EverQuest II βプレイレポート#2
2004/10/29 23:10
EQ IIのキャラクター選択画面。画面クオリティなどのオプションはこの画面でも設定できるので,ログイン前に様子を見てみるときに最適
 先のレポートである10月20日からわずか9日間。その間に,EQ IIは,その姿を大きく変えた。よりにもよって最も変わった部分「クラスシステム」について書いていたので,掲載予定で途中まで書いていた原稿をほぼ全部捨てる必要があったわけだが,その変遷過程も知っておいてほしいと思い,やや読みづらいのを承知で古い原稿も途中まで掲載しておく。

■疑問視せざるを得ないEQ IIのクラスシステム

 11月8日という,MMORPGには珍しい"発売日前倒し"という事態を迎えた,SOEの最新MMORPG「EverQuest II」(以下EQ II)。発表があった時点でのEQ IIの状況たるや疑問を禁じ得ないもので,筆者もムービー記事をUpしたときに「まさかこの状況で発売されるとは」とつい書いてしまった次第だ。
 職場でもβテスター同士でも,EQ IIの話になると大体この「こんなシステムのままやっちゃうの?」という話になるわけだが,βテストに参加していない人のために,何がそんなにみなの気にかかっているのかを解説しておこう。細かい部分での話もいくつかあるのだが,それはまた別途。

 先頃,日本で運営を行うスクウェア・エニックスから発表されたように(「こちら」参照),EQ IIのキャラクタークラスはレベルUpと共にクラスが細分化されていくシステムを採用している。格闘専門のモンクになりたければ,まずアーキタイプで"ファイター"を選び,Lv9で"ブロウラー",そしてLv20で"モンク"という転職の道を歩んでいくわけだ。
 このシステム自体になんら問題はない。要所要所に挟まれた"転職"というイベントも――単なるお使いであることも多いが――それなりに楽しいものだし,Lvアップということ以外に"自分が強くなっていく"ことを感じるファクターとして十分通用するもので,ゲームにメリハリを付けるという意味でも非常に良く機能している。「俺のクエストNPCどこー?」「Druid転職クエストのMobを一緒に倒すDruid転職希望者募集!」などコミュニケーションにも大いに役立っているし,一見するとまさにいいことばかりだ。

 がしかし,このシステムには(現状では)大いなる欠点があるように思う。

 例えば筆者がプレイしているWarden(Druid系ヒーラー)だが,Lv9までに
 小ヒール(Minor Healing),大ヒール(Minor Arch Healing),DD(Smite),HP/AC Buff(Courage),HoT(Lesser Regeneration),毒消し(Cure Noxious),蘇生(Revive),一定時間攻撃無効化(Minor Ward)
 などの呪文を覚える。プリーストからドルイドになるまでに――つまりプリーストの段階で――ここまでの呪文を覚えるわけだ。ヒール,Buff,DD,蘇生,HoT,攻撃無効化など,一通りの呪文が揃っている。
 むろんこのあと"ドルイド"にクラスチェンジすると,SoW(足速),"犬化"(WolfForm)などドルイドらしい呪文が入ってくるし,さらにそのあと"ウォーデン"にチェンジすると,よりヒールに特化された形で呪文が増えてくる。プリーストからクレリックにチェンジした人はその道を,シャーマンにチェンジした人はその道を,それぞれ究めていくわけだ(転職クエストには"Path of Warden"などの名前が付いている。まさに"道"だ)。

※HoT = Heal over Time。ひとたびかかると,時間の経過と共に一定数値の体力を回復する呪文。DoT(Damage over Time)のヒール版。

 しかし,ここに若干の問題が生じる。プリーストのあとに何になろうが,Lv9までに覚えた呪文達は,その後もLvアップと共に順調にグレードアップして,より強化されていく。ヒール,Buff,DD,HoTなどの呪文は,クレリックであってもシャーマンであっても問題なくグレードアップしていくのだ。
 むろんクラスによって,より強化された新呪文が入る場合もあるだろうし,Lv9までの基本呪文を遙かに超える有用な呪文(シャーマンのSlow[敵の攻撃速度Down]など)が入り,自分のスペルスロットから基礎呪文のアイコンが消されることもあるだろう。それでもなお,使おうと思えばそれらの基礎呪文は"プリースト"として育ったそれぞれ――ドルイド,シャーマン,クレリック――の全員が使えるものであり,それによるものか,クラス間の差異というものが非常に感じづらいゲームシステムになっているのだ。
 この状況は,どのクラスでもある程度は言えることだ。HidingからBackstabを放てるレンジャー(HidingもBackstabもScoutクラスの基礎スキル),それとは逆に,弓をダブルショットできるAssasinなど,そのパターンによるクラス間の差の薄まり,というものは否定しづらいものがある。


そろそろβも終わりかな,と思い,足しげく通ったAntonicaやBlackburrowの風景を収めるべくウロウロしてみた。ガンマ値の具合が若干変わったようでちょっとまぶしい画面もあるかもしれないが,ご容赦を


■結局クラスって4種類?

