S3復活なるか? DirectX 9世代のGPUを電撃発表 - 01/29 20:55


 VIA Technologies/S3 Graphicsは1月7日,DirectX 9世代のGPU「DeltaChrome」を年内にリリースすることを明らかにした。今回それとは別件で,S3のWebサイトに掲載されている以上の詳細な情報をVIA Technologiesより入手することができたので,ここに報告したい。

■0.13μmプロセスルールで製造,スペックはRADEON9700に肉迫する?!

 DeltaChromeは,デスクトップPCとノートPCの双方をターゲットにしたGPUだ。0.13μmプロセスルールで製造され,しかもそのロジックはHighVT(省電力)トランジスタで構成されていることから,最大パフォーマンスよりは省電力性能を求めたものとなっていると推察される。
 コアクロックは300MHz,メモリバス幅は128ビットで,600MHz DDR SDRAMを最大256MBまでビデオメモリとして利用できる。コアクロックについては最大20%Upの360MHzバージョンも,市場の要求があればリリースすることがあるとのことだ。
 そしてハードウェアの性能として気になるのは,プログラマブルシェーダのポテンシャルだろう。DeltaChromeのプログラマブル頂点シェーダ,プログラマブルピクセルシェーダは,共にDirectX 9の規定するバージョン2.0に完全対応する。つまり浮動小数点フォーマットの実数ピクセルにも対応し,高度な4段従属テクスチャ参照も可能というわけで,ビジュアル表現能力についてはATI RADEON 9700やNVIDIA GeForce FXと同等ということになる
 実際には,バージョン2.0命令セットのほかS3独自のシェーダ命令を実装しているため,NVIDIAがGeForce FX発表のときに使ったキーワードである「2.0+」も用いている(画面左下参照:ガンマ補正命令を利用したデモ映像だ)。
 頂点シェーダユニットは4基,ピクセルレンダリングパイプラインは8本と,これもRADEON 9700と同等だ。テクスチャユニットは各パイプ1基のみで,1パス内で複数回テクスチャユニットを利用することでマルチテクスチャリングを行う。これもRADEON 9700と同じやり方だ。

 ちなみに,本記事の右上の図がプログラマブルピクセルシェーダの比較表。DirectX 9以上の命令セットについては,DirectX 10にてインプリメントするようにMicrosoftに働きかけているという。そしてその左の画面が,プログラマブル頂点シェーダの比較表だ。GeForce FXに迫る命令セットを持つことが分かるだろうか。Dynamic Flow Controlとは,パラメータ制御のジャンプ,ループ制御を行うということで,これをサポートするのは現在GeForceFXのみだ。オマケで左上の図が,DeltaChromeのコア・ブロックダイアグラム。「DirectX 9世代のGPU」らしい内部構成で,RADEON9700にかなり似ている。

■適応型テッセレータユニットはなし,ディスプレースメントマッピングには未対応

 DirectX 9世代GPUというと,もう一つ気になるのが適応型テッセレータユニットの有無。これを搭載しているのはATI RADEON 9700とMATROX Pahelia512のみで,昨年末,対RADEON 9700の本命GPUとして発表されたNVIDIA GeForce FXにはこのユニットは省略されていて物議を醸した。
 DeltaChromeではどうなのだろうか。
 これについては,やはりDeltaChromeも「省略」の道を選択した。理由はNVIDIAと同様の「ゲームなどで使われにくい機能だと思われるから」だ。
 また,DeltaChromeは冒頭でも述べたようにノートPC用をフォーカスして開発されたという経緯もあって,余計なロジックの搭載は避けたかったから……という理由もあると思われる。いずれにせよ,ディスプレースメントマッピング機能もDeltaChromeでは実現されない。
 ディスプレースメントマッピングはDirectX 9世代GPUの目玉の機能であったはずなのだが,次々と発表されるDirectX 9世代のGPUの対応がここまで冷ややかだと,ゲームベンダーなどもこの機能を積極的に活用しない風潮が浸透してしまうかもしれない。
 なおDeltaChromeの次期世代GPU,開発コードネーム「DESTINATION FILMS」では,適応型テッセーレータは搭載される見込みだとのこと。

※右下の図がDeltaChromeシリーズのロードマップ。次期GPU「DESTINATION FILMS」では,HIGH ORDER Primitivesがサポートされる。これが適応型テッセレータの搭載を意味するわけだ

■性能はRADEON 9700に追従する?

 DeltaChromeの3Dグラフィック機能面で,もっともエポックメイキングなのが「Advanced Deferred Rendering」だ。
 Zバッファを階層管理するHierarchical Z Bufferをハードウェアサポートし,Z隠面消去を前から後ろだけでなく,後ろから前へも行う方式をサポート,さらに1パス目でシーンの複雑性を吟味,2パス目でこの情報を元にZバッファのトラフィックを抑えてレンダリングするという「2パスDeferred Renderingモード」を実装する。木々や建物が立ち並んたフィールドを複数のキャラクターが動き回るような複雑なシーンでも効率よくレンダリングできるということであり,シーンの複雑度の違いでフレームレートが変わるような状況を低減させる効果が期待できる。またおそらくこれは,ベンチマークソフトを動かしたときも効果的に働く機能となるはずだ。
 このほか,DeltaChromeはD端子出力をGPUとしては世界で初めて正式にサポートする(Hi-Def HDTV Encoder機能)。720Pや1080iといったハイビジョン対応テレビがあれば,気軽にゲームやDVD映像を高精細高画質のまま大画面出力できることになるのだ。
 そしてDirectX 9世代のGPUということで,ビデオオーバーレイを複数持つことができ,またビデオサーフィスに対して,ピクセルシェーダを活用した各種エフェクトを施す仕組みを持つ(Chromotion機能)。このあたりは与えられた機能名こそ違うが,RADEON 9700,GeForce FXの同種テクノロジーとほぼ同じものといえる。

 まだ実物が出てきていないのでパフォーマンスについては詳しく語ることができないが,フィルレートについては公称値が24億ピクセル/secとなっており,これはRADEON 9700の26億ピクセル/secに肉迫する。Futuremark(旧MadoOnion)のベンチマークソフト「3DMark2003」が近々登場する予定だが,S3では既にそのβ版を入手してテストを繰り返しているという。そして,そのスコアは競合GPUに引けを取らぬものになっているとのこと。今から登場が楽しみだ。(トライゼット 西川善司)


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