「ディヴァイン・ディヴィニティ 〜完全日本語版〜」

=プレビュー第三回:アイテム探しの魅力=

Text by Iwahama

「所有の本能は,人間の本性の基礎である」

――ウィリアム・ジェイムズ(米国の心理学者/哲学者)

■"アイテム探し"という,魅力

Altキーを押すと,画面内の手に触れられるオブジェクト(主にアイテム)が表示される。これは城の一室だが,実にいろんなものに触れられるのが分かるだろう

 RPGの魅力の一つに,"アイテム探し"(注1)がある。
 アイテム探しの要素のない名作RPGもあるにはあるが,それでも心に残る名作の多くに,この要素があるのは事実だ。"ウィザードリィシリーズ"しかり,"ディアブロシリーズ"しかり……。
 しかし,アイテム探しという行為の,どこがそれほど人々を惹き付けるのだろうか?
 これはもう,人間の性(さが)だと言い切ってしまおう。故W・ジェイムズの言葉を引くまでもなく,胸に手を置いて考えてみれば,多くの人が自分の中にある所有本能に気付くはずだ。
 RPGは,キャラクターが成長している間は終わらない。アイテム探しも,基本的にはキャラクターを成長させるための術(すべ)だ。ゲームクリアに関係なくとも,いや,ゲームクリア(=ゲーム終了)に関係がないからこそ,延々とアイテム探しを続けてしまう。面白いゲームだからこそ,ゲームを続けるために,本能の赴くままアイテム探しにハマってしまうのかもしれない。

 本プレビューの主役である「ディヴァイン・ディヴィニティ 完全日本語版」(以下,DD)にも,このアイテム探しの魅力がある。いや,"ある"という表現では少々控えめすぎると感じるほど,その魅力は輝いている。しかし,ウィザードリィやディアブロのそれとは,ちょっと違う魅力だ。名付けるなら「偶然性と必然性が融合したアイテム探し」の魅力という感じだろうか。この魅力については,次項で詳しく説明しよう。

(注1)……本プレビューでいう"アイテム探し"とは,クリアに直接関係のない行為と定義する。アドベンチャーゲームなどでクリアに必要なアイテムを探すのは,魅力うんぬんを述べる対象ではなく,当然の行為だ

武器屋でAltキーを押したところ。もちろん,主人の目の前でこれらのアイテムを取ってそれがバレると怒られてしまう お店に売っている商品もバカにできない。写真はドワーフの名工グリーシャ。彼はこの世界一番の鍛冶屋である

■「偶然性と必然性が融合したアイテム探し」とは?

これがドラゴンセットだ。DDを購入した人は,ぜひとも探してみよう

 ウィザードリィやディアブロのアイテム探しが魅力的なのは,いいアイテムが入手できるかどうかが,完全に偶然性に左右されるからだ。プレイを続けていれば100%の確率で最強の武器が入るようでは,いくら最強でも,入手したときにさほど大きな感動は得られないだろう。
 DDでも,この2作と似たシステムが採用されている。モンスターを倒すとアイテムが出現する"可能性"があるし,かつそのアイテムの品質は(多少の法則性はあるが)運次第。また宝箱などに隠されたアイテムも,基本的にランダムで決まる。それだけに,いいアイテムを見つけたときは,本当に嬉しいのだ。

 一方で,偶然に左右されないが,それでもなお魅力的な"アイテム探し"もある。例えば,「ウィザードリィ8」における"特注品"がそうだ。これは,世界中に散らばる部品を集めて武器屋に持っていくと,特別な装備品を作ってくれる,というもの。
 それぞれの部品は,必ず同じ場所にある(つまりここに偶然性はない)のだが,ほとんどが一見何に使うものか分からないうえ,普通にプレイしていては見つけにくいものもある。それをなんとか1セット集めて特注品が完成すれば,単に同ランクのアイテムを購入したよりも,ずっと嬉しいわけである。
 さて本題のDDも,"偶然性に左右されないアイテム探し"の要素を持っている。これはウィザードリィ8の例とは少々違うが,まぁ大枠は同じだ。例えば「ドラゴンセット」という一連の特別な(世界に一つずつしかない)防具がある。具体的には,ヘルメット,鎧,盾,ベルト,籠手の五つで,すべて別々の(特定の)場所に隠されているのだ。なおドラゴンセットはすべて揃える必要がなく(注2),それぞれ単品でも十分に使える装備品(注3)である。
 これらの特別なアイテムの多くは,ちょっと頭を使わないと見つけられない。とくに「ドラゴンアーマー」を見つけるのは至難の業(わざ)だ。ある場所でこの鎧に関するクエストが発生したあと,さらにいくつかのクエストをこなして二つのアイテムを入手し,それをある場所に持っていくことで……と,ひと筋縄にはいかないのである。
 ここで注意してほしいのは,単に「入手が難しいから,面白い」のではないということ。まぁ難しいのは事実だが,海岸で一粒の特定の砂を見つける難しさではなく,適度なヒントがある,推理力が必要な難しさなのである。
 ドラゴンセットを揃えるには,ある程度の知的労働が必要なわけで,だからこそすべて揃えたときには,格別の喜びを味わえるのだ。