 まだ筆者はLv25に届かないレベルではあるし,クラスによって"出来ること・出来ないこと"が歴然としていたEQ1のシステムが良かった,などと懐古趣味に浸るつもりもない(個人的には好きだが)。しかし,Lv9までの初心者段階での呪文/スキルが有用であるため,その後のクラスの差というものが非常に付けづらくなっているのは感じるし,それはEQ IIの根本的な問題ではなかろうか,とも危惧している。
 それを良く表すのがグループメンバー募集のoocで,「Lv15〜18のTank募集」「誰でもいいのでヒーラー求む」など,クラス固定で募集されることは,まずない。せいぜいがその特定のクラスに絡んだクエスト絡みのときだろう。

※ooc = say Out Of Character。"キャラクター"としてではなく,"プレイヤー"としてゾーン内の全員に聞こえるようになっているチャット。プレイヤー募集や疑問,Help依頼などに使われる

 一定レベルごとに特殊技能を選んでつけられるシステム(EQ1のプレイヤーならお馴染み"AA"が一定レベルごとに無条件にもらえるようなものだ)なども発表されているし,1か月程度しか遊んでいないプレイヤーが心配するようなものではないのかもしれない。しかし,海外ではともかく国内での"EverQuest"のプレイヤー数増加を望む者として,Lv25までとはいえ,そこまで遊んでも「クラス間の差がない」と感じるこのシステムは,なんとかよい形でFixしてほしいと願わずにはいられない(むろん,Petクラスなどの大きく特徴があるものは別)。

■しかしそれは大きく変わった

 ……とこのあたりを半分として,ほぼ仕上げて寝かせておいた本原稿だが,日本時間10月28日夜の巨大なパッチで,下半分を全面削除することになった。上記の懸念は,ほぼ杞憂と化したかもしれないのだ。新規キャラクターを作って育てていないので詳細までは不明だが,思い切ってクラス間のバランス(強さ,という意味ではない)を取った仕様になったように見える。
 筆者は2キャラクター(Lv23 Warden,Lv23 Ranger)の仕様変更を軽く見られただけではあるが,その変更度合いたるや,スペルスロットの呪文アイコンの1/3〜1/2が消し去られていたほどだ。

 Wardenで話を進めよう。
 パッチ前のWardenは,プリースト>ドルイドラインのヒーラークラスなのでBuff,HoT,通常Heal,ダメージ無効化など,たいがいの呪文が揃っていた。ダメージを与える手段には大きく欠けていたものの防御系に関してはまったく問題がなく,Tankの突撃前にダメージ無効化のWardをかけ,戦闘中はHoTを2〜3枚重ねておいて(Hateが相当少ない優秀なヒールだ),それでたいていの場合は問題がなかった。
 とはいえそれは,どのヒーラーでも同じ。なにせできることはほぼ同じなのだから。戦闘中にSlowを入れるかHoTを入れるかDDを入れるかの違いがある程度で,プリーストとして生を受けたクラスならば,どれでも大差なかったのは前述のとおりだ。極論ではあるが,おそらくヒーラーのスペルスロットに入っていた呪文は,いくつかを除いて全員同じだったのではないだろうか。

 EQ IIにおけるヒーラーの重要な呪文は,「通常ヒール」「HoT」「HP/AC Buff」「ダメージ無効化」「解毒」「蘇生」あたり。分岐する"クレリック" "ドルイド" "シャーマン"のすべてがその呪文を使えていたパッチ前の状況を嘆いていたわけだが,今回のパッチでそれが大きく改善されたように見える。
 Wardenで言うならば,まずヒール/HoTライン,蘇生,解毒あたりはほぼそのまま。その代わり"ダメージ無効化"がほぼ全部削除された。HP/AC Buffは効果がさまざまになって3種類に増え,いくつかのDebuffが導入,DDのダメージ量が増えていた。

