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[CJ 2007#46]中国最大(?)のシングルゲームパブリッシャ網元網に聞く,海賊版問題とゲーム販売
2007/07/15 23:59
 ChinaJoyの会場で,「Command & Conquer」「真・三國無双4」「幻想三国志3」のパッケージアートをあしらったブースを見かけた。聞いてみるとそこは,ディスプレイ販売会社のHannspree(瀚斯宝麗)と,パッケージゲームのローカライズエージェンシーである網元網(ccnec.com)が共同で出したブースであるという。ブースで試遊できるのは,この網元網の取り扱い製品というわけだ。
 そこで,網元網のマーケティングディレクター 聞 宇(Wen Yu)氏および何人かのスタッフに,中国におけるパッケージゲームビジネスについて聞いてみた。話題はあくまで網元網の事業に限られるわけだが,我々がふだん意識しない,海賊版のもう一方の被害者の存在を確認しつつ,今後の中国におけるシングルゲーム販売の話題をお届けしよう。

 網元網というブランドでパッケージ販売ビジネスを展開する中視網元娯楽科技(CITVC Netempire Entertainment)は,中国中央電視台(CCTV)グループの一員。現在扱っているPCパッケージゲームは,Electronic ArtsとUbisoft Entertainment,コーエー,工画堂スタジオ,宇峻奥汀科技(台湾)の製品だ。ただし,ゲーム本体やマニュアルの翻訳部隊を内部に持っているわけではなく,例えば工画堂スタジオの「ブルーフロウ」を扱ったときは外部の会社に依頼し,コーエーならばコーエー自身が担当するなど実務はケースバイケースであって,ローカライズと販売の全体を差配するのが仕事である。社員は総勢100名ほど。中国を東西南北で分けて,四つの事業所を持っている。製品を卸す先である小売店は,中国南部の事業所所轄分だけで300あるという。
 世界のパッケージゲームビジネスは,長期的に見てダウンロード販売に比重を移していくという見通しがあるが,網元網では今年(2007年)の6月に通販サイトを立ち上げており,年内にダウンロード販売サービスを開始するという。



 現在扱っているローカライズ版ソフトのうち,人気が高いのは宇峻奥汀科技の「幻想三国志3」で,「Battlefield 2142」もよく売れているとの話。コーエー製品の発売はこれからなので,「三國志11」や「真・三國無双4」は人気が出そうかどうか聞いたところ,後者についてはブースの試遊機で9:00AMから3:00PMまでずっとやっている人がいたくらいなので,きっといけるだろうという。
 また「遙かなる時空のなかで2」も扱うことから,中国における恋愛シムの動向について聞いてみると,過去にも台湾製の「明星志願」や,「心跳回憶」こと「ときめきメモリアル」がヒットしたので,十分に期待できるそうだ。

 さて。中国市場を舞台としたパッケージソフトの販売ビジネスとなれば,いかなる意味であれ海賊版の横行が話題に上らざるを得ない。正規版を扱う彼らにとって,海賊版はアタマの痛い問題のはずだ。さまざまな局面で,彼らは海賊版と対決している。
 対決の第一種目は価格だ。網元網のソフトは49元から69元で,69元のものが多い。ローカライズ版ソフトは従来200元から300元の値段が付けられていたそうで(確かに149元といった数字はよく見るものだった),この価格設定は「やたらと高価な正規版」という構図を打破するものである。
 第二はローカライズ版の発売タイミングを早めて,原語版のコピーや改変版として海賊版が流通する時間的余地を狭めてしまうこと。そして第三はコピー対策だ。網元網の製品にはすべてインターネット認証が導入されており,さらにソニーのSecuROMも近く導入予定だという。
 網元網は政府の関係部局とも連携しており,中央政府の文化部新聞出版署,地方政府の工商局,公安局,文化局と協力体制をとる。2004年から2005年にかけては全国で海賊版の取り締まりが強化され,大きな成果が上がったのだという。また,これは全体の文脈としてどう受け取るべきか少々微妙なのだが,同社には,そうした関係部局のOBも勤めているそうだ。
 日本のゲームデベロッパ/パブリッシャに向けてアピールしたい事柄はないか聞いてみたところ,中国でナンバーワンのシングルゲームパブリッシャを目指す網元網は,まだまだ欧米日とのパイプが細いのが課題。中国市場に魅力を感じるメーカーさんは,中視網元娯楽科技の公式サイトには,日本語の会社説明もあるので,ぜひ気軽に声を掛けてくださいとのことだった。



 確かに正規ローカライズ版が実売40元から60元ほどであれば,それは以前とは比較にならないほど“現実的”な価格設定といえる。ただしタイトル別の販売数値については,別のタイミング,別の職員にそれぞれ聞いてみたものの,言を左右にして伏せられてしまった。そのため同社の実際の販売規模は不明であり,また市場の現実を見るに,上がったとされる取り締まり成果を過大に見積もることはできない。
 ともあれ,当然のことながら中国国内にも海賊版ゲームの“被害者”が大勢いて,自身の事業を守るために努力していることは実感できた。彼らが,少しずつでも市場の認識と慣行を改善していってくれることを,切に祈りたい。(Guevarista)



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