[E3 2003#049]「The Movie」で,映画制作会社の経営者やクリエイターを体験できる - 05/17 15:23

 Activision社から発売される予定の,ピーター・モリニュー(Peter Molyneux)氏率いるLionhead Studios社が開発中の「The Movie」が,アメリカでは初めて公開された。去年のECTSの折にも本サイトの「ここ」で情報をお伝えしたが,The Movieは,一見「(株)テーマパーク」にも似たシミュレーションゲームである。20世紀初頭のハリウッドで映画の制作スタジオを建設し,100年間に渡って規模や作品をどんどんと向上させていくというもので,ハリウッドスターを使ってアクション映画やラブコメディ,ホラーから西部劇まで作れてしまうのである。

 スタジオが巨大化するに連れて,プレイヤーは映画制作に熱中してはおれず,経営者もしくはプロデューサーとして複数のプロジェクトを切り盛りしていかなければならない。時代が進むに連れて人件費がかさんだり制作費が高騰することもあり,管理能力も問われていくことになる。しかし,本作の楽しさは今から数年前にMicrosoft社が発売していた「Moviemaker」を思わせるもので,マルチメディアソフトとしても捕らえることができる異色のゲームだといえるだろう。

 今回Activision社のブースで紹介されたデモでは,すでに大きく成長したスタジオにおいて,3種類程度の映画が制作進行していた。配役されているのはドリュー・バリモア,ブルース・キャンベル,ヴィンセント・プライスなどの実在のハリウッド俳優たちだ。Lionhead Studios社が個々の俳優たちからライセンスを得ているのかと驚いたのもつかの間,The Movieの俳優たちはすべてプレイヤーによって制作されるものであって,「シムピープル」のようなカスタマイズ機能によって,お好みの俳優のようなキャラクターたちやセットを作成できるのである。
 デモで実際に開発者が作って見せたのが,バリモアとキャンベルが2人だけの時間を求めてやってきた山小屋の地下室に,実はプライス扮するゾンビのような化け物が潜んでいた,という内容だ。ゲームを簡略化するため,ゲームに登場するのは俳優,監督,カメラマン,サウンド,そして撮影後の編集者のみ。個々のキャラクターが関わっている作品がゲームの自動評価機能で高いポイントを得て人気作となるほど,そのキャラクターの報酬が跳ね上がってプレイヤーの予算を湯水のように消費していく。安価なスターの卵に乗りかえる時期の判断なども必要だ。

 個々の映画は,もちろんプレイヤーが監督してカメラアングルを設定できるのだが,さらにはアクションやラブシーンの激しさも,バーを調節することで変化させることが可能だ。初期の時代では,余り激しいアクションなどは受け入れられずに自信作でも興行成績が悪い結果にもなり,時代のモラル許容範囲に合わせた映画の制作が求められる。プロジェクトが多くなるとほかの監督を雇ってすべての映画を"撮り終える"と,プレイヤーは編集者を雇うか自分でゲームについてくる映像編集ソフトを使ってフッテージを繋げていくことになる。もちろん,この映像はMPEGファイルとして保存できるのだ。
 映画が完成すれば,自分で楽しんだりWeb上で公開したりすることも可能だ。ファン達が十分に盛り上がれば,映画祭の開催なども期待できるという。凝った映画を作りたい人なら,音楽やアフレコを自分でインポートすることも可能で,相当本格的なものがファンの手によって生み出される可能性もある。この映像のファイル容量についてだが,素材はゲームソフトに存在するものなので,どんな大作でもコンパクトに仕上がるとのことだ。
 シミュレーションゲームに必要な管理能力ばかりでなく,芸術的なセンスも求められるThe Movieだが,発売は2004年中とのこと。もう少し辛抱する必要がありそうだ。(奥谷海人)


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