※3種類に増え = 増えればいいというものでもない。EQ IIではBuffに"Concentration"という概念が入り,そのConの数値制限がある。事実上Buff数制限が厳しくなっているのだ。例えばHP/AC BuffのCourageはConcentration1なので,Con5制限においては1スロットを占有する。Power(Mana)を増やしてくれるVigorはかなり有用なBuffなのだが,これだけでConを2スロット使う。細かく散らばって種類が増えるより,一つ強力なものが入るほうが,きっとこの先戦いやすいことだろう。そこでも当然差別化が図られていくのだと思うが。

 ここから考えられるWardenの方向性は,「HoT特化で,Debuffも小技でちょっとできます」というラインだろうか。このぶんだと「Buff/Heal特化で,蘇生経験値バックあります」のクレリックライン,「ダメージ無効化特化で,Slowを筆頭としてDebuffまかせて」のシャーマンライン,という,かつての経験者にも想像の付きやすいものとして変更されている可能性は高い(想像に過ぎないので,間違えていたらぜひご指摘を)。
 Hateこそ強烈に稼ぐが相当使い勝手の良かったDMG無効化がなくなってしまい,Warden的にはますますSoloがやりづらくなったわけだが,これはこれで筆者は歓迎だ。せっかく24クラスもあるのだから,ぜひこれからもそれぞれに差異をつけていってほしいと思う。
 余談だが,Rangerにはついに「Tracking」が入った。方角を示すどころか,黄色のラインが目標のキャラクターまで引かれるという親切設計だ(Z軸の移動に弱いという欠点はいまはさておく)。賛否両論あるだろうが,やはりこれでこそRanger。BackstabのないRogueみたいなもので,ちょっとどうかと思っていたところだ。

#さらに余談だが,遠目に分かりづらかった"全部同じ色のGnoll"も改善されていて嬉しい。今やBBは,色とりどりな"犬たち"が闊歩している。

上段センターの写真「馬」は,プレイヤーあこがれの的。普通に買おうとするとかなりツラく,安いものでも18goldくらいする(ギルドポイントと交換もできるようだ)。ちなみに筆者がLv23までに稼いだお金は,おそらく全部で10gold弱(1pp=100gold)だ。いつもお金稼ぎよりLvアップを優先させてしまうので後で詰まるのだが,こういう癖はなかなか直らない


■製品稼働に向けて着々と

 まともに機能していないものも多かった各種クエスト,"Lagtonica"という有り難い名前をプレイヤーから頂戴していた,無茶苦茶なLagで有名なゾーン"Antonica"(10秒15秒のLagは当たり前!),いま一つ必然性の分からない呪文グレードアップシステムなどの,"おいおいこれで製品かよ"と思っていた問題点は,着々とツブされている。
 クエストは追加/修正が嵐のように行われているし,Antonicaに関しては,あの巨大なゾーン自体をInstanceゾーンにしてLagは大幅に改善された。呪文関連に関しても大幅に手が入れられたし(新魔法のレベル高いバージョンはまだ店売りされていないので未確認),装備グラフィックなども微妙にリファインされていた。

※Instance = ゾーンに限界まで人が増えると,自動でパラレルワールドが次々と作られていくシステム。EQ IIの場合,The Caveというダンジョンに人が増えすぎると,自動でThe Caveの2個めが作られ,名前が「The Cave2」などとなる。まったく同じゾーンではあるがもちろんパラレルワールドなので,違う数字を選ぶと違うところに行く。グループで移動するときは何番に行くかを決めておく必要があるので注意。

 パッチInfoより先に製品発売が発表されたのでちょっと動揺したのだが,このぶんなら大丈夫,日本語版が稼働するころには,ほぼ完成の域に達していることだろう。このあとも大きくゲームに影響する新機能というものがまだまだ予定されているようだし,そしてそれは,SOEのことだしほぼ予定どおりのプランで実装されることが期待できる。EQ1のときと同じく,2〜3か月をかけて,より完成されたものへとなっていくのだろう。
 情報が止まり気味の日本語版にしても順調に開発は進んでいるようで,ユーザーにとって重要な情報もそろそろ聞こえてくるはずだ。新たな日本語版の画面もそろそろ公開されそうな話も聞こえてきたし,期待して待っていてほしい。(Kazuhisa)

EverQuest is a registered trademark of Sony Computer Entertainment America Inc. in the United States and/or other countries. (c) 2004 Sony Computer Entertainment America Inc. All Rights Reserved.

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Qeynos北門の前で撮影(下段真ん中)。EQ1のころQeynosで育った人ならご存じ"Flippy Darkpaw"も,世代こそ変わっているがご健在。以前からのプレイヤーなら,"500年経ったらこんなになっちゃったのね"と見て回るのもかなり楽しい



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