[E3 2002#6]ギャリオットらオンラインゲーム界の重鎮が一同に介したパネルセッション - 05/22 20:05

 参加が許されたのは,午後から行われた「The Business of Persistent World:Learn from the Pros」(恒久稼動型世界のビジネス:プロから学べ)で,大型オンライン専用ゲームを制作,発売,そしてサービスを提供していくうえでの,心得やコツを話し合うというものだ。現在,世界で70作ほどの制作が行われているというMMOゲームは,E3 2002でも30作近くが発表されているだけでない。新しい形のビジネスとしても驚異的な進歩を遂げているだけあって会場は立ち見がでるほどの大賑わいで,その注目度の高さを物語っているようだった。
 このワークショップにスピーカーとして登場したのは,ロード・ブリティッシュとして日本でも知名度の高いリチャード・ギャリオット(Richard Garriott − NC Soft)氏ほか,長らくEA.comを手掛けてきたゴードン・ワルトン(Gordon Walton − Maxis),「Star Wars Galaxies」などのプロデューサーを務めるリチャード・ローレンス(Richard Lawrence − Sony Online Entertainment)氏,Kesmaiの技術責任者を経てMicrosoftの「Xbox Live」に関わるジョナサン・バロン(Jonathan Baron − Microsoft)氏の4人で,モデレータとして「Middle-Earth Online」のアドバイザーを務めるジェシカ・ミューリガン(Jessica Mulligan − The Themis Group)氏が進行役を務めた。

 このメンバーは,名前と経歴を見ても分かるように,現在成功しているMMORPGには何らかの形で関わってきた人物ばかりで,オンラインゲームの発展に身も心も捧げてきたプロ中のプロたちだ。中でも,今でもゲーム開発の一線で活躍しているリチャード・ギャリオット氏の話には説得力もあり,大きな冒険であることを認識しながらも現実的な視点でビジネスを見ている様子が伺えた。
 現在ギャリオット氏が手掛けている次世代MMORPG「Tabula Rasa」についてはほとんど語ることはなかったものの,すでに開発用のエディタなどのツールは制作済みであることを言明。これは,ゲームデザインに専念し,コードレベルのバグに後々煩わせられることのないようにという,かの「Ultima Online」を反面教師として考え出された方式なのだという。
 彼が説明するように,MMOゲームは稼動後のサービスが優先されるべきものであり,ゲームプログラミングやサーバー技術での失敗はもう許されないという意見には一同が一致。ワルトン氏も,オンラインゲームが8時から5時までのオフィスアワーで機能するものではないことから,
「オンラインゲームに手を出すなら,古いタイプの商店から24時間営業のコンビニへと切りかえるような,企業体制そのものをシフトしてしまうという気構えが必要だ」
という経営者としての意見を提供していた。

 またギャリオット氏は,
「現在言われているPersisitant World(恒久稼動世界)という概念のゲームスタイルは,オンラインゲームにとっては氷山の一角でしかない」
と語り,オンラインキャラクターだけを登録する形でエピソード方式のゲームにするなど,現在の技術で十分に可能なゲームシステムのアイデアを惜しみなく公開。ローレンスが,「我々自身もどこまで自分のやっていることを理解しているのは疑わしい」と続いたのに対し,古参のバロン氏は,「少なくとも,我々は"プレイヤーが自分たちの作り上げたゲームにどう反応するのか分からない"ということは知っている」と自虐的な反論をしながらもオンラインゲームビジネスの発展を弁護していた。

 現在,平均的なMMORPGの場合,制作期間が3年半,予算は20億円程度かかると見積もられている。さらに,サービス提供に問題があれば,その悪評が"ネット"を介して増幅され,製品にとっては命取りとなる危険性もあるなど,オンラインゲームは従来的なビジネス試算以上に,コミュニティ管理を始めとする未開拓の領地が多く存在する。そういう既存のビジネスモデルには見えない部分を熟知しているオンラインゲーム専用の制作者の育成も,今後の重要な課題となりそうだ。
 なお,熱弁を振るうギャリオット氏のムービーを「こちら」にUpしておいたので,興味のある人はダウンロードして見てみてほしい。(Okutani)


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