう。敵も数人が倒れた時点で退却し,新しい仲間を連れて再び攻めてくる。また敵は視界ばかりでなく,聴覚でプレイヤーを感知することもあるので,どこを歩くかは十分に考えながら進んで行く必要がある。プレイヤーが指揮できる味方は,最大8人までとなる予定で,かなり大きなグループでのBOTチーム対戦も可能だ。
マルチプレイヤーモードでは,通常のデスマッチやキャプチャー・ザ・フラッグ,チームベースのデスマッチも楽しめるようになっているが,さらには「Battlefield
1942」のConquestモードを思わせる,"Territoriesモード"というのも用意されているのが面白い。これは,敵プレイヤーばかりでなく,マップ上に点在する敵のスポーナーを潰していくことで,敵がリスポーンできる場所を減らしていくという遊びで,成果が「Counter-Strike」のようにお金に換算されていくことで,次のマッチへの武器購入資金に使用できるようになるものだ。もちろん,マルチプレイヤーモードでもオブジェクトの物理やサウンド効果も機能しており,敵の通過や居場所を突き止めるのに利用できる。
「Unreal
Tournament 2003」に習って,DevastationではMODツールやエディターなどのツール各種が付属されることになっている。3000種類のオブジェクトや看板の色彩/テクスチャーを変更できたり,アニメーションブレンディング機能も用意されているので,プレイヤーが作り出したキャラクターでも自然に動作するのがうれしい。マップエディターには,カメラの移動装置が備えられており,製作中に中の様子を覗くこともできる。
今のところ,日本での販売に関しては未定だが,2003年に発売されるFPSの中では,期待の新作だと言えるだろう。特にアメリカの会社で新しいFPSをリリースする開発チームは少ないため,FPSファンなら手放しで歓迎できるはずだ。音楽は,テクノ系のLove&RocketsメンバーのMessyがサントラを担当しているなど,様々な面で本格的に取り組んでいるのが伺える。
*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。
c 2002 ARUSH Entertainment.


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