[E3 2003#075]RPGからFPSへ! 「VAMPIRER:THE MASQUERADE BLOODLINES」 - 05/18 00:00

 ヴァンパイアを取り扱った作品の中でも,とくに完成度の高いシステムで人気の高い「Vampire The Masquerade」シリーズ。この作品はもともとの出典が大手テーブルトークRPGの人気シナリオということもあり,非常に完成度の高い設定とシステムを持ったシリーズとして評判が高い。
 前作「VAMPIRE:THE MASQUERADE REDEMPTION」は,3DアクションRPGとして開発された。中世の聖騎士が不浄のバンパイアと成り果ててしまい,不死の体となったために苦悩しながら現代まで生き延びるというシナリオで,序盤の正統派ファンタジーテイストからパンキッシュな現代へと続くユニークなシナリオと,非常に凝ったRPGシステムからなる作品だった。

 ところが最新作となる「VAMPIRER:THE MASQUERADE BLOODLINES」では,大胆にもジャンルを大幅変更した。今度はFPSタイプのアクション主体となり,世界設定も最初から現代となった(あいかわらず現代=パンクなイメージだ)。

 プレイヤーキャラクターは,7種族のヴァンパイアの眷属の中から一種族を選択する。いずれも"ヴァンパイア"といっても,それぞれに大きな特徴がある。ひたすら怪力の種族もいれば,透明化などの特殊技能に長けた者もいる。こういった特徴は,主に身体能力や所有スキルによって決定される。このスキルの多種多様さも,シリーズの魅力の一つだ。
 アクション主体のFPSになったとはいえ,RPG出身ということで豊富なステータスと,キャラクター育成の要素はしっかりとしている。個性的な7種族は,成長の方向性によってさらに複雑な個性を発揮できるようになるのだ。

 主人公は基本的に,人間社会に溶け込んで人間のフリを決め込んでいる。だがせっかく持っているヴァンパイア特有のスキルを使用するには,血のエナジーが必要なのだ。つまりスキルを使用して恩恵に授かるには,人間を襲って血を吸わねばならない。
 ここからが,この「VAMPIRER:THE MASQUERADE」シリーズ特有の設定というかシステムなのだが,血を吸って人間を殺すごとに,自分の中の人間性(Humanity)が欠落していくのだ。ゲーム中ではバーで示されるこのHumanity,失うごとに凶悪な"魔"に精神を蝕まれてゆく。そしてすべての人間性を失うと,完全な外道ヴァンパイアと化して二度と人間の意思と理性は持てなくなる。ゲームでは,この状態をゲームオーバーとして扱っている。
 つまりヴァンパイアの力を発揮するには血の代償を支払わねばならず,人間社会で生きていくには人間性を保たねばならないという暗い葛藤をいつも抱いているのが,この世界のヴァンパイアなのだ。
 なお人間性は,当然ながら人間的な行動によって上昇していく。これは主にNPCとのコミュニケーションで,人間味あふれる言動で接することによって増えていくだろう。

 ゲームエンジンには「Half-Life2」と同じValve EntertainmentのSourceエンジンが使用されており,FPSとしてのゲーム性も非常に高い。ヴァンパイアらしい素手での戦い以外にも,銃火器や爆発物などといったFPSらしい武器も登場する。

 確かな世界観で,ヴァンパイアとしてのダークな遊びも,ヒーロー的な遊びも両方楽しめる本作品。RPG寄りだった前作のほうが好きだったという人も,このシリーズは初めてという人も,そしてもちろんFPSファンにも,この作品はぜひオススメしたい。


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