こんなうさんくさい商人も登場する。試しに購入してみると……
 さて,DDにおける"偶然性に左右されるアイテム探し"と"偶然性に左右されないアイテム探し"を説明したが,実は,まだ「偶然性と必然性が融合したアイテム探し」の説明としては十分ではない。DDのアイテム探しで特徴的なのは,ドラゴンセットのような世界に唯一のアイテムも,その性能がランダムで決まる(!)ということだ。
 もちろん基本的にこれらのアイテムの性能は高いのだが,たまにハズレもあるし,大当たりもあるだろう。
 つまりこの世に唯一のアイテムは,あくまで"性能が良い可能性が高いアイテム"なのである。

 DDは一見すると,"偶然性に左右されないアイテム探し"に重きが置かれ,"偶然性に左右されるアイテム探し"は補助的に存在するように感じる。しかし,真実は逆だ。基本的にプレイヤーはディアブロのように"ランダムに現れる優れた装備品"を探すのだが,より効率良く優れた装備品を手に入れるために,"数々の謎を解き世界に唯一のアイテムを探す"という手段もある。
 だから,「偶然性と必然性が融合したアイテム探し」なのである。

(注2)……実は揃えることで,あるボーナスが付く
(注3)……この項の後半で紹介しているように,品質が良くない可能性もある


■語り尽くせぬアイテム群の魅力

アミュレットに,本文中で軽く触れた"魔珠"を二つはめたところ。ここのアミュレットにはスロットが四つあるが,キャラクターのスキルレベルが低いため,一つの穴がふさがっている

 DDは,あくまでもシングルプレイ専用のRPGである。そのため,プレイヤーごとに個性を出す必要のあるMMORPGに比べれば,当然装備品の種類は乏しい。しかし,それでもなお魅力的なアイテムが数多く存在する。
 例えば,「至宝」と呼ばれる三種の装備品が存在する(注4)。これは入手が非常に困難なうえ,三種のうち一つしか入手できない。
 また,呪われたアイテムも存在する。いや,これはウィザードリィのようなシステム的な"呪い"ではない。……ぜひ自分の目で見てほしいのだが,あるアイテムを入手すると,プレイヤーキャラクターに次々と災いが降りかかるのだ。
 ほかにも,美しい女性に愛を告白すると「探してきて」といわれる首飾り,女盗賊から「取り返してきて」と頼まれるダガーなど,いわく付きの(言い方を変えれば"クエストに関連した")アイテムがいろいろと用意されている。それらを入手する楽しみのは,間違いなくDDの持つ魅力の何割かを担っているだろう。

 さて,DDにおける"アイテム探しの魅力"を語る本プレビューでは詳しく触れなかったが,DDのアイテムには"調合" "魔珠"(「ディアブロII」のジェムのような,装備品を強化するためのアイテム)などのいろいろと面白いシステムが用意されている。このように,DDではアイテムというRPGを構成する要素のたった一つでさえ,語り尽くせぬほどの魅力を秘めているのだ。
 もちろん,今回の三つのプレビューでは触れていない要素のなかにも,ゲームバランス,システム自由度,音楽といった特筆すべき要素がまだまだある。年明けには当サイトで本作のレビュー記事を掲載する予定なので,そちらもお楽しみに。

(注4)……至宝は,剣,ダガー,アミュレットの三種

たった1枚の紙切れを頼りに,アミュレットを探さねばならない。しかし,それでも方法はある メモや本といったアイテムも数多く存在する。しかも,どれもなかなか面白い!

→「ディヴァイン・ディヴィニティ 〜完全日本語版」の当サイト内の特設ページは,「こちら」


※記事中のScreenshotsは,すべて開発中のものです。ご了承ください。

(c)2002 Larian Studios. All rights reserved.